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【再掲】ダニー・コーチマー 来日記念特集~西海岸ロック界のリーダー的存在!そのキャリアを振り返る

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 ジェイムス・テイラーにキャロル・キング、リンダ・ロンシュタットにジャクソン・ブラウンと、1970年代、当時のサウンドトラックを奏でたシンガー・ソングライターたちのそばには、必ずと言っていいほど、このギタリストがいた。クーチことダニー・コーチマーだ。その後、ギタリストとしてばかりか、ソングライターとして、プロデューサーとしても傑作の数々にかかわってきた。ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ビリー・ジョエル、ドン・ヘンリー等々だ。その彼が、37年ぶりに新作『ハニー・ドント・リーヴ・LA』を完成させた。ジェイムスやジャクソン等々の豪華なゲストたちも花を添え、彼らと作った傑作の数々に加えて新曲も披露しているが、そのクーチが来日する。それも、Immediate Familyの名のもとリー・スクラーやラス・カンケルのように、ザ・セクションとして活動した旧友、ワディ・ワクテルやスティーヴ・ポステルなど、達者な仲間たちと一緒だ。(※2018年5月10日初出)

 ダニー・コーチマーとの関係で、真っ先に思い浮かぶのは、やはり、ジェイムス・テイラーだ。今では当たり前のシンガー・ソングライターという言葉も、そもそも、この人の登場で使われるようになったほどの人で、二人は十代半ばに知り合った。場所は、ボストンやニューヨークから人々で賑わう避暑地マーサズ・ヴィニヤード、二人の少年は、毎年、夏になると一緒にアコースティック・ギターを奏で、歌う仲になる。

 その後、クーチは、ニューヨークでR&Bタイプのバンド、キング・ビーズでデビュー、そこで一緒だったジョエル・オブライエンを誘って、ジェイムスと一緒にバンドを組む、それが、フライング・マシーンだ。1960年代半ばにニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジで活動するが、これといって反響を得ないままに、ジェイムスはロンドンへ。ビートルズが立ち上げたアップル・レコードからデビューを飾る。その時、アップルの窓口となっていたのが、シンガーとしての活動から身を引いていたピーター&ゴードンのピーター・アッシャーだ。クーチは、彼が、アメリカでツアーを行った時に知り合い、ジェイムスとピーターとの仲立ちという役割を果たした。

 ニューヨークに残ったクーチは、ファッグスやクリアライトといったバンドに参加、当時大流行していたサイケデリック・ロック、ガレージ・ロックの動きにかかわり、そのクリアライトのメンバー、チャールズ・ラーキー、そしてキャロル・キングと3人で、ザ・シティを誕生させる。1950年代末から、夫ジェリー・ゴフィンと組んで数々のヒットを放ったキャロルの、カリフォルニアでのシンガーとしての再出発でもあった。




 と同時に、クーチにも、ザ・シティは、初めて完全に1枚のアルバムにかかわる貴重な経験をもたらすことになる。大いなる期待のもとに完成させたアルバム『夢語りNow That Everything's Been Said』(1969年)だが、キャロル・キングがライヴに積極的でなかったこともあり、ザ・シティは解散。キャロルに変わる女性シンガーとして、アビゲイル・ヘイネスを迎え、ジョエル・オブライエン、ラルフ・シュケットらとジョー・ママを誕生させ、『ジョー・ママJo Mama』(1970年)、『J・イズ・フォー・ジャンプJo Is For Jump』(1971年)を発表。後に、ジェイムス・テイラーが取り上げ、今回の『ハニー・ドント・リーヴ・LA』でも、ジェイムスをゲストに迎えた「マシン・ガン・ケリーMachine Gun Kelly」は、この頃のクーチの作品だ。

 こうしたバンドでこそ望みは満たされなかったが、セッション・ギタリストとしての快進撃が始まる。その代表的なものが、ジェイムス・テイラーの『マッド・スライド・スリムMud Slide Slim And The Blue Horizon』(1971年)やキャロル・キングの『つづれおりTapestry』(1971年)だ。1971年6月には、キャロルの「イッツ・トゥー・レイトIt's Too Late/アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴI Feel The Earth Move」が5週連続で1位に、1週間隔を置いてジェイムスの「君の友だちYou've Got A Friend」が1位に輝き、シンガー・ソングライター・ブームの幕開けを飾るが、いずれにもクーチは参加していた。






 その後も、ジェイムス、キャロルの二人はもちろんだが、リンダ・ロンシュタット、アンドリュー・ゴールド、J.D.サウザー、クロスビー&ナッシュ、ジャクソン・ブラウン、カーラ・ボノフ、ボニー・レイット、ボブ・ディラン等々のレコーディングやツアーに参加、シンガー・ソングライター、及び、ウエスト・コースト・サウンドには欠かせない存在として貢献していく。しかも、何処にでもいるようなギタリストと違い、ギター・ソロを延々と行うのではない。その歌が、最も魅力を輝かせる上で決定的なフレーズを、彼は弾いた。

 1977年、ジャクソン・ブラウンが、ライヴ会場での録音に止まらずに、宿泊先のホテルや移動中のバスでも録音するという異色のライヴ・アルバム『孤独なランナー Running On Empty 』を発表するが、そこでも、ギターを弾くばかりか、ソングライターとして、『ハニー・ドント・リーヴ・LA』でも再演する「シェイキー・タウンShaky Town」を提供している。ちなみに、映画『初体験リッジモント・ハイ』からヒットしたジャクソンの「サムバディズ・ベイビーSomebody's Baby」も、二人の共作だ。



▲ 「Somebody's Baby」


 また、そのツアーに一緒に参加したのは、彼の他に、ドラムスにラス・カンケル、ベースにリー・スクラー、キーボードにクレイグ・ダーギといったリズム・セクションだったが、その3人と一緒に、インストゥルメンタル・バンドとして、ザ・セクションの名の下でも活動する。1972年には、『The Section』、1973年に『Forward Motion』、1977年に『Fork It Over』と3枚のアルバムを残した。

 ザ・セクションと同じように、セッション・ミュージシャンたちと一緒にクーチが組んだバンドに、アティチュードがある。こちらは、ジョン・レノンやジョージ・ハリスンらのバックで数々の名演を残したドラマーのジム・ケルトナー、いまや世界的なプロデューサーとして名高いキーボードのデヴィッド・フォスター、セッション・ベーシストのポール・ストゥールワースと一緒に組んだバンドで、ジョージ・ハリスンのダーク・ホース・レーベルで2枚のアルバム(『Attitudes』1976年、『Good News』1977年)を残した。今回の新作のタイトル・ソングとなった「ハニー・ドント・リーヴ・LA」が、初めてクーチ本人の歌声で披露され、ファンキーで、甘いサウンドが高く評価されたバンドでもある。

 こうして1970年代には、セッション・ギタリストとして素晴らしい活躍をみせるが、音楽家としてのクーチの本領が発揮されるのは、実はこれ以降のことだった。というのも、その後、ギタリストとしての活動に止まらず、ソングライター、プロデューサーとしての飛躍的な活動で、真価を発揮することになるからだ。

 ビリー・ジョエルの『リヴァー・オブ・ドリームズRiver Of Dreams 』(1983年)、ニール・ヤングの『Landing On Water』(1986年)をはじめとして、ジョン・ボン・ジョヴィが、映画『ヤング・ガンズll』に触発されて作り、ソロ第一弾ともなった『Blaze Of Glory 』(1990年)、そのジョン・ボン・ジョヴィとは、ダリル・ホール&ジョン・オーツの『Change Of Season 』(1990年)の中からシングル・ヒットした「So Close」に共同プロデュースという形でかかわった。ティモシー・B・シュミットの『テル・ミー・ザ・トゥルースTell Me The Truth 』(1990年)には、ドン・ヘンリーと一緒に表題作をプロデュース、ボズ・スキャッグスの『ディグ Dig』(2001年)では、TOTOのデヴィッド・ペイチとの共同プロデュースで、作曲にギターにプログミングと大活躍する。



▲ 「So Close」MV


 殊に、イーグルスのドン・ヘンリーとの仕事では、圧倒的な存在感を放つことになる 。『I Can't Stand Still 』(1982年)、『Building the Perfect Beast』(1984年)、『The End Of The Innocence』(1989年)等で、ギターはもちろんだが、キーボードでのサウンド作りに貢献、また、ソングライターとしても、「ダーティ・ランドリーDirty Laundry」、「サンセット・グリルSunset Grill」、「ニューヨーク・ミニットNew York Minute」などの傑作の数々をヘンリーと共作、単独でも「オール・シー・ウォンツ・トゥ・ドゥ・イズ・ダンスAll She Wants To Do Is Dance」を提供するなど、八面六臂の活躍をみせる。

CD
▲『クーチ』

 ソロ・アルバムとしては、1973年の『クーチKootch』、1980年の『危険な遊びInnuendo』の2枚だけだったが、1970年代から現代に至るまで、ロックが時代の荒波を潜り抜けながら円熟していく過程に深くかかわり続けた。1990年代の一時期、ハーヴェイ・ブルックスやチャーリー・カープと3人でロック・トリオSLOLEAKを組んで活動したこともある。『ハニー・ドント・リーヴ・LA』の中の「Cruel Twist」は、その頃の曲を録音しなおしたものだ。

CD
▲『ハニー・ドント・
リーヴ・LA』

 こういう人は、ロック界広しと言えども、なかなか見当たらない。そのダニー・コーチマーの、昨年に続いての来日公演だ。しかも、37年ぶりの新作『ハニー・ドント・リーヴ・LA』を携えて、ラス・カンケルにリー・スクラーのザ・セクションの仲間も同行する。1973年のジェイムス・テイラーの初来日公演、2014年のジェイムスとキャロル・キングとのトルバドール・リユニオン・ツアーでの来日公演と、この3人が日本のステージで揃うのは滅多にない。しかも、今回は、スティーヴ・ポステルにワディ・ワクテルまでが加わる。殊に、ワディは、リンダ・ロンシュタットのバックを経て、ダン・ダグモアやリック・マロッタらと組んだローニンでも知られるギタリストだが、クーチに負けじとジェイムス・テイラー、ジャクソン・ブラウン、ウォーレン・ジヴォン等々と数えきれないほどのセッションで名を馳せてきた。キース・リチャーズ率いるThe X-Pensive Winosの一員でもある。そんなこんなで、我々にとって、世界中のファンが羨むほどの貴重な体験になるのは間違いないだろう。

 

 

ダニー・コーチマー&イミディエイト・ファミリー「ハニー・ドント・リーヴ・LA」

ハニー・ドント・リーヴ・LA

2018/05/16 RELEASE
VSCD-3956 ¥ 3,080(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.All She Wants To Do Is Dance
  2. 02.Dirty Laundry
  3. 03.Can’t Do Crazy Love Again
  4. 04.Machine Gun Kelly
  5. 05.Somebody’s Baby
  6. 06.You’re Not Drinking Enough
  7. 07.Shaky Town
  8. 08.Cruel Twist
  9. 09.New York minute
  10. 10.Top of the Rock
  11. 11.Sayonara
  12. 12.Honey Don’t Leave LA

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