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「音楽を売るのは、音楽そのもの」― ザ・ウィークエンド 最新インタビュー
全世界が注目する中、2016年11月にリリースされた、エチオピア人系カナダ人のシンガー、ザ・ウィークエンドの最新作『スターボーイ』。前作同様、米ビルボード・アルバム・チャートで首位デビューを果たし、1週間でストリーミング数4億回と100万枚のセールスを記録するなど、大きな話題となった。デビュー当時から、あまりインタビューを受けないことで知られる彼が、米ビルボード誌の最新号表紙に。最新作はもちろん、ツアーの構想やLAでの暮らしについて明かしてくれた。
【特集】2作連続全米1位獲得!異能かつ異色ながら、ミリオン・ヒットを生み出す天才=ザ・ウィークエンドの軌跡>>>Photo: Getty Images Entertainment
昔はただのインディーR&Bシンガーで、自分を証明しなきゃならなかった
−−活動を開始した当初に比べ、自信がついたと感じる?
ザ・ウィークエンド:元々は、すごくナーヴァスだった、TV番組でパフォーマンスをするときは特に。人があまりよくないパフォーマンスをするのは、大体の場合緊張してるから。歌唱力のおかげで有名なった人は、大概歌がうまい。自分の名が知られることによって、緊張がほぐれると思う。【アメリカン・ミュージック・アワード】や『サタデー・ナイト・ライブ』で、パフォーマンスする時、今はファンがいる。でも、昔はただのインディーR&Bシンガーで、自分を証明しなきゃならなかった。ああいう番組の収録現場って、ピンを落としただけでもその音が聞こえる時があるんだ。最近は、みんなチケットを買って観に来てくれる。俺の名前を叫んでるのが聞こえてくるから、大丈夫だ、ってわかる。俺にうまくやってほしいんだ。
−−どのように変化していくか、悟ったのはいつですか?
ザ・ウィークエンド:(2012年に)初めて【コーチェラ】に出演した後。映像を見て、「もっとうまくやらなきゃ。これが俺の人生なんだから」って言ったんだ。満足できなかった。俺にとってアメリカでの初ライブで、2番目に大きいメイン・ステージに夕暮れ時に出演した。あれは大事だった。他の連中はみんなテント・ステージでプレイしてたから。『トリロジー』は流行ってた。ラジオではかからずに、すべて口コミで広がっていた。
トロントのザ・モッド・クラブでの自分にとって初めてショーを思い返すと、俺はおびえてた。顔を見ればわかるほどに。ステージに上がることが好きになれると全く思っていなかったけど、今はそう思える。病みつきになってるんだ。俺のエージェントたちは、この言葉にさぞ喜ぶだろうな。レーベルは、俺に一生ツアーしてほしくないけど、ツアーのエージェントたちはその反対。俺とレーベルの関係性はパートナーシップという感じで、ディストリビューション契約のようなものなんだ。とはいえ、俺のレーベルであるのは間違いないし、俺のパートナーで、どんな時も俺を支えてくれてる。アーティストとして、俺をすごくリスペクトしてくれてる。俺が作るものはすべて自分のものだ。自分の音楽の権利は、俺が全部持ってる。
The Weeknd: See photos from the Billboard cover shoot https://t.co/ydS7aWZ38k pic.twitter.com/6xFdO5GlDt
— billboard (@billboard) December 15, 2016
−−アルバム制作にはどれぐらいの期間を費やしたのですか?
ザ・ウィークエンド:6か月前にスタートして、4か月間スタジオを丸ごと貸し切った。
−−よりポップな方向性は意図的だったのですか?
ザ・ウィークエンド:そうだな、今となっては「The Hills」がポップだ、って思う人は多いけど、リリース当時の反応は、「何だこれ?」って感じだった。人々にとってポップとは、ラジオで24時間かかってるすべての曲のことなんだ。
『スターボーイ』を、(前作リリース後)可能な限り早くリリースしたかった。これが好きなんだ、と証明するため―音楽を作ることが。ごく自然で、すごくリアルなんだ。多くの思考を巡らせて作った。がむしゃらに、早いペースで、前作の興奮に駆られながら。
−−では、前作とどんな違いがありますか?
ザ・ウィークエンド:これまで歌ったことのない、様々な音域を探した。「Secrets」や「Rockin’」なんかでは、低く歌った。トニ・ブラクストンのように。「Secrets」では、まるで別人のようだ。色んな人に聞かせたけど、みんな俺だってわからない。アルバム全体を(マドンナの)「Vogue」にインスパイアされたものにしようと考えてたぐらいなんだ。フランキー・ナックルズ、シカゴ・ハウスとか。これが「Rockin’」の初期のアイディア。この曲は、早い段階で完成させた曲のひとつだ。
−−ウィークエンドの楽曲には、3つのキャラクターがいますよね―利己的な男(「Often」)、ロマチックだけどガードが堅い男(「Love Me Harder」)、そして共感できる男(「In the Night」)。『スターボーイ』には4つ目のキャラクターがいるとも言えるのではないか、と思うのですが、これは正しい見解でしょうか?
ザ・ウィークエンド:俺が音楽に投影している人物は、ある意味一貫性がないとも言える。曲のヴァイブは、俺が感じていることを表している。どんな関係、どんな友情関係を体験しているのか、人生においての成功と失敗。すべてドキュメントなんだ。メイク・ラブする曲ばっかり歌ってても、しょうがないだろ。とはいえ、俺の好きなアーティストたちは、それについてしか歌わないけど。
初期の作品を作ってた頃、あんなにビッグになると思ってなかった。自分の世界の中で生きてた。ツアーなんてしたくなかったし、ただ音楽を作って、世界に見せるための“日記”を作りたかった。時には、キャラクターを演じることもあった。映画のように捉えるのが好きなんだ―映画監督にとって、どの作品も異なる―俳優から感情、物語まですべて違う。これまでリリースしてきたアルバムには必ずテーマがあったけど、今回は1曲ずつ異なるテーマがあって、独立したシネマチックなものなんだ。
『スターボーイ』のヴァイブは、ヒップホップ・カルチャーの“braggadocio”(自慢したり、誇示するMCスタイル)からきている。ウータン・クランから50セントまで、子供の頃に聴いてた音楽。自慢してるのって、単純にいい響きがするんだ。映画『スカーフェイス』を観た時、ティーンエイジャーだった。もちろん胡散臭かったけど、トニー・モンタナがあんなに銃で撃たれても平気で、何も感じなかったのは、クールだ。
ヒップホップ・カルチャーを取り入れる方法は一つじゃない。「Secrets」のコーラスには、ザ・ロマンティックスの「Talking in Your Sleep」とティアーズ・フォー・フィアーズの「Pale Shelter」をサンプリングしてる。まさにヒップホップ的だ―自分のものにするんだ。書き入れることもできたと思うけど、元の楽曲をサンプリングしたほうが、そのフィーリングがでる。
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音楽を売るのは、音楽そのもの
−−あなたは、わざと自分のイメージを曖昧にすることからスタートし、無料で音楽を配信することで人々の信頼を勝ち取り、その後何年も経ってから表舞台に現れました。
ザ・ウィークエンド:音楽を売るのは、音楽そのものだ。今は、SoundcloudがYouTubeの役割を果たしてる。ブライソン・ティラーとかリル・ウージー・ヴァートとかは、今この瞬間にキャリアが積まれていってる。みんな数字を見てるんだ。曲がどれだけ再生されているかを。
−−新作をどのようにツアーで表現する予定ですか?
ザ・ウィークエンド:今の時代、ライブ・ミュージックにおいては、DJやラッパーがやたら大音量の2トラックをバッグに歌ってるのに対抗しなきゃならない。だから、バンドとして出てくるんだったら、自分たちのサウンドを熟知し、会場の音響についても知らないとダメだ。そして、そいつらと同様にインパクトあるものにする必要がある。
俺にとって環境はとても大切だ。時には、昼間の時間帯にフェスに出演しなきゃならないけど、俺の音楽は昼間には向いてない。夜の音楽なんだ。俺のショーに来たら、まるでオペラか演劇を見るような感覚になってほしい。暗闇は、俺にとって重要なんだ。
今、セット・デザインは、エス・デヴリンが担当してくれている。彼女は、カニエ、ビヨンセ、アデル、U2も手掛けてる。でも彼女の真のパッションは、演劇とオペラなんだ。彼女は他のセット・デザイナーとまったく物の見方が違う。アートなんだ―照明やクレイジーなエフェクトじゃなくて。自分が観ているもの、そして観客もその瞬間の一員だ。とても3次元的だね。カニエの(セイント・パブロ)ツアーを見てみてよ。彼は流れをガラリと変えた。アリーナのショーでは、フロア席を違った方法で捉えようとしてる。このツアーでは、空間にああいう感じの生気を与えたいんだ。
−−尊敬するソングライターは誰ですか?
ザ・ウィークエンド:俺にとって、ビル・ウィザースは少なくともTOP5に入る。彼の(『ライヴ・アット・カーネギー・ホール』)アルバムは、スタジオ・アルバム以上に素晴らしい。パッションの塊なんだ。後は、クロマティックスも好きだ―彼らは「Party Monster」の大きなインスピレーションだった。
−−あなたはトロントやエチオピアなど様々な場所をレぺゼンしています。どのようにアプローチしているのですか?
ザ・ウィークエンド:自分がエチオピア人だと、知ってもらえるようにしてる。音楽に取り入れてるし、歌唱スタイルもすごくエチオピアに影響を受けてる。行ったことないんだけどね。ぜひ故郷へ行って、自分のルーツに触れたい。
−−自分のファンにエチオピアの音楽を勧めるとしたら?
ザ・ウィークエンド:アスター・アウェケは鉄板だね。新作に収録されている「False Alarm」の後半で彼女の歌声が聴ける。彼女の歌声は、人生で聴いた中で最も素晴らしいと思う。あとは、ムラトゥ・アスタトゥケという素晴らしい作曲家がいる。多分エチオピア出身のアーティストで、今一番有名なのは彼だと思う。ジム・ジャームッシュも彼の音楽を起用している。どうにかして彼に会って、一緒に仕事がしたい。マハムッド・アハメッドも最高のシンガーで、トラフン・ゲセセも同じだね。テディ・アフロは、よりポップ・シンガーぽいけど、いい声をしてる。今話したのは俺が成長過程で聴いてたもの。朝起きると、母親がコーヒーを作りながら、それらを聴いてたんだ。今、(エチオピアの言語についての)科目を取り入れてもらおうと、トロント大学に働きかけてるところなんだ。
−−LAでの暮らし、パパラッチなどとも顔を合わせなければならない生活についてはどうですか?
ザ・ウィークエンド:もし常にパパラッチされてるんだから、それはちょっと怪しいと思う。俺が出かける時、たまにはいるけど、どこに行くって世界中に発信するわけじゃないから。何回か撮られたことはあるけど。新しい車がいくつかあって、それに乗りたかったんだけど、大きな間違いだった。ビバリー・ヒルズからハリウッドまでずっと尾行された。イカす車に、昔の髪形で乗るのは難しかった。今?今は楽だよ。帽子を被ればいいだけだから。100%暮らしやすくなった。パパラッチのことは尊敬してるし、それが彼らの仕事だ。特にわだかまりはないよ。幸運なことにも俺の仕事は、ヒットをリリースして、ファンと触れ合うことだ。四六時中、自分の写真が作り出されなくてもいいんだ。
−−ここでの暮らしは好きですか?
ザ・ウィークエンド:あぁ、でもいつも移動してるから。広い住まいを買おうと思ってるんだけど、スタジオか何かが買いたいなとも思ってて。子供も妻もいないし、一人で暮らしてる。大きな家を買っても一人では暮らせない。怖くなると思うんだ。ヒルズのあたりで、それを試みたんだけど、無理ですぐに引っ越した。
Q&A by Sasha Frere-Jones / 2016年12月12日 Billboard.com掲載
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スターボーイ
2016/12/23 RELEASE
UICU-1282 ¥ 2,750(税込)
Disc01
- 01.スターボーイ feat.ダフト・パンク
- 02.パーティー・モンスター
- 03.フォルス・アラーム
- 04.リマインダー
- 05.ロッキン
- 06.シークレッツ
- 07.トゥルー・カラーズ
- 08.スターガール・インタールード feat.ラナ・デル・レイ
- 09.サイドウォークス feat.ケンドリック・ラマー
- 10.シックス・フィート・アンダー
- 11.ラヴ・トゥ・レイ
- 12.ア・ロンリー・ナイト
- 13.アテンション
- 14.オーディナリー・ライフ
- 15.ナッシング・ウィズアウト・ユー
- 16.オール・アイ・ノウ feat.フューチャー
- 17.ダイ・フォー・ユー
- 18.アイ・フィール・イット・カミング feat.ダフト・パンク
- 19.スターボーイ feat.ダフト・パンク (カイゴ・リミックス) (日本盤ボーナス・トラック)
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