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小坂忠×佐藤タイジ(シアターブルック)共演LIVE直前!対談インタビュー
日本のソウル・ミュージックのレジェンドとして多大なリスペクトを集める小坂忠。2016年に結成30周年を迎え、ますますバンドとしての強度が増しているシアターブルック。昨年9月、【中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018】での熱いステージが大きな話題になったこの両者の共演ライブが、2月15日にビルボードライブ東京へと場所を移して行われる。小坂忠と佐藤タイジ、ふたりに共通する音楽への思いとは? タイジがDJを務めるラジオ番組『Love On Music』収録の前に、InterFM897のスタジオで対談してもらった。
音楽は死を超越してるんやなって、わかったんです(佐藤タイジ)
――お二人が初めて会ったのはいつなんですか?
佐藤タイジ:この番組(InterFM897『Love On Music』。2016年10月29日の放送)にゲストで出てもらったのが最初でしたね。
小坂忠:うん。そのときも一緒に演奏したよね。
佐藤:「You really got a hold on me」を一緒にやりました。
――昨年は「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018」で共演されました。いかがでした?
佐藤:60分くらい、がっつりやったんですけど、すげぇ楽しかった。オレ、小坂さんの横でギター弾くのが、ほかの誰の横で弾くよりも楽しかったんですよ。一番気持ちよかった。だって、横で何を弾いても小坂さんは……。
小坂:「小坂さん」って呼び方、ちょっとカタいんじゃない?(笑)
佐藤:あ、そうですね(笑)。忠さんは、オレが横で何を弾いていても、まったくぶれない。忠さんの音楽のかっこよさは変わらない。だから何をやってもいいんだって思えて。すごい自由にやれたんですよ。
――忠さんはどうでした?
小坂:楽しかったですよ。だって好きにやれるんだもん。
――お二人とも自由を感じながらステージに立っていたわけですね。
佐藤:オレは本当にそうだった。だから楽しくて楽しくて。あのあと忠さんが夢に出てきたぐらいですから(笑)。いいすか、その夢の話をして。
小坂:うん。
佐藤:なんか近くに大学があって、「小坂忠があそこの大学で授業するらしいから行ってみよう」ってなって、昔バンドを一緒にやってたやつとかと一緒に観に行く夢なんですよ。で、行ってみたら、廃墟みたいにボロボロの大学で、なかの本棚もデスクも本もボロボロ。そこに「オレが小坂忠だ!」って人が現れるわけ。でもすげえ長髪で髭を蓄えてて、「あれ? 忠さん、だいぶ雰囲気が変わったな」って思って。そしたらその忠さんが「今から授業を始めます」って言って、なぜかそのまま服を脱ぎだしたの(笑)。で、裸になった忠さんが指揮するみたいに合図したら、そこにあった電話がハイハットの音を鳴らして、デスクがキックの音を鳴らして、本棚がピアノの音を鳴らして、全部が一斉に動き出して音楽になってね。「な、なんだこれ~?! 忠さん、すげぇーー!!」ってなって。
小坂:オレはその間、ずっと裸なの?
佐藤:そうなんですよ。裸の忠さんが指揮してるんです。で、それを見てるときに、突然、巨大な針みたいなのがこっちに向かって飛んできて、「やばい。これに当たったら死んじゃう!」って思うんだけど、でも目の前で繰り広げられてるパフォーマンスがあまりにもすごいから、「これは死んでもいいから観ていたい」って思って。そのとき、もうひとりの冷静な自分がそれを見ていて、「これは夢だな。でも夢だとしたら、何を意味してるんだろ?」って思ってるんですよ。それでそのとき思ったのは、「オレは死んでもこの音楽を聴いていたいし、死んでもいいって思えるくらい音楽が好きなんだな」ってことで。音楽が好きだという気持ちは、死んでも変わらないと理解したわけ。音楽は死を超越してるんやなって、わかったんですよ。
――それを教えてくれたのが忠さんだったと。
佐藤:そうそう(笑)
小坂:でもオレ、裸なんでしょ?。やだなぁ、それ(笑)
佐藤:すみません。アホな話してしまって。
――まあ、そのくらい中津川で共演した印象が強烈だったってことですね。
佐藤:そういうことです。本当にすごかったんだから。
――忠さんはこれまで、鈴木茂さんから佐橋佳幸さんまで様々なギタリストと一緒にやってきてるわけですが、タイジさんのように野性味溢れるロックギタリストとやられるのは珍しいんじゃないですか?
小坂:そうだね。だから、すごく新鮮なの。もう50年も音楽やってると、そういう新鮮さってなかなか味わえないんですよ。だいたいは想像がついちゃう感じで。
――タイジさんは想像を上回ってくる感じなんですね。
小坂:そりゃあやっぱり、僕を裸にするくらいですからね(笑)
佐藤:アハハハハ。
小坂:タイジはゴリゴリくる。でもそれが気持ちいい。オレももともとロックをやってたからさ。昔、ツェッペリンやったりしてたから。そういう気持ちが甦ってくるんだよね。タイジとやってると、“ああ、一緒に音楽やってるんだ”って実感があるわけ。
佐藤:光栄です。オレが思ったのは、忠さんってずっとかっこいいんだな、ちっちゃい頃からかっこいいんだろなってことで。音楽以前に忠さんがかっこいいのよ。だからいろんな人が集まってきて音楽になるんだなって思った。
小坂:でもオレ、実はシャイなんだよ。だから初めての人とやるときは、すごい緊張するわけ。
佐藤:そうなんですか?
小坂:そうなんですよ。
――タイジさんは初めての人でも和ませて気持ちよくさせるオーラを出すギタリストですよね。
小坂:そう。のらせてくれるの。それがすごく上手いんだよね。
佐藤:いやもう、オレは忠さんの横で演奏させていただけるだけで光栄で。恐悦至極に存じます。
小坂:苦しゅうない(笑)
オレ、やっぱりバンドが好きなんだよね(小坂忠)
佐藤:忠さんとは去年の1月にシモキタの「風知空知」でも一緒にやってるんですけど、オレ、そのときに忠さんが言ってた言葉が忘れられなくて。実は2017年に【LIVE FOR NIPPON】(*東日本大震災以降、タイジが中心になって進めているインターネット・チャリティ・ライブ)で初めて一緒にやるはずだったんだけど、その直前に忠さんが入院されて、「ごめんな。来年、必ずリベンジするから」ってメールをいただいて。で、去年の1月に「風知空知」でお会いしたときに、「オレ、今、歌いたくてしょうがないんだよ」って言うわけ。その言葉にはまったく嘘がなくて、「ああ、本当にそうなんだな」って思えて、そのとき「やっぱ忠さん、めちゃめちゃかっこいいな」って思ったんですよ。自分よりずっと長く続けられてる大先輩、大ベテランのミュージシャンから「歌いたくてしょうがない」って言葉を聞いたことがなかったから。
小坂:でも本当に歌いたくてしょうがなかったんだよ。ああいう体験(*2017年8月に急性胆嚢炎のため緊急入院したところS字結腸がんと胃がんが発覚。臓器摘出の手術をし、長く入院生活を続けた)をすると、そういう気持ちにもなるよ。だって、もう歌えないのかもしれないって思ったんだもん。やっぱりさ、自分が歌えるってことは、生きてるってことの証拠なわけ。生きてるんだから歌いたいんだよ。何時間でも歌いたい。3時間でも4時間でも歌い続けたいくらい。
佐藤:全然できそう。そういう忠さんのソウルにオレ、すごい影響を受けてるんですよ。忠さんのソウルなんですよ。
小坂:蝉ってさ、夏にずっと鳴いてて、うるさいじゃん。地上に出てきてから短命だから、生きてる間はずっと鳴いている。今、休んじゃったらもう鳴けないかもしれない。そう思って鳴いてるんだと思うんだよ。そういう感じなわけ。蝉みたいなもんだよ(笑)
――ステージに復帰したときには、どんな発見がありました?
小坂:歌うのが楽しくてしょうがない、ってことを改めて発見しました。
――そして2018年はというと、名作『ほうろう』の曲をたくさん歌われました。3月にはビルボードライブ東京で『HORO 2018 Special Live』があり、11月には東京国際フォーラム ホールAで名だたるアーティストが『ほうろう』を再現するイベント【SONGS&FRIENDS 小坂忠『ほうろう』】」が開催されました(関連インタビュー:http://www.billboard-japan.com/special/detail/2499)。
小坂:うん。たくさんやったから、もうそろそろ“ほうろう”って思ってて(笑)
佐藤:わはははは。
――長いキャリアのなかで、やっぱり忠さんにとって『ほうろう』は最も大事なアルバムなんですね。
小坂:そうだね。1975年に出したアルバムだけど、それをまた2018年にああいうSONGS&FRIENDSのようなコンサートでみんなが取り上げてくださったりもして。すごく光栄でしたよ。
佐藤:名作中の名作ですからね。ハンパないすよ。オレみたいな後輩ミョージシャンからしたら、みんなに自慢したい感じ。「オレの先輩、すげえアルバム出してんだぞ」って。
――75年にアルバムを発表された当時は録音に参加されたティン・パン・アレーとツアーされ、去年の『HORO 2018 Special Live』では鈴木茂さん、小原礼さん、屋敷豪太さん、Dr.kyOnさん、斉藤有太さんたちと演奏。また中津川ではシアターブルックと一緒にやられたわけですが、そのように違うバンドで演奏されることで『ほうろう』の楽曲自体が進化していってる感じもあるんじゃないですか?
小坂:ああ、そうだね。同じ曲でも、そのときのミュージシャンによって変わってくるというのは、すごく面白いよ。2010年に『HORO2010』っていう、歌だけ録り直したものを出したんですけど、そのときに75年にレコーディングした元のマルチトラックを聴いたのね。そしたら、ギターもベースも今より荒いわけ。まだみんな20代前半だったからね。荒いんだけど、でも勢いがあるの。
佐藤:そっかぁ、20代前半であれを録ってるのかぁ。すごい……。
小坂:だけど、やっぱりシアターブルックのメンバーもみんなオンリー・ワンなわけですよ。タイジのギターにしても、ほかの人には出せない音なわけ。ほかのメンバーもみんなそうでね。そういうオンリー・ワンの人が集まったバンドとやるのは、やっぱり楽しいですよ。
――タイジさんは、“過去の『ほうろう』の演奏はこうだったから、オレはこう弾こう”みたいなことを考えて弾いたりはするんですか?
佐藤:いや、全然考えないですね。あんまり下敷き敷かないタイプだから。「あ、忠さん、こう行った。じゃあ、こう弾こう」って、その場でやってるだけで。ここでワウペダル踏んじゃおう、とかね(笑)
小坂:オレは歌いながら、それを聴けるわけ。それがまた楽しいんだよね。「おお、ここでワカチコきやがった」とかさ(笑)
――さて、2月15日には【中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018】から約5月ぶりとなる共演がビルボードライブ東京で行われるわけですが、どんなものになりそうですか?
佐藤:中津川からさらに発展したものになるでしょうね。
――森俊之さんと真城めぐみさんのおふたりもフィーチャーするとのことで。
佐藤:そう。それは中津川と一緒なんですけどね。あ、そうそう、コーラスパートはオレもやったんだけど、やってみて思ったのは、これがゴスペルの気分なんやってことで。プリーチャーの説教があって、それに反応してみんなが盛り上がっていくあの感じ。忠さんとやってみて、それがなんとなく理解できたんですよ。
小坂:そういう意味でも、あんまり作り込まないほうがいいんだろうね。やっぱり音楽って、そのときのコミュニケーションだから。あんまり決め込んじゃうと、どうなるか想像がついちゃって、楽しくない。バンドとやる楽しさって、そういうところにあるから。
佐藤:うん。キメキメじゃないほうが楽しめますからね。
――そういう考え方はすごく共通してますね。
小坂:うん。これまでいくつもバンドを作っては解体してきたけど、オレ、やっぱりバンドが好きなんだよね。
――では、最後にこの公演の見どころを一言。
小坂:タイジがもっと長髪になって、ステージに裸になって現れます! さっきのタイジの夢の話は、実は自分だったっていう(笑)
佐藤:ムリ・ムリ・ムリ! それやったら忠さんのアーティスト・イメージ、ぶち壊しちゃいますから。絶対無理っす(笑)
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