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<コラム>「寄り酔い」がチャート席巻中、素性が明かされていない“和ぬか”とは?



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彗星のごとく表れたシンガーソングライター
ゆとりあるメロディで魅了する「寄り酔い」を考察

 和ぬかの「寄り酔い」が、不思議な吸引力と共に波紋を広げている。和ぬかとは、20歳の現役大学生であること以外は顔も素性も明かしていないシンガーソングライター。2020年12月からTikTokやYouTubeに楽曲を投稿して本格的に活動を開始し、この「寄り酔い」が初のオリジナル曲となる。


 まったくの無名な存在だったが、耳から離れないメロディとセクシャルな情景を描いた歌詞を持つこの曲がTikTokで瞬く間に反響を集め、1か月半で1億回再生を突破。これを受けて2月15日に配信リリースされると、LINE MUSICではデイリーランキング1位を獲得し、同日に公開されたミュージックビデオは1週間で100万再生を突破、3月11日発表のSpotifyウィークリーバイラルチャートでは1位となった。2021年3月31日公開(集計期間:2021年3月22日~3月28日)のBillboard JAPAN Heatseekers Songsでは7位。まだまだマスには名前は伝わっていないタイミングだが、おそらく現象はこの先さらに大きくなっていくだろう。

 昨年から今年にかけては、TikTok発のニューカマーが次々と脚光を浴びるようになってきている。ストリーミングサービスの上位ランクインをきっかけに注目を集め、ブレイクを果たす新世代のアーティストが活躍を見せている。和ぬかもその一人であることは間違いないのだが、いわゆる弾き語りのシンガーソングライターとも、ボカロや歌い手といったネットカルチャー界隈のクリエイターともちょっと風合いの違う、独特な存在感を持っている。

 「寄り酔い」という印象的なタイトルは、<家まで送ってもらいたいの/今夜満たされてたいの/できれば君にちょっと/濡らして欲しいの/酔いで寄りたいの/ごまかしてキスしたいの/君といたいよ/暗くてぬるい部屋で>というサビの歌詞からとられたもの。この一節から伝わるとおり、かなりエロティックな誘いのモーションをモチーフにした曲だ。主人公が歩いているのは、お酒を飲んだ後のほろ酔いの帰り道。恋する相手に秘めた思いを抱えているのに、身体は火照るほど求めているのに、それがなかなか伝えられない。そんな描写が多くの人に“刺さった”というのが、この曲の人気の理由の大きなポイントだろう。

 楽曲の構造も、とても面白い。歌っていることはかなり性的で放埒なのだが、和ぬか自身の声はどちらかと言うと淡白で、祭囃子のシャッフルビートに乗せたメロディも押韻を多用した歌詞もリズミカルな響きを持っている。これが、どろっとしがちな主題を軽快な表現にしている。旋律はペンタトニックの音階を上下するような動きで、これが“和”のテイストを醸し出している。アレンジは、ずっと真夜中でいいのに。の編曲も手掛ける100回嘔吐が担当。アコースティック・ギターを軸に、派手さはないがスパイスの効いたポップスとしてまとめられている。

 さらに3月15日には「寄り酔い (GeG Remix)」がデジタル配信とYouTubeで公開された。こちらは変態紳士クラブのGeGによるリミックスで、ローファイのテイストを盛り込んだよりムーディーなトラックになっている。


 「寄り酔い」はもともとTikTokに短尺だけ公開された後にフルバージョンが配信されたわけだが、最初の短いフレーズだけでも成立し、かつフルバージョンになっても冗長にならないような作られ方をしているのが楽曲のポイントとも言えるだろう。「寄り酔い」1曲だけでは和ぬかのアーティスト性がどんなものかは正直未知数なのだが、TikTokやYouTubeのサブチャンネルに公開された「夕顔」、「幽霊船」、「イージーゲーム feat. natsumi」などの短尺の楽曲を聴くと、彼の発想のユニークさが伝わってくる。




 何しろ「イージーゲーム feat. natsumi」は40秒、「幽霊船」は19秒、「夕顔」は16秒である。並の楽曲のショートバージョンよりもさらに短い。一筆書きのようなワンフレーズだ。それでも、ひねりのある旋律とダンサブルなビート、優しく柔らかな歌声の組み合わせで“和ぬからしさ”を醸し出している。「夕顔」やTikTokに公開されている「君が一等賞」などを聴くと、祭囃子のビートが着想になって生まれている曲も多そうだ。

@wanuka__

君が一等賞という曲を作りました。 #オリジナル #オリジナル曲 #和ぬか #君が一等賞 #家に着いたら絡まってたい #使ってね

♬ 君が一等賞 - 和ぬか

 また、これは勝手な推測だが、和ぬかのメロディセンスにはボカロカルチャーを通過してきているのではないかと思えるものもある。「幽霊船」や、やはりTikTokに公開されている「お先に行くな」も、使っている音色はアコースティック・ギターとリズムのシンプルなものだが、ボカロ由来のタイム感や展開の速さを彷彿とさせるものがある。

@wanuka__

お先に行くなという曲を作りました。 #オリジナル #オリジナル曲 #和ぬか #お先に行くな #おすすめに乗りたい

♬ お先に行くな - 和ぬか

 とにかく、まだ全貌はつかめない。が、和ぬかというアーティストが「寄り酔い」だけで終わらないユニークな個性を持っている予感は確実にある。

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