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<インタビュー>目標はスタジアム・バンド! 音楽集団としてのジェニーハイ、上質なポップ・アルバムとしての『ジェニーハイストーリー』について



 川谷絵音がプロデュースを務め、4人組ロック・バンド、tricotの中嶋イッキュウ、お笑い芸人の小籔千豊、くっきー!(野性爆弾)、そして現代音楽家の新垣隆がメンバーとして名を連ねる異色混成バンド、ジェニーハイ。2018年10月にデビュー・ミニアルバム『ジェニーハイ』をリリースし、各地の夏フェスにも登場、音楽シーンを大いに賑わせたこのバンドが、ついに1stフルアルバム『ジェニーハイストーリー』を発表。今作の発売前週である11月22日、メンバー5人は都内某所に集い、合同取材会でのインタビューに応じた。本稿では前半で合同取材会での内容をレポート、後半では個別インタビューの内容をお届けする。

ガンプラというよりゾイドですよね



 

 ご存知の通り、ジェニーハイのメンバーはそれぞれが個別の活動を展開している。いずれもプロフェッショナルの現場に身を置き、そのスケジュールも濃密だ。この日のように5人全員が一堂に会すること自体、非常に稀なのである。制作過程を振り返り、「こんなにスケジュールが合わないバンドもなかなかいないし、レコーディングもそれぞれ別の日にやったので、制作費が普通のバンドの10倍くらいかかってしまった。50万枚くらい売らないと…」と話した川谷。indigo la End、ゲスの極み乙女。をはじめ、いくつものバンドやプロジェクトに参画する川谷に「本当に大変だった」と言わしめるジェニーハイというキメラ・バンドは、それだけ一挙手一投足に膨大なエネルギーを要するということだ。小籔千豊は自身のバンド、吉本新喜劇ィズのドラマーとしても活動するが、やはり本業はお笑い芸人。「新曲がくると背筋が凍る。どれも本当に難しい曲で。(今作は)努力の結晶になった」と苦労を語った。

 

 制作の大きな障壁となったスケジュールの問題だが、結果的にプラスに働いた側面もある。中嶋が「前作は曲数が少ない中でもバラエティに富んでいたけど、その時は“ジェニーハイにどんな音楽が合うか分からないから試した”と川谷Pが言っていた。なら、1stフルアルバムを作るとしたらどんな作品になるのかなって思っていたら、半分ぐらいがラップになっていた」と話した通り、今作ではバンド演奏による楽曲の中に混じって、打ち込みのサウンドでメンバーがラップを披露するナンバーが散見できる。



ジェニーハイ『ジェニーハイラプソディー』


 

 これらのラップ曲は、前作以上にサウンドの幅が広がった今作においても大きな聴きどころで、アルバムを通して聴いた時の聴き心地をいい意味で乱すスパイスになっているが、これについて川谷は「バンドのサウンドだけじゃ終わらないからラップの曲が増えた」と種明かし。身も蓋もない吐露で経緯が明らかとなった形だが、その仕上がりはさすがのハイクオリティで、例えば「ヘチマラップ」は、現行のUSヒップホップを思わせる、ミニマルなビートと鬱屈したサウンドの本格派ラップ・ナンバー。リリックは社会風刺的な内容となっているが、その題材に「ヘチマ」をチョイスするセンスもまた規格外だ。さて、前作のインタビューでもラップへの苦手意識を語った新垣だが、今作の手応えについて訊かれると、「少しずつ上達してます。最終的には自分が一番上手くなりますのでよろしくお願いします」とコメント。いつかマイク片手にキレキレのラップを披露する現代音楽家の姿を見る日がくるかもしれない。




 

 今作の制作において、各パートのアレンジは川谷のほか、休日課長(ゲスの極み乙女。/DADARAY/ichikoro)、佐藤栄太郎(indigo la End / ichikoro)、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。/ichikoro)といった布陣が参加。レコーディングでもindigo la Endのドラマー、佐藤栄太郎のサポートを受けた小籔は、「僕は100回ぐらい録り直ししてもいいんですけど、あの人らは帰りたいんやろなっていうプレッシャーがあって、胸が痛くなりました(笑)。でも、レコーディングを通して上達していく実感があるので、僕としては大変ありがたかった」と感謝を述べ、くっきー!は「レコーディングってすごく楽しいですよね。完成していく過程を目の当たりにするというか。完成して曲が動き出す感じがガンプラというよりゾイドですよね。だから僕、レコーディングのことゾイドって言ってるんです」と独特な言い回しで制作の日々を振り返った。

 

 そんな特異な成り立ち以上に、ウェルメイドな音楽アルバムである点で、あらゆる音楽リスナー必聴の1stフルアルバム『ジェニーハイストーリー』。本作をもって、ジェニーハイはさらに個性の融点を高め、唯一無二のバンドへと変貌した。「ガッキー(新垣)って寡黙じゃないですか。でも、僕と川谷Pが将棋してるのを見て、“そこ違うと思います”って喋りかけてくるんです。それで一度、Pが“ちょっと新垣さん黙っていてもらえます!?”ってキレかけたことがあって。その時に打ち解けたなって思いました」とくっきー!。愛憎こもごも、強すぎる5つの個性は時に相反し、時に融和しながら相乗効果を生み出し、やがて未だかつて類を見ない音楽集団へと成長していくに違いない。

 

 なお、この合同取材会の模様は、Warner Music JapanのYouTubeチャンネルにてライブ配信されたほか、現在もアーカイブ視聴が可能となっているので、ぜひチェックしてほしい。



ジェニーハイ 1stフルアルバム合同取材会ライブ配信

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ジェニーハイ「ジェニーハイストーリー」

ジェニーハイストーリー

2019/11/27 RELEASE
WPCL-13148 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.シャミナミ
  2. 02.ダイエッター典子
  3. 03.不便な可愛げ feat アイナ・ジ・エンド(BiSH)
  4. 04.ジェニーハイラプソディー
  5. 05.プリマドンナ
  6. 06.ヘチマラップ
  7. 07.グータラ節
  8. 08.愛しのジェニー
  9. 09.バレンタイン泥棒
  10. 10.まるで幸せ

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