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<インタビュー>yonawoが奏でる「新世代ネオソウル」の正体



インタビュー

  胸にゆっくりと沁みていくような、とてもロマンティックな歌が奏でられている。

 福岡出身の4人組バンド、yonawoのミニアルバム『LOBSTER』。昨年11月に配信限定リリースされた楽曲「ミルクチョコ」でメジャー・デビューを果たした彼らにとって、初の全国流通盤だ。

 「新世代ネオソウルバンド」というキャッチ・コピーで紹介されることの多い彼ら。荒谷翔大(Vo)の色気のある歌声、メロウで心地よいバンド・アンサンブル、洒脱なグルーヴには、たしかにネオソウルやR&Bの情感に通じるものを感じる。けれど同時に彼らの楽曲には、ロックやジャズなど様々な音楽的背景が感じ取れる。そして、その核には荒谷が書く楽曲に宿る独特の日本語の詩情があるように思う。

 今回のインタビューでは、ルーツから最近のお気に入りまで、中学や高校時代からの友達同士である4人が共有してきた音楽的背景とともに、バンドのこれまでを紐解いた。

Text by 柴那典

アークティック・モンキーズ好きの友達同士

――ミニアルバム『LOBSTER』、とても素晴らしかったです。まずはyonawoがどんな風にこの作品に至ったのかを訊ければと思うのですが、このバンドが始まってからどれくらい経ちますか?

荒谷翔大(以下、荒谷):結成してから2年半くらいです。

――集まった時に「こういう感じの音楽をやりたい」みたいな話し合いってありました?

田中慧(以下、田中):いや、そもそも「バンドしよう」って集まったメンバーじゃないんです。

斉藤雄哉(以下、斉藤):もともとあらちゃん(荒谷)が高校生の時から曲を書いていて。「バンドをやろう」ということになったときにはもう何曲か曲があったんですよ。それでスタジオで集まって、アレンジして、バンドの曲にしたという感じです。あまりミーティングとかはなくて、その時の自分の好きなものを出し合ったみたいな感じです。



yonawo - ミルクチョコ【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

――もともとの友達同士から自然にバンドが始まっていったのですね。

荒谷:僕も英語が達者なわけではないので、スタッフに翻訳を助けてもらいながら、文章でやり取りしたり、お互いにデモを送り合って、それに対してもう一方が別のアプローチを提案してみたり。ただ、特にヴォーカルの面では彼が率先して方向性を決めてくれたので、僕もそれをリスペクトして、彼の提案を基準にトラックを組み立てていきました。

斉藤:で、僕と(田中)慧とのもっちゃん(野元)は高校の同級生でした。

――バイオグラフィーによるとルーツにビートルズがあるとのことですが、どんな出会いだったのでしょうか?

荒谷:初めて買ったCDがビートルズだったんです。たしか小学生くらいの時に聴いてハマって。音楽はもともと好きだったんですけれど、ビートルズを好きになったのはジョン・レノンがきっかけです。

斉藤:僕は両親ともに音楽をやっていたので、小さい時からビートルズは知ってました。だから逆に好きになったきっかけみたいなものは全然なくて。当たり前のように家の中で流れていたし、ずっと歌っていたような感じでした。

――4人の共通するルーツはどういった音楽なのでしょう?

田中:もともと自分はアークティック・モンキーズとかストロークスとかヴァインズとか、00年代初頭のガレージ・ロックのバンドが好きで。ビートルズに関しては高校時代に知って、自分が好きなバンドのルーツの人たちなんだって知って、好きになった感じです。

斉藤:僕は中学性ぐらいの頃にUKロックにハマってました。アークティック・モンキーズをあらちゃんに教えてもらって、その頃にオアシスとかストロークスも知って。

野元喬文(以下、野元):僕は高校時代にバイト先でオアシスとかニルヴァーナとかを教えてもらったことがあって。その時はあまりピンときてなかったんですけど、そこから慧とか雄哉とかと友達になって、そういう音楽をちゃんと認識するようになった感じです。アークティック・モンキーズにハマったのは「One for the Road」のMVを見つけたのがきっかけだったんですけれど、それが衝撃的で。SNSで見かけて30秒で完全に持っていかれました。そしたら、その頃にもうみんなが集まってるグループで普通にアークティック・モンキーズの話をしていて。



Arctic Monkeys - One For The Road (Official Video)

――アークティック・モンキーズが大きかったんですね。では、荒谷さんが今のような曲を書き始めるきっかけと、その影響は?

荒谷:最初は英語で曲を書いていて、日本語の曲は1曲もなかったんですけど、高1か高2の頃に友達からはっぴいえんどの「風をあつめて」を教えてもらったのがきっかけです。ヨナオくんって人なんですけど。

――え? それがバンド名の由来になった?

荒谷:そうです。そいつに教えてもらって。それを聴いて、日本語の詞ってむっちゃいいなって思って。自分も書きたいと思って書き始めました。

――なるほど。yonawoの曲を聴いて、音楽性にはブラック・ミュージックやネオソウルの感触があったのですが、根っこのところに文学性や詩情のようなものがある感じがしたんです。それははっぴいえんどから連なる日本語の表現が背景になっていた。

荒谷:そうだと思います。


UKロックからブラック・ミュージックへ

――荒谷さんがyonawoを始める時には曲を何曲か作っていたということなんですよね。

荒谷:そうです。最初に曲を作ったのは高2くらいの頃です。

斉藤:最初にCDを自分たちで作ったのは高3の時ですね。あらちゃんと二人で打ち込みで作ったのが最初です。そのCDは友達に配っただけですけど。

――その頃の楽曲も今回のミニアルバムに入っているのでしょうか?

斉藤:「ijo」がそうですね。

――その時の曲は新作に収録されたものとは違うアレンジでした?

荒谷:めちゃめちゃ違います(笑)。たしかその頃はThe 1975にハマっていて、そんな感じのアレンジでした。



yonawo - ijo【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

――そこからも荒谷さんは曲を書き溜めていたのでしょうか?

荒谷:そうですね。高校を卒業したあと、1年だけバンクーバーに留学していてたんですけど、曲を書くしかすることがなかったから、ひたすら書き溜めてました。で、戻ってきてみんなと合流してバンドを始めたので、その時にもう曲はけっこうありましたね。

――バンクーバー留学時代の刺激ってどうでした?

荒谷:UKの音楽はずっと聴いていたんですけれど、その頃にディアンジェロとかを雄哉が教えてくれて。みんなで好きな音楽を共有するから、それで自然とR&Bを聴くようになっていった感じです。ダニエル・シーザーとかも聴いたりしてました。だから、徐々にいろんなものを聴くようになったという。

――荒谷さんがバンクーバーに行っている時も、例えばLINEグループとかで「最近これ聴いた? いいよ?」みたいなやり取りをしていたり?

斉藤:あったね。チェット・ベイカーとか。

荒谷:チェット・ベイカーはたしか雄哉の車に乗っていた時ですね。CDをかけてくれて「この人、誰?」ってなって教えてもらった。

――斉藤さんはそんな頃、どんな風にリスナーとしての興味の幅を広がっていったのでしょう?

斉藤:高校生の時にローファイ・ヒップホップが海外で流行ってたんですよね。それを聴いて好きになって、サンプリングのネタを漁ってたんです。そこからマイルス・デイヴィスとかジョー・パスとかを知って。僕はレコーディングの学校に2年通ったんですけど、そこで会った先生とも結構気があって。50代の人なんですけど、いろいろ教えてもらいました。ディアンジェロを知ったきっかけもその人です。そういう風にしてだんだん広がっていった感じです。

――なるほど。好きな音楽の好きなポイントが共通していたら、あまり年齢の違いって関係ないですもんね。

斉藤:そうですね。全然関係なかったです。

――野元さんはどうでしょう?

野元:あらちゃんがバンクーバーに行ってる時にjojiを教えてもらいました。そこからYouTubeでめっちゃいいプレイリストを見つけて。それのコメント欄にアーティスト名が書いてあって、そこから掘って、いろいろ探して聴いていきました。

――アークティック・モンキーズにしろ、チェット・ベイカーにしろ、ローファイヒップホップにしろ、jojiにしろ、「あれいいよね」って教え合うLINEグループが高校時代からずっと続いている感じでした?

田中:そうです。今も続いてます。

――なるほど、すごく納得しました。そういう4人だったら「バンドやろう」みたいなミーティングしませんね。

荒谷:(笑)そうですね。


「新世代ネオソウル」と称されるサウンドの成り立ち

――yonawoのいくつかの曲を聴いて、打ち出しとしてはネオソウルのテイストだけれど、それだけじゃない感じがしていたんです。軸にあるのは言葉とメロディで、今の時代にそれを伝えるサウンドとしてネオソウルのテイストが選ばれている、という。

荒谷:言っていただいた通りだと思います。歌詞と曲が最初にあって、それをみんな気に入ってくれているから一緒に音楽をしようということになったし、みんなそういう認識で音楽をやっていると思います。

――「ijo」には「いずれ皆死ぬさ」というフレーズがあったり、「しあわせ」とか「26時」にしても不穏さというか、心地よさと同時にそれがいつ無くなってしまうか分からない不安や喪失感のようなものがある感じがするんです。そういう危うい両面性が歌詞の言葉に表れている気がしていて。そのあたりはどう捉えていますか?

荒谷:最近、こういうインタビューでいろんな人と自分の歌についてお話しさせてもらって、それで気付いたんですけど、自分としては死生観というのが大きなテーマとしてあるんじゃないかと思います。常にコインの表裏みたいに生と死がある。生きることとイコールで死があるし、死ぬこととイコールで生きることがある。そういうものが自分として美的に感じるんだと思うし、自分はその美しいと思ったものを詞とメロディで表現しているんだと思います。

――荒谷さんが今おっしゃったことが核心なんですね。そういった歌詞とメロディの美しさを今の時代で一番引き立たせる方法が、今のyonawoのバンド・サウンドになっている。そういうことでしょうか?

荒谷:そうですね。そう言われて、すごく腑に落ちた感じがあります。

――それを踏まえたうえで、今、ネオソウルやローファイ・ヒップホップから至るジャズの再解釈、チルともローファイとも言えるサウンドのテイストを選んだ、そのセンスはどういう風に捉えていますか?

田中:R&Bやネオソウルの音楽から影響を受けて、コードの雰囲気もそれを取り入れているというのがあると思います。もともと「矜羯羅がる」という曲をあらちゃんが作っていた時はロック的な感じで。

斉藤:ストレートなコード進行だったんです。

田中:でも、今の「矜羯羅がる」はムーディーなコード進行、グローヴァー・ワシントンJR.の「Just the two of us」とかで使われているコード進行になっていて。そうすると歌詞の聴こえ方も歌のニュアンスも違ってくる。そういう感じもありますね。

荒谷:アレンジする時にみんなが気をつけていることは、ちょうどいい空白を作るというか、詰め込めすぎないということですね。それはどの楽器でも意識しているというか。みんなの共通した好みでもあるし、自分が作る曲に対して適切なアレンジだという共通した認識があります。

――アレンジに余白があるわけですよね。そして、歌詞の言葉にも決して何かを言い切らない余白がある。そういう意味でも言葉とサウンドが通じ合っていると言えるかもしれない。

荒谷:そうですね。本当にそう思います。



yonawo - 矜羯羅がる【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

――バンドのこの先に向けてのイメージやビジョンとしてはどんなものがありますか?

荒谷:今はみんなで新しい作品に向けて制作しているところです。

田中:サウンドの幅はもっと広げていきたいですね。使ったことのない楽器を取り入れたりもしています。

――ちなみに、最近「これいいよ」ってメンバーのみなさんの中でシェアした曲とかアルバムはありますか?

田中:小袋成彬さんの『piercing』は最高でしたね。

斉藤:マック・ミラーの新譜。あと、最近あらちゃんが玉置浩二さんをすごく聴いてるんですよ。もちろん存在は知ってはいたけど、ちゃんと聴いたことがなくて、聴いてみたら「すごくいい」って。

荒谷:最近、玉置浩二さんが大好きなんです。井上陽水さんを聴きはじめて、そこから「夏の終りのハーモニー」を知って、玉置浩二さんを聴きはじめました。

野元:あとは新譜じゃないですけど、ポーティスヘッドがすごく好きです。1stの『DUMMY』を教えてもらって、むっちゃハマりました。オーケストラと共演したライブもすごくて。影響を受けてます。

――小袋成彬、マック・ミラー、玉置浩二、ポーティスヘッド。見事に世代も国もバラバラなメンツが並びました(笑)。

田中:めちゃくちゃですね(笑)。

――でも、それがyonawoという一つのフィルターを通して出てきたらまた面白いものが出てきそうです。期待しています。

4人:ありがとうございます。


Interviewed by 柴那典

yonawo「LOBSTER」

LOBSTER

2020/04/15 RELEASE
WPCL-13179 ¥ 1,650(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.矜羯羅がる
  2. 02.ijo
  3. 03.しあわせ
  4. 04.26時
  5. 05.Mademoiselle
  6. 06.ミルクチョコ

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