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アレステッド・ディベロップメント来日記念~PESが語る「アレステッドの魅力」
2018年12月末にカウントダウン公演を含む来日公演を開催するアレステッド・ディベロップメント。ヒップホップの枠を超えてグルーヴィーに活躍を続ける彼らのステージを目前に控え、その魅力を語ってくれたのは、ラッパー/プロデューサーのPES。16歳で彼らの音楽に出会ってからファンであり続ける理由について語ってもらった。
シリアスなことを明るく
「希望」を感じるお手本でした
−−アレステッド・ディヴェロップメントを最初に聞いたのはいつですか?
PES:16歳の頃ですね。ミュージックビデオで存在を知ってファーストアルバム『3 Years, 5 Months and 2 Days in the Life Of...』をリアルタイムで買いました。確か最初に聴いたのはそのアルバムに入ってる「Tennessee」だったと思います。
▲Arrested Development - Tennessee
−−アレステッドでいちばん好きな曲は?
PES:たくさんありますが、ファーストアルバムの中では「People Everyday」をよく聴いてました。この曲の元になったスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「Everyday People」の方を先に聴いていたので、「あ、スライの曲だ」って反応して。そのスライの曲は家にレコードがあったんで、友達のDJの家に持って行って、元となった部分を何度も繰り返してMTRに録音して「アレステッドのトラックと同じことができた〜」って喜んでました。今振り返るとヤバイ子供ですね(笑)。
−−彼らのどんな部分に惹かれましたか?
PES:メロディアスで、ラップのようでもあるし、スキャットのようでもあるフロウに惹かれました。リリックも詩的で、アーシーな音にも惹かれた。そういうことをやりたいなと思っていたんです。
−−当時すでにラップを始めていたんですか?
PES:ノートとかにラップを書き始めていた頃でした。アレステッドを率いるSPEECHのラップにはめちゃくちゃ刺激を受けましたね。
−−どのようなところが?
PES:当時、ヒップホップはハードコアなものが多かったんです。アレステッドもアフリカ回帰志向とか黒人が抱えるストレスとか、シリアスなことを歌ってるんですけど、明るい雰囲気で悲しいことをメッセージしているからすごくいいなって。そっちの方が希望を持てるなって思ったんです。僕もどっちかというと明るいことを言いたいわけじゃない。現実的な生活のことをラップしたいけど、暗くなるのは嫌だと思っていたので。キツイことを笑いながら言うみたいなラップをやりたいなと思ってたから、そのお手本になるなと思ったんです。
−−リップスライムやソロの曲で、アレステッドの影響を受けて作った曲はありますか?
PES:リップスライムの『MASTERPIECE』というアルバムで僕が書いた「Unknown」は、スピーチが2002年に出した『Down South Produckshuns』というアルバムに入ってる「Braided Hair」という曲に影響されてます。『MASTERPIECE』の制作がスピーチのアルバムが出た翌年だったんで、すごく聴いてて、こういう曲をつくりたいなと思って制作した記憶がある。でも全部といえば全部ですよ。僕のフロウはスピーチのチルドレンというか、スピーチを好きな人が作っている匂いがするんだろうなって、自分でも思いますから。
−−もう血肉化されているんですね。
PES:昨年まで雑誌『WARP』で、テーマに沿った16小節のラップを昔の曲のトラックにあわせて書き下ろす連載をやっていたんです。そこでアレステッドの「Ease My Mind」を使って日本語でラップを書いたんですが、「あぁ、ハイハイ。こういうときスピーチはこうだろな?」っていう感じで16小節があっという間に書けましたから。スピーチのフロウはすぐ出てくるんです(笑)。
▲Arrested Development – Ease My Mind - Zingalamaduni
HOLON SOUNDSと2019年の展望
−−ここからはPESさんの最近の活動について教えてください。2018年3月に設立を発表したHOLON SOUNDSは、どのようなレーベルなんですか?
PES:これからは自分以外のアーティストのプロデュースもやっていきたいし、自分でやりたい音楽性も打ち込みのものとバンドのものがあるんです。呼んで頂けるイベントも種々様々なので、ソロ活動=ソロアルバムを出せばいいという感じではないなって。で、いろんなことをやっていくんだとしたら、レーベル的な枠をひとつ作って、そこからいろんな形で提案していった方が整理をつけられるかなと思って、まずは暖簾掛けという感じで立ち上げたんです。
−−HOLON SOUNDSのコンセプトは?
PES:現在は僕とDJの副島ショーゴがいて、僕もショーゴもそれぞれに活動しているので、それらが集まってひとつの大きな動きになるフラクタルな構造になればいいなと思っています。HOLONICというのは、個々には異質な要素が集まっているにもかかわらず、全体としては調和がとれていることを指す言葉なので、全体としても1個1個としても同じ動きをしている……そういうレーベルになればいいなと思って名付けました。
−−副島ショーゴさんと組んだCharlieというユニットで、今年9月にレーベル第一弾アルバム『Chario』をリリースされましたね。
PES:Charlieは基本的にプロデュースユニットですね。ショーゴは昔からの友人なんですが、AstroというヒップホップグループのDJから始まって、他人へのトラック提供やクラブイベントでのDJをやっていて。もちろんヒップホップがベースにあるんですけど、幅広い感性と新鮮な感覚を持っているんです。さらに彼はひとりでミックスまで完結できるので、2人でライブをやるのもいいけど、誰かの制作を手伝えるようなグループになれたらいいねって。なので「Charlieというユニットに頼めばこういうクオリティのものができるんだ」っていうことを周囲に伝えるためのカタログを作ろうと思って、『Chario』を作ったんです。
−−お二人が組み合わさると、どんな化学反応が起こると思っていますか?
PES:二人共、曲をポンポン作っていくタイプなので、心の叫びみたいな感じはあまり入ってこなくて、カジュアルなものが生まれるなと思ってます。ショーゴが作るものはエレクトリックな要素が強いんですけど、それを僕が少し生っぽくというか、たとえばボーカルも切り貼りせずに通して歌うなどしてオーガニックな要素を足していく。そうすると程良く人肌感がある製品がつくられていくなと思いますね。オーガニック過ぎずケミカル過ぎずっていう。
−−2018年12月には「HOLON SOUNDS presents “THE DAY”」という東名阪クアトロ対バンツアーが開催されます。どんなステージを見せたいと考えていますか?
PES:HOLON SOUNDS内では、Charlieと別に、僕とヨースケ@HOMEとDJ NONでBRAVOというバンドを組んでるんです。CharlieはショーゴがDJをやって、僕はギターを持たずにサイドキッカーっていう感じ。BRAVOでは僕はギターを持って生演奏。こっちもDJがメンバーにいますけど、結構有機的なライブをやってるんです。なので、CharlieとBRAVOの違いをうまく見せられたら。名古屋公演はアコースティック編成のSPECIAL OTHERS、梅田はACIDMAN、渋谷はSPECIAL OTHERSがゲストとして出てくれるので、愉快な仲間と年末を楽しめたらと思ってます。
▲HOLON SOUNDS presents “THE DAY”
−−年明け2019年には、PESさんがプロデュースしたLyrical School「Tokyo Burning」のリリースが1月22日に控えていますね。
PES:その曲はPES名義なんですが、ミックスはショーゴがやっているので、気持ち的にはCharlieワークスなんです。今後はCharlie名義でのアレンジやプロデュースが増えるよう、もっと積極的に活動していきたいなと思ってます。
−−Charlie、BRAVO、さらにプロデュース業と2019年は幅広い形でのさらなる活躍を期待しています。
PES:ありがとうございます。Charlieは『Chario』以降、すでに新曲を何曲か作っているので、今度はBRAVOの方でアルバムを作りたいと考えてます。そうして2019年の間にはCharlieでもBRAVOでもワンマンライブができるまで持って行きたい。HOLON SOUNDSとしては、今は僕が関わっているユニットとバンドがいるだけなので、そうじゃないアーティストを見つけたり、入れたりするのが目標ですね。僕以外のいろんな人がいて、前に出る人もいれば、後ろで構えてる人もいるというふうに、もっと立体的な動きが見せられるよう頑張っていきたいと思っています。
来日公演情報
アレステッド・ディベロップメント
Arrested Development
ビルボードライブ大阪
2018年12月28日(金)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
⇒詳細はこちら
ビルボードライブ東京
2018年12月30日(日)
1stステージ開場15:30 開演16:30
2ndステージ開場18:30 開演19:30
2018年12月31日(月)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場21:00 開演22:30 ※カウントダウン公演
⇒詳細はこちら
<メンバー>
スピーチ(トッド・トーマス) / Speech (Todd Thomas) (Vocals)
ワン・ラブ(スペンサー・ラヴ) / One Love (Spencer Love) (Vocals)
ラターシャ・ラレイ(ラターシャ・コンウェイ) / LaTasha LaRae (LaTasha Conway) (Vocals)
ジェイ・ジェイ・ブギー(ジェイソン・ライヘルト) / JJ Boogie (Jason Reichert) (Guitar)
ファリーダ(ファリーダ・アレーム) / Fareedah (Freedah Aleem) (Dancer)
エリック・ドジィアー / Eric Dozier (Keyboards)
ウィリアム・モンゴメリー / William Montgomery (Bass)
コーリー・レイモンド / Corey Raymond (Drums)
公演情報
HOLON SOUNDS presents “THE DAY”
- PES vs FRIENDS + Charlie = QUATTRO TOUR-
名古屋クラブクアトロ
2018年12月15日(土)
開場 / 17:00 開演 / 18:00
出演 / Bravo (PES/YOSUKE/DJ NON), Charlie
GUEST / SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
梅田クラブクアトロ
2018年12月16日(日)
開場 / 17:00 開演 / 18:00
出演 / Bravo (PES/YOSUKE/DJ NON), Charlie
GUEST / ACIDMAN
渋谷クラブクアトロ
2018年12月21日(金)
開場 / 18:00 開演 / 19:00
出演 / Bravo (PES/YOSUKE/DJ NON), Charlie
GUEST / SPECIAL OTHERS
⇒詳細はこちら
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Text: 猪又 孝
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