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<インタビュー>平井 大のシンプルな考え方に迫る「状況はどんどん変化しているけど、それでも人生は続いていく」
平井 大の“シンプル”な考え方
世界中が停滞を余儀なくされた2020年。ライブやフェスの開催が見込めないなか、すべてのアーティストが“音楽をどう届けるか?”に向き合い、様々な表現が生み出された。そんな状況の中、さらに注目度を高めたアーティストの一人が平井 大だ。
5月20日に発表された「Life goes on」を皮切りに、2週間に1曲のペースでデジタルシングルを14曲リリース。サーフミュージック、レゲトン、フォーク、ヒップホップなどを自由に行き来する音楽性、そして、現代にとって必要なメッセージを含んだ歌詞によって、シンガーソングライターとしての存在感を幅広いリスナーにアピールした。
▲平井 大「Life goes on」
「曲が出来たらすぐにリリースして、リスナーのみなさんにダイレクトでお届けするというのは、ずっとやりたかったことでもあるんです。収録曲の数を決めてアルバムを制作するより、そのときに思い付いた自由な発想で作れるし、その瞬間に“いいな”と思うのものを形にするほうがナチュラルなので。もちろん、コロナの影響もあります。社会が一変して、アーティストにとっても“1年に1枚アルバムを出して、ツアーを回る”という固定概念がなくなったので。とは言え、僕は意外とのんびりやってたんですけどね(笑)。“2週間に1曲って、すごいですね。大変じゃなかったですか?”と言われるけど、ぜんぜんそんなことはなくて。自分のリズムでやれたし、ストレスもなかったですね」
“何があっても人生は続いていく。自分らしく、心地よく生きよう”という思いが伝わる「Life goes on」(第1弾/2020. 05. 20)、“振り返ったとき、2020年は最高の夏だった”と言えるように楽しもう”とメッセージするサマーチューン「EndlessSky」(第3弾/2020. 06. 17)、‘00年代初めのレゲトンを想起させるトラック、切ない夏の情景を反映した歌詞が一つになった「Lonely Beachy Story」(第5弾/2020. 07. 15)、平井 大のルーツであるサーフミュージックを色濃く映し出すポジティブなナンバー「陽のあたる場所へ」(第6弾/2020. 07. 29)。話題のYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスを音源化した「祈り花2020-THE FIRST TAKE-」「僕が君に出来ること-from THE FIRST TAKE-」(第10弾/2020. 10. 07)、竹内涼真主演WOWOWドラマ『竹内涼真の撮休』主題歌に起用された「Holiday」(第11弾/2020. 10. 21)など。この7ヶ月の間に発表された楽曲に共通しているのは、ルーツミュージックに根差したサウンドメイク、そして、リアルな感情や真摯なメッセージを込めたリリックだろう。
「1曲目の『Life goes on』もそうですけど、全曲を通して、その時期の社会的な風潮だったり、自分自身の思いが反映されていると思います。いちばんは自分が表現したいものを形にすることですけど、リスナーのみなさんの生活や感情に寄り添うような曲をお届けしたいという気持ちも強いです。今年は全然ライブが出来なくて寂しかったけど、Instagramのライブなどを通して、みなさんの感想を文章で知れたことも良かったですね」
スターバックスとのコラボによる最新曲「Starbucks, Me and You」(第14弾/2020. 12. 16)もまた、“リスナーに寄り添う”というスタンスから生まれた楽曲だ。「スターバックスのお客様やバリスタのみなさんのホリデーシーズンのエピソードをもとにした楽曲ですね。4,000通近くあったんですけど、“みなさん、いろいろな幸せを感じてるんだな”と思ったし、作っていて楽しかったです。(歌詞に登場する)”ジンジャーの香るお気に入りのLatte“は、この季節、すごく人気があるみたいですよ」。ちなみに、「Starbucks, Me and You」は12月18日から25日までの期間、全国のスターバックス店舗(一部店舗を除く)の店内BGMでも聴くことができる。
▲平井 大「Starbucks, Me and You」
また、アコギ、ウクレレを使わず、初めてピアノとストリングスだけで構成した「ここにあるもの」(第12弾/2020. 11. 04)も心に残る。この曲で歌われているのは、“あなたにとって、本当に大切なものは?”という真摯な問いかけだ。
▲平井 大「ここにあるもの」
「シリアスな思いを込めた曲なので、アレンジも出来るだけシンプルにして、歌をしっかり届けたいなと。この1年、僕の生まれ故郷の東京も大きく変わって、思い出深い風景が減って。好きなお店がなくなったり、学ぶ機会が減った方、会社に行けなくなった方も多いと思うし、状況はどんどん変化しているけど、それでも人生は続いていく。そのことを踏まえて、“本当に大事なものとは何だろう?”と自分に向き合いなら書きました。暗い曲にはしたくなかったので、最後はしっかりポジティブなメッセージを入れました」
平井 大の代表曲の一つ「祈り花」のセルフカバー「祈り花 2020」(第2弾/2020. 06. 03)についても記しておきたい。東日本大震災の年に書かれたこの曲に改めて向き合うことは、彼自身にとっても、歌の向き合い方を改めて見つめ直すきっかけになったという。
▲平井 大「祈り花 2020」
「ライブでもずっと演奏している曲ですが、セルフカバーしてみて、歌の表現方法が変わっていることに改めて気づきましたね。スキルアップもしてるし、歌のニュアンスも違っていて。デビュー当時は、歌いたいという気持ちがそこまでなかったんですよ(笑)。もともと楽器が好きで、スタジオミュージシャンやサポートミュージシャンになりたいと思っていたし、自分の歌に対して、“何か違うな”と感じることもあって。転機になったのは、2015年にリリースした『Slow & Easy』。それまでは“こんなふうに振舞おう”とか“上手く歌おう”という雑念があったんだけど、それを全部やめて、好きなことを追求しようと思って。ステージにもありのままの自分で立つようになりましたね」
2週間に1曲のペースで配信された14曲は、“2020年の平井 大のプレイリスト”としても楽しめる。“ストリーミングに強い”と言われる彼自身も、音楽の聴かれ方、届け方の変化をポジティブに受け止めているようだ。
「世の中の流れとして、CDを出すことにあまり意味はなくなっているのかなと。それよりも配信やストリーミングで、インスタに写真や動画をアップするように音楽を届けたいんですよね。いまは無名の新人であっても、いい曲を作って発信すれば、多くの人達に認めてもらえる。それは良いことだし、あるべき姿に戻っているんじゃないかなと。インターネットが物事を複雑にしてる面もあると思いまけど、音楽に関しては、よりシンプルになっていると思います」
▲平井 大「Stand by me, Stand by you.」
自分にとって大切なものを見つめ、その瞬間に作りたいものを形にする。アーティストとしてもっとも根本的な在り方を貫き続ける平井 大。リスナーの日常に寄り添い、彩る彼の楽曲は来年以降、さらに存在意義を増すだろう。
「僕の考え方はシンプルで、好きなことを近くに置いて、イヤなことを遠ざけるだけなんですよ(笑)。自己中なのかもしれないけど、ストレスを出来るだけ減らしたいし、興味のあることしか出来ないので。来年の活動は流れを見つつですが、先のことは考えすぎないようにしています。どうなるかはわからないし、それよりも今、興味があることや楽しいと感じることを追求したほうがいいなと。そういう姿勢が明るい未来につながると思いますね」
リリース情報
デジタルシングル『Starbucks, Me and You』
- 2020/12/16 RELEASE
- 平井 大 リンクファイア:https://DaiHirai.lnk.to/songs
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取材・文:森朋之、写真:Masanori Naruse
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