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<blackboard特別企画>美的計画「ピーナッツバターシークレット」収録現場に密着&川谷絵音×サーヤ(ラランド)対談インタビュー



インタビュー

 大きな黒板を前にアーティストが“先生”となり、楽曲を“教科書”として「歌に込められたメッセージ」を視聴者に伝えるYouTubeチャンネル『blackboard』。5月22日に公開されたText.41は、川谷絵音がプロデュースするプロジェクト、美的計画が登場した。

 美的計画とは、楽曲制作を務める川谷が様々なゲスト・ボーカリストを招き、最終的に1枚のアルバムを完成させることを目標としたプロジェクト。2019年に川谷自身がSNS上でボーカリストを募集し、そこから選出されたシンガー・ソングライター、にしなを迎えた第1弾楽曲「KISSのたびギュッとグッと」を発表して以来、これまでに計5曲をリリースしてきた美的計画が今回、『blackboard』でパフォーマンスしたのは、第6弾楽曲となる「ピーナッツバターシークレット」。ボーカルを務めるのはお笑いコンビ、ラランドのサーヤだ。

 Billboard JAPANでは以前、13人組ガールズ・バンド・アイドルのザ・コインロッカーズによる『blackboard』の収録現場に密着し、その制作過程をメンバーたちのインタビューとともに記事化したが、今回も同様に現場潜入を敢行。川谷×サーヤの対談インタビューを数々の貴重な写真と併せてお届けする。

川谷絵音×サーヤ対談インタビュー



――収録の途中ですが少しお時間をいただけたので、ぜひお話を訊かせてください。サーヤさん、緊張されていますか?

サーヤ:正直『M-1グランプリ』の準決勝より緊張してます…。人前でこんなにちゃんと歌うのが初めてなので、今まで味わったことのない感じ…。

――でも、歌の収録は一発OKだったじゃないですか。

サーヤ:ドキドキでした、本当に。

川谷:いや、プロから見てもすごいというか、もうプロですよね。レコーディングのときから何回も言ってるんですけど、本人はあまり信じてなくて…。何が起こってるのか、自分ではよく分かってないという。

サーヤ:私、いまだに『水曜日のダウンタウン』だと思ってるので(笑)。いつネタバラシされるんだろうと思ってます。

――ドッキリだと思ってるんですか(笑)。

川谷:なんで僕らが仕掛け人なんですか(笑)。

サーヤ:それぐらい実感が湧いてないんです。

――レコーディングも順調でしたか。

川谷:とても順調でした。レコーディングもこんな感じのテンション感でした。みんなが「すごい」と言ってるのに、本人は実感が湧いてないような。

サーヤ:それも『水ダウ』だと思ってます。わりと天井とか確認したんですけどね、カメラついてるんじゃないかって。



本人も語る通り、普段の仕事現場とはまったく違う雰囲気に若干の緊張を見せつつも、一度歌い始めれば堂々とした佇まいに。『blackboard』のトレードマークである、歌詞とグラフィック・デザインが施された黒板を背負い、川谷も太鼓判を押す歌唱力と表現力を如何なく発揮する。ボーカルの収録はなんと一発OKで終了した。


――(笑)。そもそもサーヤさんがボーカルを務めることになった経緯は?

川谷:ラランドが『M-1』で話題になったときも、自分のTwitterで普通に「生で見たい」と呟いたりしていたぐらい、ずっと注目はしていて。そのときは歌える人だなんて知らなかったですけど、TVで『カラオケバトル』に出たりしてるのを見て、めちゃくちゃ声がいいなと。表現力も高いから、オリジナルの曲を歌ってもすごいんじゃないかと思ったんですよね。これまではミュージシャンの人たちとご一緒してきましたけど、そうじゃないほうが逆に面白いんじゃないかとも思いましたし。

――ギャップもありますもんね。

川谷:あと、サーヤさんが自分たちのライブで、僕に曲を作ってほしいみたいなことを言っているのを、スポーツ紙かなんかで見たんです(笑)。

サーヤ:そうなんですよね。トークライブみたいなものがあったときに「絵音さんに書いてほしいです」と言ったら、ちょうどそこがメディアに取り上げられて。なのでSNSに改めて「絵音さんお願いします」とツイートしたら、グーの絵文字が3つ返ってきて「これは…!」と思いました。

川谷:そういう流れもあり…って感じですね。

――何かしらの親交があったわけでもなく?

川谷:あ、でも、さらば青春の光の森田さん経由で一度、ご飯を一緒に食べに行きました。そんなに喋らなかったけど。森田さんが一方的にずっと喋っていて (笑)。



サーヤ(Vo)と休日課長(Ba)の二人でパフォーマンス。現場には川谷も同席し、収録を見守った。




――サーヤさんはもともと川谷さんが作る音楽をよく聴いていたんですか?

サーヤ:聴いてましたし、この美的計画が始まったときも「わぁ、いいな」ってずっと追っていたんですよ。けっこう色んなところで「(美的計画で)いつか歌いたい」と言ったりしていて。なんか言ってみたら届かないかなと思って、さっきのトークライブの発言に繋がるんです(笑)。やっぱり言霊ってすごいなと思いますね。言ったもん勝ちだなって。

――サーやさん自身にはどんなアーティスト、曲が音楽のルーツにあるんですか?

サーヤ:小さい頃は親がずっと洋楽を聴いていて、私もなんとなくそれを聴いていたり。マイケル・ジャクソンとかビヨンセとかブリトニー・スピアーズとか。あと、学生時代はヒップホップでした。もちろん今もよく聴きますけど。

――ヒップホップだとどういうアーティストが?

サーヤ:JJJとか、Fla$hBackSの人たちは一通り聴いていて。あとはSUMMIT、CreativeDrugStoreの人たちとか。あまりバトル系ではなかったですね。

――王道の洋楽で言えば、ラランドのYouTubeチャンネルで「恋人たちのクリスマス」も歌ってましたよね。

サーヤ:さらばさんの著作権フリー動画を使ったやつですね(笑)。やだな、さらばさんがインタビューですごく出てくるの!「俺が繋いだ!」みたいに思われちゃう。

川谷:また森田さんからメール来るな。この記事も引用RTしますよ、きっと。「Billboardに出た」みたいな。絶対に出ないような芸風なのに (笑) 。

――(笑)。川谷さんから見たボーカリストとしてのサーヤさんはどうですか?

川谷:すごく発声がしっかりしていて。こういうふうに力を抜いて歌える人ってなかなかいないんですよ。僕もほとんど見たことがないです、日本人でここまでR&B的な歌唱がちゃんとできる人。ヒップホップを聴いてると言ってましたけど、やっぱりリズム感もいいんですよね。この「ピーナッツバターシークレット」も難しいリズムなんですけど、ばしばし歌えていたし。打ち合わせでラップをよく聴くと話していたので、こういう感じにしたんですけど。

――では、曲が先にあったのではなく、サーヤさんが歌うことを想定して書いていったんですね。

川谷:そうです。『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』っていう映画があって、それをたまたま見たあとに打ち合わせしたんですけど、なんとなくその映画とサーヤさんのイメージが重なって。なので、けっこうすらすら書けましたね。

サーヤ:一晩で送ってきましたもんね。ちょっとドン引きしました…。「才能ありすぎておかしくなっちゃってるんだ、この人」って。忙しいはずなのに。

川谷:施設を飛び出して、悪い友達と出会って……っていう青春群像劇みたいな映画なんですけど、ラランドも会社を作って、自分たちで全部やったりしていたので。今って個人を尊重する時代ではありますけど、もっと自由にやっていいはずなのになって思うし、こうやって活躍してる人がいると勇気をもらえるというか。そういうイメージが重なったんですよね。



楽曲のパフォーマンスを終え、黒板を消していくシーンも『blackboard』ではお決まりの一幕。この日、黒板消しと並んで置かれていたピーナッツバターのビンは、今回の収録のために特別に用意されたものだそう。


――サーヤさんは楽曲を聴いたとき、どんな第一印象を持ちましたか?

サーヤ:まずデータが速攻で来た時点で「えぇ…!?」と思っちゃって。そのときからドッキリだと思っていたので、いざデータを開いたら変な曲で、私がどんな反応をするのか、果たして歌うのか、みたいな検証だと思ってたんですよ。そんなふうに疑ってたら、なんかすごくいい曲で、「あれ?(ドッキリが)まだ続くのかな」っていう思いもあったりして(笑)。でも、そこから毎日聴いて、どういうふうに歌おうかって考える時間はすごく楽しかったです。

――川谷さんはレコーディングのときにどんなディレクションを?

川谷:いや、もうほとんどなかったですよ。「そこはだんだん強くしてください、そこは弱くしてください」みたいな、細かいところを調整したりはしましたけど、最初からほぼ完成してました。どんな環境で育ったらそうなるんだろうって。お母さんが歌上手いんだろうなと思いました。

サーヤ:たしかに、母はよく歌ってましたね。影響もちょっとはあるのかなって。


サーヤ単独インタビュー

――収録も順調に進み、本日の工程はすべて終了しました。お疲れ様です。まだ実感は湧いてないですか?(笑)。

サーヤ:まだ湧いてないですけど、すごく楽しかったです。色んな初めての体験があったので。今までカバー曲をネットに上げたりはしてましたけど、オリジナルの曲を歌えるのって気持ちいですね。『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の話はさっき初めて聞いたので驚きました。

――今後もどんどん音楽を発信していきたいと思っている?

サーヤ:そうですね。ゆくゆくは音楽も演技もアートも色々と挑戦してみたいとは思ってるんですけど、実際に手を出す順番だけは気をつけたくて。まずは『M-1』の優勝だったり、そういう当面の目標をクリアしていきたいなと思ってます。ただ、もともと歌は大好きだし、いずれお仕事としてもやってみたいなとは思ってたので、今日はその第一歩って感じでした。



収録した映像をチェックする3人。


――『blackboard』はアーティストが“先生”となり、楽曲を“教科書”として「歌に込められたメッセージ」を視聴者に伝えるYouTubeチャンネルですが、サーヤさんが今回の楽曲を通して伝えたいことは何でしょうか?

サーヤ:この曲のなかで個人的に刺さった歌詞が<そんな私が壊れて見えるらしい/それはそれでありがたい/自由になってずる休み/走り出したら止まらない>のところなんですけど、これはずっと自分が思っていたことでもあるし、私の性格的にもぴったりな表現だなって思いました。お笑い芸人をやりつつ、自分たちで会社もやったりしていると、「スケジュールとかお金とかどうなってるの?」って言われたりするんですけど、そういう反響があること自体、すごくいいことだなと思っていて。そういう実体験も重なって、さっきの歌詞もストンと腑に落ちた感じがしました。自分が周りの目をいい意味で気にしてこなかったので、みんなもっと自由にやるべきだと思いますし、この曲からもそういうことを感じてほしいです。

――規定路線を歩むだけが人生ではないぞ、と。

サーヤ:普段から受験生や就活生の人たちからDMがすごく来るんですよ。「どうしたらいいですか? どういう道に進むべきですか?」って。でも、そんなに気にしなくていいのになって思います。私も就活のとき、周りがたくさんエントリーシートを出している中、全然面接を受けに行かなかったし、会社員と芸人をどっちもやろうと決めたりとか、周りとまったく違う選択をしてきましたけど、今はわりと形になってるので。「ずる休み」という単語もすごく好きですね。日本人は「働け!」とか「勉強しろ!」みたいなモードになりがちですけど、賢くずるく休むっていう気の抜き方は、今の時代では大事なことだなって思います。

――とはいえ色んなことが軌道に乗る前、苦しい時期や葛藤する時期もあったのでは?

サーヤ:当時はめちゃくちゃ不安でした。自分たちで会社を立ち上げたときも「なんで事務所に入らないの?」とか「あぁ、趣味ね」みたいなことを言われ続けていたので。自分のやってることが“おかしいこと”として見られていた頃はけっこうキツかったですね。それこそ『M-1』で結果を残すまでは風当たりが強かった気がします。

――そういうときに自我やモチベーションを保つためにはどんなものが必要なんでしょう?

サーヤ:自分としてはそれが間違ったことだとはどうしても思えなくて、絶対にこのスタイルでいいのになって妙に自信があったんです。そしたら時代が少しずつ変わってきて、個人で自由にやるスタイルの尊重みたいな空気にガラッと変わったというか。その節目を明らかに感じましたね。こんなに周りの意見が変わるんだってめちゃくちゃ実感しました。理解しようとしてくれる人が増えたのは本当にありがたいですね。同期の芸人も応援してくれてるし。

――では、サーヤさん自身が“教科書”になったと思う音楽があれば教えてください。

サーヤ:清竜人さんですかね。音楽性もどんどん変わるし、アイドルをプロデュースしたり、まったく枠にとらわれずに活動しているじゃないですか。色んな才能を持っている人は全部発揮していいのに、なぜか選択肢を絞ったり、イメージにとらわれたりする人が多い中で、清竜人さんは全然そんなことなくてカッコイイなと思いました。あと、音楽で言えばAwichがめっちゃ好きで。ライブの出囃子にしていたり、大きいお仕事の前には気合を入れる意味でも聴いてます。最近はZoomgalsとかも好きです。私、お笑い芸人よりラッパーの人と飲むことのほうが多くて、そういう人たちのコミュニティのあたたかさとかセンスみたいなものを感じると、「うわ、いいな」っていい刺激をもらえますね。

――最後にリスナーにメッセージを。

サーヤ:リスナーにメッセージ……ふふふ(笑)。なんか芸人なのにとかアーティストでもないのにとか、色んな感情を抱く人もいるだろうし、それを咎める気持ちもまったくないんですけど、何をやってもいいという権利はみんなにあるはずだし、音楽が好きな一人の人間としても挑戦してみたかったことなので、肩の力を抜いて楽しんで聴いてほしいなと思います。なんか…分析とかしなくていいです(笑)。フィールしてほしいです。まぁ、曲を書いたのは絵音さんなんですけどね(笑)。



美的計画 feat.CLR 「ピーナッツバターシークレット (blackboard version)

Text&Interview by Takuto Ueda
Photo by Yuma Totsuka

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