Special
シザ『コントロール』発売記念特集~グラミー賞女性最多5部門ノミネート、今最も注目すべき新人“SZA”とは?
【第60回グラミー賞】女性最多5部門ノミネート、ケンドリック・ラマーらを擁するTDE所属
紅一点シンガー=SZA(シザ)が待望の日本デビュー(2018年1月24日)を果たした。デビュー・アルバム『Ctrl(コントロール)』は、”本当はコントロールしたいのにコントロールできない溢れ出る感情”を独自の視点と赤裸々かつユーモアある言葉で見事に歌詞に昇華した作品で、収録曲の「ザ・ウィークエンド」や「ラヴ・ガロラ feat. トラヴィス・スコット」は米ビルボードHOT100入りを果たし話題を集めている。今、最も注目すべき新人女性シンガー・ソングライターの一人=シザについて、音楽評論家の小野島大氏に彼女の魅力とデビュー・アルバムをここで紐解いてもらった。
メロウでソフトでソフィスティケイトされた都市生活者のエレクトロニックR&B
ついにSZA(シザ)の『Ctrl(コントロール)』の日本盤が発売される。現在もっとも注目を集める女性シンガー・ソングライターが送り出した鮮烈なる傑作である。米ミズーリ州セントルイス生まれの27歳の、これがファースト・アルバムになる。本国リリースから半年たっての日本盤発売だが、この記事が掲載された直後の1月29日(現地時間28日)に結果が発表される第60回グラミー賞に、最優秀新人賞、最優秀R&Bソングなど、女性最多の5部門でノミネートされ、また米『TIME』誌で1位に選出されたのを筆頭に、各音楽メディアの2017年ベスト・アルバムで軒並み上位にランクされるなど、ここにきて再び大きな注目を集めているのだ。
メロウでソフトでソフィスティケイトされた都市生活者のエレクトロニックR&B。ロックやジャズ、フォークなどに通じる音楽性も幅広く多彩で豊かだ。サンプリングを多用し、音数を絞って空間を活かした余裕のあるアレンジが素晴らしく美しく新鮮、かつイマジネイティヴだ。音響的にもシンプルだが音場の奥行きが深く、広がりがある。だからSZAの若々しくも落ち着いた芯のある声と柔らかく色気のある節回しが際だっている。ケンドリック・ラマーを擁する気鋭のレーベル
▲SZA - Love Galore (Official Video) ft. Travis Scott
SZAことソラーマ・イマーニ・ロウは1990年生まれ。セントルイスからニュー・ジャージーに移り、高校の頃は体操やチア・リーディングに熱中していた。厳格な両親のもと、熱心なイスラム教徒として育てられたが、9.11以降に差別に会うという経験もしている。両親や友人の影響でマイルス・ディヴィスやビリー・ホリデイ、ローリン・ヒル、ウータン・クランといった音楽を聞いていたが、本格的にヴォーカリストを目指すきっかけとなったのは、ラッパーである兄の作品に参加したことだった。やがて敬愛するウータン・クランからインスパイアされSZAと名乗るようになり、作曲及びトラック・メイクを始める。2012年10月、デビューEP『See.SZA.Run』を自主制作リリースする。ソウル、ヒップホップ、エレクトロニックR&B、さらにはチルウエイヴやウィッチハウスの要素も加えた音楽性は、ドレイク、ミゲル、ウィークエンドといった人たちと比較された。既に現在に至る個性の一端がうかがえ、彼女の才能の閃きは感じるが、まだ十分とは言いがたい。
やがて2013年4月にセカンドEP『S』をやはり自主制作でリリース。そして同年7月にTDEと契約を結び、翌2014年4月に3枚目のEP『Z』を、トロ・イ・モア、ラリー・フィッシャーマンa.k.a.マック・ミラーなどのプロデュースでリリース。チャンス・ザ・ラッパーやケンドリック・ラマーが参加したこのアルバムは、アンビエントや80年代シンセ・ポップ、AORなどの要素も加えた音楽性が高く評価され、全米R&Bチャート9位まで上がるヒットとなる。そして2016年にはリアーナのアルバム『ANTI』のオープニング・ナンバー「Consideration」でフィーチャリングされ、一躍世界中にその名を知られるようになるのである。
当初、『S』『Z』に続くファースト・アルバムは当然のように『A』になる予定だったが、難産の末、結局『Ctrl』とタイトルされ、メジャーのRCAから2017年6月にリリースされ大反響を巻き起こし、全米アルバム・チャート3位まで上昇する大ヒットとなった。同作からシングル・カットされた「The Weekend」は彼女にとって初のR&Bチャート1位に輝いた。
▲SZA - The Weekend (Official Video)
さらにマルーン5のシングル「What Loves Do」にも客演し、これも全米チャート9位まで上昇して、世界的なヒットを記録している。昨年末にはケンドリック・ラマーとのコラボレーション楽曲"All The Stars"を公開して大反響を巻き起こした。この曲はマーベル・ヒーロー、ブラックパンサーが主人公の新作映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックに提供した楽曲だ。
▲Maroon 5 - What Lovers Do ft. SZA
- < Prev
- 人間的な葛藤と逡巡が、SZAの歌には率直に表されている
- Next >
リリース情報
『Ctrl(コントロール)』
- SZA(シザ)
- 2018/1/24 RELEASE
- 国内盤 | SICP-5661
- 歌詞・対訳・解説付き
- [定価:¥ 2,376(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
特設サイト
『2018 GRAMMY® ノミニーズ』特設サイト
詳細はこちらから>>
番組情報
【第60回グラミー賞授賞式 WOWOW番組情報】
「生中継!第60回グラミー賞授賞式」
2018年1月29日(月) 午前8:30 [WOWOWプライム]※二カ国語版(同時通訳)
「第60回グラミー賞授賞式」
2018年1月29日(月) 夜10:00 [WOWOWライブ]※字幕版
関連リンク
Text: 小野島大
45