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和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー



和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー

 それぞれ全く異なる音楽人生を歩んできた8人の音楽家たちは、どんな想いで異端とも言える同バンドに結集し、その存在を国内外に一気に広めるほどのブレイクを果たしたのか。そして何を目指して未来を歩んでいくのか。全員揃い踏みで語ってもらった。

Vocal:鈴華ゆう子
箏:いぶくろ聖志
尺八:神永大輔
津軽三味線:蜷川べに
和太鼓:黒流
Guitar:町屋
Bass:亜沙
Drums:山葵

伝統はすごく大切なものですけど、よく考えるとコピーなんです。

--和楽器バンドをまだ知らない人にも興味を持ってもらえるようなインタビューに出来ればと思っているのですが、まず8人のメンバーそれぞれがどんな経緯で和楽器バンドに結集したのか。ひとりずつ教えて頂けますでしょうか。

和楽器バンド / 千本桜
和楽器バンド / 千本桜

鈴華ゆう子:複雑過ぎてどこから話せばいいのか(笑)。私は実家が音楽教室だったので、3才からクラシックピアノを始めて。ピアニストになる為にクラシック音楽をずっと学んでいて、東京音楽大学のピアノ科に進学して、そのままピアニストとして活動していました。それと同時に5才から詩吟と剣詩舞もやっていたので、基本的にはクラシックと和の世界の両立で生きてきたような人生だったんです。その中で「歌手になりたい」という夢もありながら、自分で曲を作ったりしてライブ活動もやるようになって、2010年に詩吟で日本一になったときから「こういう狭い世界のものをもっと世間に身近なものとして届けたい」と思いまして、自分があまり触れてこなかったロックを町屋さんとかと出逢って吸収したときに「こういう融合も面白いな」と思ったので、詩吟の伴奏楽器である琴と尺八と先にユニットを組んでアコースティックで活動していたんですけど、そこから「もっとキャッチーにしよう」ということでロックバンドになって今に至ります。

--凄い経歴ですね。何故にそこまで様々な音楽表現に興味を持てたんですかね?

鈴華ゆう子:クラシックピアノを物心つく前からやっていたんですけど、ソレを一生懸命に一途にやる世界観が好きではなかったんですよね。そこで和の世界にも幼い頃から触れていたというのは大きくて、全く両極端の世界だったので、それによって視野も大きく持てていたし、新しい面白いことをやりたいと思っている大人の方もたくさんいたんです。その中で自分は「飽きないことをやっているのが好きだった」ので、面白いことがあればやってみたい。形にしてみたい。思い立つとすぐにやりたい人なんですよ。髪切りたいと思ったらその日のうちに行くし(笑)。それで「やってみたい」ことがどんどん積み重なってこうなったんだと思いますね。

--続いて、いぶくろさん。

和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー
▲左から:神永大輔/いぶくろ聖志/山葵

いぶくろ聖志:僕は中学3年生のときにバンドを始めて、ベースをやっていたんですけど、高校生のときに海外でもベースを弾いて活躍できるようなプレイヤーになりたいと思って、海外の音大への留学を考えたんですね。そのときに「日本の音楽を何も知らないのに、海外の音楽だけ吸収して活動するのは不自然だな」と感じて、高校に琴部って部活があったので、そこで日本の音楽を知ってから海外へ行こうと思ったんですけど、そしたら逆に琴にハマってしまって。自分が日本人として生まれたことや「音楽が好き」ということに全部しっくり来たのが琴で、高校を卒業して師匠のところに弟子入りして、そのまま琴の演奏者として仕事をしていますね。

--日本の音楽を勉強しようと思って、たくさんある和楽器の中で琴を選んだのは何でだったんでしょうね?

いぶくろ聖志:弦楽器が好きだったのが大きな理由なんですけど、三味線よりも琴のほうがベースに近い印象があったんですよね。もちろん弾く形は竿なので三味線のほうが近いんですけど、自分の中では琴のほうが共通項は多い感じがして。それで琴を始めました。

--続いて、神永さん。

神永大輔:僕は5才からクラシックピアノを習っていて、同時に僕はテレビゲームの音楽を弾くのが好きで、そのテレビゲームの音楽を通じていろんな民族音楽に興味を持つようになって、特にアイルランドの楽器をやってみたいと思うようになったんです。それで大学に入ったときに尺八と琴と三味線のサークルがあって「アイルランドの笛に近い表現が尺八で出来そうだな」と思って尺八を始めて、卒業後も尺八を続けて師範の免状も取ったんですけど、元々ピアノをやっていたこともあって即興でいろんなライブハウスに入っていくことが出来たので、ライブハウスでいろんな弾き語りの人をサポートしたり、いろんなバンドを組んでやるようになっていった感じですね。

--どんなゲームミュージックを演奏していたんですか?

神永大輔:『ファイナルファンタジー』『クロノトリガー』や『ドラゴンクエスト』といったRPGの音楽ですね。そうしたゲーム音楽を作ってきた方々とコラボさせて頂く機会もあったりして、小さい頃の自分に自慢したくなりました(笑)。「信じられない」と思って涙が出ましたね。そういう意味ではこのバンドもそうで、まさか自分が尺八という楽器を吹いて、ロックバンドの中で武道館とかでライブしていることもビックリだし、どれも想像していなかった未来ではありますね。

--続いて、蜷川さん。

蜷川べに:私はですね、祖母と母が三味線と民謡をやっていまして、4才の頃に京都の流派で民謡を始めたんですけど、中学校の頃に喉を潰してしまって歌えなくなったことをきっかけに「三味線で民謡の伴奏をやったらどうだ?」ということで三味線を始めたんですよ。で、いわゆる曲弾きとか民謡の伴奏が津軽三味線のメインになってくるんですけど、元々いろんな音楽に興味があって、ジャズとかワールドミュージックとかロックとか何でも好きで、そういった自分の趣味の音楽に三味線を入れてみたい願望がずっとあったんです。でも三味線単体でやれることには限度があるというか、弾いててもちょっと飽きてきちゃうところがあって(笑)、ひとりで叩きの練習を続けたりすることもあまり得意ではないし、だから今こういうバンドで活動することが出来ていて、毎回やることが新鮮で、面白いことをずっと試みているから、飽きずにずっと続けられているのかなって思っています。

--ただ、三味線を始めた時点では想定していなかった未来ですよね?

蜷川べに:でも「そういうことが出来たらいいな」とは思ってました。違う世界の人たちと自分のやってる三味線で何かが出来たらいいなという……漠然とした想いはあったんですけど、まさかこういった形で実現できるとは思ってもいなかったです。ただ、こういう面白いことが起こらなかったら、多分三味線は続けてなかったと思います。

--続いて、黒流さん。

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▲黒流

黒流:実家が太鼓チームをやっていたので、自分の意思とは別に3才から和太鼓を始めて、小学生ぐらいからプロ活動させて頂いていたんですけど、バンドへの憧れも強くてバンド活動もしていたんです。で、いろいろ活動していく中で来日アーティストの方と一緒になったとき、自分はそのときはベースを弾いていたんですけど「この楽器では敵わないな」と直感的に分かってしまって、それで「自分には何があるかな? あ、幼い頃からやっている和太鼓だな」と。でも和太鼓では伝統の音楽をやっていたんですが、伝統というのはすごく大切なものだと思うんですけど、よく考えるとそれはコピーなんですよね。最初に作った方たちがいて、その伝統的な曲を何百時間、何千時間と練習してきたんですけど、やはり本物は超えられないんですよ。それで「劣化したモノがずっと受け継がれている」とも言えることに気付いてしまって、だとしたら自分で新しいモノを作りたいと思ったんです。あと、衣装もサラシ巻いてハチマキで……それはそれで格好良いんだけど、自分は違うなと思って、そこから飛び出して、ちょっと異端な感じでヒップホップのアーティストとやったり、ダンサーとやったり、あとはディズニーの和太鼓振り付けとかそういうものも含めて携わらせて頂いたりするようになりました。

--なるほど。

黒流:伝統を守ってくれている後輩たちがいっぱいいるんで、自分は新しいことをやっていきたいと思って。べにも言ってましたけど、伝統の世界ってすごく退屈だったりするんですよね。僕も苦手だったりして、ライブを打っている本人ですら観に行くのはちょっと苦手だったり。そういう意味ではエンターテインメントとしてはまだまだ成熟されてない。DRUM TAOさんとか素晴らしい方たちはいますけど、やはり自分たちが頑張って演奏している姿を見せているだけだと面白くはない。だとしたらもっとエンターテインメントがしたい。自分と好きなロックと合わせてやりたい。どちらかと言うとそういう活動をずっとしていく中で、このメンバーたちと出逢って、同じ志を持っているので、自然な流れで和楽器バンドに参加しました。

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  1. このバンドはとにかく最初から勢いが凄かったんですよ。
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和楽器バンド「軌跡 BEST COLLECTION+」

軌跡 BEST COLLECTION+

2017/11/29 RELEASE
AVCD-93776 ¥ 7,480(税込)

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Disc01
  1. 01.六兆年と一夜物語
  2. 02.天樂
  3. 03.千本桜
  4. 04.華火
  5. 05.戦-ikusa-
  6. 06.なでしこ桜
  7. 07.暁ノ糸
  8. 08.反撃の刃
  9. 09.Valkyrie-戦乙女-
  10. 10.Strong Fate
  11. 11.起死回生
  12. 12.オキノタユウ
  13. 13.雪よ舞い散れ其方に向けて
  14. 14.雨のち感情論
  15. 15.花一匁
  16. 16.拍手喝采
  17. 17.シンクロニシティ

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