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スクリレックスが語る、宇多田ヒカルとの出会い&『キングダム・ハーツ』への思い「公開された時は夢が叶った感じだった」
2019年1月28日付の“JAPAN HOT 100”で6位に初登場し、最新の総合チャートで3位に順位を上げた宇多田ヒカル&スクリレックス「Face My Fears」は、2月2日付の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”でも98位を記録、ワールド・デジタル・ソング・セールス・チャートでは首位を獲得した。日本人名義の楽曲としてはピコ太郎「PPAP」以来約3年ぶり、宇多田にとっては初の米ビルボード“Hot 100”入りという記念すべき1曲となった。
そんなこの曲を宇多田ヒカルとともに作り上げたスクリレックスに米ビルボードがインタビューし、宇多田との仕事や『キングダム・ハーツ』に対する思い、そして今後の予定などについて聞いた。
TOP Photo: Getty Images Entertainment
スクリレックスは、2011年に宇多田のファンであることとアルバム『ULTRA BLUE』が大好きなことをTwitterで明かしている。その際、「もし@UtadaHikaruに会うことがあったら、2つのことを伝えたい。1. 日本語(だけ)でツイートするのはやめて…そして2. “ULTRA BLUE”が大好きだということ」とツイートしていた彼は、インタビューで「その当時、よくエレクトロニック・ミュージックを聴いていた、ダフト・パンクとか。だから、初めて“Simple & Clean”を耳にしたとき、自分にとって、やや変わっていて、ポップよりな曲だと思った」と話し、「瞬時にすべての要素とコネクトした。メロディ、詞、エレクロニック・サウンドで踊れるのにエモーショナルだったこと……これが僕が彼女について初めて知ったきっかけだった」と明かしている。
if i ever met @UtadaHikaru i'd tell her two things... 1:Stop (only) tweeting in Japanese... and 2: I love ultra blue
— Skrillex (@Skrillex) August 16, 2011
その翌年にドイツで開催されたフェスティバルの楽屋で偶然宇多田の方から声をかけられたことが本人との初めての出会いで、その後も友人関係が続いていたことから今回のコラボも実現したという。
また、熱烈なゲーマーではないものの、『キングダム・ハーツ』が発売された時14歳だった彼は、PS2で最初の2本をリアルタイムで楽しんだ思い出があり、大好きだったと振り返っている。彼は、「音楽があまりにも象徴的で……曲を車の中で何度も何度もかけたくなるよね。深い感情のつながりがそこにはある」とシリーズを彩る楽曲について語っている。
さらには、「曲、メロディ、エモーション、詞が、どのようなフィーリングである必要があるか、理解していた」ので曲作りは困難ではなかったと話し、「もちろん自分の見解が唯一で、それが正しい見解であると言っているわけではないけれど、自分に訴えかけてくるものがあったんだ。これは、僕ら(『キングダム・ハーツ』ファン)全員が、理解している言語で、心の琴線に触れるものなんだ」と説明している。
「あれがリアルなところから生まれたことは確かだよ」
−−『キングダム・ハーツ』の音楽の何がこれほどプレイヤーの心に深く響くのだと思いますか?
スクリレックス:僕にとっては、若かった自分、10代で初めてあれを経験していたころを瞬時に連想させる何かがある。あれをつけると、あの世界にいるような気持ちになる。クリエイターとしては、ある意味自分がやることのすべてが人生で好きなものの合成だ。「Face My Fears」では、受け継がれてきたそういう思いを継続できれば、という目標を掲げていた。
−−宇多田ヒカルとのコラボはどうやって実現したのですか?
スクリレックス:実は2016年に宇多田から連絡をもらって、「Don’t Think Twice」のリミックスを頼まれたんだ。すごくワクワクしながらステムをAbletonにロードしたんだけど、「やべ、何をすればいいのかわかんねーや」ってなってしまった。あの曲は僕がいじるには少しばかり難しすぎた。あの曲そのものはすごく好きだったけれど、あのジャジーなメロディがダンス・リミックスには向いていないと感じた。僕だとあれを十分に表現できないと思った。
その翌年、僕と彼女は偶然同じころに、ロンドンにいた。僕は何か別のポップ・ソングを(プロデューサーの)Poo Bear (プー・ベア)と書いていて、彼女がいるって聞いたからメールで連絡を取り合った。遊びで一緒に曲を作ってみようってことになったんだ、どうなるか様子見って感じで。僕たち3人はスタジオに入ってから1時間も経たないうちに「Face My Fears」を書き上げた。
−−どうやって彼女と出会ったのですか?
スクリレックス:僕たちの出会いはクレイジーだったよ、ぶっ飛んでた!2012年にドイツの【Rock am Ring】っていうヘビー・メタルのフェスティバルでプレイしたんだけど、自分のステージが終わったあと、バックステージのイエーガーマイスター(Jägermeister)ラウンジにいたんだ。僕をスポンサーしてくれていたから、文字通りイエーガーマイスターのロゴ入り帽子もかぶってた(笑)。友人たちとのんびり酒を飲んでいたら、肩をトントンって叩かれて、振り向くと女性に、「ヘイ、スクリレックス。とても素晴らしいショーだったよ。私、あなたの大ファンなんだ」って言われて、僕は、「あそう、そりゃよかった!」って答えた。名前も聞かずに数分間話してからやっと聞いたら“ウタダ”って言われて、「え、ちょっと待って、宇多田ヒカルなの?」ってなった。スターを前に感激したよ。
バックステージ・エリアはすごく暗くて、アーティストたちがそこら辺でブラブラしてたんだけど、そんなところに宇多田ヒカルがいるなんて思わないし。だって、ドイツのヘビメタ・フェスだよ?クレイジーだった、あまりにもランダムで。フェスに来てた彼女が、僕のステージを見てくれたんだよね。僕たちは友達になって、その後も間をおいて何度か遊んだりしたよ。僕が何年も前から彼女のファンだったってことを彼女は知らなかったから、結構クールだったな。
−−「Face My Fears」への反響はとてもポジティブです。長年の『キングダム・ハーツ』ファンとしてどんな気持ちですか?
スクリレックス:予告編が公開された時、タイにいた。未来のタイムゾーンにいたから心の準備ができていなくて、めちゃめちゃ興奮したよ。まだ見てなかったんだよ、曲は2017年の終わりごろに納品してあったんだけど、もう1年くらいイントロのアニメと曲を合わせるのを待ち続けていた。公開された時は夢が叶った感じだった。素晴らしい瞬間だった。
そのあとは、多数のYouTubeのリアクションを見たり、人々が初めてあの曲を聴いたり映像を見たりする様子だったり、何が起きているのかわからないまま途中で泣き出したりする姿を見て、なんだかすごかった。ファンはあのシリーズにとても強いつながりを感じているから、(自分としては)『キングダム・ハーツ』のコミュニティとつながることができて、みんなの感情のスイッチをうまい具合に押すことができて、たくさんのポジティブな反応をみることができたのは素晴らしかった。十分に表現できた。あれがリアルなところから生まれたことは確かだよ。
−−ファンはスクリレックスのニュースを楽しみにしています。現在は何に取り掛かっていますか?
スクリレックス:なんかさ、ニュー・アルバムはいつ出るのかってよく聞かれるんだけど、変なんだよね、だってアルバム作ってるなんて一言も言ったことないから(笑)。ここ2年ほど、ちょっと距離を置こうとしてきたんだ。自分の未来、大人としての人生に向けて準備する時間が欲しかったというか、自分のキャリアをどうアプローチするか考えたかった。少しの間、人間らしい生活がしたいんだ。近日中に新しい音楽は出すけれど、有機的にやろうとしてる。と同時に、僕は音楽制作が大好きだから、仕事はもちろんしているよ。春にはラスベガスで常設公演をやるし、コンサートも増やし始めているけれど、流れに身を任せてしばらくは一つの場所にとどまろうとしている。今のところそれが目標なんだ。
Q&A by Erica Russell / 2019年1月31日Billboard.com掲載
Face My Fears
2019/01/18 RELEASE
ESCL-5150 ¥ 1,426(税込)
Disc01
- 01.Face My Fears (Japanese Version)
- 02.誓い
- 03.Face My Fears (English Version)
- 04.Don’t Think Twice
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