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西野カナ 『to LOVE』インタビュー
昨年発表した遠恋ソング『遠くても feat.WISE』で一躍その名を世に広げ、10~20代から圧倒的な支持を得ている西野カナが初登場!
前アルバム『LOVE one.』から約1年。遂に完成したニューアルバム『to LOVE』には、21歳の彼女が感じている“LOVE”に対しての答えが詰まっていた。本作についてはもちろん、恋愛、ファッション、友情などなど……。様々なことを語って頂きました!
自分の好みの音楽を表現した西野カナと、みんなが見ている西野カナ
--先日【Kanayan Tour 2010 ~Spring~】最終公演を拝見したのですが、お客さんとの関係性に特徴のある方だなと思いました。ご自身ではどう捉えていますか?
西野カナ:凄く近いなっていうのはいつも感じていて。ライブだけじゃなくて、ブログでみんなの言葉を見ていても、自分の恋愛を出会いから結末まで話してくれたりとか。「え、そんな私に言ってくれていいの?」って思うくらい。だから、近いっていうのは凄く感じています。
--実際に、西野カナ レンアイドットコムでも恋の話を募集しています。ライブでもお客さんと対話しているような感覚はありますか?
西野カナ:そうですね。シリアスな曲になってくると、生でしか聴いてもらえない部分を聴いて欲しいと思うし。ライブ用に作った曲やみんなと一緒に歌える曲だったら、そこで一緒の時間を共有しているってことが分かりますね。
--詞に関しても自分の実体験だけでなく、友達やお客さんの話を参考にしますか?
西野カナ:みんなの恋愛観をそのまま曲にすることはないんですけど、「こういう曲を書いて欲しい」とか、そういう声は参考にしたいと思っていて。「片想いの曲を書いて欲しい」って言われていた時に書いた曲もあります。
--西野さんはあまり乙女の部分を持っていないそうですが、そういった曲を書くことは難しい?
西野カナ:意外とサバサバとしている部分があるんですけど、女の子って実は外に出さないだけで、どこかメルヘンな所があったりする。そんな気がするんですよ。「白馬の王子様が来ないかなぁ」とかも1回は思ったことあると思うし(笑)。好きな人によって性格が変わったりもすると思う。そういう女の子のコロコロ変わる部分もリアルに表現できたらいいなと思うから、歌の世界観に合わせて自分を変えて、歌を表現したり歌詞を書いたりしています。
--前述の最終公演では、アンコールの時にお客さんが『Best Friend』のサビメロを歌うシーンがありましたよね?
西野カナ:あれは完全にサプライズでプレゼントしてくれたものだから、みんなが一つになってやってくれるっていう気持ちが嬉しかったです。私もそれに対して、凄いパフォーマンスでお返し出来るようになりたいと思っています。
--また、ライブ会場にはChatty~aroma~の洋服が飾ってありましたが、西野さんにとってファッションも重要なポイントになっています。実際、お客さんもお洒落な方が多いですよね?
西野カナ:みんなカンカン帽をかぶってくれたりとか。ステージの衣装もそういう面で見せたい想いがあるから、次のツアーでもどんな衣装を着るのかは大重要になってくる。そこも含めて一緒に楽しめればと思っています。
--では、今注目しているファッションは?
西野カナ:(ニューアルバムの)ジャケット写真で履いている靴のサボとか……マキシ丈のワンピはよく買っています。あとは、ヘアバンドとか。でも、うさみみは付ける勇気がないので腕に巻いたりしています。
--因みに好きな男性のファッションとかあります?
西野カナ:シンプルなのがいいです。特にお洒落じゃなくていい。全然シンプルな、男臭いくらいがいいです。香水とかも付けなくていいし。
--また、西野さんは渡米経験に加え日本民謡を学んでいた経験もあるそうですが、そういった要素がミックスされて独自の歌声に繋がっていますよね。
西野カナ:自分の中ではあまり思わないんですけど、今回のアルバムでロックだったりR&Bっぽいものだったり、色々なジャンルに挑戦していて。歌い方や表現も違うし、そこに合わせて自分も変えていきたいなと思っているので、今までやっていた民謡などがミックスされている事は、役に立っているのかなと思います。
--西野さんにとって歌うという行為は、あるストーリーの風景を描いていく作業と、感情をより分かりやすくダイレクトに伝える作業。どちらに近いですか?
西野カナ:感情の方が多いです、曲的には。その時の自分になるというか、自分が感じてきたことを書くことが多いから、その瞬間の気持ちや自分の姿を忘れずに歌うことを心がけています。
--そんな中、ニューアルバム『to LOVE』が発売されます。今作のコンセプトは?
西野カナ:1stアルバムも“LOVE”がテーマになっていたんですけど、前作をリリースしてから丸々1年が経って、少し成長できたり、恋愛観や価値観が変わった部分もあって。だから、今の21歳の感覚で、“LOVE”に対する答えや表現を詰め込もうっていうのがテーマになっています。
--シングル曲のほとんどをGIORGIO CANCEMIさんが作曲していることもあり、前作よりも世界観が統一されたように感じたのですが?
西野カナ:バリューパックのようにバラエティ豊かな色を出したかったから、シングルというよりはアルバムの曲も含めて、1年の流れを作れればと思っていて。シングル曲は着うた(R)とかでみんな聴いてくれているかもしれないけど、アルバムに入っている曲は、多分全く知らない西野カナだと思う。だからこそアルバムを聴いて欲しいと思います。
もしかしたら、私が好きな音楽もみんな知らないかもしれない。クラブ系やレゲエにヒップホップとか、実はあまり顔に似合わないものが好きなんですよ(笑)。そういう自分の好みの音楽を表現した西野カナと、みんなが見ている西野カナの中で、その振り幅とかを計算しながら作りました。それに、今まで自分が聴いてきたアーティストさん達に曲をお願いをしたり……。今回、コラボさせて頂いているMINMIさんは、もう本当に大好きで「夢が叶った!」って感じです。凄く欲張りになって作れたアルバムでしたね。
--そういえばシングルのカップリング曲って収録されていないですよね。
西野カナ:もちろん、シングルのカップリング曲も聴いて頂きたい曲が沢山あるんですが、せっかくだから新しい曲を聴いて欲しいと思って、今回はシングル曲以外は全てアルバムのオリジナル曲を収録しました。毎回シングルでも3曲入りのアルバムを作るつもりで、曲のバリエーションを持たせて作っているんですが、まだ着うた(R)で表題曲しか知らない人もいっぱいいるだろうし。だけどアルバムだったら聴いてみようって思うかもしれないですよね。
Interviewer:杉岡祐樹&武川春奈
友達ってなんでも越えちゃう存在
--西野さん自身も携帯で音楽を聴きますか?
西野カナ:着うた(R)も利用するけど、私は結構CDを買いに行くタイプ。カップリングの方が気になるんですよね。最初はあまり好きじゃなかったけど、聴いていたら好きになる曲とかもあるじゃないですか。そういう裏情報みたいな所が好きだから、今の世代の人とはちょっと違うかもしれない。私自身、歌詞の表記やジャケット写真にもこだわって作っているから、ぜひCDで見て聴いて欲しいですね。
--アルバムの1曲目は『*Prologue*~What a nice~』になりますが、前作にもPrologue、Epilogueが収録されていましたね。
西野カナ:『to LOVE』は1stアルバムの第2章みたいなものなんです。だから始まりと終わりが一緒なんですけど、中身や答えが違う。第1章は、初恋や一目惚れから始まって失恋で終わる。“LOVE”って恋愛のループをずっと繰り返して答えが出るものなのかな、っていうのが1作目の私の答えなんです。
今回はM-13『You are the one』という曲が入っているんですけど、それが今の私の答えなんです。失恋して寂しいとか切ないとか、そういう細かい心情を一歩越えた所に感じているものがある。同じ事を言っているんだけど前作とは違う、という意味でわざと同じようにしました。
--実際に一目惚れした経験は?
西野カナ:それで凄い好きとかは全然ならないですけど、ドキドキしたり「この人運命かも」みたいな妄想はしますね(笑)。ただ、それはもう自分の中だけですね。詞とか音楽を作る時は、完全に本当のことしか書かなくて、フィクションはない。今までずっとそうしてきたからなのか、自分の中ではそういう風にしか書けないんじゃないかなって思っています。
--また、M-02『Best Friend』は西野さんにとって、とても大切な楽曲だと感じました。
西野カナ:この曲を発売するまでに恋愛の歌を何曲かリリースして、セツナ系と言われることが多かったんですけど、私は辛い恋愛の歌を書こうとする時、その恋愛を消化して整理できていないと書けないんです。
その整理したり消化する段階でずっと側にいてくれたのは「友達」だから、感謝の想いを伝える曲を書きたいと思って。そうしてやっと出来た曲なんですけど、友達にそこまで真剣な曲を書いたことがなかったし、普段なかなか「ありがとう」って伝えることもない。言いたいこともありすぎて、生み出すまでに凄く苦労しました。
--友達には、悩み事を相談したりもするんですか?
西野カナ:します、真っ先に言います。恋愛や仕事、学校のこと、何でも一番最初に相談します。やっぱり普段ずっと一緒にいるから、私がどういう人間なのかも分かってくれているし、恋人以上でもあり、親以上である時もある。友達ってなんでも越えちゃう存在なんだなぁって思います。
--そうした想いは、ライブを通してお客さんにも伝わっていますよね。
西野カナ:ありがとうございます。みんなキラキラした笑顔で見てくれるから、凄くあたたかいなって感じます。でも、さすがに(アンコールで)歌ってくれるとまでは思わなかったけど! ライブやツアーをやると、改めてあたたかい人ばかりだなと思いますね。
--先ほどMINMIさんを大好きだと仰っていましたが、M-03『Summer Girl feat.MINMI』で共演した時は緊張しました?
西野カナ:いや、もう、それは緊張しましたね。お互いにレコーディング当日にアイディアを持ち寄って、MINMIさんが作ったメロディに私が詞を乗せたり。その場で曲を作っていったので、凄く刺激を受けました。
ボーカリストとのコラボも初めてだったんですけど、掛け合いの部分だったり、同じラインをハモリとメインで重なった時の一体感とか。大好きなMINMIさんだからこそ余計に感動するし、鳥肌も立ちました。あと、みんなレコーディングの仕方とか違うじゃないですか? MINMIさん独特のやり方、その感覚やセンスが凄く光っていて、めちゃくちゃカッコよかったです!
--次のM-04『Hey Boy』もそうですが、序盤はノリの良い曲が多いです。
西野カナ:今回のアルバムは一応、春夏秋冬という流れがあって、ここでやっと夏に来たところです。この曲は3年前くらいに作った楽曲で、制作チームも外国の作家さんばっかりだったんですよ。それを日本人のアレンジャーさんが編曲し直して、3年前に書いた歌詞を今の私が歌っている。結構おもしろい事になってます。この抜けた感じは、夏に絶対聴きたいなと思って。リリースも夏だし、海に行く途中とかに聴いてくれたら嬉しいと思ってアルバムに入れました。
--西野さんも夏に出かける時はノリの良い曲を聴きます?
西野カナ:やっぱりアゲ曲ですよね。あと、夏はレゲエを聴きたいです。前まではダンスホールとかブチアゲ系が大好きだったんですけど、最近はラヴァーズとかが好きなんですよ。夏のちょっと蒸し暑い日に聴くと爽やかになったりもするし、空気が一瞬でお洒落に見えたりもするから、夏は特に聴きたくなりますね。
--では、切ない楽曲となったM-05『もっと…』を季節で言うと?
西野カナ:夏の終わりから秋の頭というイメージです。切ない曲をめちゃくちゃ書きたいわけではないんですけどね(笑)。歌詞には自然と、恋愛していて嫌だったことや言えなかったこと、溜めていた想いとかをぶつけている。だからこういう結果になるんですよね。
私自身、喜怒哀楽も激しいし、やっぱり今までの恋愛はめちゃくちゃ若かったなと思う時もあります。『もっと…』の“なんでメールしてくれないの?”っていう歌詞も、大人だったら我慢出来ることかもしれないし、待つことを出来る人だったらこんなこと思わないだろうし。
--一つ一つの詞に対して、本当に素直な感情をぶつけているんですね。
西野カナ:『もっと…』とかM-08『MAYBE』とか、自分の恋愛観を出しすぎちゃっている曲は、リリースする時に「大丈夫かな?」って思うこともあるんです。でもそれを聴いたリスナーの方達が「私もこんなこと思ってた」とか「私だけじゃなかったんだ、カナちゃんも思ってたんだ」みたいなことを言ってくれるから、「あ!みんなもそうなんだ!」みたいな。
大人の方からしたら、「なんでこんなしょうもないこと歌ってるの?」って思うかもしれないけど、意外とこういう小さいことが、どうしようもなく嫌だったり、大事だったりするわけじゃないですか。だからいいのかなと思って、素直にそのまま書いてます。
Interviewer:杉岡祐樹&武川春奈
出会えたことが良かったって思える恋愛をしたんだ!
--そうして自分をさらけ出すことに対して、恥ずかしさは?
西野カナ:全然恥ずかしいとは思っていないんですよ。初めて会った人に自分の恋愛話をベラベラ喋ったりする性格なので(笑)。みんながどう思っているかは分からないけど、ありのままの想いを書いた言葉が響いていることは、返ってくるメッセージで凄く分かったんです。それにリスナーのみんなは、友達でもあるし感情を共有する相手でもある。だから、本当の言葉をなるべくカッコつけずに、そのまま書きたいと思っています。
--M-06『love & smile』には、ヒップホップ的な要素が含まれています。
西野カナ:凄くピースフルな曲を作りたいと思っていて。いつも聴いてくれている“ファンに向けて”だけの曲は作ったことがなかったから、やってみたい事の一つだったんです。ライブに来てくれたみんなへ伝える曲があるといいなと思って。
M-07『このままで』も一見、恋人との時間だけのように見えるんですけど、当たり前のようにあってくれる景色とか、地元のキレイな川とか、お母さんとか。そういう大切な物や人に対する想いを、恋人に例えて書いた曲ですね。
--“百年先も ずっと永遠に変わらないように”という詞がありますが、結婚願望は?
西野カナ:もちろんあります! 旦那さんにするなら、とにかく心が広い人、話しをよく聞いてくれる人がいいです。あ、でもあんまり喋らない人も嫌ですね(笑)。何を考えているか分からない人は、ちょっと苦手かも。
--なるほど(笑)。また、『MAYBE』は嫉妬がひとつのテーマになっていますが、嫉妬はする方ですか?
西野カナ:結構ヤキモチ妬きですね。この曲だったら、彼の過去まで束縛したいというか……、まあ無理なんですけど。「気になって仕方ない。でも聞けない」みたいな。女の子って本当に矛盾していて、おもしろいなぁと思います。
--因みに、恋人の携帯電話を見た経験とかもあります?
西野カナ:見ちゃいました……。隠しきれずに言いました、「見ちゃったんだけど、誰これ?」みたいな。何もなかったら黙ってますけど(笑)。
--ですよね(笑)。さらに、続くM-09『WRONG』はBACHLOGICさんが、『Come On Yes Yes Oh Yeah!!』はDJ Massさんが作曲に参加しています。
西野カナ:『WRONG』はBACHLOGICさんっぽくない曲かもしれないんですけど、ロックナンバーも入れたかったので、こういう曲調になりました。 DJ Massさんと作る曲はニュアンスだったり、その時のノリとかでコロコロ変わっちゃうんです。だから歌っていて気持ちいいとか、そういう感覚で『Come On Yes Yes Oh Yeah!!』を制作しました。長い時間一緒にいる分、私の趣味だったり好きな音楽も知ってくれているので、かなり自分の趣味っぽい曲調になっています。
--次のM-11『Dear…』は遠距離恋愛がモチーフになっている曲です。個人的な話になりますが、私自身もプチ遠距離恋愛中だったりするんですよ。
西野カナ:そうなんですか!?
--だから“もしも二人返る場所が同じだったら”“友達のノロケ話でセツナクなって”など、共感できる言葉が沢山ありました。
西野カナ:そうですよねぇ、私もそう思いました(しみじみ)。私も高校生の時に遠距離恋愛をしていて、それが自分の中で一番の大恋愛だったんです。昨年発表した『遠くても feat.WISE』もその恋愛を元に書いた曲で、第2章という感じで『Dear…』を書きました。この1年の間に恋愛観も少し変わって、自分なりに遠距離恋愛の解釈が出来たので。
--そして終盤を締め括るM-12『会いたくて 会いたくて』からM-13『You are the one』の流れは、壮大なスケールとなりました。
西野カナ:1枚目のアルバムは失恋で終わっているんですけど、今回は失恋ソング『会いたくて 会いたくて』の後にもう1曲あって。私自身、失恋をした時に“悲しい”よりも、“その人に出会えたことが良かったって思えるくらいの恋愛をしたんだ私は!”って考えられるようになった。『You are the one』にはそんな想いを込めたんです。恋愛だけじゃなくて、昔の友達や過ぎてしまった時間に対する想い。聴く人によって何通りも意味のある、何色にも変わってくる1曲だと思います。
--では、『to LOVE』は西野さんにとってどんなアルバムになりましたか?
西野カナ:結局“LOVE”なんですよね。愛するためにとか愛することとか。それを21歳の私なりにまとめた作品になっています。とりあえず頭から順番に聴いて欲しいですね! そこにもこだわって作ったから、1回それで聴いてみて欲しい。あと、遊びに出かけたり、楽しいことや思い出の1日のBGMとかにして聴いてもらえると嬉しいです!
Interviewer:杉岡祐樹&武川春奈
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