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Billboard JAPAN × BASS MAGAZINE ヴィクター・ウッテン 来日記念特集

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 ビルボードジャパンとベース・マガジンがタッグを組み、来日を直前に控えたベーシストたちに迫る特別企画。第三弾は2019年3月末に来日する5度のグラミー受賞を誇り現代最高峰のベーシストとの呼び声も高いヴィクター・ウッテン。ベース・マガジン編集部の中村健吾氏に、ロータリースラップ、タッピング、ハーモニクスなど様々な奏法を高次元の技術で自在に操り、グルーヴ感とメロディアスさを際立たせる演奏でこれまでの来日公演でも観客を圧倒してきた名ベーシストのプレイを解説してもらった。

<Billboard JAPAN × BASS MAGAZINE 特別企画>
第一弾:ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーション 来日記念特集
第二弾:タル・ウィルケンフェルド 来日記念特集

驚異の音数による高速スラップ

 ヴィクターのプレイでまず注目されるべきは、やはりその超絶テクニックだ。特に、スラップ奏法(右手の親指で弦を叩き、人差指などで弦を引っ張って音を出す弾き方)のなかでも難易度の高いテクニックである「ロータリー奏法」を、飛躍的に進化させたのが彼である。ロータリー奏法は右手をひと振りする1アクションで3音を発音することが可能な技だが、ヴィクターの場合はそれが4音にも5音にもなる。しかも、それを驚異的な速さで行なうのだ。映像を観ていて「手の動きと聴こえてくる音の数が合っていない」と感じた場面があったのでは? まさに視覚と聴覚を大混乱に陥れるマジカル・プレイの世界最高峰だ。その圧倒的な迫力は痛快のひと言。


美しく響くハーモニクス奏法

 「ベースの音」というと、低く地味な音だと思われる方もいるかもしれない。しかし、「ハーモニクス奏法」という弾き方で音を出すと、ベースでも「ポーン」という美しくキレイな高い音で演奏することができる。ヴィクターはハーモニクスでメロディを奏でるほかに、ベース・ラインとバック・ビートそして主旋律を同時に演奏する際のコード部分など、その使い方が非常に秀逸。ベース1本でプレイしているとは思えない音楽的に豊かな響きは、ベースを単なる「伴奏楽器」から、それ単体で完結する「ソロ楽器」へと進化させている。動画で観ると簡単そうに弾いているが、このハーモニクス音はキレイに出そうと思うとけっこう繊細な技術が必要なのだ……。


両手タッピングの妙技

 ハーモニクス奏法の美しいイントロに導かれて始まるビートルズのカバー曲。ここでは大半を「両手タッピング奏法」で奏でている。弦楽器は(右利きの人であれば)左手で出したい音程を押さえ右手で弦をハジいて音を出すのが通常なわけだが、「両手タッピング」はその名のとおり、左手と右手で(もっと言えば、それぞれの指で)別々の弦を独立して叩くことで、異なる音程を一度に出すことが可能。これにより、1本のベースでメロディと伴奏を同時に演奏できるわけだ。さらにここでのヴィクターは、もうひとひねり加えて、右手と左手の組み合わせ方を変えることで何パターンもの伴奏を披露し、1曲を飽きさせない構成にしているのも見事だ。


ひとりでも紡ぎ出せる極上グルーヴ

 「派手なことができるからウマい」とは限らないのが音楽の世界。やはり聴いていて心地よくなければ、どんなにたくさんの音数で演奏できたとしてもただの大道芸となってしまう。その点ヴィクターは、派手なことをしなくても思わず唸ってしまう演奏を届けてくれるという意味でも、まさに一流。この動画はベースだけの演奏にもかかわらず、思わず体が動き出してしまわないだろうか。この躍動感に満ちたリズミカルな演奏は、彼の天性のリズム感の良さはもちろん大きな要素ではあるが、要所で挿入されるドラムのスネアに相当するアクセント音や、メロディの合間にしっかりと挟まれるベース・ラインなど、フレーズ構築の巧みさも聴きどころだ。


なによりも「音楽」を大事にした演奏

 ヴィクター・ウッテンというベーシストは、確かに世界最高峰のテクニックを持っている。しかし彼が本当にすごいのは、それをただ見せびらかすのではなく、すべて「音楽」そのものへと還元している点だ。過去にヴィクターはこう話している。「常に覚えておかなければならないのは、“音楽が第一にある”ということだ。(中略)伝えたいことやプレイしたいことが先にあって、テクニックはその次ということ」(ベース・マガジン2018年4月号)。彼の演奏技術を詰め込んだこの動画を観れば、その演奏がベースを弾く人だけが理解できるようなマニアックなものではないとわかるはず。来たる来日公演で、音楽を通してヴィクターがどのようなメッセージを放つのか、ベーシストはもちろん音楽ファンも必見だ。

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