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和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー



和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー

 それぞれ全く異なる音楽人生を歩んできた8人の音楽家たちは、どんな想いで異端とも言える同バンドに結集し、その存在を国内外に一気に広めるほどのブレイクを果たしたのか。そして何を目指して未来を歩んでいくのか。全員揃い踏みで語ってもらった。

Vocal:鈴華ゆう子
箏:いぶくろ聖志
尺八:神永大輔
津軽三味線:蜷川べに
和太鼓:黒流
Guitar:町屋
Bass:亜沙
Drums:山葵

伝統はすごく大切なものですけど、よく考えるとコピーなんです。

--和楽器バンドをまだ知らない人にも興味を持ってもらえるようなインタビューに出来ればと思っているのですが、まず8人のメンバーそれぞれがどんな経緯で和楽器バンドに結集したのか。ひとりずつ教えて頂けますでしょうか。

和楽器バンド / 千本桜
和楽器バンド / 千本桜

鈴華ゆう子:複雑過ぎてどこから話せばいいのか(笑)。私は実家が音楽教室だったので、3才からクラシックピアノを始めて。ピアニストになる為にクラシック音楽をずっと学んでいて、東京音楽大学のピアノ科に進学して、そのままピアニストとして活動していました。それと同時に5才から詩吟と剣詩舞もやっていたので、基本的にはクラシックと和の世界の両立で生きてきたような人生だったんです。その中で「歌手になりたい」という夢もありながら、自分で曲を作ったりしてライブ活動もやるようになって、2010年に詩吟で日本一になったときから「こういう狭い世界のものをもっと世間に身近なものとして届けたい」と思いまして、自分があまり触れてこなかったロックを町屋さんとかと出逢って吸収したときに「こういう融合も面白いな」と思ったので、詩吟の伴奏楽器である琴と尺八と先にユニットを組んでアコースティックで活動していたんですけど、そこから「もっとキャッチーにしよう」ということでロックバンドになって今に至ります。

--凄い経歴ですね。何故にそこまで様々な音楽表現に興味を持てたんですかね?

鈴華ゆう子:クラシックピアノを物心つく前からやっていたんですけど、ソレを一生懸命に一途にやる世界観が好きではなかったんですよね。そこで和の世界にも幼い頃から触れていたというのは大きくて、全く両極端の世界だったので、それによって視野も大きく持てていたし、新しい面白いことをやりたいと思っている大人の方もたくさんいたんです。その中で自分は「飽きないことをやっているのが好きだった」ので、面白いことがあればやってみたい。形にしてみたい。思い立つとすぐにやりたい人なんですよ。髪切りたいと思ったらその日のうちに行くし(笑)。それで「やってみたい」ことがどんどん積み重なってこうなったんだと思いますね。

--続いて、いぶくろさん。

和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー
▲左から:神永大輔/いぶくろ聖志/山葵

いぶくろ聖志:僕は中学3年生のときにバンドを始めて、ベースをやっていたんですけど、高校生のときに海外でもベースを弾いて活躍できるようなプレイヤーになりたいと思って、海外の音大への留学を考えたんですね。そのときに「日本の音楽を何も知らないのに、海外の音楽だけ吸収して活動するのは不自然だな」と感じて、高校に琴部って部活があったので、そこで日本の音楽を知ってから海外へ行こうと思ったんですけど、そしたら逆に琴にハマってしまって。自分が日本人として生まれたことや「音楽が好き」ということに全部しっくり来たのが琴で、高校を卒業して師匠のところに弟子入りして、そのまま琴の演奏者として仕事をしていますね。

--日本の音楽を勉強しようと思って、たくさんある和楽器の中で琴を選んだのは何でだったんでしょうね?

いぶくろ聖志:弦楽器が好きだったのが大きな理由なんですけど、三味線よりも琴のほうがベースに近い印象があったんですよね。もちろん弾く形は竿なので三味線のほうが近いんですけど、自分の中では琴のほうが共通項は多い感じがして。それで琴を始めました。

--続いて、神永さん。

神永大輔:僕は5才からクラシックピアノを習っていて、同時に僕はテレビゲームの音楽を弾くのが好きで、そのテレビゲームの音楽を通じていろんな民族音楽に興味を持つようになって、特にアイルランドの楽器をやってみたいと思うようになったんです。それで大学に入ったときに尺八と琴と三味線のサークルがあって「アイルランドの笛に近い表現が尺八で出来そうだな」と思って尺八を始めて、卒業後も尺八を続けて師範の免状も取ったんですけど、元々ピアノをやっていたこともあって即興でいろんなライブハウスに入っていくことが出来たので、ライブハウスでいろんな弾き語りの人をサポートしたり、いろんなバンドを組んでやるようになっていった感じですね。

--どんなゲームミュージックを演奏していたんですか?

神永大輔:『ファイナルファンタジー』『クロノトリガー』や『ドラゴンクエスト』といったRPGの音楽ですね。そうしたゲーム音楽を作ってきた方々とコラボさせて頂く機会もあったりして、小さい頃の自分に自慢したくなりました(笑)。「信じられない」と思って涙が出ましたね。そういう意味ではこのバンドもそうで、まさか自分が尺八という楽器を吹いて、ロックバンドの中で武道館とかでライブしていることもビックリだし、どれも想像していなかった未来ではありますね。

--続いて、蜷川さん。

蜷川べに:私はですね、祖母と母が三味線と民謡をやっていまして、4才の頃に京都の流派で民謡を始めたんですけど、中学校の頃に喉を潰してしまって歌えなくなったことをきっかけに「三味線で民謡の伴奏をやったらどうだ?」ということで三味線を始めたんですよ。で、いわゆる曲弾きとか民謡の伴奏が津軽三味線のメインになってくるんですけど、元々いろんな音楽に興味があって、ジャズとかワールドミュージックとかロックとか何でも好きで、そういった自分の趣味の音楽に三味線を入れてみたい願望がずっとあったんです。でも三味線単体でやれることには限度があるというか、弾いててもちょっと飽きてきちゃうところがあって(笑)、ひとりで叩きの練習を続けたりすることもあまり得意ではないし、だから今こういうバンドで活動することが出来ていて、毎回やることが新鮮で、面白いことをずっと試みているから、飽きずにずっと続けられているのかなって思っています。

--ただ、三味線を始めた時点では想定していなかった未来ですよね?

蜷川べに:でも「そういうことが出来たらいいな」とは思ってました。違う世界の人たちと自分のやってる三味線で何かが出来たらいいなという……漠然とした想いはあったんですけど、まさかこういった形で実現できるとは思ってもいなかったです。ただ、こういう面白いことが起こらなかったら、多分三味線は続けてなかったと思います。

--続いて、黒流さん。

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▲黒流

黒流:実家が太鼓チームをやっていたので、自分の意思とは別に3才から和太鼓を始めて、小学生ぐらいからプロ活動させて頂いていたんですけど、バンドへの憧れも強くてバンド活動もしていたんです。で、いろいろ活動していく中で来日アーティストの方と一緒になったとき、自分はそのときはベースを弾いていたんですけど「この楽器では敵わないな」と直感的に分かってしまって、それで「自分には何があるかな? あ、幼い頃からやっている和太鼓だな」と。でも和太鼓では伝統の音楽をやっていたんですが、伝統というのはすごく大切なものだと思うんですけど、よく考えるとそれはコピーなんですよね。最初に作った方たちがいて、その伝統的な曲を何百時間、何千時間と練習してきたんですけど、やはり本物は超えられないんですよ。それで「劣化したモノがずっと受け継がれている」とも言えることに気付いてしまって、だとしたら自分で新しいモノを作りたいと思ったんです。あと、衣装もサラシ巻いてハチマキで……それはそれで格好良いんだけど、自分は違うなと思って、そこから飛び出して、ちょっと異端な感じでヒップホップのアーティストとやったり、ダンサーとやったり、あとはディズニーの和太鼓振り付けとかそういうものも含めて携わらせて頂いたりするようになりました。

--なるほど。

黒流:伝統を守ってくれている後輩たちがいっぱいいるんで、自分は新しいことをやっていきたいと思って。べにも言ってましたけど、伝統の世界ってすごく退屈だったりするんですよね。僕も苦手だったりして、ライブを打っている本人ですら観に行くのはちょっと苦手だったり。そういう意味ではエンターテインメントとしてはまだまだ成熟されてない。DRUM TAOさんとか素晴らしい方たちはいますけど、やはり自分たちが頑張って演奏している姿を見せているだけだと面白くはない。だとしたらもっとエンターテインメントがしたい。自分と好きなロックと合わせてやりたい。どちらかと言うとそういう活動をずっとしていく中で、このメンバーたちと出逢って、同じ志を持っているので、自然な流れで和楽器バンドに参加しました。

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このバンドはとにかく最初から勢いが凄かったんですよ。

--続いて、町屋さん。

和楽器バンド / 11/29発売「軌跡 BEST COLLECTION+」LIVE映像盤トレーラー映像
和楽器バンド / 11/29発売「軌跡 BEST COLLECTION+」LIVE映像盤トレーラー映像

町屋:僕はですね、小学校に入学するときに「クラシックピアノを習いたい」と言ったんです。ただ、父親はフォークが好きな人だったんで「男の子がそんなことをしてちゃダメだ」って剣道を習わされたんですね。それでもピアノが好きだったんで、近所でピアノを習っているお兄ちゃんお姉ちゃんの家に行って教えてもらったりしながら、8才のときに、ウチの実家は建築業をやっていて住み込み従業員を何人か雇っていたんですけど、その中のお兄ちゃんがメタルとか自分が聴いたことのない音楽を聴いていて、それで最初に貸してもらったCDがハロウィンだったりしたんで「あ、クラシックと融合したロックのスタイルもあるんだ?」とかいろいろ感動した部分があって。で、そのお兄ちゃんの部屋にはギターがあったので、仕事へ行っているあいだにこっそり忍び込んでギターの練習をするというところから始めて……

--それがギタリストとしての始まりだったんですね(笑)。

町屋:それと平行して10歳からトランペットを始めて、そこからずっと吹奏楽も続けていたので、バンド活動と吹奏楽を平行で続けていて、中学生の頃にはもう自分でオーバーダブしてデモテープを作ったりとかするようになっていって、そこでいろんな楽器をやったり、自分で歌も入れたりしているうちに物作り自体がすごく楽しくなって。だから僕の中で楽器に対しての拘りというものがいつしか無くなっていて、今はたまたまいちばん長くやっていて表現しやすいからギターを弾いているんですけど、基本的に楽器は表現する為の道具という風にしか捉えてないんですよ。で、それからですね、20代頭ぐらいから編曲とかCMのBGMとかそういうお仕事をもらえるようになって、そうなるとジャンルが多様じゃないですか。ポップス、ロック、ダンスミュージック、ジャズ、バラード、マーチっぽいやつ……その都度、自分が過去にやってきたものだったり、新しく勉強し直すモノだったり、本当にいろんなジャンルが求められるんで、結局その経験が今に生きているんだと思います。

--続いて、亜沙さん。

和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー
▲左から:黒流/亜沙/蜷川べに

亜沙:元々は15才ぐらいのときにギターを始めたんですけど、友達と音楽をやっていく中で「ベースがいないね」「じゃあ、俺がベースやるわ」ぐらいのノリでベースになったんです。そのあとはずっとバンド活動をやっていて、そのバンドは全然売れなかったんですけど、でも俺はアニメとかも好きだったんで、そのバンド活動をしながら「初音ミクが出る」となったときに「これは面白いもんが出たぜ」と思ってボーカロイドにも手を出して、たまに遊びで投稿していたんです。で、いちばん最後にやっていたバンドを脱退することになって、そんな中でボーカロイドの曲を作っていたら当たって……というか、再生回数が結構伸びて。その曲をきっかけにメジャーのレコード会社の人とかいろんな人と繋がりが出来て、その中で和楽器バンドのメンバーとも出逢えて今に至る感じですね。

--ボカロPから和楽器バンドのメンバーになる流れは、自分の中で自然だったんですか?

亜沙:メジャーのフィールドというか、プロの世界に来るきっかけがボーカロイドだったんで、ボーカロイドの曲を作ったり楽曲提供しながら活動していくと思っていたんですけど、こういうバンドをまたやるとは思っていなかったんで、しかも今まで自分がやったことのないタイプのバンドだったから、新鮮ではありましたね。

--続いて、山葵さん。

山葵:僕は15才、中3の終わりにギターやってる友達の影響でドラムを始めるんですけど、X JAPANの「紅」を初めて聴かせてもらって「こんなに激しい音楽があるんだ? 格好良い」と思ったのがきっかけだったんです。で、高校生になったら軽音部に入りたかったんですけど、自分の高校には軽音部がなくて「じゃあ、自分で作ってやろう」と思って、生徒手帳見て、部の設立の手順とか全部踏まえて動いたんですよ。でも結局は大人の圧力に負けて出来ず、それで学校に愛想尽きて「もういいや」と思って外でバンド活動をするようになって、いろんなバンドを掛け持ちしたり、音楽教室に通ったりしていたんですけど、その頃からずっと「音楽のプロになりたい」という気持ちがあって。それで上京してこっちの音楽の専門学校に通って、当時も自分のバンドを組んだりサポートもやったりしていたんですけど、その学校がスタジオミュージシャン志望系だったんです。その中で「いや、俺はロックドラマーだからおまえらとは違ぇんだ!」みたいな感じで中二病を拗らせていたんです(笑)。友達に言わせると、当時、相当尖がっていたみたいで。

--その状態からどうやって和楽器バンドに辿り着いたんですか?

山葵:卒業してもしばらく地道にバンド活動はしていたんですけど、その中で「もっと自分を知ってもらえる機会が増やせないかな」と考えているときに「ニコ動とかYouTubeとかで動画上げると観てもらえるんだな」ということを知って、自分の演奏を投稿してみたらいろんな人が観て下ったんです。そしたらニコ動の運営から「こういう音楽のイベントをやるんですけど、よかったら出ません?」と声が掛かってきて、それに出演したのがきっかけで「和と洋楽器が混ざったプロジェクトで、ボーカロイドをカバーした動画とか上げてみたいんだけど」という話を頂いて、それで実際にやってみたら自分も楽しかったし、いろんな人に観てもらえたし、そういう感じでこのバンドでの活動が始まっていった感じですね。

--8人8様の生い立ちを聞かせて頂きましたが、これだけ多種多様なメンバーが集ったプロジェクト。結成時に「このバンドで上手くやっていける」ヴィジョンはすぐ浮かんだんでしょうか?

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▲鈴華ゆう子

鈴華ゆう子:いちばん最初に音出しでスタジオに集まったときのことは、今もみんなで話したりするんですけど、私はみんなのことを知っていたんです。でもみんなは「はじめまして」の人がほとんどだったから、とにかく音を出してみようと。そのときに亜沙くんが「武道館、見えたねぇ!」って言ったんです(笑)。

亜沙:言ってみただけだよ(笑)。

鈴華ゆう子:でも「まとまっていったら面白いな」と思って。まず私は音楽的なことは任せられる人がいると思ったんです。町屋さんは全体を見ることが出来るし、アレンジ力がある面々も揃っているし、だから私はこのバンドが上手くやっていけるように「人間関係をちゃんと見ておこう」と思ったんです。それすら上手く行けば、ある程度のところまでは行けると思ってました。

蜷川べに:生々しい(笑)。

鈴華ゆう子:だから最初は「この8人がどういう関係を築けるか」ということばかり考えていました。「別にバンドなんて仲良くなくていいよ」という意見の人もいると思うんですけど、私は「いや、違う。楽しくなきゃ続かない」と思っていたので。あと、その当時ってみんな他にもバンドを持っていたんですよ。でも「このバンドがメインで、このバンドがあるからこそやっていける」という風に振り向かせたかった。その為にもこのバンドを忙しくさせなきゃけないと思っていましたね。早く「和楽器バンドが主軸」と思ってもらえるようにしたかった。

--初対面で「武道館、見えたねぇ!」と言い放った亜沙さんは、最初このバンドの面々にどんな印象を持たれたんでしょう?

亜沙:「なんかガラの悪い連中だな」って。

一同:(笑)

亜沙:というのは冗談なんですけど(笑)、とりあえず一発合わせますか?って感じで「六兆年と一夜物語」を合わせたんですね。そしたら初めて合わせたわりには意外に良くて。もちろん荒いんですけど、意外と合ってるなと思って。でも演奏が1回終わった後に沈黙があって、「誰か何か言うのかな?」と思ったら誰も何も言わないから「これ、武道館見えましたね」って言ったんです。

蜷川べに:気を遣ったんだね(笑)。

亜沙:でもそしたら本当に武道館まであれよあれよと言う間に行っちゃって。

神永大輔:このバンドはとにかく最初から勢いが凄かったんですよ。まずゆう子さんの勢いが凄かったんですよね。詩吟の世界で優勝したタイミングで僕もツイッターで知り合って、それで一緒にやり始めたら本当にあれよあれよと言う間に仕込まれていった……と言うとアレですけど(笑)、ゆう子さんが僕たちのライブとかをすごく観に来てくれていて。

鈴華ゆう子:全部行った!

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「日本のバンド=和楽器バンド」というところに辿り着きたい。

和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー
▲左上から時計回り:亜沙/神永大輔/蜷川べに/黒流/山葵/鈴華ゆう子/町屋/いぶくろ聖志

神永大輔:あの時期ってすごく濃密だったんだろうなと思う。形作るまでのその時期ってすごく重要だったんだろうなって。

鈴華ゆう子:すごく必死で、すべてに意味があって繋がっていくものだと思っていたので、たしかに勢いよく動けていたと自分でも思いますね。「どうにかしなきゃ!」って想いがすごく表れていた。私、人生のラストチャンスだと思っていたので。これがどうなるかで私の生き方も決まる。ピアノの先生をやって終わるのか、ボーカリストになって生きていくのか、このバンドに賭けていました。でも「このバンドはまとまる」と思って動けていたのは、黒流さんが居たからですね。私にとってすごく頼れる先輩で、音楽以外の部分でもすごく経験値があって、だから安心感があるんですよ。そういう存在が居てくれれば、8人の大所帯バンドだけど、きっとまとまると思っていた。あと、最初に「一緒に何か作りたいんだよね」と言ってくれたのがすごく嬉しくて!

黒流:僕は「それぞれ好みが違うからこそ、まとまるのかな」と思ってましたね。もし全員ロック畑の人だったりしたら逆に方向性でぶつかっちゃうと思うんですけど、それぞれがバラバラなんですよ。だからこそそれぞれに新鮮味を感じられる。話してみても「あ、そんなことがあるんだ!」って興味深くそれぞれの音楽を体感できるっていうのは、このバンドがすごく楽しく出来ている要因かなと思いますね。このバンドは全員が対等なんですよ。和楽器が入ってるバンドって大体「和楽器をどう持ち上げるか」みたいなことがすごく多いんですけど、このバンドはそうじゃなくすごく対等に出来ている。

蜷川べに:元々私は邦楽の世界に居ながらも「ここでずっとやっていこう」と思っていなかったんで、伝統を大切にする気持ちは大事だし、受け継いでいく人たちも大事だけど、私にはあんまり向いていないなと思っていたから、こういう人たちに出逢えて本当に良かったなと思ってます。

--そんな和楽器バンド、今では世界中から注目を集めるバンドになっています。この状況にはどんなことを感じていますか?

鈴華ゆう子:今の状況を大事にしながらも、この先「どれだけ大きくなっていけるか」の勝負だなとは思っています。武道館の時点で1回やり遂げた感はあったんですけど、満足感はまだ全然得ていなくって、その都度ひとつひとつ丁寧にこなしている感覚なんですよね。その結果としてちょっとずつ大きくなっているから、これを「いつまでも続けていけるように」と思って活動していますね。

--先程、黒流さんから「異端」という言葉も出ましたけど、どうしても「イロモノ」や「企画モノ」に見られやすい形態でもあるじゃないですか。

鈴華ゆう子:そうなんですよね。

--そう見ている人たちに対して今後どんなアプローチをしていきたいと思いますか?

鈴華ゆう子:でもヘンに「私たちはプロです」みたいなアピールをする必要はないかな。

神永大輔:パッと見はイロモノに見られやすいとは思うんですけど、今の時点で「面白い」と思って受け入れてくれる人たちにまず広げていく。広がっていくところに広げていかないと、イロモノとして見ている人たちには振り返ってもらえないのかなって。

いぶくろ聖志:先に常識を変えないとダメなんだよね。

鈴華ゆう子:私自身も食わず嫌いの音楽がいっぱいあった人なので、最初から「イヤだな」と思ったら結局何を言われても自らは歩み寄らないと思ってるんですね。でも身近な人から「これどう?」って車の中で聴かせてもらったりとか、ちょっとしたきっかけから気になったりすることはあると思うんで、まずは聴いてくれる人をどんどん増やしていく。

神永大輔:和楽器バンドのライブってお客さんの年齢層の幅が物凄く広いんですよ。こんなにたくさんの層に受け入れられているのであれば、もっともっとたくさんの人に広がっていくんじゃないかなと思っています。まだまだ単純に知らない人が多いと思うんですけど、知ってさえ頂ければ僕たちのことを好きになってくれる人はまだたくさんいるんじゃないかな。

蜷川べに:そういった意味では、最近はメディアで私たちのライブ映像だったり、ひとりひとりの趣味だったり、山葵くんが筋肉を見せたり(笑)、いろんな方とコラボをやったりとか、一般対象の方々が触れやすいような形で見てもらえる機会も増えていて、それは有難いなと思います。

鈴華ゆう子:出逢ってから凄いスピード感でここまで来て、最初はそんなにメディアも出てなかったんですけど、その間に全国ツアーを何回もやったり、海外ツアーも何度もやったりと経験を重ねてきているので、このタイミングでそうやって見てもらえる機会が増えてきているのはすごく良いなと思っています。

--このタイミングでベストアルバム『軌跡 BEST COLLECTION+』がリリースされるのも絶妙だと思うんですが、あらゆる音楽ファンにリーチできる作品になっていますよね。いわゆるJ-POP/ROCKシーンにも正面から向かっていっていますし、和楽器やボカロの特性を生かした楽曲ももちろん入っていますし、このアルバムを聴くと「実は全方位型のバンドなんだな」と気付かれます。

鈴華ゆう子:本当に仰るとおりだと思います。

町屋:楽曲的には「このジャンルをやってる」というものが特にないので……

鈴華ゆう子:ジャンル:和楽器バンド。

和楽器バンド / 「シンクロニシティ」MUSIC VIDEO
和楽器バンド / 「シンクロニシティ」MUSIC VIDEO

町屋:あらゆるジャンルを取り入れていて。ただサウンドが「和楽器バンドのサウンドです。これで出力します」ってだけなんです。もうみんなそれぞれがいろんなジャンルに興味があるし、結局どんな曲をやっても和楽器バンドの音になる。ということが数年やってきて分かったので、最近は初期の頃にやっていたようなロック寄りなモノとかへヴィなモノだけじゃない、例えば今回のベストに入っている「シンクロニシティ」という曲はわりとジャジィだったり、そういういろいろな要素を取り入れていっても、サウンド的には「やっぱり和楽器バンドだな」というところに着地するので、たしかに「全方位型」というのは非常に良い言葉ですね。

鈴華ゆう子:元々やってるバンドのジャンルも様々なんです。影響されている音楽もバラバラなんです。それぞれに好きな音楽があって、これは黒流さんがよく言うんですけど、「たまたまやっていた楽器が和太鼓だった」と。私も今はロックバンドの歌手として歌ってますけど、元々植え付けられている音楽はクラシックだったりするし、よく聴いていた曲はJ-POPだったりするし。で、和楽器バンドはみんなが曲を書くので、それも強みのひとつで、だから「ジャンル:和楽器バンド」になるんだなと思っています。

--では、最後に。和楽器バンドの今後の野望がありましたら教えてください。

鈴華ゆう子:「日本のバンド=和楽器バンド」というところに辿り着きたい。海外でライブをしていても、そこに来てくれる方々はあたりまえのように日本語で一緒に歌ってくれるんですよ。その光景を見たときに「日本のバンド=和楽器バンド」になりたいと思ったし、和楽器バンドをきっかけに海外の人たちが日本を好きになって、日本で開催するライブもお客さんの半数が外国人みたいな状況になったらいいなって。それを実現できるぐらいの存在になっていけたらなと思います。

Interviewer:平賀哲雄|Photo:山田秀樹

和楽器バンド『軌跡 BEST COLLECTION+』全員インタビュー

和楽器バンド / 11/29発売「軌跡 BEST COLLECTION+」最終ダイジェスト
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和楽器バンド「軌跡 BEST COLLECTION+」

軌跡 BEST COLLECTION+

2017/11/29 RELEASE
AVCD-93776 ¥ 7,480(税込)

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Disc01
  1. 01.六兆年と一夜物語
  2. 02.天樂
  3. 03.千本桜
  4. 04.華火
  5. 05.戦-ikusa-
  6. 06.なでしこ桜
  7. 07.暁ノ糸
  8. 08.反撃の刃
  9. 09.Valkyrie-戦乙女-
  10. 10.Strong Fate
  11. 11.起死回生
  12. 12.オキノタユウ
  13. 13.雪よ舞い散れ其方に向けて
  14. 14.雨のち感情論
  15. 15.花一匁
  16. 16.拍手喝采
  17. 17.シンクロニシティ

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和楽器バンド「戦-ikusa-/なでしこ桜」

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