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<コラム>これまでのイヤーエンドチャートを自己採点

 大きく様変わりした2020年のイヤーエンドチャート。“様変わり”というなら過去を振り返ってみたくなるのが人の常。ということで、データを新たに加えながら激変する国内マーケットと併走を続けた2010年代後半の年間JAPAN HOT 100の解説文をまとめて自己採点する。

新たな変化は2014年から始まった

 2014年度から新たにルックアップとツイッター2指標が合算され、5種類のデータによる合算となったBillboard JAPAN HOT 100。1位が嵐「GUTS!」で、2位AKB48「心のプラカード」、3位同じく「ラブラドール・レトリバー」と、シングルとルックアップのフィジカル関連指標の強さが目立つ結果に。この2アーティストのTwitterでの加点の違いをコメントしているが、ここでコメントすべきは嵐のルックアップの強さであるべきで、ジャニーズ系アーティストのなかで、2020年まで嵐が一番ルックアップされ続けてきたアーティストで、それは2014年でも既に分かっていたはずだ。

 また、松たか子「レット・イット・ゴー~ありのままで~」はシングル盤が無くても総合7位に入っていて、聴取方法の多様化は既に現れている。次年度以降、その変化がどんどん顕在化していくのに、そこを解説文で拾えていないのは非常に残念。

“「ヒット」のかたち”が見え始めた2015年

 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「R.Y.U.S.E.I.」が総合首位に、2位と3位は嵐「Sakura」と「愛を叫べ」だった。同年6月のチャート下半期開始週から、YouTubeとストリーミングの合算を開始。「R.Y.U.S.E.I.」は特にYouTubeでの加点が大きく、デジタル関連指標での加点がチャートに与える影響が大きくなってきた。5位のSEKAI NO OWARI「Dragon Night」も同様だ。

 この結果を受け、文中では「ストリーミング元年となった2015年は、デジタル領域の展開がヒットを生む、新しいフェーズにJ-POPシーンが移行したことを明確に示している」と、ストリーミングが日本でも始まったことの歓迎を結びとしている。加えてもうひとつコメントしておくべきだったのが、前年にリリースされた楽曲が、今年になってYouTubeやストリーミングからポイントを積み上げて「ヒット」していく傾向があることだ。「ヒット」曲は毎週毎週変わるはずがないことは、JAPAN HOT 100を毎週追いかけていれば分かることで、年間チャートで分かりやすく説明出来る機会にコメントしなかったことは惜しい。

2016年「大きく潮目は変わった」か

 総合2位RADWIMPS「前前前世」、3位星野源「恋」、6位ピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」と、「「ヒット曲」の前提条件がCDセールスであった様相が大きく様変わりして、上位楽曲にも影響を与えつつある」楽曲がチャートイン。CDシングルが牽引する「ヒット」から大きく様変わりしつつある状況を、「大きく潮目は変わった」と表現し、うまく2016年は切り取ることが出来たイヤーエンドチャートだった。

 解説文では、突出するダウンロードや動画再生指標が他指標にも影響を与え、総合ポイントを押し上げて上位にも食い込むことが出来るという、今日でも起きている事象について、実例を挙げて説明できている。惜しむらくは「ストリーミング元年」と2015年にで述べたのにも関わらず、2016年はどうだったか、バランス良くコメントできていれば良かった。

「ヒット」がデジタル領域から生まれ始めた2017年

 トップ10圏内でシングル牽引型「ヒット」は、乃木坂46と欅坂46。他は総合1位の星野源「恋」を始め、2位エド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」、3位DAOKOx米津玄師「打上花火」、6位TWICE「TT」など、ダウンロード、ストリーミング、動画再生といったデジタル関連指標が牽引して「ヒット」が生まれた2017年。前年リリースの楽曲による「ヒット」も増え、JAPAN HOT 100イヤーエンドでの上位楽曲の傾向が明確に顕れている。

 そのためか、100位圏外の「ダンシング・ヒーロー」までコメントするほど、書くべきことが多く、解説文の網羅性は高かった。欲を言うなら、AKBグループと坂道シリーズの交代や、ジャニーズのデジタル摸索期の始まり、米津玄師の躍進の予兆について、先を読んでコメントできていたら完ぺきだったろう。

2018年「ヒット」はスマホから

 総合1位に米津玄師「Lemon」、2位DA PUMP「U.S.A.」、3位欅坂46「ガラスを割れ!」と、この3曲で2018年を表現するなら確かに「「スマホから生まれるヒット」」だろう。ただ、アルバムで存在感を発揮するアーティストにもスポットを当てるべく、半期ごとに発表することとしたTOP ARTISTSチャートでも米津玄師が1位となり、まだ米津玄師自身がオーディオストリーミング未解禁だったことから、言うべきことがデジタル領域全般となり、総括するため「スマホ」を落着点としていて、論旨が少々ボヤけてしまった。

 それでも、TOP ARTISTSでは次年度のブレークを予想してあいみょんを取り上げ、フェス発ストリーミング経由型「ヒット」の始まりについてコメントしていて、チャートデータ蓄積に起因する、過去、現在、未来へと視野の拡がりが分かる。また、歌詞にもスポットを当てて、「「孤独」と「非・孤独」の両極に大きく揺れ動く現代がみえてくる」といった今の世相と楽曲の関連についてもコメント。結果の解説に留まらず、今後について述べることができたことは、解説文の在り様として小さいが確実な一歩前進といえる。

ダウンロードからストリーミングへ「ヒット」主軸が移行した2019年

 ダウンロードと動画再生が牽引し、米津玄師「Lemon」が日米初の2年連続で総合1位。2位以下に、あいみょん「マリーゴールド」、Official髭男dism「Pretender」、King Gnu「白日」が続く。米津玄師が2020年夏までストリーミング未解禁だったため、日米初の連続制覇にトピックを譲ることとなったが、本来的にはデジタル領域が牽引する「ヒット」のなかでも、ストリーミング発のヒットが増えてきたことを論旨としたほうが、末文の「今後はストリーミング自体を押し上げるためのトリガーを各々のアーティストがどう見つけ出すかが注目のポイントとなる」の意味が重くなっただろう。

 また既に2015年から始まっていた、年またぎのロングヒット曲がイヤーエンドを制するパターンが定着。かつ年末の地上波特番をステッピングボードとする勝ちパターンも星野源「恋」、米津玄師「Lemon」、あいみょん「マリーゴールド」などで定着。デジタル領域での「ヒット」をさらに「ロング・ヒット」に持ち込む“勝ち筋”が見えてきて、それをうまく表現できればもっと良かった。前年に続き、次年度以降についてコメントしていたことは良かった。

2020年のコロナ禍とストリーミング発「ヒット」の関連

 年間総合首位を獲得したYOASOBI「夜に駆ける」の「シングル未リリース」をフックに、ストリーミングから生まれる「ヒット」の在り様を俯瞰するテキストに。前年にコメントした「ストリーミング自体を押し上げるためのトリガー」を実践するアーティストが多数現れ、多彩なヒット曲が生まれた。これはコロナ禍による可処分時間の増加と関連するが、それを明記していないのはコロナ禍とマーケットの関係を解説する上で勿体無かった。

 また、オーディオやビデオのストリーミングユーザーが増え、「ヒット」のサイクルが早まったことにより、前年度リリースされた楽曲が当年度首位となる、今までのイヤーエンドのパターンが減退したことのコメントが無いことも残念。たしかに「炎」が今のところ来年度総合首位となる可能性が高いためコメントできなかったわけだが、次年度以降を占ううえで、サイクルがこのまま加速を続けていくと、ストリーミング発「ヒット」は、社会的浸透にどうしても時間がかかるであろう全世代的な「ヒット」となり得るか、というトピックはヒットチャートを創っていく上で重要なテーマとなるはずで、解説文に取り上げるべきだった。が、もう公開してしまったためこちらに記させて頂く(ホントすみません)。

Text: 礒崎 誠二

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