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JAMOSA×ナオト・インティライミ 『トリステーザ』インタビュー
JAMOSAは“美しい朝日”、インティライミは“太陽の祭り”を意味する。更に2人は世界中の音楽に触れてきたバックボーンがある。そんな何かと共通点の多いJAMOSA×ナオト・インティライミが今、日本のシーンへと提示する新しいポップミュージックの形『トリステーザ』について語ってくれた。
インターナショナルな2人がJ-POPを作る理由
--これまでも数多くのアーティストと共演してきたJAMOSAさんですが、ナオト・インティライミさんとのコラボは想定外でした。今作『トリステーザ』を共作する前から交流はあったんですか?
JAMOSA:同じイベントへ出演した際に楽屋挨拶させて頂いたぐらいで、そんなに交流はなかったんですよ。でもテレビやラジオを通して存在はよく存じていましたし、すごく好きなアーティストで。今後コラボレーションしたいと思っていたアーティストの候補の中で彼が一番目立っていたというか、輝いていたんです。なんで彼の歌ってすごくハッピーになれるのか知りたかったし、彼とならどんなに悲しくても前向きになれるような楽曲を歌えるんじゃないかと思って、今回オファーさせて頂きました。
--オファーに応えた決め手は何だったんでしょう?
ナオト:フィーチャリングというコラボものは未経験だったので、最初は「大丈夫かな?自分にちゃんと出来るんだろうか?」と悩んだんです。でもオファーしてくれたのがJAMOSAという素晴らしいアーティストで、すごくオリジナリティがありながら耳馴染みの良い素敵な声ですし、自分の“初めて”を預けてみようかと。それで「喜んでお受けします」とお答えした次第でございます。
JAMOSA:それで『トリステーザ』のソングライティングもナオトくんにお願いしたんですけど、やっぱり彼の曲はすごくオリジナリティに溢れているし、考え尽くされているというか、中から滲み出るものが作品になっているところにすごく惹かれるんですよね。だから彼が生み出すものを私は歌ってみたくて。
--JAMOSAさんは少女時代から渡米したり、アメリカ映画「リトル★ニッキー」の挿入歌を務めたりして、ナオトさんは28か国をひとりで世界一周したり、その各地で飛び込みやストリートライブを敢行してきたじゃないですか。そうしたグローバルなバックボーンを持っている者同士だからこそ、今日本で生み出せるポップミュージックですよね。
JAMOSA:世界には本当に素晴らしい音楽が溢れているし、「音楽はこうじゃなきゃいけない」というものもないと思うんですよ。億通りの正解がある。いろんな音楽を聴いてそれを知っている2人が「これは日本に今ある音楽の中では変わっているよね?」って思うような曲を作って、それをスタンダードにしていく。違うところから得たものを日本に送り込めたら、すごく良いですよね。まぁ実際に作るときはそこまで考えてないですけど(笑)。単純に「良いな」って思ったものを形にしていったら、自ずとそういう曲になっていったという。
ナオト:JAMOSAの曲をいろいろ聴いた上で「じゃあ、今回はどういう楽曲を作ろうか」と思ったときに、ラテンテイストなものがパッと浮かんできて、かなりすぐ出来たんですよ。それはJAMOSAというインターナショナルな雰囲気やマインドに引き出されたんだと思います。
--JAMOSAさんはアメリカから日本に戻ってきた直後は、邦楽に対して「なんじゃこりゃ?」って思っていて、ナオトさんも世界中を巡る中でJ-POP以外の音楽を表現していく可能性もあったと思うんですけど、そんな2人がこの道を選んで、その音楽が多くの日本人に愛聴されてるのってなんでだと思いますか?
JAMOSA:私はとにかく音楽に携っていたかったし、歌っていたかった。海外で生活していたことにより知ったんです。結局、どんな言葉でも伝わるものは伝わることを。全然違う言語の人同士が接して恋に落ちることだってある訳だし、音楽もそうだと思うんですよね。今回の『トリステーザ』だって地球の反対側で流れて「なんて歌っているか分かんないけど、なんか伝わる」ってなる可能性はあると思っているんで。
ナオト:自分は、基本は根っからのJポッパーなんです。幼少期をJ-POPと一緒に駆け抜けたし、今でもアイドルからさだまさしまで、日本人の皆様の曲が好きなので。そこに、旅を通して触れた世界中の音楽だったり、プライベートで一番よく聴くR&Bだったり、ブラックアーバンなもの。そういったいろんな好きなものをミックスしていく作業が一番楽しい。今回もバラードにラテンのフレイバーを入れて、ビートはダンスホール。更に日本的な哀愁感を良い具合に混ざり合わせることが出来たなって思ってます。
--そんな2人にとって、今の日本の音楽シーンってどのように映ってます?
JAMOSA:前向きな楽曲が溢れているし、昨年からの「日本として」「日本を元気にしたい」といった一人ひとりの確かな気持ちによって、よりひとつになってきているんじゃないかなと思いますね。
Interviewer:平賀哲雄
アイドル以外のアッパーな曲が売れない怖さ
--ナオトさんは?
ナオト:正直言うと、昔ってもっといろいろやれていたと思うんですよ。アップテンポやノリノリの曲もちゃんとベスト10に入ってたし。でも昨今はとりあえず切ない曲がちょっと溢れ過ぎてて、アイドル以外のアッパーでノリノリな曲は全く売れなくなってる怖さがある。アイドル以外のところでそうした曲があんまり出てこなくなってますからね。そうなると、切ない曲を作っていく上でどこにアイデンティティやオリジナリティを注入できるかが大事になってくる。ただ切なければいい時期はもう終わっているし、そこはJAMOSAの曲を作らせてもらうことになって一番最初に考えた部分。
--正に『トリステーザ』はそういう曲ですよね。歌詞もメロディも切ないんですけど、鳴ってる音は派手で色彩豊かじゃないですか。ラテンフレイバーもあるし、バラードとしては新しい。
ナオト:うん。でも他のアーティストに楽曲提供するんだとしたら、こうはならない。やっぱりJAMOSAのインターナショナルな部分が大きかったし、JAMOSAなら格好良くなるっていう直感があったので。前から挑戦してみたい形ではあったんですけど、JAMOSAからのオファーがあって「そのときが来た!」みたいな。で、それを聴いてもらったら「いいね!」ってファーストインプレッションから反応してくれたので、嬉しかったです。
--そんな2人による新曲『トリステーザ』ですが、自分たちでは仕上がりにどんな印象や感想を?
JAMOSA:最初に聴いたデモ以上でした。
ナオト:以下になってたら嫌だよ。「どうしてもデモ超えないんですよね~」って。
JAMOSA:(笑)。いや、聴いた後に息が零れるというか、本当に満足する仕上がりだったんですよ。
ナオト:自分はフィーチャリングということも初めてだったし、自分のメロディを他のアーティストに歌ってもらうのも初めてだったし、女性の声だと、JAMOSAの声だと「あ、こうなるんだ」みたいな新しい感覚があって。何回も聴きたくなるような、良い手応えがあります。
--レコーディングでは、マイクを2本立てて、ガラス越しにお互いの顔を見ながら歌ったそうですが、これは誰のアイデアだったの?
ナオト:別々に録ったパートもあるんですけど「ここは一緒に歌った方がいいね」っていうお互いに思う場所があって。
JAMOSA:それで「どうしようか?」ってなったんですけど、急遽スタジオを抑えて一緒にレコーディングできることになって。それは曲が一番盛り上がっていく掛け合いの部分なんですけど、掛け合ってるのに別々に録るのってリアリティがないし、本当に掛け合っているライブ感を曲のマックスのところで表現したかったんですよね。結果、本当に良いセッションができて。
ナオト:ハイライトだね、この大サビは。掛け合い&ハモり。
--やっぱり顔を合わせてレコーディングすると、歌のテンションや熱みたいなものって変わります?
JAMOSA:テンション上がります。どういう顔をして歌っているのか見て、それに対してどうリアクションするのか。本当に人と人のコミュニケーションを取りながら歌うことができるので、やっぱり変わります。
ナオト:僕は照れましたね。
--やっぱりドキドキはするんですね(笑)。
ナオト:します。でも良い感じでライブ感は出たかなと。別々に録っていたらこうはならない。密着感があったことでモアエナジーが生まれてると思います。
--2人がこの『トリステーザ』で描きたかった世界観やメッセージってどんなものだったんでしょう?
JAMOSA:「女性の応援歌が書きたい」って話し合っていて、ドラマ「ダーティ・ママ!」の挿入歌でもあったので、赤ちゃんの為に辛いことも乗り越えていくシングルマザーだったり、シングルマザーじゃなくてもワガママ言えずに生きている人の応援歌にしたかったんですよね。この曲を聴けば「自分の今の心を打ち明けてくれてる」ってラクになってもらえる。そういう作品にしたくて。
Interviewer:平賀哲雄
JAMOSAとナオト・インティライミが見てる未来
ナオト:あと、サウンド的には今日本であんまり鳴ってない感じ。
JAMOSA:まさかダンスホールで来るとは思わなかった(笑)。だから格好良いと思ったんだけどね。
--また、今作はどんなに切なく悲しい別れがあっても歩き続けていく意思を歌っていますが、2人が手にしたい未来ってどんなものだったりしますか?
JAMOSA:「これだけやったからもういいや」って言いたくないですね。70歳、80歳になっても、まだ夢を見続けているような人でありたいかな。先がずーっとずーっとある人でいたい。どういう形になっていくか分からないですけど、死んでもまだ“ある”っていう人生を歩みたい。
ナオト:今回、活動として新しい挑戦をできたことがすごく楽しかったので、いつか旅の経験も生かして、いろんな国の人とコラボレーションしたいなって思っています。ウィル・アイ・アムにおけるセルジオ・メンデスみたいな。現地の音楽に違う人が入ることによって起きる新しい化学反応。よりアーバンなものにすることによって、若者もそういった土っぽい音楽をもっと身近で聴けるようになったり、そういうことをしたい。それは今回の経験によってより強く思いましたね。
--なるほど。
ナオト:日本人の持ち味ってアレンジ能力だと思っていまして。音楽に限らず、大陸から来たものや、文明開化によって西洋から来た文化に対して、物凄く吸収するんだけど、日本人ならではのものをどんどん開発していったり、作っていく。その能力は世界の中においても長けている部分だと思う。カレーもパスタもラーメンもあるけど、どれもオリジナルのままじゃなく日本のカレー、パスタ、ラーメンになってる。そういう感じのアプローチで、スタイルで、世界中の音を試してみたい。新しい音楽を作っていきたいですね。
--もし、この2人が再びコラボレーションする機会があったらどんな曲を作ってみたいですか?
JAMOSA:今回は“僕”とか“私”という言葉は使っていないので、ひとりでも歌える内容になっているんですね。だから次は男と女という設定で歌えたら面白いだろうなと思います。
--ナオトさんが更に照れるスタイルですね。
JAMOSA:照れてもらいます(笑)。
ナオト:ポッ。
--(笑)。あと、今年はそれぞれどんなモードで突っ走っていく感じになるんでしょうか?
ナオト:5、6、7月とツアーで全国を廻るんですけど、今まで行ったことのない街でもライブできるようになったので、ちゃんと初めての人に“Say Hello”したいです。あと、4月でデビューから2年になってしまうので、いよいよ“新人”“ルーキー”ということで甘えていた部分がもう通用しなくなってくるんです。なので、着実にもうワンステップ、自分のやりたいことを表現していけるように進んでいけたらいいなと思ってます。
JAMOSA:日本に戻ってきてから歌い始めて約10年になるんです。でも、10年ということはあんまり意識していないんですけど、自分が「良いな」と思ったり、尊敬できる人とこうやって一緒に仕事ができて、ひとつずつ夢を叶えられているので、そこには凄いエネルギーをもらえるんですよ。音楽人としてこういう人たちと接してきたからこその10年だと思うし。これからは逆に「JAMOSAと接したことによって元気になりました」っていうアーティストもいっぱい増えてくれたらいいな。あと、どんどん表現豊かになって、それが「JAMOSAらしい」って評価されたらすごく嬉しい。まぁ10年前は今の自分を想像できていなかったし、本当にステップ・バイ・ステップだと思います。
Interviewer:平賀哲雄
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