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特集: NANIWA EXPRESS~関西ジャズ/フュージョン・シーン最重要バンド

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 関西におけるジャズやフュージョンのシーンで、もっとも重要なバンドのひとつが、ナニワエキスプレスだ。80年代初頭にデビューした彼らは、巷のハードロックを蹴散らすほどパワフルで存在感のあるインストゥルメンタル・ナンバーを繰り出し、カシオペアやザ・スクエアといったグループとその人気を張り合い、プリズムやマライアのようなロック色の強いバンドとはまた違うアプローチで、ライヴハウスを熱狂の渦に巻き込んだ。活動休止期間があったとはいえ、2017年には結成40周年&デビュー35周年を迎え、オリジナル・メンバーで精力的に活動を続けている。ここではその歴史を振り返ってみよう。

 70年代から活動していたベーシストの清水興は、ギタリストの岩見和彦らを誘い、1977年にナニワエキスプレスを結成。その後、キーボードの中村建治が加入して、渡米してライヴを行うなど徐々に活動の幅を広げていく。1981年に、ドラマーの東原力哉、ピアニスト兼サックス奏者の青柳誠が合流し、メンバーが固まった。そして精力的にライヴ活動を行い、関西のシーンで知名度を上げていく。とりわけ、清水と東原の爆音リズム隊の迫力は評判となり、唯一無二の存在感を放つようになった。

 強烈なライヴ・パフォーマンスで話題を呼びつつあったナニワエキスプレスは、1982年5月にファースト・アルバム『NO FUSE』でついにメジャー・デビューを果たす。本作には、後に代表曲となる「BELIEVIN'」を筆頭に、テクニカルなプレイと強力なリズム・セクションが交差する個性的な楽曲を取り揃えていた。同年11月には半年という短いタームでセカンド・アルバム『大宇宙無限力神』を発表。まだオーセンティックなフュージョンの名残があったサウンドの前作からさらに飛躍し、「RED ZONE」や「SPOT」のような彼らの持ち味を発揮したパワー・フュージョンが展開され、そのテクニックを堪能できる一作となった。高野山に実在する神様の名前を拝借したというタイトルのユニークさも手伝い、彼らの作品の中でも最もハードな印象の作品でもある。

 1983年発表のサード・アルバム『WIND UP』は、前作のパワフルなリズム・セクションに加え、ポップなメロディやシンセサイザーのきらびやかな音色が加わることで、これまでにないフュージョン・サウンドを構築。彼らの代名詞ともいえる「JASMIN」を筆頭に、音楽的にもテクニックも高度な楽曲が多数並ぶ傑作となった。セールス的にも最も成功した作品といえるだろう。続く、1984年に発表した4作目のアルバム『MODERN BEAT』は、「INSIDE OF YOU」や「YELLOW ART」のようなメロウな感覚の楽曲が増えており、これまでの彼らの中でも最も洗練された作品といえるかもしれない。

 1984年末には、日野皓正の他、ザ・スクエア、マリーン、ザ・プレイヤーズなどとともに、日本武道館にてイベント“DREAM NIGHT SPECIAL”に出演。その勢いで翌1985年には5作目のアルバム『SILENT SAVANNA』を発表する。バンド自体が絶頂期ということに加え、日野皓正がゲスト参加したことで大いに話題になった。これまでになかったコルネットとフリューゲルホーンの音色を配したアンサンブルが新鮮で、グループの新しい展開を提示することに成功したといえる。しかし、1986年にはあっけなく解散を発表。デビューしてわずか4年という短い期間であったが、惜しまれつつ大阪バナナホールでの公演を最後に、メンバーは個々の活動に入った。

CD
▲『THIS is IT!』

 清水はHUMAN SOULやBAND of PLEASURE、岩見はMALTAや谷村有美、東原は本多俊之のRADIO CLUBや渡辺香津美のRESONANCE VOX、中村と青柳は自身のバンドや様々なアーティストのサポートなど、それぞれ多方面で活躍するが、2000年には久々に集まり、限定的に再結成。ツアーを行って高く評価されたこともあり、2002年にはNANIWA EXPとして完全復活し、翌2003年には18年ぶりのオリジナル・アルバム『life of music』を発表。ちょうどフュージョン再評価の兆しもあり、伝説のイベント“CROSSOVER JAPAN 03”にも出演した。2004年にはデニス・チェンバースをメンバーに迎え入れてツアーを行い、ともにスタジオに入ってアルバム『THIS is IT!』を制作。ツイン・ドラムの爆音が聴ける異色作となった。2006年には青柳が一時活動休止したために4人編成となったが、バンドとしての活動は継続する。

CD
▲『クール・デュード』

 2012年にデビュー35周年を迎えた彼らは、アルバム『FRESH DUDE』をリリース。元VOW WOWの人見元基をゲストに迎えた「The Future Song」をはじめ、YammyやCHAKAなどヴォーカリストをフィーチャーした楽曲が新鮮だった。そして2014年からは青柳が完全復帰。オリジナル・メンバーでのライヴ活動を再開する。2016年には青柳以外のメンバーが還暦を迎えたが衰えを知らず、2017年には結成40周年、デビュー35周年を迎えた。

 今年2018年も、先日行われたライヴを収めた映像作品『NANIWA EXPRESS 40th ANNIVERSARY LIVE ~High Skool Rhapsody~』や、バンドのヒストリーブック『NANIWA EXPRESS自伝 五人の狂詩曲』がリリースされるなど、常に話題は尽きない。間もなく行われるビルボードライブ・ツアーで、40年経ってもなお精力的な彼らのパフォーマンスを、ぜひとも体感していただきたい。



▲ 「NANIWA EXPRESS 40th ANNIVERSARY LIVE 〜High Skool Rhapsody〜【ダイジェスト】」



15 ROOTS of NANIWA EXPRESS

 9月の公演を前に、メンバーそれぞれにインタビューを敢行し、ルーツとなる楽曲を3曲ずつセレクトしてもらいました。個性的なキャラクターが繰り出す見る者・聴く者の心をつかんで離さない圧倒的なパフォーマンスの根源を辿る貴重なプレイリストとなりました。

東原力哉

「Mr.Spock」 / Tony Williams
「Nefertiti」 / Miles Davis
「West Side Story」 / Buddy Rich

岩見和彦

「Affirmation」 / George Benson
「Butterfly」 / Herbie Hancock
「Squib Cakes」 / Tower of Power

中村建治

「Come Running to Me」 / Herbie Hancock
「Captain Marvel」 / Chick Corea
「You Never Know」 / Jeff Beck

青柳誠

「Big Swing Face」」 / Buddy Rich
「My Foolish Heart / Bill Evans Trio
「Stella by Starlight」 / Miles Davis

清水興

「Tryin’ to Find Out About You」 / Quincy Jones
「Scratch」 / The Crusaders
「Pitter Panther Patter」 / Duke Ellington & Jimmy Blanton

 

 

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