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ジャネット・ケイ来日記念特集~“ラヴァーズ・ロックの女王”のサクセス・ストーリーを追う
小鳥のさえずりとアコースティック・ギターに導かれるようにして始まる、ソフトなレゲエのリズム。そして、キュートなヴォーカルが聞こえてくる名曲「Lovin' You」は、ラヴァーズ・ロック史上最大の傑作といっても異論はないだろう。主役のジャネット・ケイは、まさしくラヴァーズ・ロックを代表するシンガー・ソングライターであり、女優としても活躍するほどのマルチな才能の持ち主である。ここでは、本国UKだけでなく、日本でも人気の高い彼女のサクセス・ストーリーを追ってみたい。
ジャネット・ケイは、1958年に英ロンドンのノースウェストで生まれ育った。両親はジャマイカ人で、ジャマイカの黒人差別に反する暴動を率いた国民的英雄ポール・ボーグルの子孫である。ジャネットは、幼い頃からこういったジャマイカの歴史や文化を教え込まれたことは想像される。レゲエだけでなく、ソウルやポップスからも影響を受けて歌い始めていた彼女は、ハイスクールの友人でもあるシンガーのソニア・ファーガソンに誘われてアスワドのリハーサルに立ち会ったことから、レゲエ・ヴォーカリストとしてのきっかけを掴むことになる。
まだデビューしたばかりのアスワドではあったが、すでにUKルーツ・レゲエの実力派として評価を高めていた。キーボーディストのトニー・ガッドは、ジャネットの歌声を聴き、大いなる可能性を感じたという。そこで、ロックステディの代名詞ともいえるアルトン・エリスに紹介する。アルトンはミニー・リパートンの名曲「Lovin' You」をカヴァーする女性シンガーを探しており、見事ジャネットは抜擢された。1977年にレコーディングされたラヴァーズ・ロック版「Lovin' You」は、その後シングルとしてリリースされることになり、UKのレゲエ・チャートでは1位を獲得した。
▲ 「Loving You」(TV Performance)
▲ 「Silly Games」(TV Performance)
1978年には、「That's What Friend's Are For」や「I Do Love You」など、今となっては代表曲とされる楽曲をシングル・リリース。いずれもレゲエ・チャートでは1位を獲得している。そういったなかでも大きな転機となったのが、1979年に発表した「Silly Games」だ。この曲は、心地良いアフター・ビートとメロウでスウィートな雰囲気が高く評価されて大ヒットを記録。レゲエ・チャートでの首位はもちろんのこと、UKポップ・チャートでも2位にまで上昇した。その後発表されたファースト・アルバム『Capricorn Woman』も大ヒットを記録。デニス・ボーヴェルが生み出したラヴァーズ・ロック・サウンドは国内外を席巻し、ジャネットは一躍“ラヴァーズ・ロックの女王”という称号を得ることとなった。
80年代に入ると、『So Amazing』と『Sweet Surrender』という2枚のアルバムを、ロイド・チャーマーズのプロデュースで発表したが、ジャネットはレゲエにとどまらなかった。例えば、1984年に発表したシングル「Eternally Grateful」は、ソウルフルなサウンドでディスコ・ヒットとなった。一方では、ジャマイカのロック・ステディにおける重鎮オルガン奏者ジャッキー・ミットゥーとの共演で、ランディ・クロフォードの「You Bring The Sun Out」をラヴァーズ・ロック・ヴァージョンでカヴァーし、その本領を発揮している。とはいえ、ジャネットは少しずつ音楽業界から身を引き始め、女優活動を並行して行うようになった。
80年代末には、あまりジャネットの名前を聞くことがなくなってしまったが、1990年代に突入すると彼女の逆襲が始まる。まず、ノーマン・クック(ファットボーイ・スリム)のユニット、ビーツ・インターナショナルが1990年に発表したクラブ・ヒット「Burundi Blues」にその可憐な声がフィーチャーされた。また、ビーツ・インターナショナルのヴォーカリスト、リンディ・レイトンのソロにも協力し、自身の代表曲「Silly Games」のカヴァーにも参加した。
▲ 「Burundi Blues」
そして決定打となったのが、1991年に発表したアルバム『Lovin' You - Best Of J.K.』である。この作品は、日本独自で企画されたベスト・アルバムで、過去のシングルやアルバムからセレクトされたコンピレーションだったが、「Lovin' You」はレコーディングし直された。そして、日本のソニー・ミュージックによる大々的なプロモーションが成功し、大ヒットを記録。再び“ラヴァーズ・ロックの女王”の称号を取り戻すことに成功しただけでなく、レゲエ・ファン以外のリスナーを多数獲得し、日本でも地位を盤石なものとした。
その後は、コンスタントにアルバム・リリースやライヴ・ツアーを継続。日本ではほぼ毎年のように来日し、ツアーが行われているが、いくつものヒット曲を披露することで絶大な人気を誇っている。この冬も間もなくビルボードライブでの公演が控えており、レジェンドの成熟した歌声を堪能することができるはずだ。ぜひとも“ラヴァーズ・ロックの女王”の健在ぶりを、この冬に体感してもらいたい。
公演情報
ジャネット・ケイ
celebrating 40 years of 'LOVING YOU'
ビルボードライブ東京:2018/1/7(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2018/1/9(火)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
【BAND MEMBERS】
ジャネット・ケイ / Janet Kay (Vocals)
ヴィヴィーン・レイ / Viveen Wray (BGV)
クラウディア・フォンテイン / Claudia Fontain e(BGV)
コリン・マクニッシュ / Colin McNeish (Bass)
レノックス・キャメロン / Lennox Cameron (Keyboards)
ピーター・リー / Peter Lee (Guitar)
ケンリック・ロウ / Kenrick Rowe (Drums)
関連リンク
Text: 栗本斉
スルー・ザ・イヤーズ~グレイテスト・ヒッツ&モア
2009/07/22 RELEASE
SICP-20202 ¥ 2,934(税込)
Disc01
- 01.ラヴィン・ユー
- 02.カプリコーン・ウーマン
- 03.シリー・ゲームズ
- 04.ソー・アメイジング
- 05.ラヴ・ウォーント・レット・ミー・ウェイト
- 06.ラヴ・ユー・オールウェイズ
- 07.ミッシング・ユー
- 08.オールウェイズ
- 09.ナチュラル・ラヴ
- 10.ラヴ
- 11.ゴット・トゥ・ビー・ゼア
- 12.イエス・アイム・レディ
- 13.イン・パラダイス
- 14.アイ・ドント・ウォント・ディス・ラヴ・トゥ・エンド
- 15.メイキング・ヒストリー
- 16.ホワッチャ・ゴナ・ドゥ・フォー・ミー
- 17.セレブレイト・ライフ
- 18.アイム・イン・ラヴ・ウィズ・ユー・ベイビー
- 19.セレブレイト・ライフ
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