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Billboard Styleの言葉からvol.4「ビルボード・チャートが教えてくれた」──Billboard Live Newsの既刊号から“音楽のあるライフ・スタイル”を再考する。



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 ビルボードライブ東京が発刊する月刊フリーペーパー[Billboard Live News]。2007年の創刊号から巻末を彩ってきたのが、コラム&インタビューを掲載する[Billboard Style]です。ここでは、約150回にわたって続いているそのページで語られてきた数々の「言葉」をピックアップ。[Style]のタイトル通り、あらためて「音楽のあるライフ・スタイル」を探るシリーズをお届けします。

  • Billboard Styleの言葉からvol.1「異空間としての六本木」

  • Billboard Styleの言葉からvol.2「アナログ・レコード再入門」

  • Billboard Styleの言葉からvol.3「ギャップも楽しむ大人のファッション」
  •  2007年に[ビルボードライブ]がグランドオープン。そして翌2008年には[Billboard JAPAN Chart]がスタートします。リアルな音楽の場であるライブ&レストランと、リアルな「ヒット」を伝える場であるチャートの登場で、日本でも本格的に[Billboard]ブランドが定着することになりました。
     その源流は、もちろんアメリカの[Billboard Magazine]。1894年の創立以来126年にわたり、エンタテインメントビジネスの情報専門誌として機能し、特に総合ソング・チャートの「Hot 100」は、音楽の流行を知るだけではなく、世界で最も信頼のおけるデータとして業界のみならず音楽ファンからも高く評価され続けています。紙媒体としても健在の[Billboard Magazine]に加えて、1995年からはWEBサイトでも公開されて現在に至っています。
     そんなアメリカで培ったノウハウを日本に応用したJAPANチャートは、現在9つ。チャートの代名詞と呼べる「Hot 100」をはじめ、「Hot Albums」「Hot Overseas」「Hot Animation」「Streaming Songs」など、ストリーミングやSNS、動画配信にも対応した多角的な解析で「いま最も聴かれている音楽」を毎週発信しています。

    Billboard Live
    ▲Billboard Live TOKYO


    「未来」も見せてくれたHot 100

     その「Hot 100」が日本で最初に注目されたのは70年代。「Hot 100」の上位40曲をオンエアするラジオ番組『アメリカン・トップ40』が登場したことで一気に人気に火が付きました。その当時の「興奮」と「チャート愛」を、まさにその時代に音楽に目覚めたおひとりである音楽評論家の萩原健太さんが[Billboard Live News]に寄稿してくれています。

    『もう何十年も前の話だが。日本で全米ヒットチャートの順位をいち早く知るために、ぼくたちはAMラジオにかじりついていた。駐留米軍向けの放送局であるFEN(現AFN)やラジオ関東(現ラジオ日本)で毎週放送されていた『アメリカン・トップ40』という番組に耳をそばだてていた。DJのケーシー・ケイサムが独特のやさしい語り口で発信する情報や順位を必死にメモしたりしながら、最新の全米ポップ・シーンの息吹を必死に受け止めようとしていた。』(萩原健太/Billboard Live News 2007年プレ創刊号)

     70年代から80年代にかけて、こうして毎週のチャートを必死でノートにメモしていたという音楽ファンは多いはず。雑誌の実物を入手できるわけでもなく、ましてはWEBなど遠い未来の夢だった頃、日本中で作られたお手製のチャートは、まさに宝物でした。音楽のジャンルにとらわれずに「いま流行っているナンバー」が並ぶチャートだからこそ、萩原健太さんは「ぼくたちは時代のビートを、いや時代そのものを身体で鋭く感じ取った」と続けます。

    『今やインターネットやモバイルの世界にまで大きく進出し、新時代のビジネスを展開しているBillboardだがBillboardがぼくたちにプレゼントしてくれるワクワク感はまったく変わらない。ロゴを見るだけで今なお胸がときめく。ヒットチャートを単なる売上げの集計だとか、データの羅列だとか思っている人には気付かないことだろうが。チャートにはドラマがある。人生がある。過去、現在ばかりでなく、未来さえもがある。そんなことをBillboardは教えてくれた。』(萩原健太/Billboard Live News 2007年プレ創刊号)

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    ▲Billboard Style 2007年プレ創刊号誌面より。表紙は当時のこけら落としを飾ってくれたスティーリー・ダンでした。


    正確で公正だからこそ感じる「同時代」

     萩原健太さんの言葉にもある通り、「時代そのもの」が反映されるのが「Hot 100」。特にこの数十年、音楽の「聴かれ方=流行り方」が変わった時代を反映して、チャートの解析方法も変化・進化を続けてきています。
     そんなチャートの変化を紹介したのが2014年12月号の[Billboard Live News]。米ビルボードでチャート・ディレクターを務めるシルビオ・ピエトロルオンゴさんが[Billboard Style]に登場してチャートの変遷と魅力を語ってくれています。

    『(HOT 100が)時代の変化に合わせてポリシーや集計方法を変えてきたのは、何が最も人気があるかを正確にチャートに反映させるためです。90年代にはレコード産業がアルバム・セールスに集中して、シングルをリリースしなくなったため、うまくチャートに反映できなくなった時期もありました。そのため1998年以降は、シングルではない曲もチャートに入るようにソング・チャートとして規定を替えたのです。最近では、ストリーミング・データを集計に加えたのは大きい変化でした。そういった様々なデータが集約された現在のビルボード・チャートは史上最も正確で公平なものになっていると思います。』(シルビオ・ピエトロルオンゴ/Billboard Live News 2014年12月号)

     正確で公正なチャートであればこそ、変化し続ける時代の中にあっても求められるものがあるとシルビオ・ピエトロルオンゴさん。

    『いつどこにいても音楽が聴けるようになった今、人々の音楽への欲求や関心はますます高まっていると思います。実際にストリーミングの要素が加わっても、人々が好んで聴く曲にそれほど違いはありません。つまり、いつの時代も人は人気のある曲を聴きたいと望んでいるし、それが誰のどの曲なのかを公平に伝えてゆくのがビルボードの役目であることに変わりはありません。』(シルビオ・ピエトロルオンゴ/Billboard Live News 2014年12月号)

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    ▲Billboard Style 2014年12月号誌面より。表紙はクリスマスシーズンに登場したスタイリスティックス。


     もう一度、萩原健太さんの言葉を借りれば、「チャートにはドラマがある。人生がある」。ピエトロルオンゴさんの「人々の音楽への欲求や関心はますます高まっている」という言葉の向こう側にあるのは、音楽が聴く人それぞれの生活、そして人生が「いまそこにあるから」に違いありません。
     それは、2008年9月号の[Billboard Style]に編集部からのメッセージとして掲載したこんな言葉にも象徴されています。

    『私たちは「チャート」に何を求めているのでしょうか。贔屓の曲が1位を獲得する、意外なナンバーがチャートを駆け上がってくる……そんな上位入賞レース的な展開にももちろん興奮。でも、根底にある最大の悦びは、今、世界ではどんな曲が流行っているのか=支持されているのかを知ること、そうして「その音楽を共有している同時代」を感じることにあるのではないでしょうか。』 (Billboard Live News 2008年9月号)

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    ▲Billboard Style 2008年9月号誌面より。表紙はエリオット・ヤミンでした。



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