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Tiara 3年ぶりの新作『あいすること』インタビュー
Tiara、結婚~出産を経て3年ぶりの新作を完成
同じ経験を得た女性ライターが紐解く
2009年、シングル『さよならをキミに… feat. Spontania』でメジャーデビューし、以降も数々のラブソングで着うたシーンにて快進撃を続けてきたTiara。そんな彼女の楽曲に惹かれ、時に取材も行ってきた女性ライター。奇しくも両者は同時期に結婚、同じ年に子供を出産した。
そして2017年、Tiaraは3年の沈黙を破り、ニューアルバム『あいすること』でシーンに復帰した。母という経験はアーティストに、女性にどのような影響を与えるのか。同じ立場を迎えた記者が訊いた。
完全にワンオペな状態なので、自分で全部なんとかするしかない
--Tiaraさんは産休で3年ほど活動をお休みしていました。
Tiara:私はつわりがすごいひどくて、妊娠がわかった翌週から動けなくなっちゃって、そこからずっと休んでました。もう少し早く復帰したかったんですけど、なってみないとわからないことが多くて……。本当は妊娠中も制作して、その翌年くらいにはリリースできたらと思ってたんですけど、出産後も体調がすぐれない日が多かったりして、音楽のことを考えられてはいなかったですね。--わかります。
Tiara:どうしても優先順位が子供になってしまって、自分のことは二の次、三の次になりますよね。私の場合、近くに家族がいるわけではないですし、旦那さんも忙しくてほとんど家にいない、完全にワンオペな状態なので、自分で全部なんとかするしかなくて。新生児のころは特に緊張感や責任感もあって、「どうにかして生かさないと」みたいな(笑)。本当に最近ですね、お仕事とかも考える余裕ができてきたのは。--ご出産されたのが2015年の10月ですよね。一番大変だったのは?
Tiara:やっぱり授乳で寝られないことが一番でしたね。夜中も2時間起きの授乳が待っていますから、3~4か月はいっぱいいっぱいでした。--私の息子は3か月くらいから夜泣きが始まったのが大変でした。
Tiara:うちは夜泣きは無かったんですけど、朝までずっと?--4時間ぶっ通しで泣き続けたりとか。
Tiara:ええー!同じお母さんでも子供によって違うんですよね。私は夜泣きを経験していないのでわからないんですけど、寝られないと人間って壊れていきますよね(笑)。私の場合は遠い親戚より近くの友だちというか、友人がサポートしてくれたのが助かりました。だからこれからは、私がみんなを助けてあげたいと思うようになったり。--子育てって子供を見ているけど、自分と向き合う時間ができますよね。
Tiara:子供ってお母さんの真似ばっかりするから、色々気をつけなければいけない自覚はできましたね。うちは女の子だから特にで、たとえばゴミをゴミ箱に投げたりすることも真似てしまって、外でやられちゃう。「どんな教育してるんだ?」ってなっちゃうので気をつけようと思いますし、子供目線で見ていると「こんな風に見てるんだ」っていう新鮮さも感じていますね。--ご出産の直後など、音楽は聴けていましたか?
Tiara:そんな余裕が無かった時期もありましたね。半年くらい経って、やっと聴き始められたくらい。でも、人によっては余裕がある方もいらっしゃいますから、本当に人それぞれだと思います。10か月かけたプロジェクトに対する達成感と、「人間を産めた!」
--そうした状態から、もう一度シンガーとして活動しようと思ったきっかけは?
Tiara:ずっと続けてきたことですし、ひとりの女性として、結婚して出産したことがプラスの経験になったと思うので、それを音楽で表現したいなって。音楽から離れていた分、今回の制作もすごく新鮮で、曲を作ること、歌うことの楽しみを改めて感じたり、昔歌っていた曲も視点が変わっていく。また違う気持ちで歌えますし、新曲も今までとは違う気持ちで作れたので、大きな変化を感じていますね。--今回のニューアルバム『あいすること』を聴いて、Tiaraさんが今までの自分と向き合った結果が出ていると感じました。
Tiara:これまでも自分なりの解釈で歌ってきたんですけど、子供ができたことで「あぁ、“あいすること”ってこういうことだったんだ」って気づいたというか。もちろん旦那さんとか今までの恋愛とか、それぞれすごく大事にしてきたんですけど、それとは違った愛情を経験できた。それはすごく大きかったですよね。--恋愛に対する愛情も、今まで以上に踏み込んだ表現に挑戦されていますよね。
Tiara:吹っ切れた感覚もありますし、やっぱり強くなりますよね。私はどちらかというと元々臆病な性格なんですけど、出産を経験すると大概が怖くなくなりました(笑)。「あれができたんだから、もうだいじょうぶ」みたいな自信が付いたというか、それくらい出産ってすごいことだと思います。10か月かけたプロジェクトに対する達成感もありますし、「人間を産めた!」っていう自信と(笑)。--私は最初いっぱいいっぱいすぎて、「ちゃんとにこの子を愛していけるのか?」っていう不安もありました。
Tiara:産後の直後はありますよねぇ。実はうちの子は産まれた時は小さくて、子供だけ10日間くらい入院していたんですよ。体重が増えないと退院出来ないので、授乳の為に毎日通う日々が続いて、離れていたからとても不安でした。お陰様で今は平均より大きくなっちゃったんですけど(笑)。--今作のタイトルチューンになっている6曲目「あいすること」は、本作で唯一Tiaraさん単独クレジットの楽曲です。
Tiara:「あいすること」は出産して2か月くらいの時に、自然と浮かんできた曲なんですよ。夜中、寝られなくて、自分のリズムがぐちゃぐちゃになっていた時に、久々にパソコンを起動して色々見ていたら浮かんできたメロディと歌詞を、そのままパソコンに残しておいたんです。今回、私自身が作詞作曲した曲は「あいすること」だけになっちゃったんですけど、歌詞にはこだわりたいと思って、他の曲に関してもテーマや内容を作詞家さんに伝えさせていただきました。
--「あいすること」を聴いた時は泣きました。簡単な言葉になっちゃうけど、癒されたんです。
Tiara:わー、よかった!やっぱり子育て中の方に聴いて欲しかったので。インストア情報
Tiara「あいすること」発売記念ミニライブ&サイン会
【日時】2017年9月23日(土)16:00~
【場所】流山おおたかの森 S.C 本館1F 正面入口(ケヤキ前)広場
【内容】ミニライブ&サイン会
※イベント詳細:http://www.crownrecord.co.jp/artist/tiara/whats.html
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Interviewer:天野春奈|Photo:杉岡祐樹
180度変わりましたね、価値観も物事の見え方も
▲YouTube「Tiara「あなたとめぐる季節の中で」Music Video」
--今の私は受け入れること、否定しないことが愛だと思っているんですけど、この曲はそれを表現していると感じました。
Tiara:最初はアルバム・タイトルも全然違うものを考えていたんですけど、この曲がカタチになった時に、やっぱりこの曲が軸になるなって。今までは英語のタイトルばかりだったので、日本語のタイトルっていうのはどうなんだろうっていう不安もあったんですよ。でも、この3年間の集大成を表す言葉としては、これしかないなって。--言ってしまえば人類永遠のテーマを、このタイミングで持ってきたことに感動しました。
Tiara:ありがとうございます。そういっていただけると嬉しいな。やっぱり180度変わりましたね、価値観も物事の見え方も。日々色んな悩みは尽きないですし、先輩ママからは悩みの質がこれからどんどん変わってくるとも聞いているんですけど、それすらも幸せなことだなって感じています。日々充実しているのはありがたいですね。--この曲で救われるお母さんも多いと思います。
Tiara:聴いてくださったら嬉しいですね。きっと、経験しないとわからないような、母親ならではの表現も入っているんじゃないかな。自分もそうだったように、育児で視野が狭くなって、いっぱいいっぱいになっている人も沢山いらっしゃると思うので、先ほど「癒された」って言ってくださったのは嬉しいです。--私は、ママじゃない人にも響くと思います。
Tiara:結局、みんなお母さんに愛されて産まれてきているっていうことを伝えたかったんです。色々つらい状況にあると「自分は孤独だ」って思ってしまいますけど、そういう人にも聴いていただきたいですね。--また、2曲目「Innocence ~許されない恋~」はタイトル通り不倫を思わせる内容ですが、そういう状態をYESともNOとも言わない。ある意味、この曲も癒やしだと思います。
Tiara:あ、そうなんですね! たしかに、これもひとつの愛のカタチですからね。今まで歌ってこなかったテーマではあるんですけど、私ももう良い年齢ですし(笑)、愛は理屈じゃないなって、そろそろそういった曲も歌っていいのかなって思いました。--近年の日本は毎日のように不倫が報道されていますが、そういう恋に対する考え方が変わるところもありましたか? 私は憧れなどはないですけど、子育てしていく中で旦那さんへの不満が溢れんばかりになって(笑)。
Tiara:たしかに、子供が生まれてお互いがお父さんお母さんになると、夫婦のバランスも崩れますよね。一度崩れて、子供が2~3歳くらいになるとまた戻って……。崩れて立て直してっていう流れも夫婦の作業なんだなって思いましたね。--ずっと仲良くは無理ですよね。結婚って修行だなって。
Tiara:この前、年配の男性の方々と話す機会があって、結婚を長く続けるために一番大切なことを訊いたら「我慢だね」って(笑)。みんな一緒なんですよね、色々あっての今なんだなって、乗り越えなきゃいけないなって。そういうことも経験したり、周りの話を聞いていると、旦那さん以外に話を聞いてもらえる人が欲しいっていう気持ちもわからなくないです。想像できるところを良い意味で裏切りたい気持ちもある
--「Innocence ~許されない恋~」のような曲の説得力や生々しさは、今のTiaraさんでなければ出せなかったですよね。
Tiara:やっぱり歌をうたっていくと自分の気持ちが出てしまう、伝わってしまうものだと思うので、嘘は歌えない。子供を産みたいと思ったのはそこもあって、人として成長したいし、より説得力のある歌をうたっていきたいとなると、女性としてもっと経験をしたいなって。--出産後、初のアルバムでこういう曲を収録することもインパクトが強かったです。
Tiara:2曲目に入れたのも、「こういう曲もあるよ?」っていうのを序盤で見せておきたかったというか。タイトルやジャケットから想像できるところを良い意味で裏切りたい気持ちもあったんです。ただ、あまりにも曲がカッコよく出来上がったので、「この曲がリード曲はどうですか?」って言ったら、「出産後これはマズいでしょ!」ってさすがに断られました(笑)。--3曲目「東京の空」は、東京を見つめ直す歌詞になっています。私は4年前に東京から離れて、今は違う街で暮らしているのですが、Tiaraさんにとっての東京とはどのような街なのでしょうか。
Tiara:私は夢を叶えるために東京に出てきたので、そういう認識ですね。周りの人たちも地方から出てきて、自分の目標や夢を叶えるために頑張っている子が多いですし。まだ夢半ばで色々目標もあるんですけど、東京に住んで今年で18年。なんとかなるまで絶対に帰らないって決めて出てきているので、そういった意味ではメジャーデビューというひとつの目標は叶ったかなって思いますね。--覚悟の先まで感じることができる。
Tiara:簡単には田舎に帰れないですしね。自分で決めたことは最後まで突き通したかったですし、両親に迷惑はかけられない。生まれ育った故郷で過ごした18年を越えたっていうのは、節目と感じますね。もちろん子供のころと大人になってからは違いますから、多感な子供の頃に過ごした故郷に対する想いは今も強くあって、私的には東京に染まったという感覚はありません。いまだに訛っていますし(笑)。20代のころは本当に大変で、目標に向けてアルバイトを2個も3個もやって、なんとか生活していた時期で、「来月も生きていけるかな……?」くらいの緊迫感の中で日々暮らしていたので。容易に振り返れないくらいツラかったんですけど、やっと肯定できるようになったかなって。
インストア情報
Tiara「あいすること」発売記念ミニライブ&サイン会
【日時】2017年9月23日(土)16:00~
【場所】流山おおたかの森 S.C 本館1F 正面入口(ケヤキ前)広場
【内容】ミニライブ&サイン会
※イベント詳細:http://www.crownrecord.co.jp/artist/tiara/whats.html
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Interviewer:天野春奈|Photo:杉岡祐樹
着うたブームはバブルだった
▲YouTube「Tiara「My Girl Friends」Tiara × AZU × 片桐舞子(MAY’S)MV」
--9曲目「My Girl Friends / Tiara × AZU × 片桐舞子(MAY’S)」でご一緒されているおふたりは、一時代を共に戦ってきた戦友です。2000年代の着うたブームに台頭したミュージシャンとしては、最近では青山テルマさんがバラエティなどで活躍されていますが、Tiaraさんにとってあの時代はどういったものだったと思いますか?
Tiara:バブルですね(笑)。一過性のブームではありましたけど、それに乗ってデビューできた事は、素直にありがたいと感じています。今だったらまた違ったでしょうし。ただ当時は本当に忙しかったですね。私がメジャーデビューをした2009年から3年間くらいは、シングルを年に3枚出してアルバムを1枚出すっていう流れの中で、更に着うた先行配信があるので、通常のスケジュールより更に2か月くらい早く曲を上げなければいけない状況が続いていたんです。そうすると、新曲のプロモーションをしている時にはもう次の曲を作り始めていなくてはならなくて。とにかく時間がないので、移動の新幹線の中で曲を書いて、降りたらメロディを電話でプロデューサーさんに伝えて、その後のラジオ出演ではリリースしたばかりの曲について話させてもらう……という感じでしたから、頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃうんですよ(笑)。
この3年で音楽の聴き方もだいぶ変わったと感じています。スマホがあれば着うたは必要なくなってしまうかもしれないですし、今はサブスクなども増えてきていて、私本当におばちゃんだなって思っちゃうくらい正直全然時代についていけてないです(笑)。皆さんがどうやって音楽を聴いているのか知りたいですね。
--やっぱりスマホで聴く人が多いと思いますね。子供ができてからは昔の曲を聴く機会が多くなって、それまでとは捉え方が違っていたりもして。
Tiara:変わりますよね!--だから今作の最後に11曲目「たしかなこと」のカバーが収録されているのもなるほどなって。
Tiara:自分の歌に関しても、当時は最大の表現だと思って書いているんですけど、今歌うとなると伝え方や歌の表情は変わると思います。他の方の曲も改めて聴くと、「この曲はこんな事を伝えていたんだ!」という新しい発見が沢山あって、今までとはガラッと視点が変わりましたね。「たしかなこと」は産後聴いて改めて感動した1曲です。恋愛ソングを書いてますけど、実生活では恋愛とはもう大分遠い所にいて(笑)、やっぱり子供が第一になっちゃうと女性はそうなっちゃうんですよね。プラス、自身や責任感もあるので、世の中の大抵の事は怖くなくなってくる。それを人はおばちゃんと呼ぶのでしょうけど(笑)、でも一つ経験値が上がって自信がついて、どっしりと構えられようになった事は歌にも出ているとは思いますね。
--男とか女とか関係ないなってなってきませんか?
Tiara:電車に乗っているおじさんを見ながら、「この人も赤ちゃんだったんだな」って思ったりとかね(笑)。赤ちゃんと行動すると、本当に色んな人がいるってわかりますよね。嫌だなって思うこともあるんですけど、8割くらいは良い人だなぁって。年齢とこれまでの経験値で、等身大の私で歌っていけたらいいな
Tiara:人間を改めて知るというか、今までそんなに人のことを気にして生きていなかったって痛感させられるんですよね。歩いている時も目的に向かってスタスタ行ってましたけど、今は「迷惑かけてないかな?」とかエレベーターを探したりしながら周りを見ていると、同じように通ってた道も全然違うんですよ。もう一回、イチから人生を学べる感覚です。--今回のアルバム『あいすること』は、各曲の視点がそれぞれ違って、バラエティという点では非常に豊富だと感じました。
Tiara:もちろん子供が第一優先ではありますが、母親になったからといってハードルを下げたくなかったですし、ママになっても色々挑戦していけることも伝えたいと思いました。これからのことはまだわからないんですけど、まずは復帰作ということで、皆さんに今の自分を伝えられたらなって。休んでいた3年間の自分は全部出せたと思います。--今後、ライブなどは?
Tiara:ライブ活動も行なっていきたいのですが、土日の夜となると、まだなかなか難しいところもありますよね。私自身、誰かのライブを見に行くこともできていない状況ですし、お子さんのいらっしゃるシンガーの方々がどうやっているのか訊きたいです。--では、これからTiaraさんはどういった音楽を歌っていきたいと思いますか。
Tiara:視点が変わったことで表現する方法も変わってくると思うんですけど、デビューからずっと変わらずにいるのは、等身大の自分で歌うこと。それだけは変えずにやっていきたいので、母になった自分、母親目線の曲が増えてくるかもしれないですし、大人になったことで恋愛観も変わってきていると思います。年齢も経験も重ねていく中で、その時の等身大の私でこれからも歌っていけたらいいなって思います。--これで次回作が「Innocence ~許されない恋~」みたいな曲ばっかりだったら不安になっちゃいますね(笑)。
Tiara:アッハッハ!でも、もっと色々なストーリーの曲を歌っていきたいですし、刺激的な世界観も表現できたらいいなと思いますね。--私はこれまで、“愛とは”みたいな曲ってピンと来なかったんです。でも、この作品はすごく共感できました。もっと広まって欲しいなって思いました。
Tiara:ありがとうございます。私は恋愛の曲が多かったのですが、この3年で得た経験によって、人生の曲というか普遍的な曲に対する説得力は増したんじゃないなかなと思っているので、子育てを通して、これからどんどん増やしていきたいですね。インストア情報
Tiara「あいすること」発売記念ミニライブ&サイン会
【日時】2017年9月23日(土)16:00~
【場所】流山おおたかの森 S.C 本館1F 正面入口(ケヤキ前)広場
【内容】ミニライブ&サイン会
※イベント詳細:http://www.crownrecord.co.jp/artist/tiara/whats.html
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Interviewer:天野春奈|Photo:杉岡祐樹
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