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Do As Infinity『化身の獣』インタビュー
「俺らは激動の中で生き抜いてやってきた」というプライド
Do As Infinity『化身の獣』リリース記念インタビュー敢行!復活10周年を迎える前に、澤野弘之との出逢いや海外での熱烈歓迎を体験した2017年を振り返りつつ、伴 都美子×大渡 亮やチームの状態、解散~再結成の際に誓った一生宣言の重み、今の音楽シーンでのDoAsの戦い方等々語ってもらった。必読です!
DoAsの2017年「腐らず、地に足をつけ、地道に活動することの大事さ」
--2017年クライマックスに掲載されるインタビューということで、年末感ある質問からさせてください。お二人にとって2017年はどんな1年でしたか?
▲Do As Infinity / 化身の獣 -テレビアニメ「十二大戦」エンディングテーマ(JUNI TAISEN:ZODIAC WAR)- Sound Produced by 澤野弘之
--どうしてこのタイミングだったんでしょうね?
大渡 亮:それをね、コントロールできたらね、本当に良いなと思うんですけど、そういう目に見えない何かが合致する瞬間というものはね、コントロールできない。出来たら良いのにと思うけど。--面白いぐらい、近年最もチャレンジングな1年になりましたよね。DoAsを取り巻く流れがそういう1年にさせようとしていたというか、確実にそういうムードが今年はありましたよね。
大渡 亮:あったと思いますね。その中で自分が新しいものに対していく際のスキルだったりね、どう上手く立ち回るか。そこが今までよりラクに乗り越えられたというか、日々の活動のおかげで、この難関を意外と楽しみながら乗り越えられた。そんな1年でもありましたね。--伴ちゃんにとってはどんな1年でした?
伴 都美子:新しいこと尽くしだったようにも思いますし、今までの活動があったから「それが出来る」ということもすごく感じましたね。澤野さんとのプロジェクトも新たな試みで、大きなチャレンジでしたし、海外でライブをやれたこと、待ってくれていた人たちの温度を現地で生で感じられたことは……なんとも言葉にできないぐらい、いろいろ感じさせられるものがあって。そんな中でシングルも3枚リリースすることができて、夢中でしたし、大変だったけど、有り難かった1年でしたね。--個人的には、DoAsを追いかけさせて頂くようになってから長い歳月が経っているんですけど、年頭に伴ちゃんから初めて呑みに誘われるという(笑)。
伴 都美子:ハハハハ! もうアレから1年経つんですか?--僕に限らず「これまでお世話になった人たちと腹割って話してみたい」そんな趣旨だったと記憶しているんですが、あれもDoAsの2017年を構築していく上で全く関係ないものではなかったのかなって。
伴 都美子:そういう意味では、きっと心の窓というかシャッターみたいなものを開かないと何にも入ってこない! みたいな課題もあったんでしょうね。--それ以降の流れを見ていると、あの時点で「何か変えなきゃいけない」みたいな悩みもあったのかなって。自分ではどう思います?
伴 都美子:あー、悩みは常にですね(笑)。亮くんにもよく「伴ちゃんは闇を持ってくるからね」と言われるぐらいなんで! でもやっぱり何か変えたかったんじゃないですかね。自分だったり、DoAsという存在だったり。--2008年の再結成以降しばらくは、復活した熱量そのままに日本武道館で再びライブをしたり派手な動きも多かったですが、それ以降は伴ちゃんの出産などプライベートではいろいろありましたが、DoAsの活動自体はどちらかと言うとルーチン的でしたよね。でも今年は明らかに今までと違う、ひとつ風穴を開けるような1年になりました。
▲YouTube「Do As Infinity / ETERNAL FLAME」
--なるほど。
大渡 亮:もちろん嬉しいことだし、その嬉しさによって正しき欲が生まれて「ああなりたいな、こうなりたいな。今、しぶとくやってる俺たちがあそこに行けたら面白いな」と考えたりもしますし。でもこう言ったらネガティブかもしれないけど、そうやって心をトキメかせて新しいスケジュールに向かっていこうと思っても、それがダメになることもたくさんあるんですよ。そこで「心が折れる」という経験もしているし、「予定通りに行かないものでもある」ということも知っているので、保守的に聞こえるかもしれないけれど、僕は多くは望んでないです。「ダメになってもいいや」ぐらい。でも「俺は音楽をやるよ」っていうね。要するに「音楽をやるよ」以外を求めるとガッカリ感が半端ないのよ! いろいろなことで。僕はガッカリしたくないんですよね。それでいろんなことがダメになるぐらいなら最初から望まない。これが良いのか悪いのか分かんないけど、僕はやっぱり自分のメンタルを守りたいのかもしれないね。まぁそれも長年やってきた者の習慣だったり、ひとつの保守的な考え方なのかもしれないけど。--でもそのガッカリは音楽へのモチベーションにも影響する訳じゃないですか。
大渡 亮:だから「モチベーションを下げたくない」ということですよね。--DoAsは再結成のタイミングで「もう一生解散しない」と宣言していますよね?
大渡 亮:今もそのつもりで動いてます。3年で復活して「また辞める」なんて恥ずかしくて言えないでしょ? というのが正直なところで、そこはもう意地でも貫きたい。インターバルを置いてブレークしたとしても解散は一生しない。「解散」という言葉はもう使いたくないな。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
「俺らは激動の中で生き抜いてやってきた」というプライド
--ただ、当時はその一生宣言にファンもめちゃくちゃ喜んだし、もう100%ポジティブな流れがそのあとしばらく続いていたと思うんですが、ただ「一生続ける」って冷静に考えるとめちゃくちゃ難しいことじゃないですか。それを痛感する瞬間と云うのはここ数年あったりしましたか?
伴 都美子:まず解散というのはもうないですよね。したところで「ダサいな」と自分でも思うだろうし。だからそれはないでしょう。で、続けていくということ。私は常々それについては考えますし、自分的には「自分の中で目標を作って、そこに向かっていく」という……うーん、難しいな。一生ですからね。大変なこともあるけど、やっぱり楽しんでいる自分もいて、それでも「中途半端だなぁ」と思ったら一旦休憩するかもしれないし、でも止めるのはなかなか勇気のいることで。音楽業界もこの先どうなっていくか分からないし……何言ってるか分かんなくなってきました。一同:(笑)
大渡 亮:そんな感じはした(笑)。--でもそうやって見えない未来に対していろいろ考えながらも、それでも継続してきた結果、気付けば来年で復活10周年になるんですよね。1999年のデビューから2005年の解散までの期間が6年ですから、もう再結成後の活動期間のほうが全然長くなっている。この状況にはどんなことを感じたりしますか?
伴 都美子:早いなって(笑)。このあいだ、それを知って「もう10年か」って。あと「時代も変わったなぁ」って。 大渡 亮:それは感じる。本当にそれは……悪い意味で! 伴 都美子:ハハハハ! 大渡 亮:変わり過ぎたよなぁ。活動しづらい! 伴 都美子:これ、文字になるの(笑)?--載せられない話であればカットしますが(笑)、具体的にはどんなところに「活動しづらい!」と感じますか?
大渡 亮:単純に売れないよね。--それは音楽シーン全体的にそうですよね。
大渡 亮:全体的にCDの価値が下がった。音楽というものの価値が下がってしまって、残念! ということかな。 伴 都美子:入口も増えたし、選択肢もいっぱいあって、リスナーの耳も肥えていく。それはイチリスナーとしてはすごく恵まれている、楽しい状況変化だとは思うんですよね。いつでもどこでも聴ける訳で。 大渡 亮:それでもって自分の何かを発信する時代。そういう意味では良いっちゃ良いんだけど、今までそういうツールがないから音楽は音楽業界が独占していた訳じゃないですか。それが一般レベルまで下がっていったことで、プロライクなクオリティじゃないものも見られているし、聴かれている情報時代になってる。まぁでもそういうことを言うこと自体がナンセンスなのも分かってる。でもその上で本音を喋ると「昔と変わったなぁ」っていう。 伴 都美子:それに加えて私は「あー、タフになんなきゃダメだなぁ」と思う。 大渡 亮:だから甘えてはいけない。その状況を把握した上で、自分たちは自分たちで基礎体力を高めていかなきゃいけない危機感というかね。だからよりドライになってきている感じはあります。甘えてて「昔はよかったなぁ」ではなくて「じゃあ、どうしようかな」という感じにはなってるんだけど、「昔のほうが活動はしやすかったなぁ」というのが本音というだけで。だからサヴァイヴ感とか基礎体力を上げる為のバイタリティみたいなもの。それに対して「よっしゃ!やったろうぜ!」みたいな気持ちは強くある。だけど、そこにいろんなことが作用するので、あまり多くは望まないようにはしています。ただ自分たちの体力を高める為に「よっしゃ!」というところで気を吐く。そうやって活動していくのが健全だし、健康的なんじゃないかなと思いますね。 伴 都美子:私もそう思う。シングル3枚切れることなんて、この時代では本当になかなかないから。だからそのひとつひとつにしっかり集中していく。もうこれしかないんですよね! 大渡 亮:ただ、今日みたいなファンクラブイベント(※このインタビューは、Do As Infinity『化身の獣』先行試聴会&スペシャルライブ【Doの集い~Listen To The Music~vol.3】開催日に行われた)で自分たちをしっかり見せることができる。という強みがある訳ですよね。歌とギター1本だけで人前に出てちゃんとエンターテインメントができるし、それなりに納得させられるスケール感もお届けできる。こんなにミニマムでも自分たちを表現できる。そういう意味では、むしろあんまり怖くないというか、歴史を背負って…… 伴 都美子:年輪だよ。 大渡 亮:そうだね。そこは若者には負けないところというか「ナメんなよ!」っていう気持ちはあるかな(笑)。 伴 都美子:ハハハハ! 大渡 亮:「俺らは激動の中で生き抜いてやってきた」というプライドみたいなものが正直あるなって最近感じる。だから軸がブレない。自分たちがやってきたことに対する責任感やプライドを胸に秘めて活動する、っていうことが大事だということだよね。 伴 都美子:それをキープすることはなかなか大変だけど。 大渡 亮:いろんなことが影響してくるから。これは本音中の本音だけど、それも含めてサヴァイヴするということが「グループを始めた者の使命なのかな」と昔より感じるようになった。それで生かしてもらっているし、生きている。食わしてもらっているし、食っている。
▲YouTube「※Do As Infinity / Tangerine Dream」
リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
「世の中にあと何曲ぐらい発信できるんだろう?」
--そうした意識を今持っているからこその2017年だし、海外のファンが各所で熱狂する状況も生まれたんだと思います。
伴 都美子:最近考えるのは、私は来年で39歳、もうすぐ40歳になるんです。亮くんは46歳、あと4年で50歳なんですよね。人の寿命って分かんないけど、いつまで歌えるのか私も分かんないけど、単純に「世の中にあと何曲ぐらい発信できるんだろう?」って考えたりするんですよ。そうなると、臆したり縮こまったりせずに今を楽しんで、出逢いに感謝して、何かしたいという好奇心を持ち続けることをやめない。そういう気持ちになっていくんですよね。だから亮くんがよく言うけど「しぶとく」。それは本当にその通りで。でもその中で「あと何曲出せるんだろう?」ということはすごく考える。 大渡 亮:終活じゃないですけど、そういうこともイヤだけど考えちゃうんですよね。「いつまでやれんのかな?」みたいな。でも自分の音楽人生の中で今がいちばん調子良いんですよ。今までいちばん広い視野を持ってギターを弾いていると思ってるんです。自分の高めたいところも徐々に高まってきて、アンサンブルのこととか音楽のこととか、いちばん見通しが明るい。なので、この状態で今活動できていることがいちばん楽しいんですよ。すごく人に求められているときよりも、今のほうがじっくり音楽と向き合えている。なので、人間的に限界はあるにせよ、この感覚をもっと研ぎ澄ませて音楽がやりたい欲だけは高まっている。そうやって自分が高まることで、Do As Infinityにフィードバックできると良いなと思っています。 伴 都美子:亮くんはどこか客観的にDoAsをいつも見てるよね。 大渡 亮:そうだね。最初に「僕がいなくてもいいグループ」っていう認識があったんですよ。曲を作る人がいて、歌を歌う人がいる。俺は別にいなくてもいいけど、入れてもらったところがあったんで「じゃあ、足りないところを俺がやっていこう」というのが僕の経営理念だったんです。で、当時のDoAsに足りないものはコミュニケーションだったり、自分たちの楽曲を言葉に変換することだったりしたので、それを俺はやろうと思ったんです。ライブのスポークスマンを買って出てやる。ラジオ番組に出たら俺が指揮ってやる。そういう経験のない2人を引っ張っていくのが僕の役目だと思って、自分の仕事を自分で作っていった。元々しゃしゃり出るタイプというか、じっとはしていられないんで。で、そのうち「DoAsは曲は良いけど、メッセージが希薄だ。これではライブをやっててもお客さんが面白くないだろうなぁ」と思うようになって、メッセージがあるアンセムを自分で書こうと思って、踏ん張って歌詞を書いた記憶がありますね。そうすると、ライブでひとつ趣旨が見えるんですよ。「あの曲がこのライブに来ると歌える」って。それで「みんなで歌えて楽しかった!」と帰れるライブの図式を自分が担おうと思った。そういう流れもあったので、今でもDo As Infinityを客観的に見ることが出来るんでしょうね。--そんな亮さんから見て、今のチームDo As Infinityはどう映っていますか? おふたりはもちろん、例えば、澤野弘之さんとのプロジェクトを提案してきたスタッフがいたり、実に熱量の高いチームとして仕上がってきている印象もあるんですが。
大渡 亮:たしかに。自分たちだけではこういう流れも出来なかった訳で。僕がさっき気を吐いて言っていたのは、音楽のセクションではブレず「自分たちはこうだ!」という話でね。だから来る者拒まず、去る者追わず、高く望まず。ただ地に足つけてじっくり音楽をやる。そうすることによって、そこにひとつ信用が生まれて、そういう新しきモノを提案してくれたり、紹介してくれたりして、2017年は実を結ぶことが多かった。という風に心の底から認識している。 伴 都美子:音楽があるから、ひとつのチームワークが生まれて、連帯目標が生まれていって、それをひとつひとつ達成していって今がある。亮くんに限らず、誰ひとり欠けても今はないよね? 大渡 亮:そうだね。--今日の話を聞いていると、Do As Infinityは今いちばん良い状態にあるのかなと感じます。
大渡 亮:特に俺と伴ちゃんの間柄に関しては、今いちばん良いかもしれない。コミュニケーションしやすくなったし、変に気遣って話したりもしないし。良い距離感、良いパートナーシップを築けていると思います。伴ちゃんからしたら「私はちょっと前のほうが良かった」とかあるかもしれないけど(笑)。--その良い状態に良い環境が重なったのが2017年だった気がします。
大渡 亮:僕らをずっと見てくれている平賀さんが言うんだから、そうかもしれない。 伴 都美子:数年後振り返ったときどう思うか分からないけど(笑)、今は今で良い状況なのかもしれないですね。--そんな状況下でリリースされる『化身の獣』、自分たち的にはどういう立ち位置の曲になったと感じていますか?
大渡 亮:これはずっと使えそうな感じがする。気を吐く伴ちゃんの歌詞も良いし、今までなかったハードなラウド系ナンバーだし。ラウド系のナンバーはこれまでもやってきたけど、やっぱり澤野さんのラウド系ナンバーというのは2017年仕様というか、とても良い作品を作って頂いて本当に感謝しかないし、愛していけそうなナンバーが仕上がったなと感じています。 伴 都美子:「DoAsはいろんな曲をやってるなぁ」と改めて思うんですけど、この曲に関しては、澤野さんも……そもそも私たちと取り組むこと自体が物凄くチャレンジだったと思うんですけど、そんな中で一緒にこういう曲を作り上げられて、もう本当に大満足ですよ。--そしてこの先に澤野さんと作り上げるアルバムのリリースが控えていると思うんですけど、こちらはどんな作品になりそうですか?
大渡 亮:今日ずっと話していたような、充実したムードを閉じ込められたら良いなと思いますね。すごく今良い状態なので、その良い状態のときに良い作品を残せるんじゃないかなと思っています。良い作曲家、アレンジャーに恵まれて、海外でライブが出来て、いろんなもん食って、みんなとシンパシーが芽生えて……そういう時間軸みたいなものを一枚に閉じ込められるんじゃないかと思っています。 伴 都美子:そのアルバムをリリースしたら、次は20周年に向かう姿勢になるでしょうから、ソレをどう迎えようか?というところも視野に入れて動いていくことになると思います。そこでも新たな企みをちょっと……ね(笑)。Interviewer:平賀哲雄
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Interviewer:平賀哲雄
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