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SOMETIME'S、グッド・ミュージック満載の意欲作『CIRCLE&CIRCUS』6人の音楽ライターがクロスレビュー



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SOMETIME'Sが、メジャーデビューアルバム『CIRCLE & CIRCUS』をリリースした。ブラック・ミュージックやロック、パンクのエッセンスを取り入れながら、往年のJ-POPを思わせる親しみやすいメロディで、早耳リスナーから注目を集めているSOMETIME'S。今作には、2020年の本格始動後より発表された既存曲と新曲の計15曲が収録されており、そのボリューム感、バラエティ豊かな楽曲群からは、彼らが自身の音楽的好奇心を妥協することなく詰め込んだことが伝わってくる。まさにデビュー作にふさわしい一枚と言えるだろう。

今回、ビルボードジャパンでは本作のクロスレビューを企画。レジー氏、天野史彬氏、荻原梓氏、鈴木絵美里氏、麦倉正樹氏、蜂須賀ちなみ氏の6名に、それぞれ好きな視点から『CIRCLE & CIRCUS』をレビューしてもらった。ぜひアルバムと併せて読んでみてほしい。

「今一番押してほしいツボを一番心地よい強さで押してくれる」アルバム
text by レジー

 スカート、Official髭男dism、Homecomings、Kroi。いずれも音楽としての間口の広さと繊細さを合わせ持つ稀有な才能を持ったアーティストたちだが、彼らと同じくポニーキャニオン内のレーベル「IRORI RECORDS」に所属するSOMETIME'Sが8月25にメジャー1stアルバム『CIRCLE & CIRCUS』をリリースする。

 昨年あたりから各種チャートを賑わせてきた彼らだが、その躍進はまさに時代の大きな潮流と合致している。「シティポップ」という言葉で形容される新旧のグッドミュージックが幅広い支持を得たことによるリスナーの嗜好性の変化、さらにはコロナ禍におけるストレスフルな生活の中で多くの人たちが潜在的に育んでいた「音楽でスカッとしたい」という欲求。SOMETIME'Sが繰り出す音楽は、そんなムードにぴったりはまっている。

 もちろん今述べた話は、SOMETIME'Sが「市場動向に合わせて音楽を生産する」タイプのミュージシャンであるということを意味するものではない。ジャンルを横断しながら自分たちにとっての気持ちの良い音楽のあり方に忠実に向き合ってきたからこそ、時代の流れとシンクロするポイントを作為なく生み出すことができたのだろう。今作『CIRCLE & CIRCUS』も、そんな形で自らのやりたいことと世の中の空気が自然とリンクすることによって「今一番押してほしいツボを一番心地よい強さで押してくれる」とでも言うべきアルバムに仕上がっている。

 SOMETIME'Sの「心地よさ」のポイントはいくつかあるが、特に注目したいのが「ボーカルとトラックの一体化」である。たとえば「Slow Dance」あたりに顕著だが、英語と日本語がシームレスに同居する歌詞はメロディの流れを妨げることがなく、さらにそんなメロディを的確に引き立てるギターやホーンが過不足なく配されている。ポップソングとしての完璧なバランスがそれぞれの曲において実現されていると言っても決して過言ではない。

▲「Slow Dance」

 そして、「完璧なバランス」を保ちながらも決して「平凡」「聴きどころがない」に陥らないSOMETIME'Sのサウンドを支えているのが、SOTA(Vo.)とTAKKI(Gt.)のプレーヤーとしての個性に他ならない。前述した英語と日本語を行き来する歌詞を巧みに歌いこなすSOTAの声の根底にあるのは、スモーキーで渋い響き。このボーカルがあるからこそ軽快なサウンドの深みが増すとともに、「Honeys」のようなファンキーな楽曲にも強烈な説得力が付与される。また、TAKKIのギタープレイも、曲の勢いを加速させるカッティングから主役としてのギターソロまで自在に役割を変えることで絶妙なアクセントをもたらす。

 全編を通してファンクやAORといったおしゃれな雰囲気を漂わせながら、SOMETIME'Sの音楽はどこか人懐っこい。その背景には90年代のJ-POPもルーツとしている彼らならではのメロディセンスの存在があるだけでなく(特に「シンデレラストーリー」「真夏の太陽」のメロディラインは90年代初頭の大ヒット曲たちに通じる切なさに満ちている)、たくさんの仲間たちを巻き込みながら音楽を創り出しているこのグループのスタンスによる部分も大きいだろう。アルバムタイトルの通り、彼らを中心とした「サークル」から産み落とされる楽曲たちは、リスナーを非日常の世界に誘いながら「サーカス」のように楽しませてくれる。

 冒頭で触れた通り、個性豊かな面々が所属するレーベルにて新たな一歩を踏み出すSOMETIME'S。レーベルメイトと切磋琢磨しながら、先を行くレーベルメイトたちのように大きなうねりを生むことができるか、楽しみに見守っていきたい。

SOMETIME'Sは「場所」になれるユニット
text by 天野史彬

 去年、1st EP『TOBARI』リリース時にSOMETIME'Sの二人に取材したときに、ボーカルのSOTAが、SOMETIME'Sの音楽活動の基盤にあるものは「他力本願」である、と冗談めかして言っていたのをよく覚えている。それは、二人だけで活動しながらライブや音源制作ではサポートミュージシャンを迎え入れる自分たちの活動スタンスについて語った言葉だったが、同様にギターのTAKKIも、TENDREを例に挙げ、演奏やトラックメイクなどもひとりでこなすマルチな音楽家が多い中で、ギターしか弾けないギタリストとパソコンも使えないボーカリストから成る自分たちの在り方は、「令和のミュージシャンっぽくない」と笑い混じりに語っていた。そんな彼らの話を聞きながら、私は深く納得、そして少し感動していたのだった。

 というのも、「他力本願」と聞くと一見、他人任せでネガティブなイメージを持たれるかもしれないが、この言葉が持つ本来の意味は、決してネガティブなものではない。「他力本願」とはそもそも仏教用語であり、「他力」とは「他人の力」ではなく、「阿弥陀仏の慈悲」を意味している。また「本願」とは、阿弥陀仏の願いのことを指す。すなわち「他力本願」とは本来、「すべての人を救済する」という仏さまの大きな願いをよりどころにした人々の生き方を説いた言葉なのだ。……といっても、SOMETIME'Sのふたりがそこまで意識していたとは思わないが、しかしながら、自分たちの弱さを自覚しながら、様々なミュージシャンたちとの「繋がり」のなかで豊かな音楽を育むSOMETIME'Sの在りようはたしかに、私欲よりも、より大きなものの願いに身を託す「他力本願」という言葉が本来的に持つ大らかさと、どこかフィットしているように感じたのだ。

 そんな彼らの1stフルアルバム『CIRCLE & CIRCUS』は、流麗なメロディ、多彩なリズム、それらに合わせて躍動する歌、立体的なサウンドプロダクション……全15曲、ハイクオリティなポップソングが並んだアルバムだ。疾走感溢れる1曲目「Signal」にはじまり、後半にかけての爆発力がすさまじい先行配信曲「My Love」、流麗なリード曲「KAGERO」、「Slow Dance」、「Honeys」、「Take a chance on yourself」といったポップな既発曲たち、ウクレレの旋律が切なく響く「迎火」、レゲエ調の穏やかな「Donʼt know why」、そして、恋人同士のストーリーを描いているようで、同時にSOMETIME'Sのふたりのことを描いているようにも思えるエンディング曲「You and I」へ……と、聴いていると、とてもドラマチックで心地のよい時間が流れていく。1曲1曲が粒立っているが、1曲目から15曲目まで丸ごと通して聴いていても、力まず、疲れずに楽しめる、音楽的な豊かさと親しみやすさが見事に合わさった作品に仕上がっている。

▲「Take a chance on yourself」

 本作でも彼らの「他力本願」なスタンスは健在で、TAKKIのバイト先の後輩だったというアレンジャーの藤田道哉が「KANGERO」と「迎灯」以外の全曲に編曲でクレジットされているほか、冨田洋之進(Omoinotake/Dr.)、馬場智也(Dr.)、乾修一郎(S.Gt.、Uke.)、Kensuke Takahashi(LUCKY TAPES/Gt.)、Keity(LUCKY TAPES/Ba.)、後藤マサヒロ(Ba.)、佐々木恵太郎(Ba.)、ぬましょう(Perc.)、nabeLTD(Pf.)、清野雄翔(Pf.)、小幡康裕(コアラモード/Pf.)、永田こーせー(Sax.)、寺谷光(Calmera/Tb.)、大泊久江(Tp.)、吉澤達彦(Tp.)……と、こうやって名前を書き記していくだけでもちょっと疲れてしまうくらいたくさんの面々が楽曲毎にクレジットされている。SOMETIME'Sのふたりが生み出す楽曲を起点にして、様々な音楽家たちが音楽で遊びまくっている様子が、アルバムを聴いていると浮かんでくる。その姿はまさに『CIRCLE & CIRCUS』。「繋がり」から生まれる「輪」を描きながら、音楽家たちは音を重ね合わせ、美しくソウルフルな音楽を生み出していく。

 SOMETIME'Sは「場所」になれるユニットなのだと思う。音と音が、人と人が、偶然出会たり、あるいは待ち合わせをしたり、そしてまた約束を交わしたりする「場所」。もちろん、その中心にあるのはSOTAとTAKKI、この二人が生み出す独自な身体性を持った音楽だ。松任谷由実やMr. Childrenといった王道的な日本のポップスをルーツに持ち、日本語と英語を織り交ぜた、「意味よりも響き」な独特な言語感覚で音楽の波に乗ってみせるボーカリストのSOTAと、ロックやジャズなど様々な音楽を摂取しながら、そのしなやかなギター表現を磨いたTAKKI。器用なようで、不器用なような、そんな二人がその眼差しと肉体で描く理想の音楽への憧憬が、SOMETIME'Sの音楽に決して損なわれることのない「純度」をもたらしている。その純度に、人は惹かれ、集うのだろう。

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楽しさ、スリリングさ、解放感――コロナ禍の今、必要な一枚
text by 荻原梓

 「心が躍る」という言葉が、これほどよく似合う音楽もそうないだろう。彼らの奏でる音はどんな沈んだ気分も明るくさせるポジティブなパワーで溢れている。そして、未曾有の災禍に苦しむ2020年以降の世界を生きる我々にとって、せめて音楽を聴いてる時だけは現実を忘れたい、という切実な思いを満たしてくれる救いのような存在にもなるだろう。終わりの見えない砂漠に突然現れたオアシスのように、この『CIRCLE & CIRCUS』は、今の世の中に必要な一枚だ。

 必要と書いたのは、心が踊るからという理由だけではない。この作品に詰め込まれた音楽的な多様さは、日本のポップミュージック界にとっても必要なものだと言える。古今東西の良質なポップスを下地にしながら、ソウルやファンク、R&Bやフュージョン、AORといった様々なエッセンスを取り入れた彼らの豊穣な音楽性を支えているのは、OmoinotakeやLUCKY TAPESといった同じ感覚を共有する若手バンドのメンバーたち。彼らのサポートによって実現された今作の豪華なバンドアンサンブルは、打ち込みの作品でもヒットが量産されるようになった現代に対して一石を投じるものだ。これこそ今の音楽シーンに欠けているものではないかと。

 SOMETIME'Sの音楽の特徴は、そうした生演奏への強いこだわりによる洗練されたグルーヴと、英語と日本語を自在に行き来する自由なボーカル表現だろう。例えば、彼らの名を広く知らしめた一曲「Honeys」は、〈お揃いのリング 今夜だけ外して〉という、これぞSOMETIME'Sの真骨頂と言うべきスリリングなシチュエーションの楽曲だが、その世界観を演出するのは、サックスやトランペット、トロンボーンといった金管楽器によるパワフルかつシックな演奏であったり、切れ味鋭いギターのフレーズや、腰に響くワイルドなパーカッションのリズムである。

 そして、SOTA(Vo.)のズバ抜けた歌唱力は言わずもがな、その特有のボーカルワークも見逃せない。英語を潤沢に使用した語感~リズム感重視の歌詞を滑らかに歌い上げていて、さらに日本語の歌詞であっても英語的に歌っているのがポイントだ。メロディ自体はどちらかと言えば日本のポップス寄りのセンスで、なかには歌謡曲やニューミュージックを彷彿とさせる一節もあるが、聴いた印象としてはある種の洋楽っぽさというか、バックの演奏と一体化した歌唱スタイルが耳に心地よい。

 アルバムに目を通せば、1曲目「Signal」はアップテンポで小気味良いリズムを刻むスピード感抜群の一曲。軽やかなリズム隊の上で〈SignalはもうFree〉と歌うその姿は、いよいよデビューの扉を開いた彼らの物語の幕開けに相応しい。勢いそのままに流れ込む2曲目「My Love」では、英語の比率が増し、リズムとの絡み合いもより一層増加。互いに違う誰かの影を重ね合わせる2人の愛が描かれる歌詞には、思わずニヤリとさせられる。緻密なアンサンブルとスリリングな歌世界が展開されるこの冒頭の2曲だけでも、SOMETIME'Sというユニットが何たるかを一発で理解できよう。

▲「My Love」

 また、彼らは夏が本当によく似合う。サザンオールスターズ然り、夏が似合うアーティストには良いアーティストが多いが、「真夏の太陽」はそんな彼らのイメージを決定付ける一曲だ。山下達郎を彷彿とさせる多重コーラスではじまるこの曲は、夕焼けに照らされた夏の浜辺で、“君”を失った“僕”の心の叫びが夕日とともに沈んでいくようで胸を打つ。あるいは、盆に先祖の霊を迎えるために焚く火のことを意味する“迎え火”をモチーフとしたウクレレを迎えた「迎灯」や、朗らかなレゲエ調の「Don't know why」あたりも、彼らの夏のイメージを補強している。テンプレート的な夏でなく、夏のあらゆる側面を切り取っているため飽きが来ない。

 大勢が集まって音楽を鳴らす楽しさ、胸が高鳴るスリリングな世界観、夏の解放感、自由さ。彼らが本作で歌っているこうした要素は、どれもこのコロナ禍を生きる我々が求めているものだと思う。このアルバムは、人々のそうした渇いた心を潤す一枚になるだろう。

横浜エリアの香りが色濃く感じられる豊かな音楽性
text by 鈴木絵美里

 2人組のアーティスト、という前情報のみでSOMETIME'Sのファースト・アルバムを再生してみたところ、1曲目「Signal」からかなりのきらびやかなサウンドに驚いた。メンバーはふたりきりだが、ボーカルSOTAとギターTAKKIというふたりの間から生まれてくる音像は相当にゴージャスかつ多彩なようで、ファースト・アルバムにしてなんとオリジナル楽曲が15曲も収録されていることにもまた驚かされたし、楽曲の中で鳴っている音の数がとても多い。

 ごくごく個人的には自分自身が神奈川県の出身ということもあって、1980~90年代の国道134号線沿い(つまり湘南)から横浜ベイエリアまでの香りが色濃く感じられるサウンドを軸として、そこにさらにはサーフなどの音楽要素もミックスされている楽曲群のそこかしこに、懐かしさと新しさを感じたのだが、まさにメンバーふたり揃って横浜の出身ということを知って「ああ、なるほど…!!」と納得感がより深まった。横浜という土地はライブハウスやバーも多く、港町特有のおおらかな雰囲気のなか、音楽プレイヤーもリスナーも入り混じってジャンルもお互いに影響しあいながら自由に音楽の広がりを楽しめるエリアであるし、その雰囲気がしっかりと彼らの輪郭を象っている。これはただ単純に“海っぽい”“ドライブミュージックっぽい”ということではなく、それ以上に、本当にいろいろなポップスがふたりのバックグラウンドにはあって、そのすべてが好きなのだろうな、ということが、SOMETIME'Sのアルバムを聴くとひしひしと伝わってくる、という意味で、なかなかに興味深い。

 ボーカルSOTAの若干ハスキーで特徴的な声は、どこかで耳にしたらきっと気になってしまう人も多いことと思うが、「KAGERO」のような壮大なバラード、「迎灯」のようなレイドバック感ある楽曲、そして疾走感溢れるフュージョンやジャズの世界観バリバリの楽曲のいずれも、SOTAの声がパワフルに勢いよくまとめ上げていく様は見事であり、爽快・痛快だ。どうやらふたりのルーツには世代的にもメロディックパンクやポストロック、マスロックのようなものも見え隠れしているようなので、この独特なパワフルさはそういったロックのルーツに根ざしているものなのかもしれない。

▲「KAGERO」

 さらにもうひとつ、このSOMETIME'Sが、Official髭男dismとスカートが所属するレーベルとして立ち上がったIRORI Recordのアーティストと知り、SOMETIME'Sの音を聴いてこちらが勝手に感じ取っていたポップスへの確信とでもいうか、信頼、納得感は深まった。現在ではこのレーベルにはHomecomings、Kroiらも加わっているとのことで、良質かつ次世代を担う芳醇なポップスをさらに発掘し届けていこうというレーベルの気迫・意気込みのようなものが感じられ、リスナー側として心強くもある。

 新しい音楽と出会おうとする時、今やサブスクリプションサービスでプッシュ・おすすめされてくる機会が大きな軸のひとつであることは疑いようがないわけだが、こうしてプレイリストで横展開して聴かれていく、という意味においても今後、音楽レーベルのカラーはよりはっきりとしたものが求められてくるだろうし、そこから掘り下げる際に、ファースト・アルバムにして15曲もあるというこのSOMETIME'Sの状況は、大変に今っぽく、かつ“強い”状況なのではないか、という気がしている。

 ユーミン、サザン、そしてファンクもジャズも90年代Jポップも、ここ30年分くらいの豊かな音楽と音楽愛が、最終的にはとても豊かな「歌」によってまとまっている、大変贅沢な1枚がここに誕生したようだ。

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  2. 2人であって2人だけではない SOMETIME'Sが生み出す「気持ち良さ」
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2人であって2人だけではない SOMETIME'Sが生み出す「気持ち良さ」
text by 麦倉正樹

 「ああ、これはとても気持ちの良い音楽だ」というのが、まず最初の感想だった。1曲目の「Signal」から、まさしく夜のハイウェイを駆け抜けるような疾走感溢れるサウンドが、耳朶に心地良く響き渡る。そして、本作のリード曲でもある2曲目「My Love」のコーラスが打ち放つ、心浮き立つような高揚感。「伸びやかなボーカルとリッチなサウンドが印象的なこの音楽は、一体どこの誰によるものなのだろう?」。きっと多くの人がそう思うに違いない。実際、奇しくもこの「コロナ禍」という、従来のようなフェスやライブでの広がりが難しい状況にありながら、彼らSOMETIME'Sの音楽は、音楽認識アプリやUSENなどを入り口として、この一年余のあいだに着々とその知名度を広げ、支持を獲得してきたのだという。いわゆる「触れ込み」や「惹句」といった事前情報は、何事においてもひとつの目安となるけれど、それらのものを抜きにいきなり耳に飛び込んできて、瞬く間に聴く者の心を捉えてしまうこと。そこが音楽の何よりも面白いところであり、その意味でSOMETIME'Sは、実にまっとうな広がり方をしているアーティストのひとつと言えるのだろう。

 「Honeys」、「Take a chance on yourself」、「Slow Dance」など、彼らの存在を多くの人に知らしめることになった、ホーンセクションをフィーチャーしたポップで派手やかな既発曲はもちろん、シンプルなアレンジでしっとりと聴かせるバラード「KAGERO」、BTSをはじめとするK-POP勢にも通じるような洗練されたR&B/HIPHOP解釈が洒脱な「HIPHOPMAN」、さらにはレゲエ調のゆったりとしたリズムに乗せて伸びやかなボーカルが響きわたる「Don’t know why」など、本作『CIRCLE & CIRCUS』には、思いのほかバリエーション豊かな楽曲が収められている。けれども、そのいずれにも共通しているのは、冒頭に挙げたような音楽的「気持ち良さ」なのだった。美しいメロディと豪華なサウンド、そしてめくるめく楽曲展開が聴く者にもたらせる「気持ち良さ」。そこには、このユニットが、SOTA(Vo.)TAKKI(Gt.)の2人にとって「最初のバンド」ではないことも関係しているのかもしれない。気心知れた仲間と、単に歌い奏でることが目的なのではなく、自分たちが「本当に」歌いたい音楽、奏でたい音楽を生み出すために作られた「場所」――それがSOMETIME'Sなのだから。

 伸びやかなボーカリゼーションはもとより、ファルセットも自在に使いこなすシンガーSOTAが、自ら歌っていて何よりも気持ち良いメロディを――そして、ロックはもとより、ファンクやジャズ、そしてフュージョンの技巧も持ち合わせたギタリストTAKKIが、自ら弾いて気持ち良くなるようなフレーズをひとつの楽曲の中に盛り込んでいくこと。しかも、その最終的な構成を、SOMETIME'Sの「第三のメンバー」的な存在であるという旧知の作曲家/アレンジャー藤田道哉を交えた形で組み上げ、さらにはそれに見合った腕利きのミュージシャンを楽曲ごとに編成し、彼らと共にそのグルーヴを練り上げていくというユニークな楽曲制作法。そう、SOMETIME'Sは2人であって2人だけではないのだ。そして、その際のプライオリティは、やはり彼ら全員にとっての音楽的な「気持ち良さ」にあるのだろう。その「気持ち良さ」は、間違いなく聴く者にも伝播していく。

 とはいえ、リッチな音色や絶妙な展開、さらにはコーラスの使い方など、ひとつの楽曲の中で何重にも張り巡らされたサウンド面でのフックに比べると、その歌詞の部分でのフックは、楽曲タイトルも含めて少々物足りない気がすることも否めない(日本語と英語を織り交ぜた、独特な歌のグルーヴ感はあるものの)。楽曲としての好ましさはともかく、たとえば「シンデレラストーリー」の“誰もが皆夢見たはずのシンデレラストーリー”というサビのフレーズに、このご時世、一体どれだけの人が心動かされるのだろう。しかし、逆に言うならば、その部分でなにがしかのフックやオリジナリティを獲得するようになったならば、SOMETIME'Sは、いよいよ大変なことになっていくに違いない。そう、彼らが所属するレーベル「IRORI Records」の先達、Official 髭男ismが、瞬く間にそうなっていったように。そんな大きな可能性を確かに感じさせるSOMETIME'Sの1stアルバム『CIRCLE & CIRCUS』。いずれにせよ、まずはその耳で聴いてみて、その音楽的な「気持ち良さ」を存分に堪能して欲しい一枚だ。

随所に垣間見られる日本語ならではの表現
遊び心を交えて楽しく届ける SOMETIME'Sのやり方
text by 蜂須賀ちなみ

 SOMETIME'SはボーカリストのSOTAとギタリストのTAKKIによるユニットで、現状、TAKKIが作詞を、SOTAが担当するパターンが多いという。今作では、SOTAが詞曲を手掛けた「シンデレラストーリー」「Don’t know why」「真夏の太陽」を除く12曲の歌詞はTAKKIが書いたもの。つまり、多くの曲は、歌詞を書いている人と歌っている人が違うわけだが、そのことによる引っ掛かりを感じる瞬間がほとんどない。どの曲のどのフレーズにしても、歌と言葉がしっかりと接着されているような――むしろ一体となっているような印象を受ける。SOTAの歌唱法はずり上げ、シャウト、スキャットを多用した、技術を要求されるものだ。それでもテクニックを前面に押し出している感じがせず、自由に、本能のまま歌っているように聞こえるのは、ボーカルと歌詞とに乖離がないからだろう。言葉には意味が伴うが、それ以前に音であるという事実が、SOMETINE’Sのソングライティングにおいては大切にされているように思う。だからこそ「Honeys」で見られるような、(言葉を持つ)ボーカルと(言葉を持たない)ギターの掛け合いもバッチリとハマる。

▲「Honeys」

 発語時のグルーヴを担保するために、歌詞では、〈ゆらゆら揺らぐYour love〉(「KAGERO」)のような音の反復、〈light〉、〈night〉、〈(もったい)ない〉、〈like(a hiphopman)〉のような押韻(「HIPHOPMAN」)が、日本語/英語の境界を跨ぎながら積極的に用いられている。そう、SOMETIME'Sの楽曲の歌詞では、日本語と英語が混在しているのだ。しかも単に2か国語が使われているというだけでなく、文法・文化ごと、混ざりあっているような感じで。例えば、恋する主人公の2年間の変化を描いた「Slow Dance」という楽曲。〈17 years old〉〈19 years old〉と始める英文的な構成は、このスタイルだからこそ生まれたものだろう。一方、和のエッセンスが垣間見える曲も。8曲目の「迎灯」は日本ならではの風習“迎え火”をモチーフにした曲だろうし、アコースティック調のシンプルなサウンド、そして2分7秒で終わるコンパクトな構成からは、“わびさび”に通ずる美意識を感じる。また、「KAGERO」、「真夏の太陽」で登場する〈陽炎〉というモチーフも日本の四季を感じさせるものだ(共に〈君〉を喩える言葉として用いられているのも興味深い)。昨年には『TOBARI』(帳)というタイトルのEPもあったし、おそらく、日本語ならではの繊細さを表現した曲も今後増えていくのではないかと推測する。

 元々は、横浜でそれぞれバンド活動をしていたというSOTAとTAKKI。互いの所属バンドが解散になり、「一緒にやろうよ」という話になったのが、SOMETIME'S結成のきっかけ。そんな2人にとって初のフルアルバムとなる今作は、疾走感抜群のドライブソング「Signal」で幕を開ける。〈真夜中の246〉という歌い出しから横浜にルーツを持つ2人のバックグラウンドが読み取れる「Signal」は、バンドのフィジカルがダイレクトに表れた楽曲だ。そのフィジカルを以てして、以降、幅広い音楽性を展開。そして「Signal」で歌われた〈夢〉という単語はこのあともいくつかの曲で登場する。SOMETIME'Sにとっての“夢”とは、バンド名の由来にも関わる、切っても切れないテーマだ。その背景には、決して早咲きとは言えないキャリアも関係しているのだろう。それを踏まえると、ラストに配置された「You and I」で描かれるブラザーフッドは、つまりSOTAとTAKKIの話なのでは?と解釈できそうで感動的。しかしそんな曲をお涙頂戴といった仕上がりにせず、遊び心を交えて楽しく届けるのが、彼らのやり方だ。夢の奪還は笑顔とともに。その旅は、愉快な音楽とともに始まっていく。

SOMETIME’S「CIRCLE & CIRCUS」

CIRCLE & CIRCUS

2021/08/25 RELEASE
PCCA-6071 ¥ 3,000(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Signal
  2. 02.My Love
  3. 03.It’s OK
  4. 04.KAGERO
  5. 05.Slow Dance
  6. 06.Honeys
  7. 07.SUNRISE
  8. 08.迎灯
  9. 09.シンデレラストーリー
  10. 10.Take a chance on yourself
  11. 11.HIPHOPMAN
  12. 12.Don’t know why
  13. 13.真夏の太陽
  14. 14.Morning
  15. 15.You and I

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