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各国の音楽チャートを席巻する“女性が惚れる女性”の代表格ファサに注目
今勢いのある4人組K-POPガールズグループ、ママム(MAMAMOO)。ママムと言えば、2019年11月にリリースされた最新アルバム『reality in BLACK』の収録曲「HIP」が、いまや若者必携のSNSとなりつつあるショートムービープラットフォーム“TikTok”で大きな注目を集めたことは記憶に新しい。サビを聞けば「ああ、あの曲」とうなずく方も多いだろう。
ママムの中でも高い人気を誇るファサ(Hwa Sa)は、確かな歌唱力とダンススキルに加え、カリスマ性溢れる言動がたびたび注目の的に。弱冠25歳の彼女から学ぶことも多く、その生き方に憧れるファンからは「ファサ様」の愛称で愛されている。世界で重要視されている女性エンパワーメントを軸に、「HIP」に次いで、ソロ曲「María」で再びTikTokやチャートを席巻するファサについてまとめてみた。
グループでもソロでもチャート席巻
自分を突き通すスタイルに韓国女性が熱狂
「HIP」は既存のファンやK-POPリスナーのみならず、より幅広い層へのアプローチに成功し、なおかつ同性からの熱烈な支持を獲得している。その証明として、TikTok内の再生回数や影響力などを総合的に判断して生成される国内週間楽曲ランキング“TikTok HOT SONG Weekly Ranking”では、昨年12月にチャートインして以降、ランキングを順調に上昇し、これまでに22回のトップ10入りを記録。そのうち自己最高位である2位を2回獲得した。このランキング上昇の要因となったのは、若い女性ユーザーを中心とした美容系動画の人気で、そのバリエーションはよくあるメイク動画はもちろん、スキンケアやストレッチのハウツー、さらにはコスプレが完成するまでの過程など、多岐にわたる。
彼女たちについて調べれば調べるほど、魅力や楽曲に込められたメッセージに惹きこまれていく。ママムが掲げる大きなテーマは、彼女たちが支持される理由の一つでもある女性エンパワーメントだ。韓国語がわからないリスナーやTikTokユーザーにとっては、「HIP」がただサウンドがカッコいい曲として聞かれている/使われているかもしれないが、歌詞に注目すると、この曲にはサウンド以上のパワーを持っていることに気付く。
この曲の内容を簡単にまとめると「人のやることにああだ、こうだと言う人なんて、無視してしまえ。輝くあなたを止める権利なんて誰にもない」ということだ。要らぬ“おせっかい”をする人たちが逆にクリック数や閲覧数を増やしてくれるという皮肉も込められており、痛快で聴いていてスッキリする。SNS大国の韓国では、この歌詞に同感する声も多いのだろう。
近年、BLACKPINKが注目を集めているように、いわゆる優等生ガール路線ではなく、媚びない・カッコいい女性像をコンセプトとするガールクラッシュ(女性が惚れる女性)が韓国では高い支持を得ている。<ネガチェイルチャルラガ(自分が一番イケてる)>と自分を肯定した2NE1の「I AM THE BEST」が当時韓国でヒットを記録したように、ママムの「HIP」も自分を突き通すスタイルが多くの女性を勇気づけているのだ。また、互いに鼓舞しあう仲睦まじい姿もファンを虜にしているようだ。
こういったガールクラッシュが注目されている経緯には集団意識が強い傾向にある韓国人の特性が関係しているのかもしれない。単独行動よりもグループで行動することが圧倒的に多いと言われている韓国では、相手を敬ったり、付き合いを大事にしたり、スキンシップも日本よりも密である。しかし、インターネットが盛んになり、個人の時間も楽しめることになったことで、周りよりも自分を尊重する傾向が増えているのだろう。女性の結婚観や仕事に関する意識が少しずつ変わり始めているとも言われており、そういった変化のときが訪れている韓国で、こうした自己肯定や他人の意見に賛同しない主義をテーマにした楽曲がより魅力的に、そして支持されているのではないだろうか。
「私が別の美の基準に」
型にはまらないオリジナル路線で勝負
「HIP」で特に筆者が惹かれたのは2番ヴァースの<どこにいたって あなたは輝ける 世界にあなたはひとりだけ でもなぜ自分の顔に唾を吐くようなことをしているの?>の歌詞だ。自己愛の大切さに気付かせてくれるシンプルかつパワフルなこの部分に勇気をもらえるが、この歌詞を歌っているのが、グループの末っ子(マンネ)であるファサである。
ファサはグループきっての人気を誇るメンバーであるが、最強マンネとして彼女がなぜそこまで支持されるのか? それは、他者からの様々な声や意見にも揺るがない彼女の強い意志が関係している。ミュージックビデオやライブパフォーマンスを見てもわかるとおり、彼女を一言で表すと“かわいい”よりも “カッコいい”が断トツでマッチする。キレのあるダンスやメイクはもちろん、どんな衣装や髪型もファサ流に染めてしまう、とにかく自信に溢れているのだ。時折、そのセクシーな露出多めの衣装や私服が物議を醸すが、気にしない主義のファサを支援するファンが彼女を擁護する一幕から、彼女のスタイルに対する支持率の高さもうかがえる。
ファサは今年6月にファン待望のミニ・アルバム『María』を配信。そのタイトルトラック「María」のミュージックビデオには、聖母マリアに祈るようなお祈りダンスがあり、このダンスを使ってTikTokで展開された「#mariachallenge」では、この曲を使った動画が世界中から投稿された。
@official_mamamoo 마리아💃🏻~🐴이야~ 화사와 함께 ##mariachallenge ##화사 ##hwasa ##마마무 ##mamamoo
♬ 마리아 (Maria) - 화사 (Hwa Sa)
同曲は各国の音楽チャートでも輝かしい成績を残し、韓国の人気音楽番組『SBS人気歌謡』のチャートでは4週連続1位、米ビルボード・ワールド・デジタル・ソング・セールス・チャートでは最高6位、iTunesトップ・アルバム・チャートでは米国を含む22の地域で見事1位を獲得。ミュージックビデオのYouTube再生回数は公開から2か月で約7,700万回と、かなりの再生回数を叩き出している。
タイトル名のマリアはファサの洗礼名であると言われており、ファサの首の後ろにもそのタトゥーが入っている。思い入れのある名前をタイトルにした「María」は、他人の言葉に傷付いた人々を慰め、自己愛の重要性を訴える曲だ。<マリア これはあなたへ贈る言葉 輝く夜 自分を苦しめないで マリア これはあなたへの言葉 なぜそんなに必死になっているの? そのままで美しいのに>というコーラスでは、“マリア”と“~ってことだよ”の意味のマリヤ(말이야)が韻を踏んでいる。実はファサは誰もが憧れるような容姿ではないと直接言われた経験を明かしており、その心無い言葉に傷つき、一晩中涙を流したが、ビヨンセのライブ映像を観て、「私がこの時代の美の基準にはまらないなら、私が別の美の基準になってみせる」と一意奮闘。そういった経験を経て今のファサがいると思うと、この曲でファサ自身が自分に暗示をかけているようにも思える。パッチリした大きな目に白い肌、身長が高く、小顔で細いウエストに細長い脚といった、K-POPのガールズグループに多くみられるスタイルとは違い、ファサはこんがりと焼けた小麦肌で切れ長の目、162cmといたって普通の身長にグラマラスな体型で、ほかのアーティストとは違ったスタイルで勝負している。見た目が重視されがちなK-POPの世界で、見た目以上のカリスマ性で世間を圧倒するファサは、QUEENファサとして新しい美の基準を作り出しているのだ。
『María』にはソロ・デビュー曲「TWIT」も収録。作詞・作曲だけでなくプロデュース、そしてミュージックビデオ監修と、ひとりのアーティストとしてその才能をいかんに発揮し、ママムのマンネから世界へ大きく飛び出した。
このアルバムに加え、ファサはデュア・リパのヒット曲「フィジカル」にボーカル参加したリミックスや、Netflixで配信中のドラマ『ザ・キング: 永遠の君主』のサウンドトラック「Orbit」もリリース。こちらも違ったファサが楽しめるので、一聴の価値ありだ。
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