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SOIL&“PIMP”SESSIONS社長インタビュー 【Love Supreme Jazz Festival】日本初開催に向けて
今から8年前にイギリスでスタートし、現在3万人×3日間の動員を誇るヨーロッパ最大規模の野外ジャズフェスティバルへと成長した【Love Supreme Jazz Festival】が、5月15日(土)、16日(日)に埼玉・秩父ミューズパークで開催される。ジャズはもちろん、ソウルやファンク、R&Bそしてヒップホップなどブラック・ミュージックの文脈に沿った様々なアクトが毎回登場する本フェスには、これまでローリン・ヒルやチック・コリア、ナイル・ロジャース、エルヴィス・コステロなどが出演してきた。今年が第一回となる日本版【Love Supreme Jazz Festival】も、ヘッドライナーを務めるDREAMS COME TRUEとSOIL&“PIMP”SESSIONSを筆頭に、黒田卓也 aTak BandやVaundy、WONKなど、順当と意外が混じり合ったユニークなラインナップになっている。そこで今回、ヘッドライナーを務めるSOIL&“PIMP”SESSIONSの社長と、日本版【Love Supreme Jazz Festival】の実行委員の2人に、本格ローンチとなる今年開催に向けての意気込みなどを伺った。
Interview & Text:黒田隆憲 l Photo:Yuma Totsuka
ーーまずは、日本で【Love Supreme Jazz Festival】が開催されることになった経緯を教えてください。
実行委員:本国イギリスで2013年にスタートした【Love Supreme Jazz Festival】は、初開催から5年の2018年以降には毎年ソールドアウト、現在は3日間で約9万人の動員を誇るフェスにまで成長しました。グラストンベリーのジャズ版とも言われ、ヨーロッパ最大のジャズフェスティバルとまで評価されいます。実は3年くらい前からアジア開催の提案がありまして、会場探しなどを行っていたんです。当初の計画では去年、豊洲PIT/MIFA Football Parkにロバート・グラスパーやセルジオ・メンデスらを招聘し、まずはプレイベントという形で開催してから、今年2021年正式にスタートと考えていたのですが、昨年のプレイベントはコロナ禍で中止になってしまい、今年が名実ともに第一回目の【Love Supreme Jazz Festival】となったわけです。
ーー第一回目の会場が秩父ミューズパークになることは、当初から決まっていたということですね。
実行委員:はい。今年もコロナの影響で海外アーティストを呼ぶのは難しいのですが、「国内のミュージシャンだけでも良いラインナップを揃えられる」ということを本国に打診し今回の開催に至りました。本国イギリスチームからもプレスリリースを出してくれていて、ヨーロッパの方でも日本版【Love Supreme Jazz Festival】はニュースになっています。
ーー今回、2日目のヘッドライナーはSOIL&"PIMP"SESSIONSが務めることになったわけですが、社長は今どんな心境ですか?
社長:【Love Supreme Jazz Festival】といえば、ジャズをやっている人間ならそこに出演するのが「一つの目標」とも言えるくらい、本国イギリスにおいて名のあるフェスです。その日本版が開催されると知り、昨年のプレイベントには残念ながら呼んでいただけずにすごく悔しい思いをしたんですよ(笑)。なので、今年お声がけいただけて本当に嬉しかったですね。
ーー本国の【Love Supreme Jazz Festival】にはどんな印象がありますか?
社長:確か初年度からジャイルス・ピーターソンをはじめ、周りの近しい人たちが出演していて。かなり面白そうだなと思って注目していました。世界中に様々なジャズフェスがあって、それぞれに個性がありますが、その中でもアーティストのセレクトが一際エッジーな気がします。かつレジェンドもちゃんと押さえていて、僕らの世代はもちろん、若い世代にも響く「新しいタイプのジャズフェス」なのだろうなという印象ですね。
こういうラインナップで、この規模でジャズフェスが開催されること自体も羨ましいですし、なにより名前が「Love Supreme」じゃないですか。ある意味、ジャズと同義語みたいなところもあるコルトレーンの曲名をフェス名に掲げるなんてずるいなあと(笑)。
ーー現地の様子はどんな感じなのでしょう?
実行委員:お客さんは木曜日夕方から日曜日夜までキャンプして、寝泊まりしてお酒飲んで食事して、音楽を聴きたくなったらステージまで行って、眠くなったらキャンプサイトへ戻って……みたいな(笑)。ジャンルが特化しているだけに、同じような趣味を持った方々が集まっているイメージがあります。年齢層も幅広く、年配のご夫婦も多かったように思いますね。食事も事前に予約するコース料理なども提供するお店もありました。落ち着いて楽しめるフェスだと思いました。
▲英【Love Supreme Jazz Festival】での様子
ーー今回、会場となる秩父ミューズパークはどんな特徴がありますか?
実行委員:屋根のついた日比谷野外音楽堂のような野外ステージをメインステージに、その周辺外周に、DJステージが設置されます。それ以外にもパーク内には広いスペースがあるので、今後将来的に規模が拡大していったときに、2万人規模のステージを組むことも可能なんです。そういう意味でも長くお付き合いできるといいなと思っていますね。また、秩父は三峯神社などパワースポットが多くて(笑)、イチローズモルトという世界的に有名なウィスキーの工場もあります。ジャズといえばウィスキー、みたいなところもありますし、パワースポットでジャズを楽しむのも趣があっていいかなと。距離も池袋駅から特急利用80分で西武秩父駅に着いてしまうので、実はあっという間です(笑)。
ーー(笑)。都心から2時間くらいで日帰りでも行けるのは嬉しいですね。ラインナップを組むにあたってのコンセプトは?
実行委員:ジャズフェスと銘打っていますが、本国の【Love Supreme Jazz Festival】のラインナップを見て頂ければ一目瞭然なのですが、新世代の新しい形のジャズフェスティバルを目指しています。もちろんジャズとしてのビッグネームの方もたくさん出演されていますが、2019年のヘッドライナーはローリン・ヒルでした。2018年はアース・ウィンド・アンド・ファイアー。去年はアニタ・ベイカーがヘッドライナーの予定(開催中止)だったのですが、その感覚を日本でも取り入れてソウル、R&B、ヒップホップのアーティストにもお声がけしました。
そういう意味では今回のヘッドライナーであるDREAMS COME TRUEとSOIL&"PIMP"SESSIONSは、【Love Supreme Jazz Festival】のコンセプトを象徴する2組だと思います。ドリカムはジャンル分けするならポップスかもしれませんが、根本に流れるのはブラックミュージック。ソイルはジャズインストのみならず、様々なジャンルのシンガーやラッパーをフィーチャーしてジャンルを越境しています。音楽的には似て非なる2組ですが、アティチュードは共鳴するものがあるのではないかと。
ーーとはいえ、ドリカムの出演は驚きました。
実行委員:中村さんのコメントにもありましたが、「ドリカムの人生は波乱万丈、まさにJAZZそのもの」なので、必然だと思ってます(笑)。今回、馬場智章さんをゲストに迎えてアコースティックアレンジした、大変貴重な内容を考えて頂いているようです。代表曲もどうアレンジされるか、大変楽しみにしています。
社長:楽しみだなあ。というのも、実は僕ドリカムが大好きなんですよ。確か中学生の頃に『MILLION KISSES』か『The Swinging Star』が出たばかりで、日曜日朝はドリカムのアルバムをファーストから順番に聴いていくという過ごし方をしていたんです(笑)。そのくらい大好きな彼らが、【Love Supreme Jazz Festival】に出演するなんて感慨深いです。
ーードリカムのどんなところに魅力を感じていたのですか?
社長:先ほど実行委員の方がおっしゃったように、ブラックミュージックを通過したポップスであるところだと思います。彼らがオマージュするブラックミュージックたちに、僕は後から出会うことになって。そういう意味では、自分の根っこの部分はドリカムに形成してもらったところがたくさんあるかもしれません。
ーー他のラインナップで、社長が気になるのは?
社長:Answer to Rememberの石若君は、アルバムにも参加してもらっていますし、WONKも仲良くしてくれている。前日ですが、Ovall、SIRUP、WONK、この辺は僕が主催しているフェスにも一昨年出演してもらっているし、iriちゃんは今年出てくれていて……。あ、NulbarichのJQ君は、よく洋服の展示会で会いますね(笑)。
ーーほとんど身内みたいな感じですね(笑)。
社長:黒田卓也くんのバンドも気になるし、今大注目のVaundyも観たいなあ。
ーーそれこそSIRUPやVaundyをきっかけに、若い人がジャズを聴くようになるといいですよね。
実行委員:それが何より嬉しいですね。Vaundyのファンの方が黒田卓也さんに夢中になるとか、そういう流れができたら最高だなと思っています。
ーーさて、ソイルは今回どんなライブになりそうですか?
社長:今回、ゲスト・アーティストをお招きしてのライブとなるので、自分たちのいつものワンマンとも違うし、イベントでもやったことのないようなパフォーマンスになるんじゃないかなと。【Love Supreme Jazz Festival】ならではの、スペシャルステージをお届けするつもりです。
ーーそういえばソイルは先日、初のジャズ・カヴァーアルバム『THE ESSENCE OF SOIL』をリリースして、そこでコルトレーンの「Love Supreme」を取り上げていましたよね。
社長:そうなんですよ。おそらくそれはやるでしょうね(笑)。
ーーゲスト・アーティストには AwichとSKY-HIが決定しています。
社長:Awichとの交流は、メンバーのタブゾンビが彼女の作品にフィーチャーされたのがきっかけで、その後はSOIL&"PIMP"SESSIONSのアルバムにも参加してもらうなどして交流を深めてきました。 Awich名義のライブに、うちのピアノトリオのJ.A.Mと、ギタリストの吉田サトシくんがバックバンドとして、僕がマニュピレーターとして参加し、何ヶ所かツアーを回ったこともあるんですよ。実は彼女のプロデューサーのChaki Zuluとは、SOIL& HEMP SESSIONS時代に一緒にライブをやっていたくらい結構古い付き合いなんです。そういう意味でも縁を感じますね。
SKY-HIさんとは今回が初のコラボになります。日本を代表するパフォーマンスユニットでありながら、ラッパーとしてもかなりの実力派じゃないですか。彼のフロウを聴いていると色々なイメージが湧いてきますし。今回、ゲストを呼ぶという話になった時に、真っ先に名前を挙げさせていただきました。早くお会いしたいですね。
ーー他にもゲストが発表される予定だとか。
社長:そうなんです。その方も今回、初めて一緒に音を出すんですけど、やはりワンアンドオンリーの存在感がありますからね。SKY-HIさん同様、全く予想がつかないだけにとても楽しみです。
ーーところで、コロナ以降のフェスのあり方について、社長はどんなふうに考えていますか?
社長:まずは感染対策の徹底ですよね。この会場のように座席がある場所は、前後左右の距離がちゃんと確保されるので安心ですが、区切りがないような場所ではどうやってソーシャルディスタンスを確保するかが重要になってくる。おそらく今年は野外フェスも、客席のエリアに何かしらのグリッドが引かれると思うのですが、普通に線を引くだけでなくそれをグラフィックアートにしてみたり、内装の一部としてデコレートしてみたり、それがまた一つのアートフォームになっていくかもしれないですよね。
ーーそういう意味では、制限を逆手にとって楽しむくらいの余裕が観ている側にも必要なのかもしれない。
社長:そう思います。あとは、来場された方たちの自己管理というか。万が一クラスターが発生した時のケア、かつスムーズに入場できるようにするためには、ある程度リソースを割かないと難しいと思うので、そこがこれからのフェスの、当面の課題になっていくのかなと思っています。
ーー主催者、出演者のみならず、オーディエンスも一緒に協力し合ってフェスを作っていく姿勢が、ますます大切になっていく気がします。では最後に、改めて【Love Supreme Jazz Festival】への意気込みを聞かせてください。
社長:この時のパフォーマンスをUKの仲間たちに、世界中のジャズファンたちに胸を張って見せられるような、【Love Supreme Festival】の名に恥ないクオリティのステージにしたいと思っています。ぜひ皆さん、足を運んでください。
公演情報
【Love Supreme Festival】
2021年5月15日(土)、16日(日)
埼玉県・秩父ミューズパーク野外ステージ
OPEN 11:00 START 12:00
出演者:
<5月15日>
【Live Stage】
DREAMS COME TRUE / Ovall – Guest : 佐藤竹善, さかいゆう and more! / 黒田卓也 aTak Band / SIRUP / iri
【DJ Stage】
松浦俊夫 / 大塚広子 / YonYon / 矢部ユウナ / 柳樂光隆(Jazz The New Chapter)
<5月16日>
【Live Stage】
SOIL&"PIMP"SESSIONS Guest:Awich, SKY-HI and more / Nulbarich / WONK / Vaundy / Answer to Remember Guest : KID FRESINO, ermhoi, Jua, 黒田卓也
【DJ Stage】
沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE/KYOTO JAZZ SEXTET) / DJ Mitsu the Beats / Licaxxx / MIZUHARA YUKA
チケット:
1日券:11,000円(tax in.) ※5月15日完売
高校生・大学生学割チケット1日券:6,000円(tax in.) ※5月15日完売
小学生・中学生学割チケット1日券:3,000円(tax in.) ※5月15日完売
駐車券:3,000円(tax in.) ※5月15日完売
関連リンク
THE ESSENCE OF SOIL
2021/03/17 RELEASE
VICL-70245 ¥ 2,530(税込)
Disc01
- 01.Inner Glimpse
- 02.My Favorite Things
- 03.Planet Caravan
- 04.A Love Supreme, Pt.Ⅱ - Resolution
- 05.Soulful
- 06.Kitty Bey
- 07.Silence
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