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DJプレミア 来日記念特集 ~カリスマDJがライブ・バンドと共に見据えるビジョンとは~

DJ Premier

 ニュースクール時代以降、シーンを牽引してきたカリスマ、DJプレミア。90年代、今は亡きグールーとのユニット、ギャング・スターで一時代を築いたプリモは、プロデューサーとしてジェルー・ザ・ダマジャ、グループホーム、ナズ、ノトーリアス・B.I.G.やジェイ・Zなど多くのアーティストの楽曲を手掛け今なお数多くの傑作を発表。2015年の話題作『コンプトン』ではドクター・ドレーと初のコラボレーションが実現した。自身が初めて全面プロデュースを手掛ける女性シンガー、トーリー・ウルフ(ToriiWolf)をはじめ、ワールドツアーをこなした強力バンドとともに贈る、ヒット曲の数々を交えたレジェンドの貴重なバンド・セットが再びビルボードライブに戻ってくる。そんなプリモの昨年の来日公演から現在までの活躍ぶりを振り返ってみよう。

DJプレミアの更なるマイルストーン

 DJプレミアはいつだってカリスマであり、彼の名がクレジットされるということは祝福を意味する。だが、ここ最近のプリモのクリエイティヴィティは目を瞠るものがある。この3月に50歳を迎えた彼が、すでに輝かしいキャリアに、さらなるマイルストーンを打ち立てようとしているのではないか。まさにそんな折に、DJプレミアが日本に戻ってくる。

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 2014年にはロイス・ダ・ファイヴ・ナインとのユニット=プライム(PRhyme)を結成し、全編でエイドリアン・ヤング作品をサンプリングするという試みに挑戦。昨年は、ドクター・ドレーの『Compton』で初めてドレーと組んだことも話題になった。このドレーとのコラボ「Animals」は、間違いなく2016年を代表する作品のひとつである最新作『Malibu』をリリースし、ドレーのAftermath入りも話題のアンダーソン・パークとのコラボレーションであることもトピックだろう。また今年1月には、VH1で放送されたヒップホップ・ドラマ映画『The Breaks』の音楽も担当している。

ヒップホップ・クラシックに吹き込まれる新たな風

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▲DJ Premier & The BADDER 「BPATTER」

 キャリア初のソロ・アルバムを筆頭に、プライムの新作、ナズとのコラボ作など、待たれているプロジェクトは数多くあるが、ここ数年でアナウンスされた中でも驚かされたのは、バンド結成ではないだろうか。昨年1月に、ビルボードライブでの来日公演で初めて実現した“DJプレミアとライブ・バンドの共演”ステージをきっかけに、彼はDJプレミア&ザ・バッダー(The BADDER)を結成。昨年9月に発表されたドープなデビュー曲「BPATTER」はたちまち話題となった。

 昨年1月の来日公演は、米Blue Note初の日本人契約アーティストとしても知られる黒田卓也(トランペット)、ERIMAJ(NYジャズ・シーンの最前線で活躍するヒップホップ世代ミュージシャンによる先鋭グループ)の一員であり、またホセ・ジェイムズやJUJUなどでのバックで黒田と組むことが多いコーリー・キング(トロンボーン)に、タリブ・クウェリやメラニー・フィオナからビッグ・ユキらも参加したリーダー作『Lifetronics』を昨年リリースしたブレディ・ワット(ベース)、そしてビッグ・ユキやスモーク・DZAらの作品・公演で叩いているレニー・リース(ドラム)という編成。あの唯一無二のターンテーブルの指揮の下、バンドの生演奏が生み出すヴァイブは、「Nas Is Like」、「Da Bichez」、「Next Level (Premier Remix)」といったプリモ印の名曲を中心に、ヒップホップ・クラシックに新たな命を吹き込んでいく。DJミックスのように切れ目無く演奏され、グルーヴを貫くさまはさながらゴーゴー・ファンクのようでもあり、ヒップホップをソウルやファンクのルーツに還元し、それをまた再構築するかのような、興味深く、そして何より興奮を隠せないライブ・ステージだったことを記憶している。

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▲DJ Premier and His Live Band (Sneak Peak)

 ブレディ・ワットがRevive Musicに明かしたところによると、「DJプレミアとライブ・バンドの共演」自体がそもそもはプロモーターからの提案であり、そこでメンバーとしてプロモーター側から推薦されたのが黒田卓也だったそうだが、この日本公演で手応えを得たのだろう。同年6月にはこのメンバーで欧州ツアーを敢行。この時プリモは、「ずっとバンドをやりたいと思っていた」と想いを語っており、これがDJプレミア&ザ・バッダーに結実したわけだ。

プリモが見据えるビジョン

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▲DJ PREMIER & THE BADDER live @ Locus Festival

 「BPATTER」発表の際には、スケジュール上の都合だろうか、トロンボーンはコーリー・キングから、チャック・ブラウンやミュージック・ソウルチャイルド作品などに参加してきたマーク・ウィリアムズに変更。今年9月に行われる来日公演では、さらにトランペットが黒田卓也から、ジョナサン・パウエルに替わっている。いまだバッダーのコンセプトについて具体的なことは詳しく語られたことがないゆえ、推測するしかないが、まだまだ始まったプロジェクトであるし、そもそもドラムは当初、ブレディ・ワットの推薦でダルー・ジョーンズに声をかけていたものの、スケジュール上実現しなかった、という経緯もある。

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▲2016 NBA Countdown Show Open

顔ぶれに変動があるとはいえ、いずれもブルックリンを拠点に活躍する気鋭ミュージシャンであるというのは共通しており、昨年の欧州ツアーやNYブルックリン公演を経て、今年7月にはイタリアの音楽フェスに出演するなどライブを重ね、さらに“バンド”として進化した姿を見せてくれることだろう。また、今年1月にはロイス・ダ・ファイヴ・ナインも参加した新曲「Rockin With The Best」を発表(NBAの番組に提供)しているが、EPもレコーディング中だ。話題になること間違いない、このDJプレミア&ザ・バッダーのEPが、一体どういうものになるのか。9月の公演でこれをいち早く感じ取ることができるはずだ。

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▲Torii Wolf 「Shadows Crawl」

 そして今回の公演には、7月のイタリアの音楽フェス出演にも同行した女性シンガー、トーリー・ウルフも参加する。サイドを大胆に刈り上げたヘアスタイルのマニッシュな姿が印象的な彼女は、DJプレミアが初めて女性シンガーを全面的にプロデュースするということで話題の若手。年内には『Flow Riiot』なるアルバムがリリースされる予定で、ここ日本でも彼女のお披露目のステージが用意されるはず。プリモがユナに提供した「Places To Go」も、元はトーリー・ウルフ用に制作したトラックだったと聞く。彼がそこまで肩入れする新人のパフォーマンス、そしてライブ・バンドとの共演。DJプレミア with スペシャル・バンド公演は、彼がいま見据えているビジョンを目と耳で味わえる、まさに特別な夜になることだろう。

Text: 末崎 裕之

ギャング・スター「フル・クリップ」

フル・クリップ

2009/03/11 RELEASE
TOCP-53656/7 ¥ 2,828(税込)

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Disc01
  1. 01.INTRO
  2. 02.FULL CLIP
  3. 03.DISCIPLINE(feat.Total)
  4. 04.WORDS I MANIFEST(Remix)
  5. 05.EX GIRL TO NEXT GIRL
  6. 06.I’M THE MAN(feat.Jeru The Damaja and Lil Dap)
  7. 07.MASS APPEAL
  8. 08.JAZZ THING(Video Mix)
  9. 09.THE MILITIA(feat.Big Shug and Freddie Foxxx)
  10. 10.TONZ ‘O’ GUNZ
  11. 11.ROYALTY(feat.K-Ci & JoJo)
  12. 12.WHO’S GONNA TAKE THE WEIGHT
  13. 13.YOU KNOW MY STEEZ
  14. 14.ABOVE THE CLOUDS(feat.Inspectah Deck)
  15. 15.JUST TO GET A REP
  16. 16.DWYCK(faet.Nice & Smooth)

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