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ダン・ペン&スプーナー・オールダム来日記念特集~アサキチが語る、2人の魅せる粋なサウンド~



ダン・ペン&スプーナー・オールダム

 サザン・ソウルを代表する伝説的ソングライター・デュオ、ダン・ペン&スプーナー・オールダムが、3月にビルボードライブで待望の来日公演を行う。この公演を前に、スワンプロックをはじめ、アメリカンルーツミュージックをこよなく愛する、シンガーソングライターのアサキチ氏に、彼らの音楽との出会いや魅力を綴ってもらった。(TEXT:アサキチ)

ダン・ペン&スプーナー・オールダムが魅せる「引き算の美学」は“粋”を感じる

 ダン・ペン&スプーナー・オールダムが、遂にビルボードライブにやってくる。60年代に南部R&Bの拠点となったマッスル・ショールズのフェイム・スタジオを中心に、アレサ・フランクリンの「Do right woman, do right man」や、オーティス・レディングの 「You left the water running」、ジャニス・ジョップリンの「A woman left lonely」、パーシー・スレッジの「It tears me up」などの珠玉の名曲を生み出し、スタジオ・ミュージシャンとして活躍してきた、アラバマのレジェンドが2人揃って、1999年以来の来日となる。近年では、映画『黄金のメロディ マッスルショールズ』での出演も記憶に新しいかもしれない。因みに、彼らは、2019年【ソングライターの殿堂】入りにノミネートされている。

 僕は、70年代初期のスワンプロックに魅了され、和製スワンプロックバンド「ぬかるみ天国」を結成し、FM OH!(FM OSAKA 85.1)『アサキチのぬかるみアワー ~Take you to the SWAMP~』というスワンプロックを中心にアメリカンルーツミュージックを紹介するコアなラジオ番組をやっていたが、リアルタイムに彼らの音楽に接していた訳ではなかった。僕をスワンプロックの世界に誘ったのは、大好きなサザンソウルシンガー、ジェイムス・カーの「Dark end of the street」の作者がダン・ペンであったというところからである。



▲James Carr - The Dark End of the Street (Official Audio)

 中学時代から色んなブラックミュージックを聴きあさり、「Black is beautiful」「Grooveこそが最高!」と思っていた僕が、「Dark end of the street」をきっかけに、ダン・ペン&スプーナー・オールダムがUKとアイルランド各地でニック・ロウのツアーのスペシャルゲストとして参加したライブの名盤『Moments from this theatre』(1999)を初めて聴いた時、その空気感とゆるさに、完全にノックアウトされた。

 ダン・ペンの芳醇な声とシンプルな生ギター(マーティンD-45)、そしてそれを支えるスプーナー・オールダムの音数を控えたアーシーなエレピ(ウーリッツァー)と、ユーモラスとも感じる絶妙なコーラスは、不要なものを全てそぎ落とした、いわゆる「引き算の美学」である。素材のもつ本来の良さと力強さが自然に心に沁み入り、包み込まれる。僕は、この新鮮な感覚を「粋」と感じる。「音と音との隙間」、小説でいう「行間」の部分を楽しむ、そんな『Moments from this theatre』は、僕にとって新しい方向を示す、まさにバイブルになった。

 それ以降、彼らのアルバムはもちろん、色んなアメリカンルーツミュージックを聴き続けている。このような経験から、ブラックミュージックに興味のある方々にも、彼らのライブへ是非一度足を運んでいただきたい。

 70歳代後半を迎える彼らが、今でも元気に演奏しているだけでも嬉しい事なのに、今回は、ビルボードライブ大阪と東京でライブをしてくれる。これは、もう奇跡としか言いようがない。僕は、もちろん大阪と東京の両方で観る予定にしているが、オーバーオールで埋め尽くされるビルボードライブを見るのも、楽しみのひとつである。



▲Dan Penn & Spooner Oldham - I'm Your Puppet / Cry Like A Baby (Live in London, 2006)

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