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I Don't Like Mondays. 半年に及ぶ連続配信リリースを通した挑戦とは<インタビュー>
4人組ロックバンドI Don't Like Mondays.が、5ヶ月連続配信リリースの第2弾となるシングル「MR.CLEVER」をリリースした。今回の連続リリースは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、アルバムのリリースや全国ツアーが延期となってしまったことを受けて、ファンに向け“現在進行形”の自分たちを届けようとスタートしたもの。8月にリリースされた第1弾「モンスター」でのスリリングなヘヴィファンクから一転、本作ではSTYをプロデューサーに迎え、トラップを大胆に取り入れるなどバンドとしての新境地を提示している。コロナ禍の中で自分自身と向き合い、弱くてダメな自分を曝け出したというボーカルYUの歌詞も印象的だ。およそ半年に及ぶ連続配信リリースを通して「I Don't Like Mondays.らしさ」を追求しつつ、新しい試みにも果敢に挑戦しているという4人に、制作エピソードやコロナ禍での過ごし方などざっくばらんに語ってもらった。
コロナ禍を、どのように過ごしていたのか
ーー昨年、4年ぶりのアルバム『FUTURE』をリリースして、今年はツアーを含めて色々展開していこうという矢先でコロナ禍という未曾有の事態が起きてしまったわけですが、ここまでの期間、皆さんはどのような日々を過ごしていましたか?
YU:この期間、個人的にはとても大きな意味がありましたね。これまでずっとバタバタしていたのが、ゆっくり時間を過ごす中で自分自身と向き合う時間も増えたというか。 I Don't Like Mondays.の歌詞は僕が担当しているのですが、作詞家として今後どういうものを書いていくべきかについて、深く考える機会にもなりました。
CHOJI:僕はこの自粛期間にインプットをひたすらしていましたね。クラシックギターを練習したり、ジャズやフュージョンといったジャンルをもう一度勉強し直してみたり、オーケストラの譜面を読み込んでみたりとか。音楽以外でも、やりたかったゲームに没頭したり、映画をたくさん観たりする時間ができました(笑)。
KENJI:僕もCHOJIと同じくインプットの日々でした。映画やNetflixのオリジナルドラマをたくさん観たり、海外のクリエーターが発信しているトラックメイキングの動画を観たり。「このプラグインは、こういうふうに使ったら面白いのか」みたいな発見もあったし、第一戦で活躍するクリエーターたちが愛用する機材を購入し、試してみるのも楽しかった。DTMをやる上で身につけておくべき知識を増やすというか、自分に投資する時間だったと思います。
SHUKI:今、YouTubeにそういうクリエーターの動画がたくさんあるんですよ。チャーリー・プースやショーン・メンデスのような、世界に名だたるトップクリエーターが結構情報を公開していて。実際のノウハウはもちろん、音楽制作をする上でのマインドについて学ぶのは楽しかったです。
KENJI:結構、いろんな人が発信してるよね。みんなヒマになったからだと思うけど(笑)、YouTubeだけじゃなくてインスタライブとかでも貴重な発信をしているから、そういうのを僕も追いかけたりしていました。
YU:そういえば、緊急事態宣言が発動される直前に電子ピアノを購入したんですよ。鍵盤は全然弾けないのですが、トライしたい気持ちはずっとあって。今回のようにまとまった時間がないと出来なかったので、この期間に集中してやっていました。あと、粘度をこねたりもしていましたね(笑)。
ーー(笑)。適度に息抜きしつつ、相変わらず音楽制作に勤しんでいたのですね。
CHOJI:はい。リモートで曲とかも作ってたりしたので、「めちゃくちゃ暇で仕方ない」という感じではなかったかな。
YU:むしろ普段よりも忙しい感じもありましたね。この機会にインスタライブもやってみたのですが、今までよりもファンの人たちと距離が近くなったような気もして。自分たちの工夫次第で発信する方法はいくらでもあると思いましたね。もちろん、I Don't Like Mondays.はライブ活動が基軸のバンドではあるけど、今後ライブ以外でのエンターテインメントも試行錯誤しながらやっていきたいです。
SHUKI:新たな試みとしては、配信ライブで初めて邦楽のカヴァーをやったんですよ。宇多田ヒカルさんの「First Love」と、山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」をアコースティック・アレンジで。事前にファンの人たちに「どんなカヴァーが聴きたい?」と聞いてみたら、みんなセンス良くて洋楽のリクエストがたくさんきたんですけど、それだと意外性がないなと思ってあえてJ-POPど真ん中に挑戦してみました。
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Text:黒田隆憲 Photo:成瀬 正規
5ヶ月連続リリースを決めた理由 そしてプロデューサーを迎えてみた感想とは
ーーそして今回、配信シングルを5ヶ月連続でリリースすることにした経緯は?
YU:本来なら4月にアルバムをリリースし9月からのツアーを行う予定だったのですが、どちらも一旦見直す形をとることになってしまったんです。でも、その間何もしないわけにもいかないし、何か毎月みんなを楽しませることって出来ないのか考えた結果、配信リリースを思いつきました。しかも、アルバムのために作ってきた曲をただバラ売りする考え方ではなく、毎月ニューシングルを作っていくくらいのつもりで取り組もうと。
▲ 「モンスター」
ーー「モンスター」に続き、今回リリースされた第二弾配信シングル「MR.CLEVER」はどのように作ったのですか?
YU:僕らは普段、4人全員で作曲をしているので、今回はSkypeを使ってやり取りをしてみました。もちろん、モニター越しだと細かいサウンド面を確認するのが難しいのですが、ことメロディ作りに関しては意外と上手くいきましたね。4人で集まって作業をしていると、誰かがサボっていたりすることもあるんですけど(笑)、Skypeだと何となく全員が意見を言わないといけない雰囲気になって。それが良かったです。
ーーバンド内でいわゆる「コライト(共作)」を行うところがI Don't Like Mondays.の特色ともいえますが、コライトのいいところというと?
CHOJI:僕らの場合、あるアイデアに対して、誰か一人でも反対したら、そのアイデアは却下になるか、全員が納得する形になるまでブラッシュアップする方法を取ってやってきました。そうやって4人全員が「いい」と思える方向に進んでいけるところはメリットなのかなと思いますね。
ーー「集合知」というか。
YU:まさにそうです。曲作りというよりは、ある意味「企画会議」みたいな感じなんですよね。ただ、これが10人になってしまうとダメなんですよ。10人全員が「いい」と思うものだと退屈になってしまいかねない。そこのバランスが重要です。そして、全員が納得できるクオリティのメロディ、サウンドを作っていくのがコライトの良さだしI Don't Like Mondays.の強みだと思っていますね。
ーーコライトを行うにはお互いの信頼関係も大切ですよね。自分のアイデアが却下されることに対しての抵抗感みたいなものはなかったですか?
YU:最初はもうぶつかりまくっていましたよ(笑)。でも、それで一々へこたれていたら何も出来ないと思って、やっていくうちに慣れていきましたね。そういう意味でもSkypeは、意見を言うときの「恥ずかしさ」も軽減される気がします。今までだったらメロディを思いついても、みんなの前で披露する前に「却下されるのでは?」「本当にこのメロは良いのだろうか?」なんて考えてしまうこともあったのですが、割とフラットに意見を出しやすくなったんですよね。コロナが開けてからも、コライトに関してはSkypeでやっていくのも「あり」なのかなと思っています(笑)。
▲ 「MR.CLEVER」
ーー今回、初のプロデューサーとしてSTYさんを迎えた経緯は?
KENJI:まずこの曲を作る上で考えたのが、「2020年のI Don't Like Mondays.」を表現したらどうなるか?ということでした。サウンドも、テンポも、メロディも、今年の僕らを表す曲にしようと最初に決めて、そこから試行錯誤をしていったんですよ。
SHUKI:最初のデモが完成するまでに10パターンくらい作ったよね? 「I Don’t Like Mondays.って一体何なんだ?」とみんなで頭をひねりながら(笑)。
YU:そう(笑)。で、ある程度形ができた段階で、「このままこの曲を出しても自分たちの予想を超えないな」と。もっと化学反応を起こすためには、新たなプロデューサーを迎えようという話になり、今回はSTYさんにお願いすることにしました。実を言うと、他の方にお願いをするという制作は向いてないんだろうなと思ってたんです。(笑)4人で作曲しているし個々のこだわりが強すぎて。
でも、こうしてキャリアを重ね、自分たちの実力というか、自分たちだけで出来る限界みたいなものも、なんとなく分かってきたんです。そこを越えるためには、やはり第三者の力が欲しいなと。いい意味で僕らの既成概念をぶち壊してくれる存在が欲しかったんです。なので、今回は思い切ってSTYさんにデモを丸投げしてみることにした。そこで出てきたものは、きっと僕らが想像しなかったものになるだろうと。実際そうなったし「I Don't Like Mondays.の新しいスタンダード」と言ってもいい作品になったと思います。
ーー「既成概念をぶち壊して欲しい」と思えたのは、ある意味では自信がついたからともいえませんか?
YU:そうだと思います。今までだったら自分たちが想像しているものと少しでも違うと、「いや、そうじゃないんだけどな……」みたいになっていたと思うんですよ(笑)。でも今の僕らはそれを受け入れられるだけの、「器」がちゃんとできたのかも知れないですね。
ーー「MR.CLEVER」は、唐突にトラップになるBメロの展開が特に驚きました。
SHUKI:最初は普通のBメロが付いていたんですけど、それだとストレートすぎるというか。今の時代、曲の展開にもスピード感が求められるんじゃないかと思って。そこから敢えてああいうトラップのエッセンスを入れてみたんですよ。
YU:ああいうことをやっちゃうのがまさに「I Don't Like Mondays.らしさ」なのかなと(笑)。
ーーバンドサウンドとエレクトロサウンドのブレンド具合も、この曲も肝と言えますよね。
SHUKI:STYさんとは、「あまり打ち込みに寄せすぎないようにしよう」と話し合いましたね。音数も、普段の僕らよりも削ぎ落として洗練された感じを目指しました。YUの歌声をより際立たせるためにも、その2つは重要なポイントでしたね。
YU:ミックスに関しても、いつもは僕らめちゃくちゃ口を出すんですけど(笑)、今回はSTYさんにお任せというか。STYさんがいつも一緒にやっているエンジニアの方に仕上げてもらいました。STYさんにも低音へのこだわりがすごくあって「これでいきたい」というのをはっきりと示してくれたので、「じゃあ、それでいきましょう!」って。
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Text:黒田隆憲 Photo:成瀬 正規
歌詞に込めた思いと、今後のリリースについて
ーー歌詞にはどのような思いを込めましたか?
YU:今までは4人で作曲して、ある程度できたサウンドに僕が歌詞を乗せるという順番だったので、「4人で作ったサウンドをいかによくするか?」を考えながら、サウンド重視で言葉を選んでいたところがあったんです。でも、コロナ禍で自分自身と向き合う時間が増え、もっと僕自身の個人的な心情というか、普段はあまり人に言えないようなドロドロとした生々しい部分をストレートに表現したいと思うようになってきたんですよね。歌詞でよく使われるような綺麗な表現は削ぎ落とし、本当の言葉を届けたいなと。きっと世の中的も、そういう言葉が求められるフェーズになってきている気がします。
ーー歌詞を見ると、“言いたいこと溢れそうになるけど My name is Mr. Clever 胸にあるアンサー 誤魔化してStep up スマートに生きてくよ LET’S GO”と歌っていて。どちらかといと、言いたいことを隠してクールに構えている人物が描かれているように思ったのですが。
YU:それこそが僕の人間性なんですよね、世の中を斜に構えて見ているところがあるというか(笑)。言いたいこといろいろあるけど、しがらみとか世間の目があって、なかなか言えないのが現実だし。それを、声に出して言える人は、僕から見ると「強い人」なんです。僕は全然強くないし、強い人に対して憧れはあるけど、そうなれない自分がいて。今までだったら、そこを曝け出すのは怖かったんですよ。「自分って、ダサい人間だな」と認められなかったけど、今だったら「ダサい自分をさらけ出してみようかな」って。
ーーなるほど。「クールに構えているぜ」と言っている自分の「カッコ悪さ」を曝け出しているということなんですね。確かにそれは、すごく勇気の要るカミングアウトだと思います。
YU:例えば「夢を持とう」みたいな言い方も、個人的に苦手なんですよ(笑)。世の中には「夢を持たなきゃダメだ」みたいな風潮があって、「夢はありません」というと、すごくネガティブに捉えられるじゃないですか。夢を持っている人はそれでいいし、夢を持ちたい人は持てばいいとは思う。でも、そうじゃない人だって世の中にたくさんいると思うんですよね。
ーーすごくよく分かります。
YU:ただ、こういう気持ちを曝け出すまではすごく勇気が要りました。「あ、そんなこと考えている人なんだ。だったらもうファンをやめよう」と離れていく人もいるかも知れないし。でも、自分が思ったことをそのまま書いて「違う」と思われたなら、それはもう仕方ないことだよなって。自分の弱さやダメなところ、ずる賢いところを曝け出して、それで嫌いになられたら、そもそも上手くいかなかったなと思うんですよね。でも、この曲を聴いて「そっか、あの人たちもそういうところがあるんだ」「よかった、私だけじゃなくて」って思ってくれる人がいたら、僕自身も嬉しいし、お互いに救われるんじゃないかなと。
SHUKI:STYさんも「歌詞めっちゃ共感する」って言ってたよね(笑)。
YU:そうそう。それは自信になりました。「こんなこと考えてるの俺だけじゃないんだ!」って。
ーーちなみに、今作のレコーディング中によく聴いていたのは?
YU:僕は最近、日本のヒップホップとか、歌詞の面で参考にしようと思って聴いていましたね。この間、自分のラジオでも紹介した唾奇くんや、PANPEEとか。あとはMr.Childrenやサザンオールスターズも改めて聴いて「やっぱりいいなあ」って思いましたね。今までほとんど洋楽ばかり聴いていたので、そこは大きく変わったと思います。
SHUKI:Bメロでトラップになるところの、繋ぎ目をどうやってバランス良くするかをいろいろ考えて、STYさんと、そのセクションを作るためだけに30曲くらいプレイリストを作ってそれを聴きながら考えましたね。アンダーソン・パークや、リトル・シムズ、ドレイク、ビッグ・ショーン……。でも、どの曲に特別影響を受けたとかではなくて、いろんな要素が混じり合っている感じになりました。
YU:そういうハイブリッドな感じも「I Don't Like Mondays.らしさ」と言えるかもしれないですね。
ーー今後のシリーズはどんなものになりそうですか?
YU:実は、次の曲はまた別のプロデューサーさんと一緒に作っていて、サウンドはかなり違うものになっています。歌詞も、今までのI Don't Like Mondays.では考えられないような部分が「モンスター」からずっと色濃く出ていると思うんですけど、人間のエグい部分、泥臭い部分をあえて描写しているので、楽しみにしていください。
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Text:黒田隆憲 Photo:成瀬 正規
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