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中島美嘉 『永遠の詩』インタビュー
心を開けば、変わる世界。それを中島美嘉は今年、特に狙ってではなく、あくまで自然体で表現してきた。史上最も感動的で充実した内容となった全国ツアー【MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2007 YES OF JOY】、ヒットシングル『LIFE』、そして新曲『永遠の詩』。これらの話を通して、彼女の変化を伺った。
すごく嬉しかったです!
--今日はアルバム『YES』リリースタイミング以来のインタビューになるんですが、まずそのアルバム『YES』、リリースから約半年経って、その間に全国ツアーがあって、今自身にとってどんなアルバムになっていってるのか、聞かせて頂きたいんですが。
中島美嘉:『YES』の前の『MUSIC』が、あんまり周りの意見を取り入れずに結構自分の好きなことをやらせてもらったアルバムだったんですけど、『YES』は、比較的みんなが「こういうところが好きです」って今まで言ってくれていた要素を取り入れたアルバムだったんです。だからそれを引っ提げたツアーをしてても「ファンのためのライブができたな」って思えて、そこはすごく充実感がありましたね。だから、これで良かったんだっていうのがアルバム『YES』に対してもあります。
--『YES』は今でもよく愛聴させて頂いているんですが、聴けば聴くほど、様々な物事や想い、また自分自身のことを肯定していきたい気持ちが芽生えていく感覚を覚えたりすることがあるんですが、中島さん自身もそういう感覚や印象は、あのアルバムに対してありますか?
中島美嘉:そうですね。あのアルバムは“心を開く”みたいなことを気付き始めた頃に作っていた楽曲たちが入っているので、そういう意味では、人の心を動かせる内容が多いのかなと思います。
--で、おそらく、そうしたいろんなことを肯定していくことで、繋がったり、伝わったりしていくことを強く感じたのが、全国ツアー【MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2007 YES OF JOY】だったと思うんですけど、実際、中島さんにとってどんなツアーとなりましたか?
中島美嘉:体力的にも喉的にも絶対にペース配分しないっていうポリシーを持って、今までのツアーも全力でやっていたつもりだったんですけど、今回は目に見えないエネルギーが前に向かっていた。それはすごく実感としてあったんで、終わった後の疲れ具合が半端じゃなくて。だからそういう意味では、すごく心身共に充実できたライブができたなって。全部ちゃんと使えた気がする。
--で、個人的には、今回のツアーで中島さんの気持ちを最も昂ぶらせたんじゃないかと感じたのが『ALL HANDS TOGETHER』を披露しているときで。
中島美嘉:確かにあの楽曲あたりから盛り上がっていきましたよね。それまでは緊張しているので、なかなか出し切れない部分があるんですけど、あの曲からはやっぱりバーン!と開いていく感じはありましたね。
--みんなと思いっきりハンドクラップをしながら満面の笑みで歌っている中島さんの表情を見て、心がフルオープンになっているのを感じたんですが、実際のところはどうでした?
中島美嘉:そうですね。やっと楽しめるようになってきたのかもしれない。それまでは本当に緊張していたし。人一倍、尋常じゃないほど緊張するタイプだったので(笑)。で、それを抑えるのに必死だったんですよ。ただ今回は緊張しながらも心が開いてる分、失敗も受け入れられるようになって、それが楽しさに繋がっていったんだと思います。
--ファンのみんなが笑顔でハンドクラップしてくれている光景、かなり感動したんじゃないですか?
中島美嘉:もうすごく嬉しかったです!
--またMCが、特に最終公演のMCが半端なくボリューミーだったのも印象的だったんですが(笑)。
中島美嘉:私にしては、確かに今回のツアーは喋ってる方でした(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
あの日の涙の理由
--これまでもライブにおけるファンとのコミュニケーションは大事にしていましたけど、今回は特にフレンドリーに中島さんが一人一人の言葉に反応していて、それもまた中島さんの心が開かれていた証拠なのかなと思ったりもしたんですが、自分ではどう思われますか?
中島美嘉:それは、ウチのプロデューサーとかにも「すごい方法を編み出したね」って言われました。何か改まってMCで話すのが苦手なので。その中で自然と身に付いた形ですね(笑)。
-そのMCにおけるコミュニケーションがすごく美しい結果を導きましたよね。今回のツアーで中島さんがエコの重要性、やるべき理由を言い続けてきた結果、会場中に“My箸”を持ち歩いていることを報告する人でいっぱいになりました。中島美嘉:あんなに伝わってるとは、半分ぐらい思えてなくて。一応無駄にはならないから言っていこうと思って、一本も欠かさず全公演言ってきたんです。単純に45本のツアーで、1本のライブあたり10人がそれを心掛けたら450人になるなぁと思って。それぐらいの規模でもエコが広まっていけば、少しは変わるかなと思って。そしたら、あんなにたくさんの人が心掛けてくれるようになっていて、それはビックリしました。
--誠実に物事を訴え続ければ、響くんだということを実感した出来事だったんじゃないですか。
中島美嘉:ちゃんと自分で試してやったことが一番良かったんだなって思って。みんなが「じゃあ、美嘉ちゃんが使ってる箸を見せて」って言ってくれたときに、もし本当はやってなかったら見せられないけど(笑)でもそれを本当にやっていたから見せられたりとか、そういう真実味が伝わっていったのかなぁって。
--ちなみに最終公演のオーラス、あれだけ中島さんの目から涙が溢れ出したのも、そうした出来事からいろいろ感じてのことだったんですかね?
中島美嘉:そうですね。本当に良いライブだったと自分でも思ったんで、それが終わってしまう寂しさもありましたし。あと、メンバーと本当に仲が良かったのも大きかったですね。いつもは、私とかコーラスの3人は、喉の心配とかがあるから、ツアーが終わるとホッとするんですけど、今回は、このメンバーと離れるぐらいだったらツラくても続けたいって思えるぐらいの、良いメンバーで。だから嫌だったんですかね、ツアーが終わってしまうのが。
--今はどうなんですか?ツアーが終わってしばらく経ちましたけど。
中島美嘉:みんな次の、他のアーティストさんとかのライブに入ってるんですけど、未だにみんなメールで「寂しい」とか言い合ってますね。それは、私がどうこうとかじゃなくて、それだけメンバーの結束力が強かったからだと思うんです。だから「あのツアーのことを思い出して、ちょっと寂しくなってるんだよね」ってメールが来たりする。それは嬉しいなって。
Interviewer:平賀哲雄
生きるということ
--そこまで結束力が高まったのは、今回初ですか?ツアーをやってて。
中島美嘉:元々そんなにイガイガモメモメ?する方ではなかったんですけど(笑)。
--はい(笑)。
中島美嘉:でも今回は気持ち悪いぐらいみんな一緒にいたんです。大人の、いい年の男たちとかが恐ろしいぐらいひとつの部屋に集まってたり(笑)。そこまでの仲の良さは見たことなかったですね。それは、一人一人が全員を尊敬していたのが大きいと思う。
--また、ツアーの最後の最後に、Full Of Harmonyの『I Believe』をカバーしようと思ったのは?
中島美嘉:元々、映画「猟奇的な彼女」で使われていた、シン・スンフンが歌っているバージョンの直訳がすごく好きだったんですよ。で、Full Of Harmonyさんが歌っている日本語詞の方は、それの直訳と関係ない歌詞だったんですけど、それがあの瞬間のツアーのメンバーやスタッフの気持ちとすごく似ていて。だから歌いました。
--そんなすごくすごく有意義な全国ツアーを経て、夏秋と二枚のシングルが立て続けにリリース。まず『LIFE』、もうとにかく力強いナンバーですが、自身ではどんな印象、感想を持たれていますか?
中島美嘉:久しぶりにJ-POPのど真ん中みたいなことをやらせてもらって、それもよくやってきたバラードではなくて、アップテンポで。そういう楽曲がシングルではほとんど無かったんですよね。だから歌うときはすごく不安というか、「出来るかなぁ?」っていう気持ちはあったんですけど、実際に出来上がってみると、「J-POP、たのしい!」って気持ちになってきて(笑)。今は「J-POP、良いかもな」と思っている自分がいます。
--「もうすべて終わってしまえばいいと思ってた」主人公が人の繋がりによって勇気を手に入れ、「意味のないものはひとつもなくて」と断言する、このストーリー、アルバム『YES』やツアー前後の中島さん自身と重なる部分もあったんじゃないですか?
中島美嘉:うん。意識的にそうしたわけではないんですけど、たまたま今そういう風に思ってる人たちが集まって仕事をしているので、そういう詞が上がってきたんでしょうね。で、ただ明るい、ただ希望が見えるっていう曲よりは、多少切なかったり悲しかったりする方が好きなので、この歌詞はすごく歌いやすかったです。
あと、私たちよりグッと下の世代の子たちのほうがこの詞を理解できるみたいで。その世代で「好きだ」って言ってくれる子たちが多くて。それはちょっと嬉しいなと思います。素直に受け入れられる子がいるっていう事実がね。まぁ素直だから壊れちゃったりする子もいるんでしょうけど、だとしたらこの『LIFE』という曲で何かに気付いてもらえたらなって。--また、すごく抽象的な質問になってしまうんですが、この曲のタイトルになってる『LIFE』=生きるっていうのは、中島さんにとってどういうことだったりしますか?
中島美嘉:難しいね~。でも私は嫌なことも好きなことも楽しむタイプで・・・、生きる意味みたいなことまでは考えたことないですけど、せっかく生きてるなら、なるべく全部楽しんで生きていった方が、自分のプラスになるかなとは思う。
Interviewer:平賀哲雄
心を開いてみて
--そして、その『LIFE』に続くニューシングル『永遠の詩(うた)』が10月3日にリリースされます。この楽曲には中島さん自身、どんな印象や感想を持たれていますか?
中島美嘉:もう最初に聴いたときからすっごいメロディが好きで、それで「この曲を歌いたい!」と思ったので、出来上がったモノを聴いても満足してます。
--今作、作詞を『祈念歌』(アルバム『YES』収録曲)に続き、宮沢和史さんが手掛けられています。今回の詞をご覧になられたときは、どんな印象や感想を?
中島美嘉:彼の書く詞はすごく重みがあって。それで私も意味があるような詞の方が好きなんですけど、こういう詞が気持ち良い、軽いサウンドに乗ることで良い意味でアンバランスな感じを生んでて良いなって。
--僕は、中島美嘉が歌う曲には名フレーズが多いというのも特徴だと思っているんですが、この曲の「雨が降らない日は手をつなぎ歩けばいい 嵐が止まらない夜にはその手を離さなければいい」、泣きませんでした?これ(笑)。
中島美嘉:そこは私もすごく好きです。ただ私よりも誰よりもウチのプロデューサがそこを気に入っちゃって。「ここがすごく好きなんだけどさ~」ってずっと言われてます(笑)。
--この曲って、男性の視点で聴くと、もうどれだけ愛してんだよ!?と思いつつも、ここまで逞しく自分も人を愛したいと思わせる曲だったりするんですが、女性からするとどうなんでしょう?そこは一緒なんですかね?
中島美嘉:私はどちらかと言うと、すごく男性っぽい恋愛をするので、今言われた感じと同じような印象を受けましたね。普通の女性はどうなんでしょうね?今の時代。
--また、今作『永遠の詩(うた)』のPVはどんな内容になっているんでしょうか?
中島美嘉:楽園をイメージした映像で、自分以外はアニメーションで作られています。私が思う楽園のイメージをお伝えして、作ってもらった感じですね。ちょっと不思議な感じ。
--で、その『永遠の詩(うた)』が世に出る頃は、2007年も残り4分の1となっています。あっという間という印象もあるかもしれませんが、今年はここまですごく経験的にも精神的にも有意義な年になっているんじゃないですか?
中島美嘉:うん。今年は音楽にいろいろと打ち込めたので。去年はライブが出来なかったけど、今年は出来ましたし。そういう意味では、すごく充実してます。
--今日のインタビューでも“心を開く”っていうキーワードが出てきましたけど、そこの部分もここ1年で変わってきた感覚はありますか?
中島美嘉:そうですね。誰に対しても心を開くってわけじゃないんですけど、前ほど「嫌なモノは聴きたくない」とか、そういう感じではなくなりました。人の意見を聞けるようになってきたというか。自分の分からないことを側にいる他人が知っていて、それも自分の良さを知ってる人がアドバイスしてくれたりするわけだから、そこで自分の可能性が広がっていく。それは開いてから理解できるようになってきましたね。
--そうして生きていた方が面白い?
中島美嘉:面白いですね!
--あの、中島さんに初めてインタビューさせて頂いたときに「気持ちは変わらないまま成長できたらイイと思う」と言っていたのを憶えてるんですけど、それを実践できてる感覚は、今すごくあるんじゃないですか?
中島美嘉:そうですね。結局、好きなこと、やりたいことは変わってないと思うんですけど、でもやっぱり大人には多少なりともなってきてるのかなって。
--それでは、最後に毎度毎度毎度なんですが(笑)、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
中島美嘉:メッセージ・・・(笑)。えっと、私もすごくマイペースに楽しんでいって、それがこれまで無理なくやれてる秘訣だと思うので、みんなもそういう風に自分のペースを守ってやっていけたら、楽しめるんじゃないかな?と思います。
Interviewer:平賀哲雄
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