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<インタビュー>J-POPの英語カバーが話題、Anonymouzの「歌」に込められた想い



インタビュー

 2019年3月からYouTubeでJ-POPの英語カバーを次々と発表し、美しい透明感、凛とした強さを感じさせるボーカルによって瞬く間に音楽ファンの心を掴んだAnonymouz。Sony Xperia 5Ⅱ CMのタイアップ・ソング「Eyes」を含む2nd EP『Addiction-EP』もスマッシュ・ヒットを記録するなど、シンガー・ソングライターとしての類稀な才能を示している。

 さらに注目度が高まるなか、Billborod JAPANでの独占インタビューが実現。音楽的なルーツ、歌に対するスタンス、アーティストとしての将来像などについて聞いた。

誰かに歌を聴いてもらう経験

――Official髭男deism「Pretender」やYOASOBI「夜に駆ける」の“英語ver.”によるカバーが大きな話題を集めています。この反響についてどう感じていますか?

すごく嬉しいです。YouTubeのコメントも一つ残らず読んでいますし、頑張ろうという気持ちになりますね。声を褒めていただけるのも嬉しいですし、自分がこだわって翻訳したところをズバッと言っていただけると「そうそう!」って(笑)。



【英語ver.】YOASOBI『夜に駆ける』by Anonymouz


――(笑)。まずはAnonymouzさんの音楽的なルーツを聞かせてください。音楽に興味を持ったきっかけは?

母が音楽が大好きで、家でクラシックが流れていたんですよ。私は子供の頃からディズニー・チャンネルをずっと観ていて、『ハイスクール・ミュージカル』にハマって。初めてポップスに触れたのはセリーヌ・ディオンで、その後、テイラー・スウィフトやアヴリル・ラヴィーンが好きになって、マネして歌っていました。小学校高学年の頃、クリスマスにiPodを買ってもらって、CDをレンタルして曲を取り込んだりしていましたね。

――J-POPは?

YUIさんを聴いていました。中学生になるとRADWIMPSさんやONE OK ROCKさんなども聴くようになって、ギターを買ってもらって、少しずつ曲を書き始めました。“徐々に”という感じだったと思います。

――中学生の頃から、将来は音楽の道に進もうと思っていたんですか?

そうですね。小さいときから、自分は歌が好きだということは分かっていて。ハッキリと目指そうと決めたのは、ボイス・トレーニングに通い始めてからですね。毎週、先生に歌を聴いてもらって、スクールの発表会などもあって。そこで初めて誰かに自分の歌を聴いてもらう経験をしたことで、「音楽を続けていきたい」と思ったんです。それまでは母にしか聴いてもらったことがなかったんですよ。母はすごく褒めてくれる人なんですけど、「親バカなんじゃないか?」と疑っていて(笑)。

――(笑)。褒めてもらうって大事じゃないですか?

ホントに。そうじゃなかったら続けられなかったと思います(笑)。学校でも歌ってることは誰にも言っていなかったんですよ。バカにされたらイヤだなという気持ちもあったし、私にとって(歌うこと、音楽を目指すことは)とても大事だったので。

――それくらい強い気持ちがあった、と。オリジナル曲は英語で作っていたんですか?

いえ、最初は日本語でした。ワンオクさんをずっと聴いていたときに、英語と日本語を混ぜて作ってみようと思って。英語で書くようになったのは最近かもしれないです。

――英語と日本語が共存しているのは自然だった?

そうですね。家で母と話すときは英語で、学校では日本語を喋っていたので。ときどき混ざっちゃうこともあります(笑)。


コンプレックスからの解放

――J-POPを英語でカバーするというプランはどのように生まれたんでしょうか?

「まず知ってもらわなきゃ」「声を聴いてもらおう」と。日常的に英語を話す家庭に育ったので、それを活かせたらいいなということで、試しにやってみようかという感じでしたね。最初に発表したのは「そっけない」(RADWIMPS)だったんですけど、野田洋次郎さんがSNSでコメントをくださって、それがすごく嬉しくて。たくさんの方に聴いていただけて、1年間、動画を上げ続けています。翻訳も最初は難しかったけど、今は楽しいですね。

――原曲の歌詞の韻を活かした英訳も注目されています。

どの曲もそうなんですけど、アーティストのみなさんが一生懸命に生み出した曲ばかりですからね。英語で歌うときも原曲のファンの方々、アーティストの方々に納得していただきたかったし、原曲で韻を踏んでいるんだったら、翻訳するときもそれを活かさないといけないなって。同じアーティストさんの曲をいくつか訳すと、よく使う言葉が分かってきたり、だんだんコツが掴めてきて。歌詞の内容を読み込むことで、背景にあるものが見えてくることもあって、本当に勉強になっています。



【英語ver.】Official髭男dism『Pretender』by Anonymouz


――リスナーの方のコメントも興味深くて。「Pretender」のカバーに対しては、「サビに入ってから、“It's not me”って日本語とは違って結論が先に来てしまうところが切ないな」というコメントがありました。

「Pretender」のサビも、「It's not me, Destiny~」で韻を踏んでいるんですよ。「結論が先に来て切ない」というのは、コメントを見て初めて気づきました(笑)。

――リスナーのコメントで気づくこともあるんですね。

すごくあります。私はずっと自分の声には個性がないと思っていたんですけど、「クセがないところがいい」というコメントをいただくことがあって。それを見たときは安心したし、声に対するコンプレックスもなくなってきました。

――オリジナル曲についても聞かせてください。最初に発表した楽曲は「No NAME」。1st EPの表題曲にもなっていますが、どんなテーマで制作した曲なんですか?

“自分のことを勝手に決めつけられて、自由になれない”ということを歌いたくて。私のことを理解してもらえるEPになればいいなという気持ちで歌詞を書きました。



Anonymouz - No NAME [Official Video]


――“自分のことを決めつけられる”というのは、普段から感じていることですか?

そうですね。初対面の人にイメージを決めつけられて、それに縛られていた時期もあって。それもあって“Anonymouz”なんですよね。イメージを白紙にして、まずは声だけを聴いてもらいたくて。私の声、みなさんにどう感じてもらえるのかな……という気持ちが大きいかもしれないです。


実体験から生まれた「Your Plan」

――では、11月にリリースされた2nd EP『Addiction-EP』について。まず「EYES」(Sony Xperia 5Ⅱ CM タイアップ・ソング)は、ピアノと声、ストリングス、雨の音で構成されたバラード。美しい曲ですね。

ありがとうございます。家族、友人、恋人など、大事な人を愛おしく思う曲というテーマがあって。その人の目を通して見る世界がすごく優しくて、温かい場所であってほしい、冷たい場所を見ないでほしいという願いを表現しました。自分の家族のことを想像したら、けっこうスラスラ出てきましたね。



Anonymouz - Eyes [Official Video] 《ソニーのXperia 5 II CMソング》


――英語詞のなかに、ところどころ日本語のフレーズが入っているのも特徴的だなと。

聴いてくれているのは日本の方々が多いし、日本語を少し入れることで、曲の物語をなんとなくでも分かってもらえるといいなと思って。まだ研究中ですね(笑)。

――1曲目の「Your Plan」はシンプルでドープなトラック、憂いを帯びたメロディを軸にしたナンバー。

実際に経験したことがもとになってる曲です。音楽が好きだった友達が就職活動の時期になって、「将来、どんな仕事に就くか」ということが基準になったみたいなんです。それで音楽に恋することもやめてしまって、就職のためのプランを練って、すべて計画通りに行動している姿を見て……。



Anonymouz - Your Plan [Official Video]


――そのときに感じたことが「Your Plan」に繋がったと。Anonymouzさんは「デビューできなかったら、将来が不安だな」と感じたことはないんですか?

それがホントになくて(笑)。「これが無理なら、何にもなりたくない」という気持ちが強かったんですよ。もし上手くいかなくても、何かしら音楽に関わりたいと思っていたので。



Anonymouz - Thrill [Official Video]


――実は芯が強いんでしょうね、きっと。そして「Thrill」は海外のクリエイターとのコライトによる楽曲。

はい。いただいた楽曲に「Thrill」という題名がついていたので、それをもとにしてラブストーリーを想像しました。一人で作ると、どうしても自分が心地いいところにメロディが動いてしまうし、バラードになりがちなんですよ。他の人と一緒に制作することによって、まったく違う音楽のルーツが入ってくるので、勉強になりますね。


初めてのワンマン「夢のよう」

――4曲目の「Don't Need the Pain」はダークなイメージの楽曲、5曲目の「Snake Love」はちょっと大人っぽいラブソングです。

「Don't Need the Pain」は楽器を使わず、鼻歌で作ったんです。自分なりにカッコいい曲をイメージしながら制作したんですけど、頭のなかに浮かんでいるものが形になっていくのが面白かったですね。「Snake Love」は……どれだけ自分が正しいと思っていても、相手に言い負かされることってあるじゃないですか(笑)。そういう人に恋をした、というテーマで作った楽曲です。好きなんだけど、いろいろ心に迷いがあるというか。半分は想像ですけど、(楽曲の主人公の)性格は自分のことですね。自分からどんどん話すというより、人の話を聞いていることが多いので。

――海外のポップ・ミュージックの潮流を感じさせるサウンドも印象的でした。

海外の音楽もたくさん聴いているし、曲を作るときに「この人の声で歌うとしたら、どんなメロディがいいだろう?」と考えることもあって。そういう影響は自然と曲のなかに出ていると思いますね。

――すでに大きな注目を集めていますが、この先、どんなアーティストになっていきたいと思っていますか?

歌詞は英語が多いし、自分のことを題材にすることも多いんですけど、メロディを覚えてもらって、鼻歌で歌ってくれたりしたら幸せですね。私もティーンネイジャーの頃に悩んだり泣いたりすることがあったけど、そういうときに支えてくれたのが音楽だったんですよ。曲を聴いてくれた方の1日を、ちょっとでもいいから素敵にできる歌手になれたらなって。まずはたくさんの方に知ってほしいです。

――海外でも活動したいという気持ちも?

あります。邦楽、洋楽、半々ずつ影響されてきたので。海外の方がJ-POPをどんなふうに聴いてくれるのかも気になりますね。

――2021年5月21日には、恵比寿LIQUIDROOMで初のワンマンライブ【Anonymouz 1st Special Live ~Daybreak~】が開催されます。

私の曲を聴きに来てくださる方々の前で歌うのは、ホントに初めてで。自分のライブを開催できること自体、夢のようです。どんな方々が来てくださるのかまったく想像できないし、皆さんの前で歌うことで、また次の景色や目標が見えてくるのかなって。本当に楽しみです。



【期間限定公開】Anonymouz - Eyes (Live Session)


Interview by 森朋之

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