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向谷 実 アルバム『THE GAMES-East Meets West 2018』リリースインタビュー
カシオペアの元キーボーディストであり、現在は音楽プロデューサー、作曲家、ミュージシャン、さらに株式会社音楽館の代表としても活躍する向谷 実。10月3日には、25年ぶりとなるソロアルバム『THE GAMES-East Meets West 2018-』をリリースし、11月には東京、大阪、福岡で本アルバムを引っ提げたツアーも開催される。LAレコーディングによって自信作に仕上がったアルバムと楽曲の内容、ホールツアー『East meets West 2018』の展望、そして今後の野望について、向谷 実の最新インタビューが到着した。
音楽に対する考え方というのは失せることなく続いていた
――まずは、“East meets West”というプロジェクトをスタートさせた経緯を教えてください。
向谷 実:ここ数年、会社の経営者としての仕事が忙しくなって、自分自身が音楽家として歩んできたものを消す気はないし、楽器を弾くことに関してのモチベーションや、音楽に対する考え方というのは失せることなく続いていたんですけど、それを拒んできたのがスケジュールだったんです。実はこのプロジェクトも、去年やりたかったんです。元々は2016年11月の楽器フェアで、ドン・グルーシン、リー・リトナー、ネイザン・イースト、神保彰くん、エリック・ミヤシロくんなどを集めて“East meets West”というコンサートをやったのがきっかけなんですけど、そのコンサートの時に“来年の秋にまたお会いしましょう”って言っちゃったんです(笑)。でもその約束が守れなくて、辛い年末年始を過ごしていました。それで、どうしたらこの約束が守れるだろうかって思いついた方法が、コンサート会場を先に押さえちゃえ、ということだったんです。
――最初に会場ありきだったんですか?
向谷:そう、自分で退路を断つという、非常に危険なやり方で(笑)。それで今年の元旦に“秋にコンサートをやる”って宣言して、まず会場を押さえてもらいました。そこから、じゃあミュージシャンはどうしようかって考え始めて、2016年のコンサートの感覚がまだ残っていたので、ドンに相談して、2人でミュージシャンをリストアップしていきました。そうしたらラッキーなことに、彼らのスケジュールがコンサート会場の日程に合って、これはできそうだ、と。
――そもそもドン・グルーシンとは、CASIOPEAの『4×4』というアルバム(1982年)が初共演だったんですよね。
向谷:そうです。その後彼とは、そんなにたくさん共演したわけではないんですけど、心の友というか、ずっと繋がりが続いていました。ぼくから言うと“アメリカの兄貴”という感じですかね。ハーヴィー・メイソンも、CASIOPEAの『EYES OF THE MIND』(1981年)からの付き合いですし、長生きするもんだなって思います(笑)。それで元々“East meets West”というのは、日本人とアメリカ人の人数がイーヴンでやるというのが趣旨なので、エリックに一緒にできる人を紹介してよってお願いして、この4人のホーン・セクションが決まりました。実はその時点では、アルバムのことは考えていなかったんです。でもリハーサルの日程調整をどうしようって考えていた時に、あ、アルバムを作るのもいいかもって思ったんです。みんなでレコーディングをやれば、リハーサルも兼ねられるなって。それでレコーディングが決まりました(笑)。
――今回のアルバムの特徴として、日本人のホーン・セクションがロサンゼルスに行ってレコーディングしているというのも、普通ではあまりやらないことだと思うのですが。
向谷:最近のレコーディングだと、アメリカのミュージシャンたちの演奏はアメリカで録って、日本に帰ってきてから日本のミュージシャンの演奏をダビングする、というのが一般的だと思います。しかも1人1人のパートを別々に録ったり。別々に録ったほうが、予算的にも時間的にも楽ですし、きれいにまとまったものはできるかも知れません。でもぼくは、みんなが同じ場所で、一緒に演奏することにもこだわりたかったんです。ぼくはきれいにまとまったものを作りたいんじゃなくて、カッコいいものを作りたいんです。1人1人のメンバーの熱が伝わってくるような。それを作るのには、やっぱり一緒に音楽を作っていかないと。
――エンジニアのドン・マレーが録ったホーンの音が素晴らしいですね。
向谷:素晴らしいですね。カーステレオで聴くと、たまらないです。ドン・マレーが録る音は非常にオーガニックというか、アコースティックな響きとナチュラルな残響で、電気的、電子的な要素は隠し味で使っているんです。だからストレートに音が抜けてくるし、強弱を思いっきり付けても音楽的なバランスが崩れないという、弾く側からも聴く側からも、非常にやりやすい環境になっています。これは、ロサンゼルスで彼とやって良かったなと感じる最たるところですね。ホーンをロサンゼルスで録った理由のひとつもドン・マレーで、彼に最初から最後までやりきっていただきたかったんです。最初は彼を日本に連れてきて、ホーンは日本で録ることも考えたんですけど、可能な限りみんなで一緒に演奏する、もしくはその環境を共にすることで、チームやユニットになるなって思ったんです。部分的な作業を分担するのではなくて、ひとつの大きな流れの中にみんなが参加しているんだという。ステージ上で10人が演奏するのと、レコーディングで10人が奏でるのを、同じステージとして共通化したいな、と。そういう話をしたら、ミュージシャンのほうがビックリしてました(笑)。最高の環境の中で、日本のホーン・セクションとアーニー・ワッツが並んで吹くとか、そういうところで楽しんでいただけたんじゃないかと思っていますし、結果的に良かったなって思います。
――ロサンゼルスのリズム隊に、日本のホーン・セクションが加わった印象は、いかがでしたか?
向谷:たまらなかったですね。エリックにも3曲のアレンジを頼んで、彼も飛行機の中で一生懸命作ってきてくれたし。
公演情報
向谷 実が日米スーパーミュージシャンと繰り広げる白熱のライブ!
【向谷 実 presents “East mests West 2018”】
2018年11月12日(月) 福岡 JR 九州ホール
(問) BEA 092-712-4221(月~金 11:00~18:00/第2・4土曜 11:00~15:00)
2018年11 月 14 日(水) 大阪 メルパルクホール
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400(月~金12:00~18:00)
2018年11 月 16 日(金) 東京 国際フォーラム ホール C
(問) ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999(月~金12:00~18:00)
開場/開演:OPEN 18:30 / START 19:00
【参加ミュージシャン】
向谷 実 / キーボード・総合プロデュース
Don Grusin(ドン・グルーシン)/ キーボード
Harvey Mason(ハーヴィー・メイソン)/ ドラムス
Ernie Watts(アーニー・ワッツ)/ サックス
Paul Jackson Jr.(ポール・ジャクソン・Jr.)/ ギター
Abraham Laboriel Sr.(エイブラハム・ラボリエルSr.) / ベース
エリック・ミヤシロ / トランペット
本田雅人 / サックス
二井田ひとみ / トランペット
中川英二郎 / トロンボーン
料金:8,000円(tax in.)
主催:株式会社 音楽館
企画制作:株式会社 音楽館 / 株式会社 バビック
招聘:株式会社 コンベックス
協力:株式会社 ヤマハミュージックジャパン / MBS / 株式会社 NHKエンタープライズ / ビクターエンタテインメント
【チケット一般発売中】
チケットぴあ0570-02-9999
ローソンチケット0570-084-003(東京) 0570-084-005(大阪) 0570-084-008(福岡)
イープラス・CNプレイガイド0570-08-9999
楽天チケット
Yahoo!チケット
Confetti0120-240-540
リリース情報
『THE GAMES-East Meets West 2018』
- 向谷 実 オリジナル・ソロ・アルバム
- 2018/10/3 RELEASE [VICJ-61778 / 定価:¥ 2,800(tax out)]
- 詳細・購入はこちらから>>
発売元:ビクター・エンタテインメント
関連リンク
Text:熊谷 美広/Photo:熊谷 美広、平岡 純
全員が主役でもあり、脇役でもある
――今回、向谷さんが書かれた曲は、どういうテーマによるものなのですか?
向谷:1曲目の「Friendship」という曲が、“East meets West”の基本理念を表現しています。東日本大震災の時に、アメリカ軍が日本のために“トモダチ作戦”というオペレーションを行なって、彼らが命がけで日本に救援に来てくれたことに感謝しています。その2011年にドンと公開レコーディングをやったことがあったんですけど、その時にこの曲を書きました。だからこの曲が、“East meets West”の原点なんです。日米のミュージシャンの親交を深めて、いい音楽を作るという。
――「The Games」という曲は、ドンとの共演ですね。
向谷:2020年の東京オリンピックをイメージして、2人で作りました。“Games”には“競技”という意味合いもあるし、楽しんで結果を出していくという意味では、音楽もゲームだなって思います。10人いれば、いろいろな音色がするし、いろいろなパフォーマンスもあるから、楽器がそれぞれの種目なのかも知れませんね。そういう意味でこの曲は、このアルバムの一面を象徴している曲でもありますね。
――どういう形で共作していったのですか?
向谷:Aメロを彼が作ったら、Bメロをぼくが作るとか、彼がブラスのアレンジをこうやったら、ぼくがこうやるとか、ほんとうにイーヴンでやりました。アメリカと日本でファイルのやりとりをして。あとレコーディングの時、最初はピアノ2台で弾いていたんですけど、ポール(・ジャクソンJr.)が“ミノルはオルガンを弾いたらいいんじゃないの”って言うので、それを試してみたらそのまま決まっちゃったり。
――アメリカのメンバーたちのオリジナル曲も収録されていますが、どういった意図でそうなったのですか?
向谷:そういう曲を、ぼくがアレンジしてみたかったんです。そこはプロデューサー的な感覚ですね。曲を提供してもらって、それをいじる、と。ハーヴィーの「Argentina」という曲は、フォープレイでもやっていて、その演奏も素晴らしいんですけど、ぼくはシンセサイザーとセレステでやってみたかったし、いちばんたいへんだったのはアーニーの「Letter from Home」という曲で、元々は4ビート・ジャズなので、それをどうやってアレンジするかというのが課題でしたけど、うまくいったと思います。エイブラハム・ラボリエルの「Holidays」も、彼のヴァージョンからはコードもずいぶん直して、もっとタイトなグルーヴを出したんですけど、彼も楽しんでくれて、ベース・ソロも楽しそうにやってくれました。
――実際にロサンゼルスのミュージシャンたちとレコーディングしてみた感想はいかがでしたか?
向谷:行く前は、久々の海外レコーディングだし、アーティストがレジェンドばっかりだから、果たしてオレは大丈夫かなって不安もあったんですけど、初日の1発目の音を弾いた時、あ、できそうだという感触はありました。それがすごく嬉しくて。それでいい意味で余裕が生まれて、やっててすごく楽しかったし、プロデューサー的な見方もできるようにもなりました。
――向谷さんのリーダー作なのに、それぞれのメンバーたちのソロもいっぱいフィーチャーされているという。
向谷:ぼくは元々そういう感じが好きで、自分が前に出すぎるのではなく、音楽を客観的に観たいんです。だからバッキングの時も楽しくて、メンバーたちのプレイを聴きながら、それに対してどうアプローチしていこうかとか考えたり。
――今回ドンがコ・プロデューサーになっていますけど、彼との作業はどうでしたか?
向谷:ぼくの100倍くらい真面目な人でしたね(笑)。こんなに真剣に集中してストイックにやるんだって、ビックリしました。ぼくは、レコーディング前にしっかりと準備をして、あとはソロも含めて一発で録って、これが自分のやりたい音楽だって納得して先に進むんですけど、ドンはかなり真面目に、緻密にやってましたね。実は6月中旬に、ロサンゼルスに打ち合わせと下見を兼ねて行ったんですけど、ホテルで、ドンと2人でキーボード2台を並べて、選曲とアレンジの打ち合わせをしたんです。ぼくは1-2日ぐらいやればいいかなって思っていたんですけど、結局3日間、朝から晩までずっとやってました(笑)。真面目だなぁ、って。コ・プロデューサーとしては素晴らしいです(笑)。
――2人のデュオによる「Once in a Blue Moon」も、いい感じですね。
向谷:最初は、同時に2人がボキャブラリーを出し切って、ちょっとうるさかったんです。だから楽器の音色を変えて、ぼくは単音でしか弾かないから、そっちでバックを取ってね、またその逆もやってねって、お互いがソロの時は管楽器奏者みたいになっているという、非常に珍しいデュオになりました。実はピアニストがいちばん嫌がるタイプの演奏というか、こういう弾き方だと物足りなくなってくるという、ギリギリの線を、お互いがやってます。
――この曲と「Corona」という、CASIOPEA時代の曲も2曲収録されていますね。
向谷:「Once in a Blue Moon」は、ぼくとドンのデュオに合っているかなと思って。「Corona」は、それぞれの楽器のシングルのラインがバンドをハーモニックにしていくという、いわゆる輪唱のような感じで、実はけっこう難解なアレンジなんです。本来だったらあまり気にしなくていいはずのベースやドラムなども、メロディ、もしくはメロディのサポートに回らなきゃいけないという、横軸にかなり流れのある曲で、そこにぼくがアレンジしたブラスの、ちょっとラテン的なリズムも絡んでくるということで、グルーヴの維持がすごく難しんです。おまけにハーヴィーのドラムも、スネアの2拍4拍をきっちり出すよりも、どちらかというとロールっぽい感じというか、どこにドラムがいるのかわからないという、CASIOPEAの時とはまったく違うテイストにしています。
――たしかにCASIOPEAのヴァージョンとは、まったく違う印象になっていますね。
向谷:そうですね。CASIOPEAのファンの方にも、こういう感じも有りだよねって思ってもらえれば嬉しいです。
――では、11月のツアーに対する意気込みを。
向谷:ほんとうに楽しみです。アルバムの音が、ライヴでどういう風に変わっていくんだろうって。フロントに並んでいるアーティストと、それをサポートする日本人ミュージシャンという関係性ではなくて、全員がフロントに並んでもらって、それぞれにソロイストとしての役どころもあるという形にしたいと思っています。全員が主役であり、脇役でもあるという、イーヴンな関係が“East meets West”なんです。アメリカ人と日本人の人数も5対5になっているし、アーニーと本田くんが掛け合いをしたり、10人のミュージシャンたちがひとつのユニットとしてまとまっている、と。アルバムでは全曲5-6分くらいに押さえてますけど、ライヴではもっと盛り上がりそうだし、たぶんやっているぼく自身が感動すると思います。
――この“East meets West”というプロジェクトは、今後も続けていく予定なのですか?
向谷:アルバム・ジャケットに“1”という数字が入っているんですけど、これはぼくにとって、“East Meets West”という流れの中でのデビュー・アルバムのような感じで考えています。“2018”という年号を入れているのは、“2019”も“2020”もあるだろうな、ということで、これもまた退路を断っているんです(笑)。だから今回のツアーが終わったら、またすぐに次回の会場を押さえなきゃ(笑)。今後も、今回のメンバーが土台になるとは思いますけど、東洋のミュージシャンと西洋のミュージシャンが出会うから“East meets West”であって、今後はニューヨークのミュージシャンたちとも一緒にやりたいですし、あとヨーロッパ、南米、アフリカなど、様々な地域のミュージシャンたちも巻き込んでいきたいですね。ヴォーカルを入れてもいいし。“East meets West”のコンサートも定期的にやっていきたいですし、もっともっと大きなイベントにしたいなと考えています。だから今回は、その大きな第1回目なんです。
――では最後に、このアルバムとプロジェクトを通して、リスナーに伝えたい思いは?
向谷:ジャズ/フュージョンという音楽の聴きやすさもあり、ちょっと難しいところ、アグレッシヴなところもあって、その躍動感を共有していただければな、と思っています。演奏している者と、聴きに来てくれる人も、ひとつのチームだと思うんです。だからその辺りの一体感を感じていただければ、音楽の楽しみもより大きくなるんじゃないかなって思います。
公演情報
向谷 実が日米スーパーミュージシャンと繰り広げる白熱のライブ!
【向谷 実 presents “East mests West 2018”】
2018年11月12日(月) 福岡 JR 九州ホール
(問) BEA 092-712-4221(月~金 11:00~18:00/第2・4土曜 11:00~15:00)
2018年11 月 14 日(水) 大阪 メルパルクホール
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400(月~金12:00~18:00)
2018年11 月 16 日(金) 東京 国際フォーラム ホール C
(問) ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999(月~金12:00~18:00)
開場/開演:OPEN 18:30 / START 19:00
【参加ミュージシャン】
向谷 実 / キーボード・総合プロデュース
Don Grusin(ドン・グルーシン)/ キーボード
Harvey Mason(ハーヴィー・メイソン)/ ドラムス
Ernie Watts(アーニー・ワッツ)/ サックス
Paul Jackson Jr.(ポール・ジャクソン・Jr.)/ ギター
Abraham Laboriel Sr.(エイブラハム・ラボリエルSr.) / ベース
エリック・ミヤシロ / トランペット
本田雅人 / サックス
二井田ひとみ / トランペット
中川英二郎 / トロンボーン
料金:8,000円(tax in.)
主催:株式会社 音楽館
企画制作:株式会社 音楽館 / 株式会社 バビック
招聘:株式会社 コンベックス
協力:株式会社 ヤマハミュージックジャパン / MBS / 株式会社 NHKエンタープライズ / ビクターエンタテインメント
【チケット一般発売中】
チケットぴあ0570-02-9999
ローソンチケット0570-084-003(東京) 0570-084-005(大阪) 0570-084-008(福岡)
イープラス・CNプレイガイド0570-08-9999
楽天チケット
Yahoo!チケット
Confetti0120-240-540
リリース情報
『THE GAMES-East Meets West 2018-』
- 向谷 実 オリジナル・ソロ・アルバム
- 2018/10/3 RELEASE [VICJ-61778 / 定価:¥ 2,800(tax out)]
- 詳細・購入はこちらから>>
発売元:ビクター・エンタテインメント
関連リンク
Text:熊谷 美広/Photo:熊谷 美広、平岡 純
THE GAMES-East Meets West 2018-
2018/10/03 RELEASE
VICJ-61778 ¥ 3,080(税込)
Disc01
- 01.フレンドシップ
- 02.コロナ
- 03.キャットウォーク
- 04.アルゼンチン
- 05.トゥー・フォー・テンサウザンド
- 06.ホリデイズ
- 07.ワンス・イン・ア・ブルー・ムーン
- 08.レター・フロム・ホーム
- 09.ザ・ゲームス
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