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【特集】キングス・オブ・レオン 全英チャート初登場1位を獲得した最新アルバム『ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ』



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 キングス・オブ・レオンの約5年ぶり、通算8枚目の最新アルバム『ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ』がリリースされた。これまでに4度の【グラミー】受賞歴を誇るこの人気4人組バンドの音楽センスの高さは健在で、また、待望の新作ということもあり、UKアルバム・チャートでは6作連続で堂々の1位を獲得。新型コロナウィルスによってリリース延期となってしまったが、そのなめらかでエッジで美しいサウンド、そして唯一無二であるケイレブのボーカルに心癒されることだろう。新作リリースを記念して、4人のこれまでの活動歴とニュー・アルバムの魅力を音楽ライターの坂本麻里子氏に語ってもらった。

 アメリカ有数の音楽都市ナッシュヴィルから登場した4人組キングス・オブ・レオンことフォロウィル・クランがヴィンテージなロックンロールの砂塵をシーンに巻き起こしてはや20年近い。いまだ若々しいジャレッド・フォロウィル(B)&マシュー・フォロウィル(G)――音源デビューの時点で両者はまだ10代だった――の近影からは信じがたい話だが、発表されたばかりの20年代最初の最新スタジオ・アルバム『ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ』で堂々の8枚目となる。2000年代と2010年代を通じ世界各国でアルバム首位や【グラミー賞】受賞を達成し、モダン・ロックのプレミア・リーグ入りを果たした彼らの決して平坦ではなかったロード・マップを改めて振り返ってみよう。

 冒頭でクラン(一族)と書いたように、1999年にケイレブ(Vo. / G.:次男)とネイサン(Drs.:長男)のソングライター・デュオとしてスタートしたKOLは2002年にふたりの弟ジャレッドと従兄弟であるマシューを加えて正式に始動した。兄弟姉妹を核とするグループは数え切れないほどいるとはいえ、こんな風に完全に血族構成のロック・バンドは珍しい。ペンテコステ派教会の伝道師を父に持ち子供時代から米南部各地を転々とした……という三兄弟の映画を思わせるエキゾチックな生い立ちも注目された。ファースト・アルバム『ユース・アンド・ヤング・マンフッド』(2003)がリリースされたのは折しもザ・ホワイト・ストライプスとザ・ストロークスが牽引する形でロックンロール・リヴァイヴァル~ガレージ・ロック・ブームが盛り上がっていた頃だ。初期衝動あふれるロックンロールとワイルドで野趣に富んだ佇まいとでたちまち「サザン・ロック版ストロークス」の異名をとったKOLは2ndアルバム『アーハー・シェイク・ハートブレイク』(2004)でその斬新な個性に磨きをかけ、ギター・バンドの急先鋒に躍り出る。


 今振り返ると少し意外に思えるかもしれないが、ホワイト・ストライプスもストロークスも、ブレイクを後押ししたのは本国アメリカよりもむしろメロディックなギター・ロックを愛するイギリスのメディアの盛り上がりと人気爆発だった。KOLもその例に漏れず、全英トップ3に前2作を送り込み、着実にファンの地盤を固めた上で『ビコーズ・オブ・ザ・タイムズ』(2007)が見事初のUKチャート1位に輝く(これ以後、新作『ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ』までKOLはイギリスで6枚連続初登場1位を獲得してきた)。コマーシャル/音楽面の飛躍の背景として、年長組は20代前半で、年少組に至っては10代で音楽界に飛び出しただけに、バンドとしての経験値もスキルもまだ低かった彼らが2005年から2006年にかけてU2やパール・ジャムらのツアーに帯同した点がある。大先輩のプロフェッショナリズムにあこがれると共に、スタジアム公演の洗礼を受け覚醒したことで、自らの新規巻き直しを図ったのは想像に難くない。しゃかりきにギターをかきむしり吠えるばかりではなく、サウンドの幅を広げ、ソングライティングに奥行きをもたせ、スケールの大きい新たなサウンドスケープを開花させた同サードは彼らにとってひとつの転機だった。

 その手応えは続く『オンリー・バイ・ザ・ナイト』(2008)で大きな実を結ぶ。現在と同様、メインストリームの覇権をヒップホップとポップスが握っていた当時のアメリカで、それまで彼らは苦戦してきた。しかし、頑なとすら言えるロックンロール原理主義的なストイックさをゆるめ、音楽的な実験に乗り出した前作を経て、もともと備えていたメロディの美しさをてらいもなく解き放った4作目で、ロックのドラマチックな興奮とポップ感覚のジャストな融合に成功する。いまやモダン・ロック・ソングの古典と言える先行シングル「セックス・オン・ファイアー」の英豪他での大ヒットを受け、アメリカでも初のアルバム・チャートのトップ5入りを達成。続く「ユーズ・サムバディ」は2010年にバンドに初の【グラミー賞】の快挙をもたらした。



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 双頭ヒットによるロング・セラーでついに待望の母国でヒットを手中に収めた彼らは間髪入れずに5thアルバム『カム・アラウンド・サンダウン』(2010)をドロップ。音響面で更なる拡張・成長を果たしつつ、安定したKOL節を聴かせる同作は、初のUSチャート1位を獲得した。しかし、バンドというのは生き物なだけに、一見勢いに乗っているかのように見えても、番狂わせは起きる。2010年から始まった2年越し、過去最大級のワールド・ツアーは、サクセスをファンと分かち合うハレの場だったが、2011年夏のテキサスで、ケイレブが演奏中に突如ステージを去り、コンサートは中止に。残りのツアー日程も急遽キャンセルされるという異常事態が起きた。作品はもちろん、ライブ・パフォーマンスの定評が人気の原動力である彼らにとって、これは実に痛い。予想していた以上の前作の桁違いなサクセスの大波と、それに伴い急上昇した需要からくるプレッシャーは、水面下でバンドを翻弄し、内面に亀裂を走らせていた。

 デビュー以来、レコーディングとツアーのサイクルをほぼノンストップで続けてきたさしもの彼らも休息をとり、リフレッシュして臨んだ6thアルバム『メカニカル・ブル』(2013)は地元ナッシュヴィルでレコーディングされた。リラックスした作りを反映し、明るく吹っ切れたこの作品で、バンドとしてのアイデンティティを定義し直し、その自信は新たなチャレンジにつながった。ファースト・アルバム以来、密なコラボレーションを重ねてきた恩師的存在であるアンジェロ・ペトラグリア(カントリー系アーティストのプロデュースや楽曲共作で知られる)に別れを告げ、前作『ウォールズ』(2016)でプロデュースに初顔合わせのマーカス・ドラヴスを起用。コールドプレイ、アーケード・ファイア、マムフォード&サンズ他を手掛けてきた名手との仕事は、いい意味で緊張感と刺激をもたらし、高品位サウンドで歌心をモダナイズするドラヴスの手腕はKOLのワイドスクリーンなロックを見事にランクアップさせてみせた。


 引き続きドラヴスとタッグを組んだ最新作『ホウェン・ユー・シー・ユアセルフ』は実に5年ぶりのアルバムになる。曲作りやプリ・プロダクションは2019年から始まっており、本来2020年にリリースされる予定だったものが、コロナウィルスの影響で発売が延びた。あいにくの長いギャップではあるが、モノクロ写真で落ち着きのあるアルバム・ジャケットからもうかがえるように、ミッド・テンポ~スロー・バラードを中心とするこのアルバムは、これまででもっとも繊細かつバランスのとれた音作りで情感に満ちた歌の数々をじっくり聴かせる作風。「ザ・バンディット」、「ストーミー・ウェザー」、「エコーイング」といった疾走感あふれるロックンロールも健在であり、アンビエントなムードが新鮮な「ア・ウェイブ」をはじめ、新境地にも踏み込んでいる。しかしヴィンテージ機材を多く使用した滑らかに輝くサウンドの放つ包容力と、楽曲にこもった焦がれるような哀感に耳を傾けているうちに――発売のタイミングがずれたのはもちろん偶然に過ぎないが――過去1年ですり減った心がほのかに癒される感覚を抱くのは筆者だけではないと思う。



 本作向けの海外取材のいくつかでメンバーは「これまででもっとも4人全員の意見が一致した、衝突なしにスムーズに作れたアルバム」という主旨のコメントを残している。クリエイティヴな衝突の要因は主に年齢差で、クラシック・ロックを愛するネイサン&ケイレブのこだわりと、ニュー・ウェイヴやオルタナティヴ・ロックから最新の音楽まで柔軟に聴くジャレッド&マシューの感性が組み合わさってKOL特有のエッジが生まれるとともに、時に二組の間で方向性が分かれることが過去にはあった。兄弟/肉親間のライバル意識も作用したかもしれない。しかし、本作で彼らは真情に揺れるケイレブの歌唱やジャレッドの秀逸なベース・プレイを筆頭に、4人が個々の持ち味を遺憾なく発揮しつつ、それらすべてを自然に溶け合わせ、トータルなハーモニー値をぐんと高めている。お互いの占めるポジションや空間を尊重し、認め合い、エゴを捨てて一丸になることの素晴らしさを、彼らは本作で学んだのだと思う。その確信はKOLの3つ目のディケイドのゆるぎない基盤になっていってくれるはずだ。

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