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<インタビュー>米津玄師が考える音楽の性質とラブソングの関係性、新曲「Pale Blue」を語る
米津玄師が、ニューシングル『Pale Blue』をリリースする。
昨年8月にリリースしたアルバム『STRAY SHEEP』は、Billboard JAPANの2020年年間 総合アルバム・チャート“HOT Albums of the Year 2020”での1位をはじめ、各種年間ランキングで46冠を達成。IFPI(国際レコード産業連盟)が発表した年間グローバルランキング“IFPI Global Album All Format Chart 2020”でも日本人アーティスト最高位となる7位を記録するなど、2020年の日本の音楽シーンを代表する金字塔的な作品となった。
ニューシングルは『STRAY SHEEP』から約10か月ぶりとなる新作。TBS系金曜ドラマ『リコカツ』主題歌として書き下ろした表題曲「Pale Blue」に、日本テレビ系『news zero』テーマ曲の「ゆめうつつ」、新曲「死神」を加えた全3曲を収録。パッケージは、「パズル盤」「リボン盤」「通常盤」の3形態となっており、リボン盤のみに付属するDVDには、昨年8月に開催されたバーチャルライブ【米津玄師 2020 Event / STRAY SHEEP in FORTNITE】の模様も収録される。
新作の背景について、自身の今について、インタビューにて語ってもらった。
真っ向から向き合ったラブソング
――「Pale Blue」はどんなことを思って作り始めた曲でしょうか?
『STRAY SHEEP』というアルバムを作っている以前から、今一度、ラブソングというものを、ポップソングとして強度のある形で作りたかったんですよね。というのも、音楽って、ほかの芸術の様式に比べて、広い意味でのナルシシズムみたいなものを助長する性質があると思うんです。そもそも音楽はそういうもので、ポップソングとして一番強度があるものはラブソングだと思う。だから、ポップスを作る人間として、今一度そこに立ち返って真っ向からやってみたらどうなるんだろうということを、けっこう前から考えていて。それで、アルバムが終わったタイミングで『リコカツ』のお話をいただいて、これはいいタイミングだと思って作り始めました。
――ということは、『STRAY SHEEP』には、米津さんが考える真っ向からのラブソングは入っていなかった。
あのコメントを出したときは、10年くらいラブソングを作っていない意識でした。忘れているだけかもしれないですけど、少なくとも現時点では「ラブソングってなんだろう」みたいなことを考えながら音楽を作った記憶がなくて。ひょっとしたら、真っ向から向き合ってラブソングを作ったことは過去にないと言ってもいいかもしれない。だから、今の自分がそういうものをやるとしたらどうなるんだろうということを考えてました。
米津玄師 - Pale Blue
――そこからどういうものを書こうと考えていったんでしょうか?
『リコカツ』は「離婚から始まる恋」というコンセプトで。離婚という別れと、そこから始まる恋と、短い言葉の中に両義性がある。それが面白いなと思って。だから、これから始まる恋の歌にも、別れの歌にも聴こえるものにしたいなぁというのが、まずはありました。そこを軸に「恋愛ってなんなんだろう?」と考える時間が、ものすごく長かった。この「Pale Blue」が、今までの音楽を作ってきた人生の中で、一番大変でしたね。
――どう大変だったんですか?
この「Pale Blue」にたどり着くまでに、ボツが3回ぐらいあって。誰かにボツにされたわけでなく、自分の中でのことなんですけれど。これを作る前にもう少しテイストの違うものが何個かあったんですけど、真っ向から向き合ったラブソングじゃないなという意識があって。そこからぐちゃぐちゃやりながらこの曲ができあがったんです。さっきも言ったように、音楽にはナルシシズムやセンチメンタリズムを助長する効果がある。それと恋愛はとても結びつきが深い。そうなると、そこにちゃんと振り切ったものを作らないと、自分の中で整合性がとれない。だから、ある種下品なくらい感傷的なものを作るべきだという。それで、こういう形になりましたね。
――「ゆめうつつ」は日本テレビ『news zero』のテーマ曲として書き下ろされた曲ですが、いつぐらいにお話が来て、どんな取っ掛かりから作り始めたんでしょうか?
いつだったかな。去年の8月なんですけど、もうめちゃくちゃ昔のことのような気がします。ニュース番組の主題歌ということで、明確なストーリーがあるわけでもないし、何かのストーリーがあるとすれば、それはその日に起こった出来事や事件になる。それって、要は生活ですよね。今の日本の国全体の生活というものになる。で、言うまでもなく、去年の1年間は、新型コロナウイルスで世界中のみんなが日々の生活を見つめ直さざるを得ないタイミングだった。音楽を作る人間として、そういうものを今一度深く見つめて作るというのは非常にいい機会なんじゃないかと感じていた気がしますね。
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