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<インタビュー>平原綾香 ディズニー公式のアカペラ・グループ、ディカペラの魅力を語る



平原綾香インタビュー

 ディズニーの名曲をアカペラで歌う7人組のディカペラ。昨年のデビュー・アルバム『ディカペラ』に続き、6月に2ndアルバム『オール・イアーズ』をリリースした。前作の経験を踏まえて、よりヴォーカルワークが巧みになり、聴きどころ満載の作品になっている。

 その新作を「力作」と絶賛するのが今回サポートリーダーを務める平原綾香だ。もともとアカペラが好きで、歌手として活躍する一方で、ミュージカル『メリー・ポピンズ』に主演し、また、映画『メリー・ポピンズ リターンズ』の日本語版で声優を務めるなど、ディズニー作品とも深い関わりを持つ彼女に、ディカペラの魅力を語ってもらった。

全部声だけで表現していると知って、もう一度聴き直した時の衝撃が強かった

――平原さんが主演した『メリー・ポピンズ』ですが、シャーマン兄弟が作曲した音楽でも有名ですよね。ディカペラも前作で劇中歌を取り上げていましたが、実際に舞台で歌われていかがでしたか?

平原綾香:作詞・作曲をシャーマン兄弟が手掛けていますが、兄弟ならではの阿吽の呼吸が感じられるというか、この曲にはこの歌詞しかない、反対にこの歌詞にはこのメロディーしかないと思わせる曲がたくさんあって、家族の魔法があったからこそ、この素晴らしい音楽が生まれたんだと思いました。1965年日本公開の映画なので、私自身知らないところもあり、まるで宝箱を開けていくようなワクワクした気持ちで、ストーリーも、メロディーも、まさに宝物を紐解くようにして研究しました。

――そんな平原さんが今回ディカペラのサポートリーダーを務められていますが、彼らのことを知ったのはいつ頃ですか?

平原綾香:実は私のファンの方で、彼らのデビュー作を聴いた方から「ディカペラとコラボしたら、きっといいと思う」と言われたことがありまして、その時はディズニーの歌をアカペラで歌うグループ、という認識で止まってしまっていたんですが、今回このようなお話をいただいて、「遂に来た!!」みたいな思いで、ご縁を感じています。
 ディカペラが作る歌の厚みとか、歌にかける情熱とか、本当に素晴らしいので、私で良いのであれば、と引き受けさせていただきました。


――実際に新作『オール・イアーズ』を聴いて、どんな印象を抱きましたか?

平原綾香:最初に資料を読まず、情報を入れずにアルバムを聴いた後に、ドラムとか、シンセとかを使わず、全部声だけで表現していると知って、「そんなはずはない」ともう一度聴き直した時の衝撃が強かったです。2度目の衝撃はすごかったです。あまりに完成されているので、知らないで聴くと、声だけだとわからない人もいると思います。

――どんなところが衝撃でしたか?

平原綾香:まず歌がうまいし、アレンジも素晴らしいし、7人全員が違った声質のキャラクターを持っていて。まさにディズニーにいろいろなキャラクターがいるように、声のキャラクターが違うんですよね。さらにポップス、ジャズ、クラシック、R&Bなど音楽のジャンルも幅広く、なんでもできるマルチなアカペラグループであるところもすごいですよね。


――そもそも、というところでお聞きしたいのですが、アカペラはお好きですか?

平原綾香:よく聴いていました。もともと人の声そのものが大好きで、ファンクラブのかくし芸から始まったヴォーカル・パーカッションは、今ではコンサート・ツアーでお馴染みのワザになりつつあります。声だけで何かをやる、ということに昔から興味があり、レコーディングでも私の声だけを重ねる、多重録音を取り入れています。
 それからアカペラではないのですが、森山良子さん、新妻聖子さん、サラ・オレインさんと4人でラ・ディーヴァというグループを組んで、コンサートをしています。TV番組『ミュージックフェア』から生まれたグループですが、彼女達と歌うためにハーモニーの研究をしていたので、ディカペラのアルバムを聴いて、こんなアレンジがあるのか、こんな歌い方があるのかと、とても勉強になっています。ラ・ディーヴァは、ディカペラのライバルですね(笑)。

――ライバルは必要です(笑)。ところで、ディカペラを応援する動画コメントのなかで、「彼らの音楽は、ファンタジーであり、リアルでもある」と語っていますが、どういうことなのか、もう少し詳しく教えていただけますか?

平原綾香:たとえば、『塔の上のラプンツェル』の劇中歌「輝く未来」だと、ディズニー・プリンセスのような声で歌うので、まさに夢の世界にふわ~っと誘われる感覚になったりするんですが、一方で、『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』の劇中歌「私の願い」では<王子様なんていない>といった現実的な歌詞で、歌う女性も敢えてガサガサな声、まるで寝起きで歌うような声でリアルに歌っている。そういうことも含めて、「ファンタジーだけれど、リアルでもある」と話したのですが、考えてみれば、アカペラ自体がすごくリアルですよね。だから、ディズニーのファンタジックな歌を歌っても、リアルに感じるんだと思います。

――また、「聴いているだけで元気になれる、泣ける、一緒に歌いたくなる、踊りたくなる」とも話していますが、感情表現の面で感じることはどんなことでしょう?

平原綾香:感情面でもマルチですよね。私にとって、歌の、音楽の一番大切な部分って「共感できる」ことで、そこを目指しているんですけれども、共感できる音楽とは「涙が出る音楽」だと思っていて。でも、ただ涙が出るだけではなく、そこから何か連れ出してくれるような、引っ張り出してくれるような音楽が理想なんですね。
 ディカペラの新作は、こんなにもしっとりとバラードを聴かせてくれて、こんなにも元気にしてくれて。しかも巧なアレンジで、一見着飾っているようでいて、すごく自然体の歌なんですよね。音楽を純粋に楽しんでいるのが伝わってきます。この背景にあるのはなんだろうかと調べてみると、オーディションの際に人柄も審査の対象になっていたそうで、7人が仲良しらしいんです。それが歌にいい化学反応をもたらしているんだと思います。

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歌には心の助けになる力がある
ディカペラの音楽を通して、みんなを元気にしてくれる

――13曲の選曲についてはどう思いますか?

平原綾香:意外に知らない曲が入っているな、というのがポイントだと思います。『アナと雪の女王2』の大ヒット曲「イントゥ・ジ・アンノウン」もありますが、1970年の映画『おしゃれキャット』の曲があったりと、バランスよく新旧の名曲が収録されていますよね。主題歌ではなく、劇中歌だったから、あまり知られていない曲も入っていて。だからこそ、カヴァー・アルバムっぽく感じないんだと思います。世代によっては観たことがない作品の曲を、ディカペラのオリジナルと思って聴く人もいるんじゃないでしょうか。



――『グーフィー・ムービー/ホリデーは最高!!』の劇中歌「アイ・トゥ・アイ」とかも、日本ではあまり有名じゃないけれど、本人達が歌いたいと熱望した曲らしいんですよね。

平原綾香:なるほど~、なんでこの曲が入っているんだろうと最初、私も思いました。曲も、アレンジもカッコいいので、納得はしていましたが、歌から感じる熱量は、彼ら自身が歌いたかったからなんですね。


――13曲のなかで、平原さん自身が惹かれる曲というのはありますか?

平原綾香:2曲目の「王様になるのが待ちきれない」(『ライオン・キング』)ですかね。ディカペラの強みは、ヴォーカル・パーカッションの充実さにあると思います。リズムのある曲でまさに本領発揮になるというか。だから、この曲はワクワク感があり、アルバムを買って良かった~という気持ちにしてくれます(笑)。

――ファンの方にコラボして欲しいと言われたことがあるとのことですが、実際にコラボしましょう、となったら、平原さんは、どの曲を歌いたいですか?

平原綾香:映画『メリー・ポピンズ リターンズ』のエンディングソングの「幸せのありか」を歌いたいです。ディズニー作品の楽曲としてもっと多くの人に聴いて欲しいという気持ちがあるのがひとつ。そしてもう一つ。歌詞がいいんです。説教くさくなく、ストンと腑に落ちるというか、心に刺さる。ここにディズニー・マジックを感じます。

――さて、最後にまだディカペラを聴いたことがない、という人のためにあらためてアルバム『オール・イアーズ』の魅力を聞かせていただけますか?

平原綾香:今回のアルバムは、「力作」です。彼らの歌はもちろん、アレンジからミックスに至るまでメンバーの愛だけでなく、スタッフの愛も感じられる作品になっています。プロデューサーのディーク・シャロンがライナーで書いているようにぜひヘッドホンで聴いて欲しいと思います。細かい音にまでこだわっているのがわかるし、最先端の音の技術も活用していて、同じく彼のライナーに「最新の録音技術とデジタル・エフェクトを活用して、彼らの幅広いヴォーカル・テクニックがドラムやギター、ホーン、シンセサイザー等々に変換されている」とまで書いてあるのですが、堂々とここまで言ってしまうのがまたおもしろいですし、ディカペラの作品であると同時に、スタッフの作品でもあると伝わってきます。ここがアルバムのパワーの秘訣でもあると思います。みんながそれぞれ夢を叶えていて、スタッフも胸を張って「自分の作品です」と言えるアルバムを作っているのが素晴らしい。
 歌には心の助けになる力があって、自分自身を癒すことが出来る方法だと思っています。ディークもライナーの最後に「私達が何よりも望んでいること、それは皆さんが一緒に歌ってくれること」、そうすれば、「あなたはディカペラの8人目のメンバーだ」と書いていますが、彼ら自身が音楽を通して何をしたいかというと、みんなを元気づけること。なので、よりたくさんの方に聴いてもらいたいと思います。こんな大変な時期にディカペラがこうしてアルバムをリリースしてくれたことにホッと心安らぎ、ありがとうと言いたいです。

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