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<対談インタビュー>松尾太陽×Omoinotakeが語る、コラボだからこそ得られた“挑戦と発見”
超特急のタカシこと松尾太陽が、ピアノトリオ・バンドOmoinotakeとのコラボレーション・シングル「体温」をリリースした。本作は、松尾が今年からスタートした3 か月連続配信リリースの第2弾。第1弾「Magic」は全編英語詞にチャレンジしていたが、Omoinotakeが作詞・作曲・編曲、そして演奏を担当するこの曲は、愛する人への想いを情景豊かに描いたストレートなラブソング。コロナ禍で直接人と会いにくい今だからこそ伝えたい「人のぬくもり」の大切さを太く、艶のある歌声で表現している。Billboard JAPANでは、松尾とOmoinotakeのメンバー3人による座談会を敢行。楽曲制作のエピソードや、お互いへのリスペクトなどざっくばらんに話してもらった。
――まずは今回、Omoinotakeに楽曲提供のオファーをした経緯から教えてもらえますか?
松尾太陽(以下、太陽):Omoinotakeさんは以前、超特急のメンバーのタクヤ(草川拓弥)が出演していたドラマ『チェリまほ(30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい)』のオープニング・テーマ「産声」を提供されていて、それがきっかけで動画サイトなど色々な場所でお名前を拝見していましたし、Omoinotakeさん独自の世界観や強い意志を持っていらっしゃるという印象があったんです。「自分もこういう曲を歌ってみたいなぁ」という憧れや羨ましさもあり、ぜひともOmoinotakeさんの楽曲に挑戦させてもらいたいと思い今回、楽曲提供をお願いしました。ご快諾いただけて、とても嬉しく思っています。
――Omoinotakeの皆さんは、タカシさんに対してどんな印象を持っていましたか?
藤井レオ:最初に超特急の名前を知ったのは、いまタカシくんが言ってくれた『チェリまほ』にタクヤくんが出演していたのがきっかけでした。それで超特急はもちろん、タカシくんのソロを聴かせてもらったところ、ものすごくかっこよくてびっくりしたんです。僕らにとって楽曲提供は初めてのチャレンジでしたが、すごくいいタイミングと環境の中でやらせてもらえることになったなと思いましたね。
福島智朗:僕も今回、楽曲提供のお話をいただいて、改めてソロ曲を聴かせてもらったんですけど、本当に幅広いジャンルの音楽に挑戦している方だなと思いました。しかも、どんな楽曲の中にもタカシくんらしさが出ている。きっと僕らが作った曲もタカシくんらしく歌ってくれると思ったので、そんなに“楽曲提供”ということを意識しすぎることなく、曲作りに集中できたのはよかったなと思っています。
――福島さんの考える“タカシさんらしさ”とは、どのようなものですか?
福島智朗:やはり声に芯があるところですね。いま言ったように、本当に幅広いジャンルやスタイルの音楽を歌われていると思うんですけど、芯がぶれないからこそ「あ、タカシくんが歌っているな」というのが聴き手にすぐ分かる。しかも、どの曲も“似合っている”というのが、どんなシンガーでも真似することができない“タカシくんらしさ”なのかなと。
冨田洋之進:僕もオファーをいただいてから初めて聴かせてもらって、とにかく太くて艶のある声だなと。そこがすごく魅力的だなと感じました。僕らが作った曲にタカシくんの声が乗ったらどんなふうになるんだろうと、すごく楽しみになりましたね。
――曲のテーマや雰囲気に関して、事前に打ち合わせみたいなものはありましたか?
太陽:個人的には、あまり松尾太陽に寄り添いすぎないでほしいという気持ちがありました。なぜかというと、最初にも言ったように、OmoinotakeさんにはOmoinotakeさんならではの独自のイメージや世界観があって、自分はその中に飛び込みたいなという気持ちが強かったんです。僕が誰かとコラボをするときには、今回に限らず“自分らしさ50%、コラボさせていただく方の想い50%”でやらせてもらいたいんですよね。
――実際の曲作りはどのように行いましたか?
藤井レオ:いまタカシくんが言ったように、けっこう自由にやらせてもらえました。絞り込んだテーマなどはなかったので、タカシくんの声をイメージしつつ、この曲に関してはメロディから取り掛かって、その後に歌詞を乗せていきました。Omoinotakeの曲だと、あまりストレートになりすぎないようにしているというか、メロディやコードなどヒネリを加えたくなるんですけど、今回はタカシくんの声がまっすぐファンの方に届くよう、なるべくストレートで甘いメロディを考えましたね。いつも以上に多くの人に伝わりやすいメロディということを意識しています。
福島智朗:歌詞については、最初の段階で「ラブソングにしよう」という話があったんです。普段は自分の経験をもとに書くことが多いんですけど、今回はタカシくんが歌詞を手掛けたソロ曲「掌」を意識したというか。なので、「こういう歌詞だったらタカシくん、喜んでくれるかな?」ということを考えながら言葉を繋げていきました。僕の等身大の想いでもありつつ、タカシくんのイメージにも寄り添った歌詞になったんじゃないかなと思っています。普段はレオが歌うということを想定しているんですけど、今回はタカシくんに歌ってもらうので、例えば「レオにしてはちょっと強すぎる言葉かな?」と思うような表現も入れました。
――できあがった曲を聴いて、タカシさんはどんな感想を持ちましたか?
太陽:デモを聴いた時点で衝撃的でした。いろんな楽曲を聴いてきた中で、「あ、こういう曲って聴いたことなかったな」と思うことはあるのですが、まさに今まで出会ってきたことのない楽曲の展開、世界観でもあったので、すごくびっくりしましたね。自分の頭の中では、曲を作るときってAメロ、Bメロ、サビの繰り返しみたいな固定概念があったんですけど、この曲は2番でAメロ、Bメロときて、次にサビが来るなと思ったらいきなりDメロが来て!
――Dメロの展開はドラマティックですよね。
太陽:いい意味で裏切られました。これだけ素敵な楽曲を作っていただいたのだから、それに恥じないような歌を入れなければという気持ちも強くなりましたね。
――歌詞についてはどう思いましたか?
太陽:2Bの「憂鬱な朝焼けさえも/君の寝顔を照らすから/日々のすべて 愛しいと思えた」という、この3行を歌うときには明るい気持ちとちょっと暗くなる気持ち、そのニュアンスをしっかり表現したいなと思いました。
福島智朗: さっき話した「レオにしてはちょっと強すぎる言葉かな?」というリミッターみたいなところを外すきっかけになったのが、いまタカシくんが言ってくれた2Bの歌詞なんです。きっとOmoinotakeだったら「愛しいと思えた、ような気がした」までつけてしまうと思うんですよね。
藤井レオ:分かる(笑)。
福島智朗:なんというか、断定してしまうのが恥ずかしいんです。でも、タカシくんに歌ってもらうことを想定したことで、いつもよりも語尾がすっきりしているなって、いま話していて改めて思いました。
――「体温」というタイトルもそうですが、やはりコロナ禍で“誰かの体温”を感じる機会が減ってしまったことに対する想いも含まれていますか?
福島智朗:実を言うと、歌詞を書いているときにはそこまでコロナのことを個人的には意識していませんでした。でも、タカシくんがそれを感じてくれたみたいで。
――この曲についてタカシさんは、「直接会いにくい、伝わりにくい今だからこそ伝えたい。 会いたい人の体温や、想いが、この曲を通して感じて頂けるととても嬉しいです」とコメントを寄せていましたよね。
太陽:はい。
――オケのレコーディングもいつもとは違いましたか?
藤井レオ:僕らはバンドなので、いつもは生楽器のエッセンスみたいなものを入れるように心がけているのですが、今回はやっぱりタカシくんというソロアーティストのための楽曲なので、R&Bマナーに則りたいなと思いました。打ち込みの音選びとか、トライアングルの感じとか。コロナ禍でけっこうスイートなR&Bを聴く機会が以前よりも増えたような気がしたので、家でじっくり聴けるようなサウンド、アレンジにしたいということは考えましたね。
――具体的にはどんなR&Bを聴いていたのですか?
藤井レオ:寝る前にフランク・オーシャンをよく聴いていました。日本だと平井堅さんも好きで、「体温」を作っているときにはなんとなく意識していましたね。
――タカシさんのボーカル・レコーディングには藤井さんと福島さんも立ち会ったそうですね。どんな印象を持ちましたか?
藤井レオ:シンガーにによって母音や子音の出し方がこんなにも違うのか、と。自分には出せない子音の力強さとか、細かいところまで目の当たりすることができて楽しかったです。いい経験になりました。
福島智朗: タカシくんが、レオがデモ音源で入れた仮歌をそのまま模倣するのではなく、自分なりの解釈をたくさん入れた歌い方をされていて。めちゃくちゃ考えてきてくれたんだと思って、嬉しく感じました。
――実際に歌ってみてどうでしたか?
太陽:どの言葉も、どこを切り取っても強いメッセージ性を強く感じましたね。曲もかなり突き抜けたハイトーンな部分がたくさんあったので、AメロやBメロではなるべく抑揚を抑えて、ニュアンス重視で歌うようにして、サビに向けて突き抜けるところは思いっきり突き抜けるというふうに、メリハリやダイナミクスをつけるように心がけましたね。
福島智朗: 素晴らしい仕上がりになっていて感動しました。
――タカシさんとOmoinotakeで次にコラボするとしたら、どんなことがやりたいですか?
藤井レオ:「体温」は甘くて温かいR&Bナンバーだったので、次は僕らが得意な思いっきり切ない路線で楽曲を書いて、タカシくんに存分に歌い上げてほしいです。
福島智朗: 歌詞も、タカシくんが歌いながら泣いちゃうぐらい切なくしたい(笑)。
冨田洋之進:いつかライブも一緒にやりたいですよね。
太陽:ほんと、こういう状況じゃなかったら対バンとか、それこそ共演とかさせていただけたらなぁって思います。これを機に今後もぜひ楽曲提供をしていただけたら嬉しいし、次はもっと僕も深いところまで入らせてもらえたら嬉しいです。これからもよろしくお願いします。
Omoinotake:こちらこそ!
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