Special
来日記念特集:フアナ・モリーナを聴くべき5つの理由
世界中の音楽シーンを見渡しても、彼女のようなアーティストはいない。そう確信させてくれる数少ない音楽家のひとりが、フアナ・モリーナだ。南米アルゼンチン出身でありながら、言葉や国籍を超越した音楽性は唯一無二であり、各国に熱狂的なファンを多数獲得している。
フアナは1996年にシンガー・ソングライターとしてデビューし、2000年のセカンド・アルバム『Segundo』によって世界的にブレイクした。日本でもコアな音楽リスナーを中心に支持され、“アルゼンチン音響派”というムーヴメントまで生み出している。2017年春にリリースされたばかりの最新作『Halo』も非常に評価が高く、健在ぶりを示してくれたのも記憶に新しい。
これまでにも何度か来日公演を行い、その度に強烈なインパクトを残し、フアナ信者を生み出している。ではなぜ、彼女はこれほどまでに高く評価されるのか。その秘密を5つのキーワードから探ってみたい。
1. 独特の浮遊感を持つ声とサウンド
フアナの特徴といえば、なんといってもその歌声だ。決して張り上げる訳でもないし、どちらかといえばウィスパー系の声質なのに、フワフワとしながらも耳に迫ってくる感覚がある。そして、その声を限りなく魅力的に聞かせるためのサウンドも特徴的だ。アコースティックを基調にしながらも、シンセサイザーやサンプラーなどを駆使した不思議な感覚のアレンジは、まさに迷宮に忍び込んだような気分にさせられる。時代を追うごとに少しずつ指向性も変化しているとはいえ、声とサウンドのマッチングの妙は一貫して魅力的だ。
▲ 「Paraguaya」MV
▲ 「Lo Decidi Yo」MV
2. ジャンルを超越した柔軟な音楽性
こういった不思議な存在感を打ち出せるのは、彼女の音楽的なバックボーンが確固たるものがあるからだろう。父親が著名なタンゴ歌手ということもあり、表面的には目立たないとはいえ、アルゼンチンならではのタンゴやフォルクローレのエッセンスはそこかしこに隠されている。加えて、現代音楽やアヴァンギャルドの影響を感じさせつつも、インディー・ロックやエレクトロニカ、フリー・フォークといった世界中の先鋭的なムーヴメントとも微妙にリンクし、今の時代と絶妙な距離感を保ってきた。最近ではアフリカのコンゴトロニクスとの共演なども盛んに行うことで、自身の音楽に肉体性を反映させているのも新鮮だ。
3. キモかわいい?!ビジュアル展開
さらにフアナの音楽を特別なものにしている要素として、独自の美学に基づいたビジュアル展開が挙げられる。最初にインパクトを与えたのも『Segundo』の金髪ジャケットだったし、アートワークに関しては、毎回「なんじゃこりゃ?」と思わせ、一筋縄ではいかない。また、昨今制作されているミュージック・ビデオの振っ切れ具合などはSNSなどでも大きな話題を呼んでいる。こういったビジュアル戦略は、同じくアルゼンチン人のアレハンドロ・ロスという優秀なクリエイターの力も大きいが、それだけフアナの音楽はイマジネーションを引き出せるということでもあるのだ。
▲ 「In the Lassa」MV
▲ 「Eras」MV
4. 個性を生かしたコラボレーション能力
独自の路線を歩んでいるフアナではあるが、だからといってけっして孤高を貫いているわけではない。母国アルゼンチンでも、優秀なアーティストがいれば有名無名問わず積極的に作品作りに参加するし、それは海外でも同様だ。先述のコンゴトロニクスのような、意外な組み合わせも多数行っている。来日時においても共演歴は幅広く、コーネリアス、高橋幸宏、レイハラカミなどとも対バンを行い、なんと平井堅のアルバムにもレコーディング参加している。前回の来日公演ではクラムボンの原田郁子と同じステージに立ち、今回はジェフ・ミルズやテリー・ライリーともコラボレーションを行うというから、その振り幅は凄まじい。
5. 圧倒的な演奏力とライヴのすごさ
そして、なによりも体感してほしいのは、彼女の生のパフォーマンスだ。フアナの音楽のイメージだと、ライヴも雰囲気モノに思われるかもしれないが、実際に触れてみるとそんな固定観念は吹っ飛ぶはず。ギターとキーボードの他、サンプラーやルーパーを駆使し、その場で音を組み立てていくライヴの手法は、とにかく圧倒的。同様のアプローチをするミュージシャンは多数存在するが、彼女ほど創造的で完璧にステージを作り上げるアーティストは思いつかない。もちろん、個性的なヴォーカルもステージ映えし、何層にも重ねられていく声の曼荼羅に身を委ねているだけで、ここではないどこかへ連れて行ってくれる。この感覚は、音楽ファンならとにかく一度は間近で感じるべきだろう。
このように、フアナ・モリーナは、他の誰とも違うアーティストであり、他に比較対象がない存在である。それだけに、言葉で説明するよりも、実際に聴いて観てもらうのが一番。まずはビルボードライブを始めとする今回の来日公演に足を運んでいただきたい。
▲ 「Live on KEXP」
▲ 「NPR Music Tiny Desk Concert」
公演情報
JUANA MOLINA
ビルボードライブ東京:2017/11/6(月)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2017/11/10(金)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
>>公演詳細はこちら
BAND MEMBERS
フアナ・モリーナ / Juana Molina (Vocals, Guitar, Keyboards)
シュヴァルツ・オーディン・ウリエル / Schwartz Odin Uriel (Keyboards)
ロペス・デ・アルコート・ディエゴ / Lopez De Arcaute Diego (Drums)
TERRY RILEY X JUANA MOLINA
渋谷WWW X:2017/11/8(水)
18:30 / 19:30
>>公演詳細はこちら
JUANA MOLINA X JEFF MILLS
渋谷WWW X:2017/11/9(木)
18:30 / 19:30
>>公演詳細はこちら
関連リンク
Text: 栗本斉
関連商品