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<インタビュー>眉村ちあき、サマーチューンを連続配信 新曲「悪役」で描かれる夏だからこそのマジック



 これはすごい、眉村ちあきの音楽的革命が止まらない。展開激しい爽快なサマーチューン「Individual」に続いて8月4日にリリースされた最新曲「悪役」は、一夏の恋を軽快なビートに乗せて魔法めいたポップセンスで表現。耳に残る人懐っこいメロディー。街を闊歩する環境音と溶け合っていくピアノによるイントロダクション。“次の駅まで 歩きながら 息をするの”という、まるで映画の世界のワンシーンのごとく、独自の世界観へグイグイ引き込んでいきます。しかもタイトルは「悪役」。ほら、どんな物語をストーリーテーラー眉村ちあきは奏でるのか、曲を聴いてみたくなりませんか? 開演のベルはもうすぐですよ。

最近は鼻歌もオペラになって(笑)。そのあと宝塚にハマって

――今夏、サマーチューンを連続で配信リリースするそうで、今作「悪役」は第二弾だと。

眉村ちあき(以下:眉村):夏縛りで出します。しかもちゃんと春に夏の曲を逆算して作ったんですよ。

――新しいスキルを身につけたと。

眉村:そうなんです。いつも夏になってから“ああ、夏の曲を作るか!”ってやってたんですけど。タイアップとか経験して、あ、みんな逆算して作っていたんだって気がつきました(笑)。計画的に夏曲を作りましたよ。

――サマーチューン第一弾「Individual」も、構成こだわりまくりのすごい曲なんですが、サマーチューン第二弾「悪役」が、これまためちゃくちゃ良い曲で。

眉村:いえ~い!

――「悪役」というタイトルだったからダークな曲なのかなと思ったら、優しさに包まれたキャッチーなポップソングに仕上がっていて。しかも、深みのあるナンバーで。

眉村:夏といえば恋じゃないですか? 夏の恋って夏マジックで好きになっちゃったり、高校生の頃とか“それって夏マジック?”みたいな会話が友達とあって。それで夏マジックを描いた曲を作りたくって、夏だけ好きになっちゃった子を妄想して作りました。ふふふっ。

――「悪役」というと、恋愛ストーリーでの登場人物の役割分担がちあきさんの中で明確な設定や場面イメージがあったりするんですか?

眉村:はい、やっぱり夜が一番錯覚を起こしやすいだろうなって。夜といえば花火や、ちょっと悪いこと? わたし的に、映画『花束みたいな恋をした』のように甲州街道を2人で缶ビール片手に歩いているイメージだったんです。そのシーンが印象深くって。甲州街道が舞台です。

――そうなんだ。でも、そこから「悪役」というタイトルを導くのがちあきさんらしさだよね。

眉村:「悪役」は、最初“あ~く~や~く~!”というメロディーと言葉が耳心地的にハマったんですよ。それで悪い子をテーマにしようと思って。だから最初にタイトルができました。

――曲、歌詞、トラックなど、どんな順番で?

眉村:いつも違うんですけど、だいたい同時にですね。ド~って、ちょっとずつ作っていって。でも、最近は骨組みを作って、音の肉付けすることも多いかも。でも、骨組みはメロと歌詞を一気に作るのは変わらないかな。まずBPM決めて、イントロから。最後はアウトロへ。そこは計画的ではないかも。

――Eテレ『ワンルームミュージック』に出演された時に実演されていましたよね。

眉村:あの時もたまたまBメロを最後に作ったけど、いつも最後ってわけではないし、その時のノリですね。

――最近では、オペラ的な歌唱を取り入れられたり、「悪役」ではミュージカルっぽさというか。それはドラマティックな物語性をより感情を込めて表現したいから取り入れられているのですか?

眉村:オペラとかですか? う~ん。

――オペラの先生に習ったこともあるんでしょ?

眉村:一回だけ習ったことがあって。それは、前のアルバムの「夜の女王アリア 復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」で、ですね。元は、ライブでネタでやっていたんですよ。見様見真似で。でも、ちゃんと歌ったら面白いんじゃないかなって、ドイツ語の発音を教えてもらって。そうしたらすごい楽しくって。オペラの歌唱法って永遠に歌えるんですよ。声が枯れないので。腹しか使わないんです。無限なんですよ。それで最近は鼻歌もオペラになって(笑)。そのあと宝塚にハマって。それがとどめで。これは取り入れるしかないなって。

――見聞を広めたがゆえに、創作の可能性が広がったと。

眉村:めっちゃ広げてくれましたね。宝塚、すごい展開が多い曲があって。普通にJ-POPな曲もあるんですけどね。面白いんですよ。今やっている花組、4回観に行ったんですよ。

――それはすごいなあ。どんな題材で?

眉村:ローマの皇帝が生まれるまでの話で。絶望ばっかり。身近な人めっちゃ死ぬ、みたいな。でも希望を持って生きるっていう。ショーの最後の方、EDMっぽくなったり。面白いんですよ。ずっと観てられます。負けてらんないって。

――「悪役」でも影響あった感じ?

眉村:「悪役」は、最初字余りっぽく歌っていてミュージカルっぽいんだけど、そんなつもりではなかったんですよ。

――そうなんだ。

眉村:ずっと宝塚見ていたから染み付いたのかも。

――きちんと王道ポップソングとしても成り立っているもんね。ポップスとしてのクオリティーが高くて。ちなみに“明日には忘れてね 私に期待しないで”のフレーズがめっちゃ曲の展開でエモさとして効いてくるんですよ。サビへ向けて魔法めいた橋渡しとなっていて。

眉村:やった~。嬉しい。この曲けっこう、サビ以外はぴゅ~っと作って。サビだけは吟味しました。やっぱりポンって作れるといいメロディー浮かびますよね。

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明るい曲で明るくない歌詞を歌う方がわたし的に刺さる

――誤解を恐れずに言えば女性シンガーソングライターの系譜として、矢野顕子さんだったりユーミンだったり、そこに眉村ちあき並んでいるなって感じたから。作品が持つトータルのパワーに説得力あるんですよ。ご自分では手応えは?

眉村:いつも通りに作ったって感じで。でも、今回、歌詞が刺激的なんでファンに人はびっくりするかなって。歌詞だったら“今日から私はね 悪役”かな。明るい曲調じゃないですか? でも、歌詞だけ読んだら明るくないんです。それは狙っていて。明るい曲で明るくない歌詞を歌う方がわたし的に刺さるんですよ。無理してる? とかいろんな捉え方ができるし。泣きたくなるような曲ほど明るく作るんで。この曲の主人公もわかっているんですよ。自分のことが悪役だって。そこもいいなって。自分が悪いってわかってるけど、でも夏だからねって。

――まさにね。ちなみに、イントロでピアノと重なる闊歩する環境音が聴こえるんだけど、取り入れた意図は?

眉村:イントロから作った曲なんですけど、最近MIDIキーボードを手に入れて。適当に弾くのにハマっていて。歩いている音は、甲州街道での音なんです。

――あああ、まさにそうなんだ。物語への没入感を誘っているんだね。

眉村:ずっと、女性のハイヒールの音をサンプリングしたり、ビートに使いたいなって思っていて。それこそ、甲州街道で菅田将暉と有村架純が歩いているイメージも重なって。

――映画のワンシーンだ。

眉村:影響すぐ受けるから、でもまだ観ていなくて(笑)。

――ああ、そうなんだ(笑)。

眉村:世界観に入った気分にだけなっています。そして曲ができました。

――「悪役」を作る上で、これまでの創作スタイルとは異なる、自分で成長できたなってポイントなんてあったりしますか?

眉村:いつも通り作ったし、それでいうと第一弾「Individual」の方が大変だったかな。

――7月にリリースされた「Individual」もめっちゃよくって。人間的な深みを描きながらもちゃんとサマーソングに仕上がっていて。

眉村:「Individual」はそれこそ夏に新曲を連続で配信リリースをすると決めて、夏開幕をテーマにした曲ですね。オーケンさん(大槻ケンヂ)の前回のアルバムに8展開ぐらいする曲があって、わたし、展開する曲作ることあるけど、ここまでたくさんはないなって思って。自分で最大展開な曲にしたいなって。あと、コロナ禍だし、溜まっていく生活の鬱憤ってあるじゃないですか? 曲の中だけでは好きにさせてくれって思って。爆発音をサンプリングして、なんかみんな爆発したいんじゃないかなと思って全部ぶっ込みました。

――そういう曲だねえ。「Individual」というタイトルに込めた想いとは?

眉村:ポイントは“一番怖いのは無知な人間であると”のところで、SNSとかで無知な人の発言が目立つじゃないですか? よく知らなくても批判していたり。でも人間って自分が正義だって思うから戦争だって起こるわけで。争いも起きるし。それって相手のことを何も知らないから、知ろうともしないからなんですよね。あれです、『進撃の巨人』とか観ると余計に感じたり。ちょうどマネージャーさんと毎週集合して観てたんですよ。この春、正義とかについて考えたり。思いっきり影響されていますね。でもちゃんと夏に寄せて作りました。自分の“いま”があらわれた曲ですね。

――そしてすでに次作も準備している曲があると。

眉村:「悪役」と次の曲は共同編曲なんですよ。アレンジで沼能(友樹)さんに参加してもらって。

――Numaさんだ。Eveさんでもおなじみの。

眉村:わたしじゃ思いつかないようなアレンジをベースとかピンポイントで要求したり、やりとりをして。自分にはない扉を開けてもらっています。あ、でも「悪役」はそんなには手を加えてもらってはないかな。音色をアレンジしてもらったり。でも、次のヤツはもっといろいろやっていただくかも。いま、いろいろとやりとりしてますね。コミュニケーションをとって、わたしらしさを理解してもらっています。

――結果、たどり着きたいサウンドのイメージが明確にあるっていうことですな。

眉村:そうですね。頭の中にはあるけど、作っているときに自分が思っている音色をロジックの中から探す作業が大変で。思ったやつがピッと出たらいいのにって。なので、沼能さんのような方がいらっしゃるとやれることが広がっていくんですよ。

――なるほどっす。2021年下半期に入りましたが、今年も眉村ちあきはチャレンジしまくっているぞと。

眉村:やりたいことありすぎて……。まだ、バンドでもやってないし、サウンドプロデューサーや編曲家にアレンジをフルでお願いすることもやっていないし。もっともっと、表現の技を増やしていきたいですね。

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