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<対談インタビュー>Who-ya Extended×Cö shu Nie×『呪術廻戦』監督が語る、音楽とアニメで描いた“キャラクターの魅力”



インタビュー

 『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)で連載中の漫画『呪術廻戦』(著・芥見下々)が大きな支持を得ている。本作は呪術師たちと呪霊の闘いを描いた物語で、2020年10月にはアニメ放送がスタート、3月に第2クールの最終話を迎えたばかりだ。その第2クールでOPテーマ「VIVID VICE」を手掛けたのは、2019年にTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の主題歌「Q-vism」でメジャー・デビューしたクリエーターズ・ユニット、Who-ya Extended。そして同じく第2クールEDテーマは、大阪発の3ピース・バンドで、『東京喰種トーキョーグール:re』や『約束のネバーランド』などアニメ・タイアップを数多く務めたCö shu Nieの「give it back」が起用された。

 『呪術廻戦』の広がりで特筆すべきは、そのテーマソングもヒットしているという点。2021年4月30日現在、「VIVID VICE」はBillboard JAPANの新人チャート“Heatseekers Songs”で13週連続のトップ10入り、「give it back」もミュージック・ビデオの再生回数が500万回近くに及んでいる。

 Billboard JAPANでは今回、テーマソングを務めるWho-ya ExtendedとCö shu Nie、そしてアニメの監督を務めた朴 性厚の3者による対談インタビューが実現。アニメ制作における音楽の役割、それぞれの楽曲に込められた想い、それぞれがクリエーターとして掲げる矜持など、たっぷりと語ってもらった。

キャラクターの人間臭さ

――『呪術廻戦』はアニメ自体がヒットしていると同時に、その音楽も大きな人気を得ています。監督はテーマソングに関してどういったビジョンを描いていたのでしょうか?

朴監督:第2クールは第1クールとは違うテイストにしたいなと思いつつ、OPテーマは京都姉妹校交流会編をイメージして疾走感のある曲、EDテーマは起首雷同編のエピソードに合わせてバラードにしたいと思っていました。作品を1本で考えたときに、OPテーマとEDテーマはインとアウトの部分なので、ある程度の具体的なイメージを持ったうえで打ち合わせをしていきました。

――Who-yaさんはオファーを受けたとき、どんな心境だったのでしょう?

Who-ya:『呪術廻戦』はもともと原作を読んでいたので、素直に嬉しかったです。それと同時に、オファーをいただいた時点で第1クールはすでに放送されていて、世の中が『呪術廻戦』の色に染まろうとしていたときでもあったので、「すごいものを任されたな」という若干の物怖じもありました(笑)。ただ、担当させていただけること自体には迷いもなく、二つ返事で「やりたいです」と引き受けさせていただきました。

――Cö shu Nieさんはいかがでしょう?

松本駿介:僕らはまずデモを提出できる機会をいただいて、中村が書いてくれたたくさんの曲をお渡ししたんですけど、Who-yaさんと同じように原作が大好きだったので、絶対に自分たちが担当したいという思いが強かったです。

藤田亮介:僕らも決まったときは素直に嬉しかったです。音作りをしていたときから「これが『呪術廻戦』の世界の中に溶け込むんだ」と思ったらゾクゾクして、興奮して寝れない日もありましたね。

――では、それぞれの楽曲について聞かせてください。『呪術廻戦』の世界観からインスパイアされたポイントは?

Who-ya:OPテーマに関しては、制作サイドから無骨なロックサウンドというリクエストがありつつ、作品からのインスピレーションで言えば、第2クールって第1クール以上にたくさんの魅力的なキャラクターたちが出てきて、僕自身も彼らの葛藤とか後悔とか、そういう人間臭さを魅力として感じていた部分だったので、それを楽曲でも表したいなと思っていました。



TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットOPムービー/第2クールOPテーマ:Who-ya Extended「VIVID VICE」


――それは原作を読んでいた頃から感じていた魅力ですか?

Who-ya:そうですね。一人のファンとしても感じていました。僕も虎杖たち呪術高専生と近い世代ではあるので、自分を投影させていたというか、彼らが困難や別れを乗り越えて成長していく姿にすごく惹かれていました。

朴監督:キャラクターの人間臭さを感じさせるロックというのは、自分としても一番『呪術廻戦』らしいサウンドだなと感じていたので、同じような解釈をしていただけて「素晴らしい」と言うしかなかったです。僕も原作ファンの一人でしたし、それぞれのアーティストさんが燃えてくださっていたので、監督としても気合が入りました。

――OPテーマの映像で言えば、やはり最後のギターをかき鳴らす瞬間が印象的でした。ストーリーとの繋がりもあって。

松本駿介:あそこ、めっちゃイイですよね!

朴監督:あれは実際にギターを弾く映像をいただいて、コードを押さえる指まで細かく再現したんです。

――EDテーマ「give it back」の作詞作曲は中村さんですが、『呪術廻戦』のどんな部分を楽曲に表現しようと思いましたか?

中村未来:それぞれのキャラクターがすごくリアルに描かれていて、現代に生きる私たちにも親和性のある人間性を持っているなと感じたので、そこから生まれる様々なドラマをいかにして曲として集約するか、みたいなことを考えて作りました。



TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットEDムービー/第2クールEDテーマ:Cö shu Nie「give it back」


音楽は作品の生命力

――メンバーのお二人は中村さんのデモを最初に聴いたとき、どんな第一印象を受けましたか?

藤田亮介:個人的にすごく好きな曲だなと思いました。そこから歌詞の感情を読み取って、なおかつ原作を読んで感じた絆や前向きな温かい気持ちを表現したいなと思って、ドラムの細かいアレンジを詰めていきましたね。

松本駿介:起首雷同編のイメージというのは僕らも聞いていたので、それにぴったり合うなとも思いましたし、こういうシーンで流れたら堪らないだろうなと想像したりして、ワクワクしていました。最終話では、フルで流していただけたのは本当に嬉しかったです。

朴監督:EDテーマって毎回のエピソードを閉じる役割ですけど、最終話は1~24話までを閉じるという意味でも、フルで流したいなと思っていました。たしかアフレコ現場でデモを聴かせていただいたんですけど、何曲かある中ですぐに「この曲がいいんじゃないですか」と即決した気がします。第1クールEDテーマの「LOST IN PARADISE feat. AKLO」がとても反響が良くて、映像も含めて第2クールはどんな方向性がいいかと悩んでいたんですよね、実は。でも、この「give it back」のデモを聴いて一目惚れして、そこから映像のイメージが沸いてきたんです。

――中村さんは映像がついたEDテーマをご覧になっていかがでしたか?

中村未来:一つのショートフィルムのような仕上がりで、曲に新しい解釈が生まれたというか、新しい世界に曲を連れていってもらえたような気持ちでした。

松本駿介:しかも監督には、シングルのアニメ盤のジャケットまで描いていただけて。ありがとうございました。本当に感動しました。

朴監督:塗りはそんなに得意じゃないんですけど、自分の中で「この曲はこういう色だな」というのがあったので、自分で塗らせてくださいとお話しさせていただきました。

――「VIVID VICE」の期間生産限定盤のジャケットも監督が手掛けたんですよね?

Who-ya:あのジャケットで描かれている構図って、第2クールの14話で実際に出てくるシーンなんですよ。あの場面は虎杖が復活して、いよいよ京都姉妹校交流会編が本格的にスタートするという、そのワクワクするような期待感が込められているなと感じたので、それをジャケットでも表現していただけたことは、ものすごく嬉しかったです。

――制作のスケジュールもあるでしょうし、監督が直々に描かれるというのは、あまりないことですよね?

朴監督:僕としては良い曲をもらったので、少しでも恩返しできないかなという気持ちがありました。

――監督のお話を聞いていて、アニメ作品におけるテーマソングの存在をとても重視しているというか、担当されるアーティストと対等なクリエーターとして向き合っている姿勢が素晴らしいなと感じました。

朴監督:これはアニメだけの話ではなく、例えば実写の映画でもそうだと思うのですが、音楽は作品の生命力なので、フィルム作りするうえではすごく大事なものだと思っているんです。劇伴についても音楽プロデューサーと話し合っていく中で、「こういう曲でこういうことが表現したいんです」とけっこう具体的に提示させていただきました。

――劇伴を手掛けたのは堤博明さん、照井順政さん、桶狭間ありささんという強力な布陣ですし、最終話ではcoldrainのMasatoさんがVocalを担当している挿入歌「REMEMBER」も話題となりました。

朴監督:特に24話の音楽については強い希望がありました。まさか本当にMasatoさんに歌っていただけるとは思っていませんでしたが。これも彼のシャウトに合わせて映像を作ったりとか、声優さんのお芝居も含めて、すべてがマッチするような表現をやりたかったんです。逆に言えば、やっぱり音楽がないと、そういう相乗効果は生まれないんですよね。



TVアニメ『呪術廻戦』24話挿入歌「REMEMBER」リリックビデオ(セリフ・SE無しアニメ映像)


――では、それぞれのテーマソングでチャレンジングだった要素についても聞かせてください。

Who-ya:僕らはデビューして1年3か月くらいなんですけど、これまではデジタル・サウンドが特徴的な曲が多かったんです。でも、この「VIVID VICE」では先ほどもお話ししたように人間臭さを表現したかったので、それを言葉という直接的な表現だけでなく、サウンド面でもイメージさせられるようにしたくて。なので今回はデジタル・サウンドを使わず、今までと比べるとストレートなロック・サウンドに仕上がったと思います。

――「give it back」についてはいかがですか?

中村未来:バラードでのタイアップは初めてだったし、Cö shu Nieって常に変化していくバンドなので、今回も移り変わる機会になったというか、ここからまた新しいCö shu Nieが始まるという感覚はありましたね。今までは個々の楽器がかっこいい音をぶつけ合う、みたいな感覚でやっていたんですけど、「give it back」は歌メロをしっかり聴かせることに集中したのと、場面の切り替えを意識して、全体で演出を作っていくことを考えた楽曲でした。

松本駿介:その中でもいかに自分らしい生々しいニュアンスを出せるか、というのも挑戦になりました。

藤田亮介:探求のきっかけにもなりましたね。一つひとつの音を重視しつつ、やっぱりまずは歌に合うドラムについて考えていきました。僕、作品では禪院真希の大ファンなんですけど、ドラムの温かくも強い音を作っていくうえで、彼女のことをイメージしながら叩いていた部分もあったり(笑)。


クリエーターが作りやすい環境

――なるほど。ちなみに他の皆さんもお気に入りのキャラクターがいるのでしょうか?

Who-ya:僕はパンダ先輩とナナミン(七海建人)が大好きで。パンダ先輩は呪骸で、呪術高専生の中でも異質な存在だし、「人間気持ち悪いじゃん」とか言ったりしているけど、実は誰よりも仲間のことを想っていると思うんですよね。ナナミンも冷めているように見えて、虎杖たちをとても強く想っているじゃないですか。そういう温かさが共通しているなと感じます。

中村未来:私はパンダ先輩と東堂先輩が好きなんですけど、今回の「give it back」を書くうえで起首雷同編のことを考える時間が多かったのもあって、伏黒恵にめちゃくちゃ感情移入しちゃって。周りを大事に思っているのに、自分のことは大事にしきれない、自己犠牲の心に惹かれてしまうんですよね。

松本駿介:アニメを見て、どんどん色んなキャラクターが好きになりました。声がハマっているからですかね。夏油傑なんてアニメが始まる前から勝手に「この人しかいない」と思っていた方だったので大歓喜でした。

――監督はいかがですか?

朴監督:最初はナナミンが好きで、第2クールに入ってからは東堂が好きになりました。ただ、起首雷同編では自分で絵コンテを書いたりしていたので、呪胎九相図の三兄弟にも感情移入していました。

松本駿介:特に最終話はアニメで見ると、より破壊力が増しました。

――正義ってなんなんだろうと考えさせられました。

朴監督:そういうのは意識して描きました。悠仁も「俺が殺した命の中に涙はあったんだなって…」というセリフを言っていましたけど、彼の「“正しい死”ってなんだろう」という葛藤に対して、ほんの少しだけ答えが出た瞬間なんじゃないかなと思います。

――こうして皆さんが揃う機会もあまりないと思うので、お互いに聞いてみたいことがあればぜひ。

Who-ya:監督とCö shu Nieさんにお聞きしたいんですけど、普段の日常でどんな瞬間にインスピレーションを受けますか?

朴監督:自分はアニメーターでもあるんですけど、後輩にはよく「机の上でずっと絵を描いているだけじゃダメだよ」と言っています。例えば外に出て風を感じたり、美術館に行って色んな作品に触れたり、一つのことに集中するのではなく、周りの環境からもインスパイアされるべきです。僕はたまに音楽を聴きながらバスに乗るんですけど、そこから見える窓の景色って映画のフレームなんですよね。アニメーションの用語で“レイアウト”というのがあるんですけど、それは絵だけではなく、キャラクターの動きとか配置とか、全体のイメージを共有するための設計図みたいなもので、その中でどういう環境音が入るか、どういう音楽が入れば感情を上手く表現できるか、そういうことまで考えたほうがいいと思っています。

中村未来:私も常々、世の中のすべてのことから影響を受けると言っていて。一つの大きな事件から得るものも当然あるんですけど、監督が仰ったように風の感じ方だったり、些細なことで積み上がっていくインプットもあるなと思っています。最近は能動的に色んなものに触れて、刺激を得るようにしていますね。

――アーティストは作品に没入するだけではなく、外の世界にも視線を向けるべきなんですね。

中村未来:それはそれでいいと思うんですよ。音楽、特にパンクやロックなど衝動をぶつけるという側面もあるので、狭い世界だからこそ作れるものもあると思いますし、そういう音楽も歪で美しかったりする。でも今の時代、過去のクリエーターたちが積み重ねてきたものに触れられる機会がたくさんあるじゃないですか。そういう刺激や知識を得て、その先に進めるように音楽と向き合っているのが、今の私のモードなんです。

Who-ya:ありがとうございます。僕も散歩が好きで、何も予定がない日は目的もなく家の近くの川沿いを歩いたりしているんですけど、行き詰っているときはそういう何気ない瞬間に閃いたりすることが多いですね。

――Cö shu Nieさん側から聞いてみたいことはありますか?

松本駿介:制作において作りやすい環境について聞いてみたいです。自分は曲を作るわけじゃないので、0から1を生み出す人がやりやすい環境とか、周りにいてくれたら嬉しい人とか、そういうのが気になります。

朴監督:アニメは一人で作るものではなく、チーム戦なんですよ。その中で、任された役割をそのままやるのではなく、しっかりと「自分はこう思います」と伝えてくれる人のほうが、一緒にやっていて勉強になるし楽しいです。それがまさに『呪術廻戦』の現場で、そういう自分の色が強い演出家さんやアニメーターさんが多かったですね。

Who-ya:僕は、自分と違うジャンルの人が集まっているほうが面白いものができるんじゃないかなと思いますね。何かを作るときってどうしてもそれに集中しすぎちゃうので、他の人が見たらすぐに気づけることに気づけなかったりするんですよ。なので例えば、作った曲をまったく音楽をやっていない人に聴いてもらったり。なるべく多角的に見たいんですよね。それはWho-ya Extendedがクリエーターズ・ユニットという形態でやっている理由の一つでもあります。

松本駿介:ありがとうございます。チームとしての意味ってそこですよね! 揺るがぬ自分の芯を持って、中村が生み出すCö shu Nieの音楽とこれからも向き合っていこうと思いました。

――では最後に、朴監督から読者にメッセージをいただければ幸いです。

朴監督:Who-ya ExtendedさんとCö shu Nieさんには素晴らしい曲を書いていただいて、本当に感謝の言葉しかないです。『呪術廻戦』はこれからも続くので、視聴者の皆さんには「今後も応援、よろしくお願いします」とお伝えしたいです。



Who-ya Extended 「VIVID VICE」 MUSIC VIDEO TVアニメ『呪術廻戦』OPテーマ)



Cö shu Nie – give it back (Official Video) / TVアニメ『呪術廻戦』第2クール エンディング主題歌


Interview by Takuto Ueda

堤博明・照井順政・桶狭間ありさ Annette Philip Chica 三浦詩音 Masato Paranom Aztech Kasper「TVアニメ 呪術廻戦 ORIGINAL SOUNDTRACK」

TVアニメ 呪術廻戦 ORIGINAL SOUNDTRACK

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