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そのダンススキルの高さにも注目!昨年ビルボードシングルチャート トップ3デビューを果たしたOWVとは
コロナにより混沌を極めた2020年は、各ボーイズグループを洗練した年だったように思う。いわゆる接触を売りにしたユニットは、リアルイベントの中止によりオンラインの1on1トークイベントへ移行。もともと歌やダンスに注力していたユニットは、オンラインライブを開催すると共に自身のスキルを磨き上げた。そして迎えた2021年、いざ蓋を開けてみると、世界を見据えて活躍できそうなボーイズグループが出揃ったわけである。
「RIGHT NEXT TO YOU」をリリースし、音楽好きを唸らせたSexy Zoneを筆頭し、Snow ManやSixTONESなど、いまだにジャニーズ勢が強い印象もあるかもしれないが、怒涛の勢いで大躍進を魅せたのは、オーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』出身のグループだ。【KCON:TACT】の出演や【Mnet Asian Music Awards 2020】で<ベスト・ニュー・アジア・アーティスト賞>の受賞を果たしたJO1、そして今回紹介するOWVもその系譜に名を連ねるアーティストである。
JO1が『PRODUCE 101 JAPAN』を勝ち抜いた11人だとするならば、OWVはオーディションこそ通過しなかったが見逃せない才能を持った4人。歌、ダンス、ラップとそれぞれの強みを活かし、誰にも真似することのできない唯一無二のグループを目指し進化を続けている。
メンバーは、リーダーの本田康祐、力強いラップが魅力的な中川勝就、ハイトーンボイスが特徴の浦野秀太、キレのあるダンスが持ち味の佐野文哉。OWVとしての活動は一年未満だが、それぞれがバックダンサーや芸能活動をしていた経歴があり、結成当初から驚くほど意識が高い。注目されることが当たり前じゃない、関わる人がたくさんいることが当たり前じゃない、たくさん取材されることが当たり前じゃないと、彼らは知っている。不遇の時代を過ごしOWVに人生をかけているからこそ、いま準備されている環境のありがたさを自覚していると共に、それに恥じない活動を展開しているのだ。
本田康祐
中川勝就
浦野秀太
佐野文哉
4人のキャラクターも個性豊かで、バラエティー番組では自然とそれぞれの魅力が発揮される。頼れるアニキでありながら、茶目っ気たっぷりに天然さも秘めている本田。クールな容姿とは裏腹な温かい人柄でグループの潤滑油的存在の中川。天真爛漫な発言といじられキャラでたくさんの笑いを届ける浦野。ここぞというときに核心をつく、冷静な佐野。細かなところまでこだわりぬく超真面目な4人だが、普段の姿はなんら同世代の男性と変わらない。くだらないことで大笑いし、勝負ごとになると大人気ないほどムキになる。徹底されたパフォーマンスと普通っぽさのギャップも彼らの魅力といって過言ではないだろう。
肝心のパフォーマンスは、4人というコンパクトな編成を感じさせないダイナミックさが強みだ。JO1はもちろん、チャートをにぎわすBTSやSnow Manなど、シンクロダンスを強調するグループは6人以上であることが多く、パッと見の華やかさや大勢によるフォーメーション・ダンスの面で長けている。また、フレーズごとに人数を調整し、各々の見せ場や待機時間を操り、ステージでの見え方に緩急をつける。そういったことができないにもかかわらず、OWVのダンスは統率が取れていて美しい。
スペースを広く使ったモーションの大きい振付は、プログラミングされているかのような精度で、しっかりとリズムを捉え表現されていく。メンバー内で10cm以上の身長さがあっても“揃っている”と見えるのは、ただ闇雲に角度やタイミングを“合わせる”ことを追求しているのではなく、“揃って見える”合わせ方をそれぞれが意識しているからこそ。ダンスを突き詰めて学んできた本田と佐野の影響が強いことは言うまでもないが、パフォーマンスに対する意識の高さがうかがえる。
一方で、歌い踊り続けられる体力があることや程よく“抜き”を作れることも彼らの長所だ。いくら『PRODUCE 101 JAPAN』のオーディションで過酷な練習に耐えてきたとはいえ、デビュー1年目で歌いながらハードなダンスをこなすのは並大抵のことではない。しかも、“たった4人で”なのだ。大人数のグループと比べて一人一人の歌割りは必然的に増え、目立つパートも多くなる。Da-iCEやw-inds.が10年、20年をかけて極めてきたことを、OWVの面々はスタート時からハイクオリティでやってのけようとしているのである。
また、先ほどあげた“抜き”というのも大事なポイントだ。イメージとしては、手を抜くのではなく余白を作る。全部が全部の振付に重きを置くのではなく、踊りに緩急をつけることで、よりパフォーマンスをドラマチックなものにしていく。ダンス慣れしていないと全てを一生懸命こなしてしまい、硬い印象になりがちだが、OWVはすでに“踊るだけ”の一歩先をいっていると言ってもいいだろう。
さらにいうと、本田と佐野にいたってはカップリング曲のコレオグラフも担当している。本田の振り付けは、“OWVが4人であること”を強く意識させるのが特徴だ。4人で同じ動きをする、4人の動きを組み合わせる魅せ方を好み、チームとしてのOWVを鮮やかに描く。それと同時に、腕を大きく使った滑らかなモーションも彼の特色のひとつ。柔らかな楽曲には、本田の作るたおやかなフリがよく似合う。
本田康祐 振付「So Picky」
一方で、佐野の振り付けは、シンプルな動きにメリハリをつけて魅せるのが特徴で、モーション自体は難しくないのだが、かっこよく魅せるのがとても難しい。また、4人という限られた人数制限のなかでフォーメーションを自由に遊んでいく。ダンス好きならではの柔軟な発想が、彼の作るコレオグラフの魅力だ。
佐野文哉 振付「BE ON TOP」
ダンスと対で語られがちな歌はというと、メインボーカルの浦野を筆頭に邁進中。伸びやかなファルセットや流暢な英語の発音、エモーショナルなバラードなど、常に新しいことへ挑戦。ラップにおいては、中川を中心として曲ごとにスキルアップしている。4人の声質が違うと共に、ラップのフロウも個性豊かなので、単に“歌を歌う”だけでなく、より曲の持つ世界を描くことにも一役買っているといえるだろう。
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Text by 坂井彩花
OWV歴代シングルMVから魅力に迫る
さて、ここからは楽曲ごとに彼らの魅力を紐解いていきたい。デビュー曲の「UBA UBA」は、OWVのスタートを飾るパワフルなダンスナンバー。サビで用いられている“UBA UBA”は、キャッチーなメロディーと相まって耳に残るフレーズへ仕立てあげられている。ノリのいいビートに挑戦的な黒の衣装と、彼らのかっこよさがギュッと濃縮。ボーイズグループ・シーンを切り開くダークホースが登場してきたことを強く印象付けた。
続く「Ready Set Go」は、“色気”をテーマとしたセクシーな1曲。メンバー全員がハイトーンに挑戦していることもあり、今までは出会えなかったコーラスワークを耳にすることができる。本人たち曰く、この“色気”こそOWVの真価であり得意とする分野。それぞれが苦渋のときを越えるなかで培ってきた経験が、彼らの色っぽさに磨きをかけているのだろう。以前よりも堂々としたパフォーマンスが印象的な楽曲へと仕上がった。
そして、3月31日には3rdシングルとして「Roar」がリリース。“野公子”(野生感×貴公子の造語)をコンセプトにしたナンバーは、「この世界でのし上がっていく」という強い想いがこめられている。ライオンをモチーフにした激しい振付が目を惹くことはもちろんだが、何よりも成長を感じるのはメンバーの表情管理だろう。わずか3分半にも満たない曲のなかで、彼らはクルクルと王子のような笑みも野獣のような鋭い眼光も投げかけて魅せる。コツコツと積み上げてきたからこその確固たる自信が、表情の裏側からにじみ出ているのだ。
まだデビューして1年経っていないにもかかわらず、圧倒的な実力と親しみやすい人柄で着々とファンを増やしているOWV。「自慢の推しになります」と成長を約束し、一つひとつのことに誠心誠意向き合っている彼らなら、世間から熱視線が注がれるのも時間の問題だろう。目標である武道館を軽々と超え、世界で活躍する4人に強く期待したい。
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Text by 坂井彩花
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