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<インタビュー>THE YELLOW MONKEYは“ヴィンテージ”な存在へ ~結成30周年のロック・バンドが放つ、原点回帰と進化を示す新作



 同じ“古さ”を形容する言葉でありながら、「オールド」と「ヴィンテージ」にはニュアンスの違いがある。前者は時間を置き去りにした、懐かしさに重きが置かれたもの、対して後者は古きから磨かれ続け、使い込まれ続け、風味も加わった現行感のある逸品を指すことが多い。

 現在のTHE YELLOW MONKEYは明らかに後者だ。四半世紀以上に及ぶ熟成期間を経て、今年12月に結成30周年を迎える彼らは、明らかに「ヴィンテージ」な存在となっている。その証明として、今年4月にリリースされた19年ぶりオリジナルアルバム『9999』は、ビルボードジャパンのダウンロード・チャートで初登場首位を獲得、そして同作を引っ提げた全国アリーナ・ツアーでは、トランプのマークになぞらえた4種類のセットリストを用意し、全国15か所27公演を行うなど、今年に入ってからの彼らの活動には、まさしく現役バンドとしてのバイタリティが漲っている。なお、その『9999』は先日、『輝く!日本レコード大賞』最優秀アルバム賞を受賞したことが発表された。

 そしてこのたび、前述のツアーで獲得した糧と自信、そしてファンへの想いをヴィンテージ感満載で味付けした新曲「DANDAN」を配信開始。また12月には、『9999』に収録音源+追加4曲を含む最新マスタリング音源、ライブ映像、豪華ブックレットを同梱した完結版とも言える『30th Anniversary『9999+1』-GRATEFUL SPOONFUL EDITION-』をリリースするほか、自身初となるドーム・ツアーもスタートする。何ものにも代えがたい「ヴィンテージ」の魅力を宿し、それでもなお研鑽を積み続けるTHE YELLOW MONKEY。その現在地を示す新作と最新ツアーについて、メンバー4人に語ってもらった。

新しいTHE YELLOW MONKEY

――最新アルバム『9999』のリリースから半年が経ち、2019年も残すところ2か月となりましたが、今年の活動を振り返ってみて、皆さんはどんな手応えを感じていますか?

吉井和哉(以下、吉井):再集結以降では初めてのフルアルバムになる『9999』を出して、それを引っ提げた全国ツアーも回ることができたので、ようやくバンドが新しい形になったなって思います。もともと自分たちはそういう活動を続けて成長してきたので、ここにきて次の段階に上がれたなと。今回のツアーは「この歳になってもまだ成長できるんだ」って改めて確信できた日々でもありました。

廣瀬洋一(以下、ヒーセ):再集結してから去年までにも新曲はリリースしたし、それをツアーで披露したりもしましたけど、やっぱりどことなく今の自分たちを出し切れていなかった実感もあって。でも今回のツアーでは、新作(『9999』)に入っている曲たちがちゃんと進化していく感じがしたんですよね。その手応えを再集結後にも体感できたことはとても嬉しかった。間違いなくバンドの成長を促したと思うし、『9999』が自分たちにとって大事な作品であったことに改めて気づかされましたね。

――新曲群をこれまでのレパートリーと融合させながらプレイしてみても、落差や違和感などを感じることはなかった?

菊地英昭(以下、エマ):全くなかったですね。やっぱり再集結以降はある種のお祝いムードもあって、ライブではどうしても昔の曲が中心になっちゃっていたんですけど、この『9999』を出したことで、ようやく最新の自分たちをアルバム全体で表現することができた。それによって、昔の曲たちもまた違った聴かせ方ができるようになったんです。ステージに立っている自分たちの気持ちも新鮮でしたからね。非常に良い相乗効果を生み出せたと思います。



吉井和哉(Photo by 渡邉一生)



――お客さんのリアクションはいかがでしたか?

菊地英二(以下、アニー):こと新曲に関してはライブ初披露だったこともあって、昔の曲たちに比べてじっくり聴く態勢のお客さんが多いだろうと予想していたんです。ところが、全くそんなことはなくて。しっかりアルバムを聴き込んできてくれたんでしょうね。過去の曲に交えて演奏しても何の遜色もなく、同じように盛り上がってくれました。

吉井:そうそう。中には新曲のほうが盛り上がる場面もあったり。あれは嬉しかったし、自信にもなったよね。

アニー:そう考えると『9999』を完成させたことは、改めてこのバンドにとって大きなことだったなって思います。アルバムって、それぞれの時代に置いていくマイルストーンのような存在でもあるじゃないですか。今年に入るまで、単発シングルはリリースしてましたけど、アルバムという大きな石は置くことはできていなかった。なので、なんとなく浮遊感みたいなものを抱いていたんですよね。ちゃんと活動はしているけど、バンドとしてまだ着地できていない感覚というか。でも、ようやくこの2019年という時代に『9999』という新しい大きな石を置くことができた。そのおかげで、バンドがより地に足をつけて活動することができるようになったと思います。

吉井:アルバムのリリースはもちろん、ツアーを経たことで得たものは大きかったですね。THE YELLOW MONKEYの吉井和哉って、自分の中では2001年の解散ライブをもって消滅したと自覚していて。その後は違うベクトルでソロ活動を始めて、それでもやっぱりこの3人が愛しくて再集結してもらった。その時点で「もう一度THE YELLOW MONKEYの吉井和哉になるため、昔に戻るのか?」っていう葛藤は正直すごくありました。でも、アルバムのリリースとツアーを経て、あの頃と同じ自分に戻るのではなく、全く新しいTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉を誕生させることができた気がしたんです。



菊地英二(Photo by 渡邉一生)



――『9999』を携えた全国ツアーは、2016年の再集結以降では最大規模となるものでしたが、ハート、ダイヤ、クローバー、そしてスペードといった、トランプのマークになぞらえた計4種類のセットリストが用意されたことも特徴的でした。

吉井:その4種類のセットリストに関しては、もちろんちゃんと理由があって。例えば同じセットリストで何か所も回るツアーだと、何度か来てくれるお客さんやプレイしている自分たち自身、無意識のうちに繰り返しのルーティーンになっていってしまうんじゃないかって恐れがあったんです。でもセットリストを毎回変えれば、バンドとしては常に緊張感を持って臨めるし、お客さんにとっても新鮮ですよね。

アニー:持っている曲が多いだけに、最初は「これは覚えるの大変だな」って思いましたけどね。

ヒーセ:でも、不思議とやっていくうちに楽しくなってきたよね。

吉井:あと、今回のツアーは各地によって会場の規模が違ったんですよ。だから会場によって入るセット、入らないセットがどうしても出てきちゃう。その問題を4種類のメニューを用意することでカバーしたんです。色んな意味で斬新な発想でした。早くみんなマネして欲しい(笑)。ただ、当の本人たちはものすごく大変でしたけど(笑)。

アニー:新曲も会場によって演奏する位置を変えていたので、それぞれ響き方やお客さんの受け取り方が違ったのも面白かったです。例えば「この恋のかけら」はアルバムの1曲目なんですけど、ライブでは最初にやる日もあれば、アンコールの最後にやる日もあったり。だけどその都度、オープニングとして相応しく響いたり、最後を締めるのに相応しく響いたりするんですよね。同じ曲でも、やりようによってどうにでも変化させることができる。与えられた条件や環境の中でいかに最大限でパフォーマンスするか、みたいな意味でもミュージシャンとしての真価を見せることができたと思います。



グランメッセ熊本(Photo by 渡邉一生)



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THE YELLOW MONKEY「30TH ANNIVERSARY 9999+1 GRATEFUL SPOONFUL EDITION」

30TH ANNIVERSARY 9999+1 GRATEFUL SPOONFUL EDITION

2019/12/04 RELEASE
WPZL-31703/4 ¥ 8,580(税込)

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Disc01
  1. 01.ボナペティ -OPENING-
  2. 02.この恋のかけら
  3. 03.天道虫
  4. 04.Love Homme
  5. 05.Stars (9999 Version)
  6. 06.Breaking The Hide
  7. 07.ロザーナ
  8. 08.Changes Far Away
  9. 09.砂の塔
  10. 10.Balloon Balloon
  11. 11.Horizon
  12. 12.Titta Titta
  13. 13.ALRIGHT
  14. 14.I don’t know
  15. 15.ボナペティ -ENDING-
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