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“グラミー賞に最も近い”ジャック・アントノフのソロ・プロジェクト<ブリーチャーズ>が再始動、約1万字のロング・インタビュー



Bleachersインタビュー

 ジャック・アントノフのソロ・プロジェクト<ブリーチャーズ>が4年ぶり、自身3作目となるニュー・アルバム『テイク・ザ・サッドネス・アウト・オブ・サタデー・ナイト』を世界同時リリースした。テイラー・スウィフトやセイント・ヴィンセント、ロードといったアーティストの作品をプロデュースし、“最もグラミー賞に近いソングライター/プロデューサー”と言っても過言ではないほど、近年、高評価を得た作品をいくつも手がけている彼だが、プレイヤーとしてもその才能を発揮し、ポップなサウンドにダークな内容を伝えたりと、実験的なサウンドで世界の音楽リスナーを楽しませている。

 同郷の友人であり音楽界の大先輩でもあるブルース・スプリングスティーンが参加するこのアルバムは、まさに彼の幅広い人脈と音楽的才能が功を奏す作品で、コロナ禍で疲れ切った世界に希望やリアルな実体験を届けてくれる。7月中旬にZoomで行ったインタビューで、ジャック・アントノフ本人に制作の裏側やソングライティングに必要なポイントなど、たっぷり訊いた。

――アメリカでは徐々に新型コロナ関連の規制が緩和されているようですが、秋にフル・キャパシティの観客の前で演奏することについてどのように感じていますか?

う〜ん、ナーバスになってる(笑)。感情面で、自分にどのような影響を及ぼすかわからない。ライブというのは、これまでも強烈で、エモーショナルで、神聖な場所だったけれど、それがさらに倍増するのかもしれない。想像すらできないけれど、そうなるのは間違いなさそうだね。きっとワイルドなものになるよ。

――今のところ、パンデミック後の初ライブは、地元の観客を前に行われる予定ですよね。

そう、僕が地元ニュージャージー州のアズベリー・パークで主催している【Shadow of the City】というフェスティバルで、今着ているジャケットもフェスのものだよ。


――ニュー・アルバム『テイク・ザ・サッドネス・アウト・オブ・サタデー・ナイト』の収録曲の多くは、活気があって、アップリフティングで、ライブ映えしそうですね。

バンドをスタジオに呼んで、かつてないほど全力で演奏したのはパンデミックの影響だった。当時、いつ次に演奏できるのかわからなかったし、今後演奏できるかすらもわからなかった。動揺もあったけれど、それらの感情はバンドのボルテージを上げた。その魔法のような瞬間を録音することに成功したんだ。このアルバムのサウンドをパンデミックが一新させた理由の一つで、喜びや希望のサウンドに満ちたものとなった。とてもダークな歌詞もあるけれど、常に微かな希望の光、ドアを蹴り開けてその希望を見つけようという感情があって、バンドがそれを体現してくれた。だから、本当の意味で“ライブ”で、レコーディングもほぼすべてライブで行ったんだ。

――レコーディングにあたって、事前にバンドとどのような会話をしたのですか?

今回は、バンドと事前に会話をする必要なかった。おそろく人生初だね。これまで、「こうやって演奏して! 死にものぐるいで演奏して!」とか指示してきたけど、全員何が懸かっているかわかっていた。その内なる炎が、みんなの中から溢れ出てきたんだ。

――自然と生まれた産物ということですね。

すごく自然で、同時にとても差し迫っていて、本当に人生一度の経験だった。

――これまで様々なバンドで活動してきましたが、バンドとして演奏することにこだわるのは?

理解できないエネルギーがあるんだ。同志たちと自分たちの音楽を演奏する。多くの時間を一緒に過ごし、お互いをどれぐらい理解できるか、お互いのプレイをどのように引き立てあえるか、さらなる高みを求めて全力で向かっていく。とてつもないコミュニケーションと愛の形だと思う。

――そこに観客が加わった時の化学反応が楽しみですね。

バンドと観客は、同じ思いだと思う。長年、共に行ってきた“愛する”ということが、取り上げられてしまい、その脆さが浮き彫りになった。ライブがいかに重要で、どれだけ多くの人々の人生に影響を与えてきたか今回わかったことで、芸術的な対話は新たな局面に入り、さらなる可能性が生まれてくると感じている。

――アルバムのオープニングを飾る「91」は、今作で取り上げているトピックを三部からなる物語のような編成で捉えていますね。

君が言った通りで、アルバム全体を一つの瞬間として捉えた曲を書きたかった。序曲のような感じで。母親のこと、元恋人のこと、そして未来という3つのテーマについて順に歌っている。2ヴァース目までは、別れについてのダークな内容で、自分にとっての安らぎを探す物語だ。そして3つ目のヴァースは希望について。希望や喜びを感じる理由がなく、将来を不安に感じている中でも、希望を捨てきれないというのは、とてつもない感情だ。でも僕は希望を持っている。自分でもなぜかはわからないけど。

アルバムの最後に収録されている曲「What’d I Do With All This Faith?」は、まさに希望についての曲だ。神についてじゃない。自分が持ち続けている、道しるべになってくれている、不思議でパーソナルな信仰と希望についてだ。希望というのは、自分がなぜそれを持っているかわからない時に、最も強く感じることがある。いいことが起これば、希望は伴ってくるものだ。けれど落ち込んでいるとき……今作は僕がかなりダークな場所にいた時に書かれたもので、その時、自分を見て、どうしてこんなにも希望を持っているんだろうという感情を抱いた。このアルバムを作りたかったのは、それが理由だったんだ。


――これまでに何度も地元ニュージャージー州を楽曲で取り上げていますが、同郷のブルース・スプリングスティーンを「Chinatown」に起用しようと思ったのは?

とても自然な成り行きだった。他人の悲しみを抱えることについてビッグで希望がありつつダークな曲が書きたかった。誰かと交際する中で、自分ができる最も真摯なことは、「君とただ一緒にいるだけではなく、君の悲しみも受け入れるよ」ということだと思う。ニュージャージー州は、僕にとって多くの悲しみがある場所。僕の出身地で、美しい場所ではあるけれど、同時にダークで複雑だ。アルバムのサウンドとしては、ニューヨークから橋を渡ってニュージャージーに戻ってくるという構成になっているけれど、それは自分の生まれた場所に立ち返り、将来を見つけることでもある。前進するためには、過去の出来事と真っ向から向き合わなければならないからね。

ブルースとパティ(・スキャルファ)夫妻は、僕がこの世で最も大好きな人々で、彼らからアーティスト、人間として、多大な影響を受けている。二人は、僕の人生において最も近しい人々の一部で、お互いの曲を聞いたりもする。ある時、この曲のデモを聞いてもらう機会があったんだ。二人の自宅にはスタジオがあるから、そこでみんなで曲をいじったり、歌ったりして、楽しんでいて、その時は特に何も考えていなかった。ブルースは、僕のインスピレーションであり友人でもあるから、何かを一緒にやりたいとは思わないんだ。なんというか、ことが大きすぎるし、重すぎる。

その数日後に、曲を聞き返して作業していた時、2番目のコーラスの彼の歌声が本当に美しくて、曲にハマっていることに気づいた。まさに一巡りした感じだった。音楽面において、ブルースは僕の生まれ故郷を形作ったアーティストで、子供の頃から僕が心の中で感じてきた感情には価値があると教えてくれた。そんな人が、今や自分の大切な友人となった。本当に美しいことだと思う。ブリーチャーズっぽいサウンドだけど、彼の影響も感じられる。ヘヴィーだけど、とても大好きな曲だし、うまくハマったと思う。そして何かが正しいと思った時に稀に感じるクレイジーな感情に襲われた。これをリリースしたい、自分でもこれを聞きたいっていう風に。


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様々な疑問や問題、忘れ去りたいものもある
怖いし、妙な感じもするけど、心の中の声が
それについて曲を書きたいと思わせてくれる

――同時にリリースされた「45」は、「Chinatown」とつがいになっています。

そうなんだ。「45」と「Chinatown」、「Big Life」と「Secret Life」、「How Dare You Want More」と「Stop Making This Hurt」など、アルバムには姉妹曲がいくつかある。出来事を2つの異なる視点から見てみたいという衝動に駆られていたんだ。「Chinatown」は、地元に帰還して、他人の闇を抱え込んで、自分の闇に連れ込むというロマンチックな曲だけど、「45」はそれとは全く違う視点のとてもダークで悲しい曲で、そのアイディアへの憧れを表している。「Stop Making This Hurt」は、「もういい加減乗り越えよう。痛むのを止めよう」って、やや皮肉を込めて歌っているけれど、「How Dare You Want More」では、「なぜ幸福を望むこと、幸福になりたいと認めること、幸福を手に入れようとするのはこんなにも難しいんだろう」と、人類を悲観的にみている曲だ。「Big Life」は、「あらゆることに挑戦してみたい、何もかも手に入れたい、それを一緒にやるのは君かな」といった大きな将来の計画について歌った曲で、「Secret Life」は、「ドアを閉じて、誰かと一緒に秘密の部屋で過ごしたい」という内向きな内容。そうやって恋愛関係の異なる側面を探求した。コインに裏表があるように、このアルバムでは物事の異なる視点を描きたくて、そこで曲をペアにすることにしたんだ。



――これもニュージャージー州に関連していると思うのですが、収録曲には「影」や「亡霊」という表現が頻繁に登場します。

学べることが多くあると思うんだ。みんなから注目を浴びる大きくて明るいものは見たままだ。ことわざにあるように、それがアヒルのように振舞っているのであれば、それはきっとアヒルだろう。けれど、その周りにあるものはどうだろう。例えば、みんなはニューヨークに注目するけれど、その隣にあるニュージャージーはどうだろう。笑顔の裏にはどんな感情があるんだろう。多くの場合、ソングライティングで重要なのは、中心から焦点を少しズラすことなんだ。それに気づくことで、より上手く物語を語ることが可能になる。

「影」や「亡霊」など、はっきりと正体がわからないもの……例えば、ここにあるボトルは手に持てるし、ラベルを読むこともできて、理解できるものだ。だから曲を書いても面白くないし、書きたいとは思わない。逆に完全に理解できないけれど、何らかの感情を呼び起こすものは、はるかに興味深い。ニュージャージーには、希望があって、ダークで、アメイジングで、張り詰めた不思議な文化があると感じていて、僕のソングライティングを駆り立てる。自分の人生や将来に関して、様々な疑問や問題を抱えているし、中には忘れ去りたいもの、抱え続けて再考したいものがある。それは怖いし、妙な感じもするけど、心の中の声がそれについて曲を書きたいと思わせてくれるんだ。「影」や「亡霊」が頻繁に登場するのは、ソングライティングが理解できないものや感情を理解するための方法だということに基づいていると思うね。

この影のコンセプトは至る所にある。希望について歌っていたとしても、その中にも影が存在する。物事にはたくさんのレイヤーがあるから、ソングライティングを通じて、その確信に迫っていくのが面白いんだ。感情というのは、自分が感じようと意識して生まれるものではないよね。僕は自分の中で実際に起こっていることについて書くのが好きだ。起こってほしいと思っていることではなく。「こう感じることができたら楽になるかも」と思ったりはするけれど、最終的には自分が感じていることがすべてだ。それを他人と共有できるガッツがあるかにかかっている。

――これはテイラー・スウィフトとの作業に多少インスパイアされたものなのかもしれないですが、アルバムを締めくくる「Strange Behavior」と「What’d I Do With All This Faith?」など、フォークの影響も感じられます。

終盤にかけて余計なものを取り除いていきたかった。この2曲もつがいになっていて、「Strange Behavior」は、「影」や「亡霊」を追っているけれど、そこにあるのは虚無で、何も残らないというダークな内容。「What’d I Do With All This Faith?」も同じアイディアで、なぜかわからないけれど、信じる心に満ちている。でもそれをどうしたらいいかわからないというものだ。テイラーとの作業もそうだけど、自分の周りにいる多くの人々にインスパイアされた曲なんだよ。人々が自身の脆さを認識するということを、自分に当てはめた時にどう感じるか、ということだ。

『フォークロア』が生まれた場所だったり、パンデミックの影響で、何ていうか、土の温もりや、人が実際に演奏するサウンドを感じたくなった。世代なのか、パンデミックの影響なのか不明だけど、ショッキングでスリルを感じられるものを求めていた。それが『フォークロア』や僕のアルバムであれ、ドラマーが実際に演奏するのを聞いた時、突然どんなドラム・マシーンよりもクールだと感じたし、誰かがギターを演奏した時の微妙な不規則さや、あるフィーリングを捉えようしながら演奏する様子が、これまでとは違う感じで突き刺さったんだ。そういった感覚を探して、感じることができたら、それ以上探す必要はない。まるで雷に打たれたような、素晴らしいフィーリングに出会って、「いい感じ、新しい」と感じたらそれでいいんだ。

――こういった感覚をじっくり味わう時間が与えられたというところも作品に影響を与えたようですね。

個人的には、今後も持続していくことを望んでいるよ。様々なモノを頼める便利な時代になって、外に出なくてもよくなったことによってみんなが退屈している。これは文化的にとてもいいことだ。世界のどこにいても、人々は一緒にアートを楽しんだり、体験したいということを再認識したりすることができた。それは自分の同志を見つけることにつながる。僕が取材を受けるのは、世界中の人々に愛されたいと思っているからではないく、日本を始め、世界中にいる自分の同志を見つけたいからなんだ。音楽的な会話を行えることの素晴らしさというのは、自分らしいと感じるものを作って、その作品を通じて自分の同志を見つけることにある。それが2人でも200万人でも構わない。大切なのは人数ではなく繋がりだ。僕としては、このコンセプトにみんなが再び価値を見出してくれていることを願っている。生きていく上の信念にもなり得ると思うから。

――今後のアートの状況について楽観的でいますか?

そうならざるを得ないよね。逆にシニカルになっても、さっき話したように小さな希望の声が徐々に影響力を増していく。「僕はネガティブなことばっかり言っているのに、君はなんでそこにいてくれるんだ?」って、その小さな声について思っても、次第に「なんて生きるのに素晴らしい時代なんだ!」って感じるようになるんだ。

――パンデミック前、ポップ・ミュージックはややダークなフェーズにありましたが、今後はポジティブなものに転換していくと思いますか?

どうだろう。個人的にはそうなってほしいけれど、僕は自分の世界にいて、孤立している。そういう音楽が作られているロサンゼルスではなく、主にニューヨークかニュージャージーにいるし、一人または少人数で作業しているし。自分の鎧をつけて、すべてを遮断して、無防備になって自分が感じたことを音楽に落とし込んでいるから、自分が感じていることはわかる。孤独なら孤独でいいし、周りに人がいれば、それでいい。でも希望は持っているよ。

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ビジョンを共有できれば、不可能なことはない
相手と同じ道を歩むことさえできれば
それを止められるものはない

――では、本作はブリーチャーズの現在地について、どんなことを物語っていると思いますか? 3作目ということもあり、よりパーソナルで自由な作品づくりが可能になったでしょうか?

例えば、1stアルバム(『ストレンジ・デザイア』)に収録されている「I Wanna Get Better」は、僕の人生を3つのヴァースにすべて詰め込んだような曲だ。当時は、文脈や背景が重要だと感じていて、それが好きだった。今は、物語の「影」の部分や「亡霊」についても触れられるようになった。おかげで、目の前にあることではなく、より変わった要素やフィーリングに焦点を置けるようになった。バンドとしても一体感があって、境界線をさらに広げていっていて、まさに輝かしい瞬間だよ。

――SNS上で楽曲の歌詞を頻繁に共有していますが、今作で特に気に入っている詞があれば教えてください。

たくさんあるよ。「91」の多くの歌詞はとても誇りに思っている。でも、やはり最も誇りに思っているのは、最後の曲「What’d I Do With All This Faith?」の<Take it to a crowded street and look for my kind?>から<Or cry hats off to the last Kennedys who even dare to try?>というちょっと皮肉まじりな詞。ケネディ一家は様々な悲劇を経験しているけれど、今も存続して、その忍耐力の凄さに触れている。そして<I don't know what to do with all this faith>と続く。シンプルだけど、こういった歌詞ほどインパクトがある。自分が人生において感じているすべての感情を表していると感じるんだ。


――アルバムを締めくくるのに、まさにピッタリな曲ですね。

とても興味深い場所で終わっていると思う。今作は、答えを出すのではなく、質問を投げかけるアルバムだから。その中で答えが見つかれば、それでいいけれど、生きるということの最も崇高な形は、質問をし続けることにあると思う。答えを見つけることに執着してしまうと、その美しさをすべて失ってしまうこともあるんだ。

――話は変わって、先日ロードが二酸化炭素排出量を減らす取り組みの一つとして、あなたが制作に参加しているニュー・アルバム『ソーラー・パワー』のCD盤を、CDが入っていない100%再生紙を使った“ミュージック・ボックス”としてリリースすることを発表しました。

最初にそれを教えてもらった時、これまで聞いた中で、最も素晴らしく、美しいアイディアの一つだと感じたし、将来的には主流になればいいなと思ったよ。アーティストとして環境に優しいフィジカルのプロダクトの新たな形を模索することにエキサイトしていると同時に、人々に物を所有するという体験を提供することも大切だ。「これが欲しい、自宅に置きたい、自分を定義するものだから一生懸命働いたお金で買ったモノを人々と共有したい」と感じるのは素敵なことだ。これは僕自身も感じることで、好きなアルバムやアナログ盤を購入している。ストリーミングも大好きだし、プレイリストとして聞くのもいい。でも、「このアルバムはお金をかけて買ったんだ。自宅にあって、場所もとるし、ホコリも溜まるけれど、それだけ気に入っている」と言えることも必要だと思うんだ。

――そのロードを始め、テイラー・スウィフト、ラナ・デル・レイ、セイント・ヴィンセントなどと複数のアルバムを共作しています。彼女たちにアーティストとして惹かれる理由は? 先ほど話していた、あなたの同志だからでしょうか?

そう、僕の同志で、みんな異なるけれど、作品を作る理由やその方法、重要性の部分で共通する部分がある。新しくて、スリリングで、生きていると感じるようなアイディアを追っていて、同じことを繰り返すのではなく、限界を押し広げようとしている。そういう人を見つけるのは本当に大変で、これまでに数人しか出会っていない。自分と同じようなレンズで世界を見られて、かつ一緒に音楽を作ると魔法が生まれるような人。そんな人を見つけたら、全力で追うしか選択肢はないよ。



――ソングライター/プロデューサーとして他のアーティストの作品に携わる際に、大切にしていることは?

最も重要なのは、同じビジョンを持つこと。チームの人々、それがたとえ二人であっても、ビジョンを共有できれば、不可能なことはない。そこにブレがあると、いつになっても目標にたどり着くことができない。相手と同じ道を歩むことさえできれば、それを止められるものはない。アルバムを作るというのはそういうことなんだ。遥か遠くにゴールを設定して、それに向かって少しずつ進んでいくという地道な作業なんだよ。

――ちなみにソングライティングとプロデュース、どちらの方が好きですか?

全く違う行為だから、比較するのが難しい。両方とも大好きだよ。アルバムをプロデュースするのも好きだし、自分の曲を書くのも好きだし、演奏するのも好きだし、自分の頭の中で聞こえたものを形にしていくのも好きだ。重なり合う部分が多少あるんだ。スタジオ作業は好きだけどツアーするのは嫌いな人、音楽を作るのは好きだけど生で演奏するのは嫌いな人。様々なタイプの人がいるけれど、僕はプロデュース、曲作り、演奏、ツアー全部が大好きなんだ。どれも僕が自分であること、アートを通じて認識することに欠かせない要素なんだよ。

――話を聞いていると、1日のほとんどは音楽のことを考えて過ごしているようですね。

ノー、そんなことないよ(笑)! 食べ物についてもよく考えている。あと歩くのが好きで、よく散歩もしてる。逆に、音楽は考えなくていいことなんだ。僕の中で、常に生きているものだから。音楽を作って、演奏することは、自分が生きていると感じるために不可欠なものなんだ。音楽について考える必要はないから、他のことを色々と考えているよ。

――先日全米公開されたスパークスのドキュメンタリー(原題『The Sparks Brothers』)に出演していましたが、彼らにハマった曲またはアルバムは?

スパークスは僕が最も好きなバンドの一つで、彼らを知るきっかけは『キモノ・マイ・ハウス』(1974)だったけど、後期の作品にも好きなものがたくさんある。ドキュメンタリーの中でも話しているけれど、「The Number One Song in Heaven」は最も大好きな曲の一つ。クレイジーでエモーショナルな音楽的ジャーニーで、シンプルなんだけど難解。マスターピースだとしか言えないね。


――7分近くあるのに、れっきとしたポップ・ソングだというのが素晴らしいですよね。

そう、スパークスにしかできないことで、世界中でNo.1になってもおかしくない曲だと思う。どんな時もスパークスらしさを貫いていて、そこが彼らの素晴らしいところなんだ。

――では最後にニュージャージー州にインスパイアされた夏にぴったりな1曲を教えてください。

シャロン・ヴァン・エッテンの曲だったらどれでも。僕にとって、彼女の曲はまさにニュージャージーって感じで、夏のニュージャージーを思い起こさせる。どの曲でもいい。むしろ彼女の曲を全部プレイリストに入れて、聴いてほしいね。

――機会があったら是非シャロンとコラボしてほしいです。

コラボの話はしたことないけれど、彼女の大ファンであることは間違いないよ。

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