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ダイアン・バーチ来日記念特集~変化と成長を続ける革新的なSSWに迫る
およそ10年前に颯爽と登場したシンガー・ソングライターのダイアン・バーチ。デビュー作にしてゼロ年代の傑作と称された『Bible Beat』のイメージが強いが、作品を発表するたびに大きな変化と成長を続け、聴き手を翻弄させながらも楽しませてくれる存在だ。とはいえ、彼女の本質はピアノ弾き語りをベースにしたエモーショナルな歌声。まもなく来日公演を行う彼女の軌跡をおさらいしておこう。
ダイアン・バーチは、1983年生まれ、米国ミシガン州出身。父親が教会の伝道師だったため、幼少時はジンバブエ、南アフリカ共和国、オーストラリアのシドニーと居住地をを転々とした。10歳のときに米国に戻り、オレゴン州のポートランドに落ち着いた。こういった生活の中で、オペラや教会音楽などはよく耳にしていたという。また、7歳で始めたピアノはそのまま続けていたこともあり、ポートランドで生活し始めた頃からジャズ、ロック、ソウルなどに触れることになった。
ピアノを弾き続けていた彼女は、映画音楽作家になることを夢見てロサンゼルスへと移住。ビバリーヒルズ・ホテルなどのラウンジでピアニストのアルバイトをしながら生計を立てるようになる。あくまでもピアノだけだったが、友人からのすすめで歌うことも稀にあり、自身でも作詞作曲を行うようになった。その後、プリンスが彼女のパフォーマンスを見て気に入り、彼の自宅のセッションにも招かれるようになる。
こうしてシンガー・ソングライターとしての素地ができていく中で、彼女は当時隆盛を極めていた音楽SNSのMySpaceで自身の楽曲を発表した。このことがきっかけで、ロンドンを拠点とするプロデューサーに見初められ、自身も英国へと拠点を移す。英国では地道にライヴ行っていくが、こうした活動のなかで徐々に実力が認められ、ニューヨークへと転居。ここでS Curve Recordsとの契約に至った。
満を持して2009年にリリースされたのが、ファースト・アルバム『Bible Beat』だ。本作はニューヨークとニューオーリンズでレコーディングされ、パティ・スミスの片腕でもあるレニー・ケイ(ギター)、ミーターズの屋台骨として活躍するジョージ・ポーターJr.(ベース)、サンタナのパートナーとして知られるシンディ・ブラックマン(ドラムス)など錚々たるミュージシャンが参加。リズム&ブルースのレジェンド、ベティ・ライトまでもがコーラスで華を添えている。キャロル・キング、ローラ・ニーロ、リッキー・リー・ジョーンズといった往年のシンガー・ソングライターを彷彿とさせる楽曲や歌声は話題になり、日本でも熱狂的なリスナーを獲得した。
▲ 「Nothing But A Miracle」MV
▲ 「Valentino」MV
高い評価を得て一気に第一線に躍り出たダイアン・バーチだが、彼女はすでにその先を走っていた。2011年にEP『The Velveteen Age』をリリース。この作品は、ニューヨークを拠点に活動するサイケデリック・ソウル・グループのザ・フェノメナル・ハンドクラップ・バンドが全面的にサポートし、スージー&ザ・バンシーズ、エコー&ザ・バニーメン、ザ・キュアーなどをカヴァーするという驚くべき内容だった。企画モノとはいえ、彼女の振り幅の広さには圧倒させられることになった。
そして、2013年には4年ぶりのセカンド・フル・アルバム『Speak A Little Louder』をリリースする。1作目のアーシーな味わいからは一転し、エモーショナルな歌とサウンドに変化したことで、さらにファンに驚きをもたらした。基本的にはダイアンが全曲においてソングライティングを行っているが、ザ・ルーツのクエストラヴやアクアラングなどが共作者として参加するなど、とにかく新しいトライを感じさせる内容となった。シンセを効かせた80sポップ風の新基軸もあり、ビョークなどにも通じるダークさも持ち合わせた彼女の歌の世界観からは、その懐の深さをまざまざと見せつけられることになった。
▲ 「Fools」MV
▲ 「Speak a Little Louder」 (Acoustic Session)
2016年には初のセルフ・プロデュース作品となるEP『Nous』を発表。シャーデーのサウンドを支えるギタリスト、スチュワート・マシューマンなどが参加したベルリン録音の 本作は、冒頭から多重コーラスの荘厳な響きで始まり、アンビエントな味わいが奥深い独特の雰囲気を持つ作品となった。
このようにひとつのイメージに安住することなく、進化を続けるダイアン・バーチ。この真の革新的なシンガー・ソングライターが、いよいよビルボードライブに登場する。しかも、約10年前となるデビュー作『Bible Beat』を中心にしたセットリストが組まれているというから、当時彼女を聴いていたというリスナーも必見のライヴとなりそうだ。時を経てあの名盤がどのように生まれ変わるのかを、ぜひ確かめていただきたい。
▲ 「Kings of Queens」MV
▲ 「The End」MV
公演情報
Diane Birch
ビルボードライブ大阪:2018/7/17(火) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
ビルボードライブ東京:2018/7/19(木) >>公演詳細はこちら
1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
【BAND MEMBERS】
ダイアン・バーチ / Diane Birch (Piano, Vocals)
デイヴ・ページ / Dave Page (Bass)
ショーン・リー / Shawn Lee (Drums)
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Text: 栗本 斉
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