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<インタビュー>新たな表現を探求し続けるSalyu、ライブへの心境を語る
唯一無二の歌声で多彩な活動を続けているSalyuが、装いも新たな編成で[ビルボードライブ]のステージに挑む。2004年のSalyu名義でのデビュー以来、 様々な形態、編成、客演でヴォーカルの表現の可能性を探求してきた彼女。近年、彼女と数多くのステージを共にしてきた羊毛こと市川和則のギターとストリングス・カルテットと共に新しい表現に臨むSalyuに、今回のプロジェクトに至る経緯や、コロナ禍での“気づき”、ヴォーカリストとしての現在の心境を聞いた。
「一人の音楽家として、ひとつひとつのライブを丁寧に刻んでいきたい」
――この夏の大阪・横浜・東京の[ビルボードライブ]のステージは、ストリングス・カルテットとガットギターという弦楽器とのコラボレーションになるそうですが?
Salyu:ここ最近、アコースティックの世界を追求しようとギターの羊毛(市川和則)さんとデュオでライブを少しずつ積み重ねてきたんです。時にはウッドベースを加えた3人編成でライブを行うなど、アコースティックの響きにますます惹かれていくうちに羊毛さんからストリングスのカルテットとの共演を提案されて、2019年に一度トライしたことがあったんです。その時にすごく手応えを感じたことが今回の[ビルボードライブ]のステージに繋がりました。
――今年の春はその編成でオンラインライブ『TAGO STUDIO TAKASAKI THE 7TH ANNIVERSARY ONLINE LIVE』を開催していましたね。
Salyu:そうなんです。あの時は無観客でスタジオでのライブ収録を配信したんですが、素晴らしいクオリティの音をお届けできたと思うので、次はお客さんの前で同じ編成で弦楽器との共演が実現できたらと考えていました。
――Salyuさんがギタリストの羊毛さんこと市川和則さんと出会ったのは?
Salyu:羊毛さん出会ったのは、映画監督の岩井俊二さんを通じてだったかな? 知人のホームパーティに羊毛さんがギターを担いでふらりと現れて、その場でセッションしたり、そんな気の置けない感じから始まった気がします。羊毛さんは同世代の同志という親近感もあり、それからは二人で様々な場所でアコースティック・ライブをしてきました。
――Salyuさんの歌と羊毛さんのギターだけでライブハウスやイベントスペース、ローカルな野外フェスなどに出演していますね。
Salyu:ギターは私たちの生活に溶け込んでいる楽器なので、どんな場所でもライブの空間を幸福感で満たすようなところがあるんですよね。コロナ禍になって以降は特にそんなミニマムでアコースティックな編成の方が動きやすかったし、聴いていただきやすいということもありましたね。
――昨年から続くコロナ禍によってライブがままならない状況が続きましたが、そこで意識が変わったことも関係していますか?
Salyu:そうですね。私は作詞・作曲には関わらず、ヴォーカルというプレイヤーだと思っているので、少しでも自分の実力や表現を高めていくためには以前に増してライブを続けていきたいという気持ちが強くなったと思います。安全な環境の下、お客さんの人数を限定したライブになったとしても、一人の音楽家として、ひとつひとつのライブを丁寧に刻んでいきたいと思うようになったんです。どんな場所でもお客さんがそこに居ることで、音楽は力をもらえるし、コロナ禍のライブであらためてその有り難みを感じました。
――これまで[ビルボードライブ]では、『a brand new concert issue " minima " - ミニマ - Salyu × 小林武史』として、歌とピアノだけのステージを魅せてきましたが、楽器の違いは歌い手としてどのように感じていますか?
Salyu:楽器によって音楽の世界観が変わることは、今までの様々なセッションを通して私自身も感じて来ました。小林武史さんとの『ミニマ』シリーズは、小林さんのピアニストとしての魅力と存在感がすごく強いので、強く、深くメッセージを訴えかける力があるし、羊毛さんのギターは温かい空気を音楽と空間に豊かに満たすことができる。私の歌や声もセッションする楽器によって変わるし、同じ曲でも印象が異なるのは音楽の奥深さだし、ライブの雰囲気もピアノとギターではかなり違いますね。
――バイオリン、ヴィオラ、チェロといった弦楽器の編成もまたこれまでとは異なるアプローチになりますよね。
Salyu:私が弦楽器の魅力に開眼したのは、かつて自分のステージにチェロ奏者の方を招いて歌った時でした。それが初めての経験だったんですが、チェロの音色や響きは人の声と親和性が高いのか、私の声とすごく調和すると確信したんですね。ヴォーカルを楽器として捉えている私にとって、ストリングスは仲間に近い存在というか、私の歌を助けてくれる味方でもあるなと感じたんです。
――Salyuさんは「ビルボードクラシックス」で、クラシックのフルオーケストラとの共演も経験されていますね。
Salyu:最強のアコースティックとも言えるオーケストラで歌わせていただいたことは感動的な体験でしたね。オーケストラの中に身を置くと、まるで広い森の中にいるような心地になってフワッと体や声が軽くなるような瞬間があるんです。今回のストリングス・カルテットでもその醍醐味をぜひ味わっていただきたいですね。
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「心地よく充実した時間を」ビルボードライブへの想い
公演情報
Salyu
ビルボードライブ大阪
2021年8月12日(木)
1stステージ 開場14:30/開演15:30
2ndステージ 開場17:30/開演18:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ横浜
2021年8月14日(土)
1stステージ 開場14:00/開演15:00
2ndステージ 開場17:00/開演18:00
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京
2021年9月5日(日)
1stステージ 開場15:30/開演16:30
2ndステージ 開場18:30/開演19:30
>>公演詳細はこちら
関連サイト
Interview&Text: 佐野郷子
「心地よく充実した時間を」ビルボードライブへの想い
――新たな編成での選曲も楽しみです。
Salyu:デビュー以来、私の曲を数多く手がけてくださっている小林武史さんの曲を中心にチェロの林田順平さんが今回だけのアレンジを施してお届けするつもりです。小林さんは、ご自身がピアニストでもあるから楽曲のレンジがとても広くて、ロングトーンが多いんですが、今回のストリングス・カルテットのアレンジは武史さんの楽曲にとても映えると思います。この編成のライブであらためてメロディーの魅力が引き出されるはずですし、そこから新しい世界が見えてくることを私自身も期待しているんです。
――ストリングスにギターという組み合わせも興味深いですね。
Salyu:そうなんです。普通はピアノかもしれないんですけど、ギターを含む弦楽器のハーモニーの美しさはライブを聴いていただけると納得していただける思います。今回はステージに立つ全員がソロ奏者でもあるので、単なる歌の伴奏というのではなく、一人一人のプレイヤーとしての輝きやそれぞれの表現をビビッドに感じ取っていただけるんじゃないかと。
――今年、配信リリースした「Taxi」も新しいアプローチの新曲でしたね
Salyu:「Taxi」は、Yaffleと小袋成彬さんという若い世代のクリエイターに初めてお願いしてみました。自分よりずっと若い方にプロデュースを依頼するのは初めてだったんですが、以前からYaffleには興味があったし、最近の私のアコースティックな傾向と彼らの感性が美しく融合した曲に仕上がったと思います。
▲Salyu「Taxi」
――新しいクリエイターとのコラボレーションは今後も続いていきそうですか?
Salyu:そうですね。信頼できるパートナーと音楽の可能性を広げていくことが、私の悦びであり楽しみなんですね。色んな編成のライブにチャレンジしているのもそれと同じなんです。そんなスタンスで十代の頃から経験を積んで、次はどういう音作りを目指してこうかと考えて、新たなアプローチを探りながらこの20年歩んできたように思います。去年はLily Chou-Chouとしてデビューしてから20周年だったんですけど、挑戦してみたいことはまだまだあるし、ヴォーカルの可能性を探究しながら自分の視野をもっと広げていきたいですね。
――ホールや野外フェス、カフェに近いライブスペースなど様々なステージを経験してきたSalyuさんにとって[ビルボードライブ]のステージは?
Salyu:今、思えば、初めて[ビルボードライブ]のステージに出演したときは、客席の近さに少し戸惑いましましたが、お客さまは日常の延長で観に来てくださるんですよね。お仕事の帰りや休日にお酒やお食事を楽しみながら音楽を味わうというのはその人の生活の一部でもあると思うので、音楽を提供させていただく立場としては、その時間を心地良く充実して過ごしていただきたい。どんな環境でもライブの姿勢は変わらないつもりですが、[ビルボードライブ]はお客さまと心理的にも距離が近いように感じます。
――最後に今回の[ビルボードライブ]の見どころと意気込みをお願いします。
Salyu:ぜひ生で聴くストリングスの素晴らしさを体感していただきたいですね。そこで私の歌が観客の皆さんにどういう風に響くのか今からドキドキしています。コロナのパンデミックが1日も早く収束することを願いつつ、皆さんと音楽を共有できる日を楽しみにしています。
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「一人の音楽家として、ひとつひとつのライブを丁寧に刻んでいきたい」
公演情報
Salyu
ビルボードライブ大阪
2021年8月12日(木)
1stステージ 開場14:30/開演15:30
2ndステージ 開場17:30/開演18:30
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ビルボードライブ横浜
2021年8月14日(土)
1stステージ 開場14:00/開演15:00
2ndステージ 開場17:00/開演18:00
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ビルボードライブ東京
2021年9月5日(日)
1stステージ 開場15:30/開演16:30
2ndステージ 開場18:30/開演19:30
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Interview&Text: 佐野郷子
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