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ファンキー加藤『冷めた牛丼をほおばって』インタビュー
「自分自身と向き合って、人生削ってみるか」
全てを出し尽くした全国ツアー【HALFWAY STAR TOUR】や、そこで燃え尽きてから再燃していくまでの過程で生まれた新曲「冷めた牛丼をほおばって」、45キロもの長距離マラソンにチャレンジしたミュージックビデオについてはもちろん、同じアスリート気質の先輩アーティスト・安室奈美恵の引退について等も語ってもらった。人生削って歌っていくファンキー加藤の今、ぜひとも感じてもらいたい。
「また歌を歌いながら生きていっていいのかな」という気持ちにさせてくれた
--全てを詰め込んだ最新アルバム『Decoration Tracks』リリース時以来のインタビューになりますが、まず同作を携えた【HALFWAY STAR TOUR】(http://bit.ly/2hgN4bV)が加藤さんの中でどんなツアーになったか聞かせて下さい。
ファンキー加藤:ファンの方たちに救われたなという気持ちが大きかったです。「また歌を歌いながら生きていっていいのかな」という気持ちにさせてくれたツアーでした。あと、アルバム『Decoration Tracks』の制作は最後の最後まで粘ったし、プロモーションでも「とにかくこのアルバム分の時間を僕にください」と執念を持って伝えていたので、ツアーもそれに近い気持ちで挑んでいましたね。--例えば「本当のこと」は熱唱のあまり声を潰す場面もありましたが、それでも「歌ってる目の前のミュージシャンが嘘っぱちだったとしても お前が お前が 掴んでいる 愛は間違ってない」と歌い切る姿がすごく印象的でした。どんな想いであのメッセージを届けていたんでしょう?
ファンキー加藤:アルバム『Decoration Tracks』を完成させる上で「もうひとつパーツが足りないな」と思って最後に作った曲なんですけど、やっぱり自分の人生を削り取って、それを出汁に音楽を生み出していくことがファンモン時代からの僕のスタイルだったので、最後の最後に「もういっちょ、今時点の自分の人生切り取ってみるか」と思って作った曲なんですよね。--決断が必要だった曲なんですね。ゆえに最後に作ることになった。
ファンキー加藤:そうです。別の楽曲が8割ぐらい完成していたんですけど、でもそれはどこかまだ俯瞰で見ているような、第三者的な、観覧席で見ているような視点の歌だったんで、「いや、もう一歩踏み込んでみるか。やっぱりグラウンドに立たなきゃダメだ」と思って作りました。--その歌も実際に直接届けた【HALFWAY STAR TOUR】、ブログでも「またこうして向き合ってくれたこと、一生忘れません」と記されていましたが、実際にそういうライブになっていましたよね。
ファンキー加藤:すごくいろんな感情を持って上がったステージだったんです。来てくれたお客さんも同じようにいろんな感情を持って来てくれて、単純に「加藤さんのライブを楽しむんだ」ということだけでなく「さあ、これからどうするんだ?」とか「今こそ私達が」とかそういう想いがお客さんの表情からも伝わってきたので、そういった意味で本当に救われたという気持ちが大きかったですね。背を向けてしまった人がほとんどの中、そうして向き合ってくれているだけでも今は有り難いので……だからこそ「歌を歌っていっていいのかな」と思えましたし。--お互いにガムシャラ感もありましたよね。
ファンキー加藤:そうですね。それこそ僕の声が潰れてしまったときとかは、みんなが代わりに歌ってくれたり。そういうシーンは少なくなかったですね。--加藤さんの中でファンは今どんな存在になってるんですか?
ファンキー加藤:ファンの皆さんからは良い意味で「近所の兄ちゃん」というか「親戚の兄ちゃん」みたいな、そんな風に捉えてもらえたらいいなと思いますね。やっぱり僕はカリスマにはなれないし、なので、前から言ってるように僕のライブはイメージで言うとキャンプファイアーみたいな感じなんですよね。ステージに立ってるのは、単純に「見えやすいから」という理由だけで、本当だったら同じフロアで火を真ん中にみんなで肩組んで歌う。それが俺の理想のライブのスタイルなんです。そういう風にファンの皆さんも感じてると思いますね。今回、ビジュアルを金髪にしたらみんなから超ディスられまくりましたし! 親戚のおばちゃんや近所のおねえさんに「似合わないよ」って怒られてる感じ(笑)。「今頃グレちゃったの?」とか言われてるような感覚で、それがすごく居心地良かったりもするんです。--ファンキー加藤って不思議なアーティストですよね。それこそ東京ドームにも立つぐらいの人気者になって、普通はそうなるとファンから神格化されたりするじゃないですか。何をやっても「素晴らしい」と賞賛されるようになったりする。でも加藤さんの場合は金髪にしただけで超ディスられる訳ですよ(笑)。
ファンキー加藤:ボロクソ言われてますからね!「今回のアー写とかジャケット、すごく格好良いと思います。ただ、黒髪だったらもっと良かった」とずーっと言われ続けてる(笑)! 俺もそれが面白くなってきちゃって、このあいだも「美容院行ってきます」とツイートしたら「黒髪に戻すんですか? 黒髪に戻すんですか?」ってめっちゃ言われて、改めて思いっきり金髪にしてきて「よし!」みたいな。そしたらまためっちゃ怒り出して、そんなことをずっとやってるんですよ。ふざけ合ってる。でもそれが楽しいんです。--それが加藤さんにとって理想的な関係性なんでしょうね。
ファンキー加藤:そうですね。あと、事務所も口酸っぱく「勘違いするなよ」と言ってくれていたので。ファンモンで知名度がガーッ!て上がったときは勘違いしそうにもなったんですよ。--「もっとカリスマっぽく立ち振る舞おう」とか?
ファンキー加藤:そうしたほうが良いのかなと思って「ちょっとファンと距離を取ろう」とか。でも結局それは性に合わないし、自分のキャラじゃないなと思ったので、それからはずっと変わらない。--ずっとキャンプファイアー。
ファンキー加藤:そうです。単純に「そういう世界観が好き」というのもあるんですけどね。夕暮れの河川敷が大好きなんで。それは八王子で育ってきた僕の原風景でもあるんですよ。あと、僕、布袋寅泰さんから「夕焼け番長」という有り難いニックネームを頂いているぐらいなんで、そこは大切にしたいなと思ってますね。--そんなファンとの絆も再確認できた【HALFWAY STAR TOUR】をガムシャラに駆け抜けたファンキー加藤が、今度は何でもフルマラソンに挑戦したという噂を……
ファンキー加藤:ハハハハ! そうですね。ミュージックビデオの撮影で「いっちょ、苦しんどくか」みたいなことになりまして(笑)、地元の八王子から夢の舞台である東京ドームまで大体45キロぐらい? フルマラソン以上の距離を「走っときますか」みたいな。僕もその打ち合わせに参加していて「これはマズいことになったな」と思う反面「そりゃそうか」と(笑)。僕としては前代未聞でしたし、ドキュメンタリータッチなミュージックビデオも今まで作ったことなかったし、単純に「面白い作品になるかな」と思って敢行しました。撮影当日、走りながらかなり後悔しましたけど。- 「箱根駅伝の距離を走ろう。100キロぐらい」みたいなこと言ってて
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:杉岡祐樹
「箱根駅伝の距離を走ろう。100キロぐらい」みたいなこと言ってて
--それだけキツかったんですね(笑)。
ファンキー加藤:準備期間1ヶ月ぐらいですからね。慌てて練習始めて、東京ドームは朝しか外観使えないって言うんで……--あ、タイムリミットがあったんですね。
ファンキー加藤:あったんですよ! 午後は普通に試合があるんで、必然的に朝にはゴールしなきゃいけない。だから夜スタートになって、夜通し走って、結局9時間ぐらいかけて……そのあいだも「リップシーンを撮るから」と同じ橋を何往復もさせられて。--それはキツい(笑)。ただのマラソンじゃなくMV撮影だから。
ファンキー加藤:そうなんですよ! あと、途中で給水所みたいなところにペットボトルが5つぐらい置いてあって「その中のひとつにスポーツドリンクが入ってます。当てたら先に進めます」みたいな、それで飲んだらセンブリ茶が入っていたりとか(笑)。そういういろんなトラップがあった中での45キロだったんで、もう本当にラスト10キロとかめちゃくちゃキツかったですね。--エンターテインメントも求められるから。
ファンキー加藤:求められる。特に僕のコアなファンの方は僕の苦しんでいる姿が大好物なんで(笑)、今までもバンジージャンプだ、お化け屋敷だ、みんな大喜びでしたから! でもそれで楽しんでもらえるならいいかなって。--タイミリミットのある長距離マラソンで「戻る」って絶対有り得ないですもんね。一歩でも前へ進みたい訳で。
ファンキー加藤:絶対有り得ないですよ! そんなことやらせておきながら「時間が押してて、東京ドームに着く時間がアレなんで、車乗ってもらっていいですか?」みたいな感じになって、「いや、それやったら話になんないでしょ! ちゃんと最後まで自分の足で走らせてください!」って何故か俺がお願いすることになって(笑)。それで何とかゴールして東京ドームでぶっ倒れてたら「じゃあ、リップシーンお願いします」みたいな。抱えられながら歩いていって。でもすごく面白い作品になったと思います。--途中、心折れそうになる瞬間はなかったんですか?
ファンキー加藤:ありました。これが個人で出ている東京マラソンやホノルルマラソンだったら間違いなくリタイヤしていたと思います。それぐらいキツかったけど、スタッフさんもたくさんいらっしゃって、今回の新曲「冷めた牛丼をほおばって」に意味合いをひとつ持たせる為に必要なことだったし、それに普段俺は「がんばれ、がんばれ」ってファンの皆さんに言ってるんで「たまには俺が頑張んなきゃな」という想いもあって、最後までギブアップせずにどうにかゴールできました。足が痛すぎて全然動かなくなって、歩くのも厳しい状態になったんですけど、最後は完全に執念でしたね。気力だけ。頭もボーっとしてきちゃって、先導してくれる自転車がいたんですけど、その後ろをただただ着いていくだけ。キツかったぁー。--でもこういうものって一回やっちゃうと「次はもっと、次はもっと」ってなりますよね(笑)。
ファンキー加藤:なりがちですよね(笑)。そもそも最初は「箱根駅伝の距離を走ろう。100キロぐらい」みたいなこと言ってて「マラソン、分かってる?」みたいな。もう次は富士山登頂ぐらいで勘弁してください!--どっちのほうがキツいのか分かんないですけど(笑)。あと、今の話を聞いていたら「本当にアスリートになってきたな」と感じました。
ファンキー加藤:歌うアスリートだと思ってますから。--前回のインタビュー(http://bit.ly/2zkuior)で、肉体に負荷かけまくるタイプのライブをやってきて「でも、僕ね、このスタイルを出来なくなったら……引退かなって思ってるんですよ。ミュージシャンにも体力の限界による引退があっていいなって(笑)。」と語っていましたが、45キロ走れたということは「まだまだやれる」証明にもなるのかなって。
ファンキー加藤:そうですね(笑)。ただ、ずっとマラソンをやられている方って、それこそ僕より年上でもずっとフルマラソンに参加したり、間寛平さんなんてアースマラソンを完走された訳じゃないですか。なので、今回ゴールまで辿り着いた安堵感と同時に悔しさもあったんですよね。最後の10キロぐらいは全然走れなくて歩いてばっかりだったので。だから企画としてのマラソンは終わったけど、今でもずっと走ってるんです。もっともっと体力つけたいなと思って。僕は前回言ったように「体力なくなったら、このスタイルが維持できなくなったら……」と本当に思っているんで、そこはちゃんとキープしておきたいなって。有り難いことにミュージシャンの諸先輩方にはいまだに格好良くてバリバリな方がたくさんいらっしゃるので、そのおかげで僕は「まだまだ青二才、新人じゃねぇか」と思っていられるし、まだまだ行けますよね。--いろんな怪物がいますからね。後輩に泣き言を言わせてくれないモンスターが。
ファンキー加藤:そうなんですよ。俺なんてまだまだ鼻たれ小僧ですよ。--また、アスリートのようなアーティストと言えば、安室奈美恵さんが40歳の誕生日に引退を発表されました。彼女もまた歌って踊って最高のパフォーマンスを見せ続けたい人だと思いますし、ゆえのアスリート気質らしい引退決意でもあるのかなと感じているんですが、加藤さんはあのニュースにどんなことを感じましたか?
ファンキー加藤:安室さんは僕らの世代ど真ん中でもありますし、高校生のとき、TKサウンドに乗せて安室さんが縦横無尽に歌っている姿を見ていたし、僕の周りの女の子たちはみんなアムラーでしたし。なので、ショックと同時に「安室さんらしくもあるな」と思います。全盛期のうちに……でも分かんないですよね。あそこまでの地位をずっとキープして歌い続けて、踊り続けてきた人の気持ちは僕なんかには到底分からない。でもどこかでやっぱり「格好良いな」と感じている。ただ、そんな想いもありつつ、先日、山中湖でフェスがあって、そこでSHOW-YAさんとか中村あゆみさんとか大先輩方のステージを観させてもたったんですけど、それはそれで涙が出るんですよ。中村あゆみさんの「翼が折れたエンジェル」とかをステージ横で聴いていたときに感情を揺さぶられたんですね。あれは何十年と歌を歌い続けてきた人だからこその言霊というか、パフォーマンスが成せる業なんだろうなと。だから何が正解なのかは分からないですし、引き際に関して言えば自分自身の中にしか答えはないんでしょうね。--たしかにそうですね。
ファンキー加藤:安室さんの最後の1年は幸せな日々であってほしいなと願ってます。僕も安室さんに夢を頂いたひとりなので、ただただそういう風に思っています。--そんな激動の音楽シーンの中で、ファンキー加藤はこのたび「冷めた牛丼をほおばって」なる新曲で「何回でも 何回でも 立ち上がるのに 大きな理由なんてないよ ただこのまま終わりたくないから 十万回でも 百万回でも またイチから始める」と歌ってみせました。この曲は加藤さん自身の宣言でもあるのかなと感じたのですが、実際のところはどうなんでしょう?
ファンキー加藤:これは先程触れて頂いた「本当のこと」を経てですね、やっぱりもっともっと自分の内側に踏み込んで、自分自身を鼓舞したいと。いちばんはそこですね。自分自身を鼓舞、そしてそれを聴いた日本のどこかの誰かがもしかしたら同じ想いを抱いているかもしれない、もしかしたらこの曲を聴いて一歩前に進んでいってくれるかもしれない、という儚い願いを込めて歌っています。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:杉岡祐樹
自堕落な日々。それでもずっと飯は食ってるんですよ。
--今日の話を聞いていると「本当のこと」~「冷めた牛丼をほおばって」の流れは、ファンキー加藤の表現者としての大転機だったんじゃないですか?「そこまで踏み込んで歌うべきなんだ、俺は」と思い切れた時期というか。
ファンキー加藤:本当はね、もう少し俯瞰で見たりとか、第三者的視点を持ち合わせていれば、いろんな角度からの曲が作れるし、例えば同じラブソングでも違った世界観が描けるなと思うんですけど、ことシングルのリード曲となると「そうじゃねぇだろ」と。でも一度は俯瞰で書く方向へ行こうとも思ったんですよね。何故ならやっぱり今僕は言葉をチョイスしなきゃいけない立ち位置で、場合によっては「どの口が言うとんねん」とツッコまれたりもするんで、すごく難しいところがある。だから俯瞰で……でもそれはちょっと逃げだなと思ったんですよ。「もういっちょ、自分自身と向き合って、人生削ってみるか」っていう気持ちになりましたね。--「人生削る」って自分の中で苦しいものなのか、気持ち良いものなのか、どういう感覚だったりするんでしょう?
ファンキー加藤:正直に言えば、今は苦しいです。それまでそんな風に思ったことはなかったですけどね。僕も皆さんと同じ生活環境の中にいるという自覚があったんで、例えば「きっと僕が見る夕焼けの切なさは皆さんにも共感してもらえるだろうな」って。でも今はもしかしたら違うかもしれない。っていうところで葛藤することはやっぱり多くなりましたね。--それで「冷めた牛丼をほおばって」のような曲を吐き出したあとは、どういう感覚になるんですか?
ファンキー加藤:少なくとも僕はこれを歌うことによって、自分自身の言霊に鼓舞されています。僕はこの曲と共にまた明日へ歩を進めていけるような気がしています。--今回の「冷めた牛丼をほおばって」は、具体的にはどういう心境から生まれたものなんでしょうか?
ファンキー加藤:ツアーが終わってから1,2ヶ月ぐらいポーンと空いたんですよね。3月ぐらいにツアーが終わって、7月にFCイベントが東京と大阪であって、それの準備とか楽曲制作の打ち合わせが始まるまでの1,2ヶ月間、時間が空いたんですよ。その間に燃え尽きたまでは言わないけど、ずっと張り詰めていた心がちょっと緩んで、結構ダメダメな日々だったんです。自堕落な日々。すごく太っちゃって、髪の毛もボサボサで、髭も伸ばしっぱなし。俺の友達とかも「どうしたの?」みたいな。「全然オーラないじゃん、全然ファンキー加藤じゃないじゃん」みたいな感じ。その時期に「どうしようかな? どうしようかな?」となっていたんですけど、それでもずっと飯は食ってるんですよ。「なんだこれ?」と思いつつ「ご飯を食べるということは、命を繋げるということだよな。命を繋げるということは、俺はこんな状況になってもまだ未来に期待しちゃってんのかな? 情けねぇなぁ。恥ずかしいなぁ。でもちょっと嬉しいなぁ」という気持ちがあって。--なるほど。
ファンキー加藤:で、FCイベントという目標が定まると、一気にギューっと体も絞って、髪の毛もパシン!となって、満足のいくライブが出来たんですよ。そんなことの繰り返しの日々の中で、この歌が出てきたんです。極端に言うと「ご飯を食べてる=それって人生に立ち向かってるぜ」っていうような想いで作りました。例えば、朝、寝不足で眠くて、でも目覚まし鳴って、学校や仕事へ行く為に「あー、やだな」と思いながらも準備して、玄関開けた時点で「おまえ、それ立ち向かってるぜ?」みたいな。そんな日々もちゃんと肯定してあげたいなと思って書きましたね。--飯食って、灯みたいなものが生まれて歩き出す。そういう境地って本当に一度全部終わった人じゃないとなかなか陥らないと思うんですけど、実際にアルバム『Decoration Tracks』と【HALFWAY STAR TOUR】で加藤さんは全部搾り出しちゃったんでしょうね。搾りかすを更に絞って絞って突っ走ってきたというか。
ファンキー加藤:「何回濾してんだよ!」みたいな(笑)。--それで本当に何も無くなっちゃったところはあるんじゃないですか?
ファンキー加藤:あります、あります。引退なんてことは考えていなかったですけど、もしかしたら半年とか1年とか……--活休?
ファンキー加藤:それも頭を過ぎってはいましたよね。ただ、FCイベントでステージに立ったときに「これ以上楽しいと思える刺激的な時間は、他に探せないな」と思って、実際にそれが終わってからはモードがちゃんと切り替わったんで……凄いですよ、やっぱりステージというものは。不思議な力がありますね。--それでまたファンキー加藤になれたと。
ファンキー加藤:完全になれました。--そのきっかけが飯だったということですよね。この曲で言うところの「冷めた牛丼」だった。
ファンキー加藤:そうですね、飯でしたね!「あー、命繋いでんだ」と思いました。--この「冷めた牛丼をほおばって」というタイトル、70年代のフォークの人が付けそうな、2017年にはまず出てこないようなタイトルじゃないですか。それがまたファンキー加藤らしいというか、今のファンキー加藤じゃないと歌えないフレーズなんだろうなと思いました。
ファンキー加藤:やっぱりこの曲を作るにあたって、ベースのひとつはフォーク。フォーキーなものがやりたいと思っていたので、だからハーモニカも入れたし。ただ、このタイトルに関しては「え?」というクエスチョンマークを抱いてもらう為に意図的に付けたところもあります。中身は自分の中ですごい自信作が出来たと思っていて、きっとコイツはもう一生連れ添っていく代表作だなと思っていて。それだけ中身に自信がある分、タイトルという包装紙を少し奇抜なものにして、ちょっと目を引くものにしたくて。最初は「アゲイン」とか「何回でも」とか他の候補もあったんですけどね、これはスタッフさんにも言われたんですけど、「今「ファンキー加藤「アゲイン」」と言われてもさ、誰か聴きたいと思うかね?」と。「だったら目や耳にした人の心にクエスチョンマークを付けていこうぜ」ということで、歌詞の中でベストなタイトルを探して「冷めた牛丼だ!」となったんです。--実際にこの曲の中核となるワードですもんね。
ファンキー加藤:そうですね。このタイトルからも行間を読んでもらえたらなと思っています。--加藤さんのストーリーを知らなくても「みっともなくても、情けなくても、それでも生きていく」というメッセージがこのタイトルからも読み取れますし。
ファンキー加藤:やっぱりそこが一番の狙いですよね。僕の歌ではあるんですけど、誰かの歌になってほしい。もしかしたらすごく難しいことかもしれないんですけど、それでも僕はその可能性を捨て切れない。どうか誰かの歌になってほしい。--なると思いますよ。自分の歌だけれども、やはり聴いている人に向けての、そこに届ける対象があっての歌詞になってますもん。
ファンキー加藤:そうですね。寂しがりやなんで「ひとりでも巻き込んでいきたい」という気持ちが出てるんでしょうね(笑)。やっぱりひとりじゃ出来ないですよ、自分のやりたい音楽は。--さっきの飯食って息を吹き返すまでの自堕落な日々じゃないですけど、人って自分の為にはそんなに頑張れないですもんね。限界がある。
ファンキー加藤:だからキャンプファイアーなんですよ。おそらく本当のカリスマというのは、タイマツ持つでしょ? 暗闇の中で。高い丘の上でタイマツ持って、お客さんに「こっちだぜ!」ってやるでしょ? 一時期憧れましたよ。格好良いもん。でも俺には出来ないからその火を薪にくべて、肩組んで歌いましょうと。寂しがりやだし、自分に自信ないし、でもそれで一体となったときの力強さは味わってきているので、これからもそうやってみんなと歌っていきたいですね。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄|Photo:杉岡祐樹
冷めた牛丼をほおばって
2017/11/08 RELEASE
MUCD-9119/20 ¥ 1,834(税込)
Disc01
- 01.冷めた牛丼をほおばって
- 02.We can Dance
- 03.We Wish ~聖夜の街で~
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