Special
デビュー25周年を迎える“恋愛の神様”古内東子 ベスト・アルバム10選
古内東子が、今年2月でデビュー25周年を迎える。現役女子大生シンガー・ソングライターとしてデビューして間もなく、その歌の世界観から“恋愛の神様”と讃えられるようになり、ユーミンや竹内まりやの系譜にあるラブソングの名手としての評価を確立した。また、サウンド面においても、早くから海外レコーディングを敢行するなど国内外のベテラン・ミュージシャンを配し、ゴージャスかつセンスのいいアレンジで楽曲を演出していった。デビューから四半世紀たった今も、その時々の変化や進化はありつつも、クオリティの高い作品を発表し続けていることに変わりはない。ここでは、20作近くあるオリジナル・アルバムの中から10枚を厳選。これらの傑作アルバム群から、古内東子のこれまでの軌跡を辿っていきたい。
『SLOW DOWN』(1993年4月21日)
記念すべきデビュー・アルバム。当時まだ20歳ということもあって楽曲も声も初々しく、「あいたくなったら」や「はやくいそいで」などといったポップなナンバーが新鮮さを感じさせる。同時に「Destiny」や「Alienation」のような切ない世界観はこの時点で完全に確立されていることにも驚かされる。この印象は7ヶ月後にリリースされた2作目『Distance』でも変わらず、実力派としての地位を徐々に固めていった。
『Strength』(1995年9月21日)
3作目『Hug』(1994年)あたりから徐々にその萌芽を見せ始めていたソウルやR&Bからの影響をそのまま形にすべく、サウンド的に大きく振り切った4作目。全編米国でのレコーディングを行い、オマー・ハキム、ウィル・リー、ボブ・ジェームス、デヴィッド・サンボーン、マイケル&ランディ・ブレッカーといった錚々たるジャズやフュージョン系のミュージシャンがサポート。洋楽ファンからも一目置かれる存在となった。
『Hourglass』(1996年6月21日)
『Strength』での“洋楽的”なアプローチを継承しつつも、よりメロウでスムースなサウンドで追求し、古内サウンドを完全に確立した5作目。小松秀行(ex.オリジナル・ラヴ)を中心とした日本でのセッションと、ジェイムス・ギャドソン率いる海外勢とのバランスもよく、代表曲となった「誰より好きなのに」が収録されていることでもファンの人気が高い初期の代表作。
『恋』(1997年8月21日)
デビュー当時から完成度が高かったとはいえ、彼女の個性が最大限に生かされたのは、この6作目からではないだろうか。ソフトなグルーヴ感を持つサウンドと、ダブル・ヴォーカルを効果的に使ったアレンジは、やるせない恋を描いた歌詞にマッチし、まさに恋愛ソングの最高峰ともいえる世界を作り上げた。「悲しいうわさ」や「大丈夫」、「宝物」といった名曲も多数含み、セールス的にも一気にブレイクした。
『魔法の手』(1998年8月19日)
オリコンチャートでついに1位を獲得した7作目。ミディアム・メロウの名曲「銀座」を始め、歌詞のレトリックも研ぎ澄まされた印象が強く、当時の彼女の勢いが伝わってくる。小松秀行が全曲のアレンジを行っているが、日米のミュージシャンをバランスよく配置しており、「雨降る東京」では名手デヴィッド・T・ウォーカーのギター・フレーズが聞こえてくるなどサウンド面でも注目すべき点は多い。
『Dark ocean』(2000年12月6日)
前作『winter star』(1999年)から完全にセルフ・プロデュースとなったが、さらにブラッシュアップされて生み出されたのがこの9作目。メロディメイカーとしてもサウンド面においても、ひとつの到達点と位置付けてもいいだろう。とくに、プログラミングをベースにしたコンテンポラリーなR&B色の強いアレンジと彼女特有のダブル・ヴォーカルの融合は、これ以上ないほどの完成度を誇る。全編通して感じられるメランコリックなムードも見事だ。
『10stories』(2002年9月4日)
記念すべき10作目となった本作は、初めて全曲のアレンジを古内自身が担当し、ソングライターとしてだけでなくサウンド・クリエイターとしての実力も見せつけることとなった。メロウな印象は『Dark ocean』の延長線上のようだが、江口信夫、松原秀樹、古川昌義といったベテランのスタジオ・ミュージシャンを起用したことでバンド感も濃厚だ。なお、本作は10年在籍したソニーでの最後の作品となった。
『CASHMERE MUSIC』(2005年11月30日)
ポニー・キャニオンに移籍して発表した『フツウのこと』(2004年)が、非常にポップでメロディアスな作品だったが、続くこの12作目はさらにポジティヴな印象を持つアルバムとなった。その象徴的なナンバーが「Beautiful Days」で、珍しく幸せなラブソングであり、その後のライヴの定番曲にもなった。その一方で、大胆にテクノを取り入れた「コートを買って」のような楽曲もあり、一筋縄ではいかない彼女の資質を感じさせる。
『透明』(2011年2月23日)
少しブランクがあった後、tearbridge(エイベックス)に移籍。ゴージャスな印象を持つ『IN LOVE AGAIN』(2008年)、KREVAとのコラボレーションを含む『PURPLE』(2010年)を経て発表したのがこの15作目。ミュージシャンの参加を最小限に抑え、ほぼ全編を古内自身によるミニマムなプログラミングでアレンジ。R&Bやヒップホップからの影響が多大ではあるが、その一方でアコースティックな質感も重視しており、絶妙なバランスの力作となっている。
『Toko Furuuchi with 10 legends』(2016年3月30日)
『夢の続き』(2012年)でtearbridgeとの契約を終了し、ユニバーサルミュージックに移籍して発表した現時点での最新作。全曲デュエットという企画アルバムで、奥田民生、斉藤和義、平井堅といった10人の男性ヴォーカリストとの共演が楽しめる。基本的には共演者の持ち歌を選曲しているが、槇原敬之とは「誰より好きなのに」を披露。たをやめオルケスタによるビッグ・バンド・サウンドもゴージャスなコンセプトに合っている。次の展開に期待したくなる作品だ。
このように、様々な変遷を経てきた古内東子だが、一貫して変わらないのは、ラブソングのクリエイターとしての実力だ。そして、サウンドの変化はあれど楽曲のクオリティを高く保ち続けていることは、ビルボードライブでも展開しているシンプルな弾き語りメインのライヴからも伝わるだろう。今後もきっと、古内東子は“恋愛の神様”であり続け、人の心を動かすようなラブソングを作り続けていくに違いない。
公演情報
古内東子
TOKO TRIO~Valentine's Day Special~
ビルボードライブ東京:2018/2/14(水)<終了>
1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2018/6/10(日)
1st Stage Open 15:00 Start 16:00 / 2nd Stage Open 18:00 Start 19:00
>>公演詳細はこちら
関連リンク
Text: 栗本斉
関連商品