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<コラム>アニソン界から羽ばたく次世代ディーヴァ、ReoNaの歌声が起こす“美しい錯覚”



コラム

天性の歌声を持つシンガー

 歌は不思議だ。

 よく「歌も楽器の一種」と言われるが、ここまで技術以外の要素が魅力につながる楽器は他にないだろう。もちろん歌にとっても技術は重要な要素だ。ピッチの正確さ、リズム感といった基本パラメーターや、ビブラートやファルセットなどのニュアンスを操るテクニックは、トレーニングを積むことで向上させたり身につけたりできる。しかし、声質を含む歌声そのものの魅力は、先天性と後天性が複雑に混じり合って生まれる、まさしく“ギフト”と呼ぶべき奇跡的な才能である。

 今、筆者がもっともそんな“歌声”の魅力を感じる日本のボーカリストが、ReoNaだ。彼女は先日、TBS『news23』内コーナー「news23 MUSIC」のアニソン特集で「YouTubeで1490万再生を誇る人気アーティスト」としてピックアップされ、生出演でスタジオライブを披露。『鬼滅の刃』現象によりお茶の間レベルで浸透したLiSAに続くかのように、アニソンの枠を超えた注目を集めようとしている。



ReoNa 『forget-me-not』-Music Video YouTube EDIT ver.-


 基本的にアニソン・シンガーの人気は、担当したアニメの人気と連動すると考えていい。ReoNaも人気アニメ・シリーズ『ソードアート・オンライン』の主題歌や挿入曲を担当したことで、その知名度を広げたシンガーである。しかし、他にも人気作品は多数存在し、数多のアニソン・シンガーが日々楽曲を発表している。なぜReoNaがここまで注目を集め、YouTubeで膨大な再生数を記録しているのか。

 やはり、その答えの大半は、彼女の歌声の魅力にあるのではないかと思う。先述の『news23』出演時、ReoNaのMCを聞いたアナウンサーが「番組の空気が変わる」旨の発言をしたように、彼女の発声は囁くような吐息混じりで非常に独特である。そして歌声では、そんな囁きに始まり、息も絶え絶えに苦しみにもがくような低域の発声から、感情に訴えかけるロング・トーン、赤ん坊の泣き声のような唸りまで、1曲のうちに虹のように複雑な表情を見せる。それはまるで次に何をしでかすのか分からない人物に惹かれるような感覚。あるいは躁鬱の病に自らのコントロール権を握られてしまうような、そんな甘く危険なフィーリングだ。



ReoNa - ANIMA / THE FIRST TAKE


 けれどもReoNaの表現とその楽曲は、決して躁鬱誘導するような負の表現ではない。“絶望系アニソンシンガー”という彼女が標榜する肩書きには、当初アレルギー反応のように身構えずにいられなかったが、その楽曲や彼女の発言に耳を傾ければ、そこには誤解があったことがすぐに分かった(そもそも誤解されることは前提とした言葉だろう)。そう、「絶望を抱え、絶望を歌うアニソンシンガー」ではなく、「聴き手の絶望にすら寄り添うアニソンシンガー」ということなのだ。


無意識の痛みにも美しい“錯覚”を

 絶望。……あまりに極端な言葉だ。しかし、ReoNaが寄り添う絶望とは、アニメの中で描かれるようなエクストリームなものに留まらない、我々の生きるこの現実世界にありふれた絶望なのではないか。「10代の少年少女ならともかく、絶望なんてこの世界にはそうそう溢れているわけがない」。もしかしたら、あなたはそう思うかもしれない。しかし、それは我々の心が防壁を張って、そう感じないようにしているだけではないだろうか? 気がついていないだけで、毎日我々の生活の中には、無数の希望が生まれては、小さな泡のように儚く弾けて消えていっているのではないだろうか? 一見すると、この国は紛争とは無縁で、難民になることなく毎夜安全な部屋で眠りにつくことができている人がほとんどかもしれない。だが、我々は毎日のように押し寄せるニュースやSNSの投稿を通して、身近な人物、著名人、どこの誰かも分からない誰かとの価値観の相違や断絶を数え切れないほど痛感している。それと同時に、救うことのできない誰かの数や、届くことのない憧れの膨大さに、立ち尽くしている。そんな微細な絶望の数々に、我々は無意識に傷ついているのではないだろうか?



ReoNa 『怪物の詩』-Music Video YouTube EDIT ver.-


 以前、ReoNaのライブ映像を観た人がその囁くようなMCに対して「そうですか……」とコメントしているのを見て、思わず笑ってしまったことがある。しかし、その人はそれだけReoNaの声に引き込まれ、彼女にシンクロしたのだろう。今では、そうしたリアクションを誘発することこそが、彼女の歌声の持つ最大の魅力なのではないかと思う。実際にReoNaの楽曲を聴いていると、応援されるのとも違う、発破をかけられるのとも違う、励まされるのともまた違う感覚を覚える。その息も絶え絶えな歌声に、思わずこちらも息を潜めて同調してしまうのだ。一方的に聴かされているのとは違う、参加している、一緒に歌っているような感覚に近いのかもしれない。そしてReoNaはそのまま楽曲を見事に歌い切り、我々リスナーの気持ちはさっきよりも少し軽くなる(気がする)のだ。それは優れたポップ・ミュージックのアーティストだけが可能にする、美しい“錯覚”だ。そしてその錯覚は、やがて現実を変える力になるのだ。



ReoNa 「ReoNa Online Live "UNDER-WORLD"」2020.12.8 for J-LODlive


 さて、そんなReoNaが5月12日にリリースしたニュー・シングル「ないない」は、ポスト・トラップ感覚を取り入れたダンス・ビートにゴス風味のメロディーを融合させた、ReoNaのディスコグラフィーにはなかった新機軸だ。当然のように連想するのはビリー・アイリッシュだが、なるほどエクストリームなJ-ROCKサウンドやアコースティックなバラードから遠ざかると彼女の歌声の印象はこうも変わるのか、と驚かされた。アニソンはどうしてもJ-ROCKのボカロ解釈のような楽曲が多くなりがちだが、ReoNaチームはこれまでもその流行に目配せしつつも普遍性の高い楽曲を作り続けてきた。その方向性に異論はないが、彼女の歌声の新たな一面を窺うためにも、今後もこうした新たな路線にも引き続き期待したい。



ReoNa 『ないない』-Music Video-


Text by 照沼健太

ReoNa「ないない」

ないない

2021/05/12 RELEASE
VVCL-1847 ¥ 1,320(税込)

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Disc01
  1. 01.ないない
  2. 02.まっさら
  3. 03.生きてるだけでえらいよ
  4. 04.ないない -Instrumental-

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