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<インタビュー>YOASOBIが語るユニット結成の経緯、音楽と小説を行き来する面白さ
「小説を音楽にする」という異色のコンセプトを掲げるユニット、YOASOBIが音楽シーンを大きく賑わせている
2019年12月に発表したデビュー曲「夜に駆ける」は、TikTokなどのSNSで注目を集め、今年1月にSpotify「バイラルトップ50(日本)」で1位をマーク。東京藝大デザイン科で学ぶ藍にいなが手掛けたミュージック・ビデオは累計2,500万回再生(2020年6月19日現在)を記録し、アーティストが自宅やスタジオから一発撮りを届ける「THE HOME TAKE」でのパフォーマンスも話題となった。ビルボードジャパンの総合ソング・チャート“HOT 100”では、6月1日付から3週連続で首位を獲得している。また、第2弾楽曲「あの夢をなぞって」は、フジテレビ系の情報番組『とくダネ!』6月度お天気コーナーMONTHLY SONGとして起用され、5月にリリースされた最新曲「ハルジオン」のチャート・アクションも好調だ。
2018年12月からボカロPとして活動してきたAyaseが作詞作曲を、現在は大学に通いながら、幾田りら名義でシンガー・ソングライターとしても活動するikuraがボーカルを務めるYOASOBI。ビルボードジャパンでは若き二人の才能にインタビューを行い、ユニット結成の経緯、二人のルーツにある音楽、制作のプロセスなど、話を訊いた。
YOASOBIの成り立ちと二人のルーツ
――コロナの影響でなかなか外に出られない状況が続きますが、YOASOBIとしては朝のワイドショーなどで拝見する機会も増え、お忙しくされているかと思います。お二人はそんな日々をいかがお過ごしですか?
Ayase:曲を作る作業は今までも家でやっていたことなので、仕事の環境はそんなに変わってないんですけど、飲みに行ったりはできないので、やっぱり外に出たいなって気持ちはありますね。息抜きの仕方はちょっと変わってきてるのかな。
ikura:私は大学のオンライン授業が始まってから、むしろ普段より忙しくなりました。オンライン授業ならではの課題が多すぎて、それをこなすのが大変です。
――では、YOASOBIというユニットがどのようにして生まれたのか、改めて教えてください。
Ayase:monogatary.com(モノガタリードットコム)という小説投稿サイトがあって、そこのスタッフさんから「小説を音楽にするユニット」をやりたいって話を僕が受けたことがきっかけでした。そこからボーカリストとか楽曲の方向性をチームで話し合って、Instagramで弾き語りの動画を発見したikuraに声をかけて、今に至ります。
――そもそもAyaseさんにオファーが来たのは何故?
Ayase:僕はボカロPとしても活動していて、去年の4月末、平成最後の日に「ラストリゾート」っていう曲をアップしたんですけど、その曲をたまたまスタッフさんが聴いてくださったみたいで。それでお声がけをいただきました。
ラストリゾート / 初音ミク
――ボカロ作品がきっかけだったんですね。ボーカリストの選出については何か基準などを設けていたのですか?
Ayase:最初は僕の声の好みいうか、実際に活動されているアーティストさんを引き合いに出したりして、こういう声だったら面白いんじゃないかっていう話はしていたんですけど、最終的にはそういうのを度外視して選びましたね。
――直観というか。
Ayase:そうです。
――ikuraさんは当時、オファーを受けた時にどう思われましたか?
ikura:最初は「小説を音楽にするユニット」っていうコンセプトがあまり想像できてなかったんですけど、AyaseさんがボカロPとして出していた曲を聴かせていただいて、すごい曲を書く人だなと思って、ぜひ一緒にやりたいって思いました。もともとシンガー・ソングライターとして活動していたので、それとは別にYOASOBIのボーカルでもあるっていう二面性も面白いなって。
――最初はお互いにどんな第一印象を抱きました?
Ayase:ikuraは思っていた通り、というか思っていた以上に透明感があるというか、純粋な感じの女の子だなって印象でしたね。
ikura:AyaseさんはSNSのアイコンでお顔出しをしていなかったので、最初はちょっと怖い人なのかなって思ってました(笑)。ボカロの曲もシリアスな感じの作品が多かったので。でも、実際にお会いしたら、優しくて気さくな方でした。
――そもそもお二人にはどんな音楽ルーツがあるのでしょうか?
Ayase:僕は小学生の頃、aikoさんだったりスキマスイッチさん、あとはコブクロさんとかEXILEさんみたいな、J-POPの第一線にいるアーティストさんを聴いて育ちましたね。そこからの影響が大きいので、ボカロの曲を作る時もボーカロイドのソフトを使ってJ-POPを作っているような気持ちです。
――なるほど。
Ayase:それはYOASOBIの音楽にしても一緒で、何か特別変わったことをやっているような気はまったくなくて。ストレートに最高なJ-POPを作ろうっていう意識は常にあります。
――バンドもやられていたんですよね?
Ayase:バンドではもう少し激しめのジャンルをやってました。
――以前ビルボードジャパンの企画に寄せていただいたプレイリストを見ると、Bring Me The Horizonとかも入っていたりして、メタルコアやラウド・ロックも通っているのかなって思っていました。
Ayase:そうですね。日本だとCrossfaithとかが出てきた頃の世代です。ほかにもマキシマム ザ ホルモンとか、SiMやcoldrainとか、そのあたりからの影響もあります。
――グローバルの先進的なアプローチなどを取り入れつつ、日本的な情緒やメロディの良さも打ち出しているような。
Ayase:間違いないですね。
――そういったJ-POP/ROCKなどの影響は、YOASOBIの音楽のどんなところに表出していると思います?
Ayase:それこそメロディ・ワークですね。さっき言ったようなJ-POPはもちろん、80~90年代の歌謡曲もよく聴くので、和風とまではいかなくとも日本人にとって聴き馴染みの良いメロディが好きで、YOASOBIのメロディ・ワークはそのあたりのルーツから来てると思います。ただ、サウンドに関してはおっしゃる通り、海外の最先端な音楽を踏襲したいなとは思っていますね。
――作成いただいたプレイリストだと、MAMAMOOやIZ*ONEなどのK-POP、あとはOZworld a.k.a. R'kuma、GeG、JP THE WAVYあたりは後者の系譜ですよね。
Ayase:まさしく。今は特にK-POPにハマっていて、トラックメークの部分ではすごく勉強になってます。
――ikuraさんは?
ikura:私は3歳までアメリカに住んでいたこともあって、幼少期から洋楽を聴いて育ちました。小学校の頃はディズニーチャンネルで色んな作品を見て、そのサウンドトラックを買って英語で完コピしたり。その頃の影響が今の自分の歌い回しにも出てるのかなって思います。
――なるほど。日本の音楽だといかがでしょう?
ikura:特定のアーティストさんがいるわけではないんですけど、父がフォーク・ソング好きで、ギターもそれがきっかけで教えてもらうようになりました。小学校から中学校ぐらいまではフォークとかカントリーをよく聴いていたので、ああいうシンプルな歌っていうのはルーツとしてあると思います。
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