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【FUJI ROCK FESTIVAL '16】総力レポート~ライブ・フォト&レポ、360度写真、インスタグラムでフジロックを振り返る
新潟県・苗場スキー場にて2016年7月22日~24日にかけて開催された国内最大級の野外音楽フェスティヴァル【FUJI ROCK FESTIVAL】。20回目を迎えた今年のフジロックには、前夜祭を含め125,000人が来場し、総延べ入場者数200万人を突破した。
20周年ということもあり、ヘッドライナーを務めたシガー・ロス、ベック、レッチリらフジロックに所縁のあるアーティストをはじめ、ウィルコ、トラヴィスらの良質な音楽を紡ぐ中堅、ジェイムス・ブレイク、バトルス、カマシ・ワシントンなどの気鋭アーティストやトロイ・シヴァン、ジャック・ガラット、ラプスリーらの新世代ポップスターなど話題のアーティストが多数出演し、国内外の音楽ファンを唸らせた。Billboard JAPANでは、当日の白熱のライブ&フォト・レポートに加え、360度写真やInstagramでフェスの模様を徹底的に取材。今回特別にFM802のDJも参加してくれた総力レポートをお届けする。
DAY 1 l 2016.07.22 FRIDAY
BOREDOMS / LUCKY TAPES / 奇妙礼太郎 / BIFFY CLYRO / LÅPSLEY / JAKE BUGG / COURTNEY BARNETT / THE INTERNET / THE BAWDIES / JAMES BLAKE / The Birthday / SIGUR RÓS / DISCLOSURE / D.A.N.12:10~ @ FIELD OF HEAVEN
初日、<フィールド・オブ・ヘブン>のトップバッターは奇妙礼太郎。ソロの弾き語りのイメージの強い彼だが、バンドとしての初のステージが「今日このバンドの初めてのライブです。ひとつよろしく~」というMCの様に本当に初めてなようだ。メンバー全員白いフォーマルな出で立ちで放たれる泥臭いR&Rと、むき出しのエモーショナルな声で歌う新曲2曲は、ストレートに晴れたヘブンに染み渡った。ちょっとした「らしい」下ネタMCを挟み、切ない晩夏の思い出のような「最終電車」という曲を歌い上げ、既に配信されているソロ第一弾シングル「七色LADY」をバンドセットで披露し、最後はゲストに松井洋介が登場し、ブルースハープを奏でたり、歌ったりしながら、ヘブンらしいハッピーなグルーヴを生み出していた。奇妙礼太郎は9月に初のビルボードライブ公演が東阪で決定している、どんな新しい奇妙くんを見せてくれるのか今から楽しみである。
15:50~ @ RED MARQUEE
最も脂ののった状態で、ほぼ完璧なセットを披露してくれたコートニー嬢。
着用するバンドTの秀逸なセンスも巷で話題の彼女だが、この日はニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズの“BAD SEED”と書かれた黒のTシャツ姿で登場。序盤の「Dead Fox」からタイトなアンサンブルで、観客をグイグイと引き込んでいく。左利きギタリストでありながら、繊細なフィンガーピッキングから荒々しいディストーション・ギターまで様々なスタイルを自由自在に弾きこなし、どの曲にもストイックに、全力投球で挑み、ラストの「Nobody Really Cares If You Don't Go to the Party」まで傾れこむ。ライブ中ほぼMCをしなかったものの、最後に「呼んでくれてありがとう。すごく光栄だよ。」とハニカミながら話す姿には、心を撃ち抜かれた人も多かったはず。正真正銘のインディー・ロック界の才媛、ネクスト・ステージではどんな姿を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。
16:30~ @ WHITE STAGE
夕刻の<ホワイト・ステージ>には、今年の初来日公演もSOLD OUTしたジ・インターネットが登場するとあってかなりの観客が押し寄せていた。1曲目「Dontcha」からシド・ザ・キッドが華奢ながら存在感を感じさせるパフォーマンスで極上のメロウ・ソウル・サウンドを披露。そのまま最新作『エゴ・デス』より「Get Away」につなぐと大歓声が起こると、コール&レスポンスしながら会場のヴォルテージを更にあげていく。中盤、機材トラブルに見舞われるも、バンドメンバーの楽しそうな雰囲気は変わらず、新旧の曲を絶妙に織り交ぜ終盤へと展開し、すっかり会場の雰囲気を自分達のものにしていた。終止観客との距離を近くとりながらのMCやいちいちカッコいいシドの仕草と妖艶なヴォーカルが印象的で、彼らの幅広い音楽性が存分に散りばめられたライブだった。単独公演も是非期待したい。
18:50~ @ GREEN STAGE
まだ日の落ちてない<グリーン・ステージ>にジェイムス・ブレイクが登場。「Life Round Here」のイントロが演奏されると悲鳴に似た歓声が起こるがその声をかき消すように深い低音とエモーショナルな歌が鳴り響く。欲を言えば、もう少し暗い時間に観たかったと思っていた。「こんばんわ、日本に来れて嬉しいです。」と日本語で挨拶し最新アルバムより「Timeless」を演奏する。一音一音がズシリと全身に響く重低音と、美しいヴォーカルと相まって塊になって迫ってくる、気がつけば日も落ち、叙情的な雰囲気にハマる暗さになり、彼をこの時間に置いた意図を理解した。観る度に進化する彼のライブだが、今回歌唱力が次元を超えて素晴らしかった。またラストの「The Wilhelm Scream」での美しいノイズに心を掴まれた人も多かったのではないだろうか。まだまだ進化する彼の今後が楽しみだ。
21:00~ @ GREEN STAGE
2005年<ホワイト・ステージ>での伝説的なステージから彼らがヘッドライナーとしてカムバックするのをどれだけ待ったことか。フジの幻想的な雰囲気を音楽で体現するバンドと言っても過言ではない、シガー・ロス。この日のパフォーマンスは、そんな記念すべき日にふさわしいバンドの集大成となるステージだった。
「Óveður」のイントロとともにどよめきが起こると、やや肌寒い夜空の下、ヨンシーの無垢な歌声が木霊する。冒頭の格子の演出、宇宙的なLEDプロジェクション、ドリーミーなスモーク、そして目を見張るようなライティングまで、すべてがシネマティックで堂々たるスケール。哀愁漂うゲオルグのベースラインとオッリの凄まじいドラミングの緩急なコントラストがスリリングな「Ný Batterí」、ヨンシーの伸びのある甘美なファルセットに息をのんだ祝賀的賛美「Festival」、ゲオルグがドラムスティックを用いてベースを演奏する、どこかオリエンタルでマントラ的な雰囲気が漂う「Hafsól」など、新旧バランスのとれたセットリストを展開。そして悲痛な叫びとともにヨンシーがボウを投げ捨て、まるで雪崩の如く音が溢れ出したラストの「Popplagið」は圧巻の一言だった。
鳴り止まない拍手と歓声に応え、3人は2度もステージへ登場し深々とお辞儀をし、満足そうな笑みを見せる。「“Takk”シガー・ロス」-美しいという言葉だけでは揶揄しきれない、感動的で高尚なパフォーマンスだった。
23:30~ @ RED MARQUEE PLANET GROOVE
昨年はルーキーに出演し、今年は深夜の<レッド・マーキー>のPLANET GROOVEのオープニングに抜擢されたD.A.N.。スタート前より既にレッドには溢れんばかりの観客が詰めかけていた。小林うてなをサポートに従え、3人が登場すると歓声があがり「Zidane」でライブはスタートすると、オーディエンスは思い思いに身体を揺らしフロアの空気は一気に変化した。「Ghana」ではバックのビジョンにはメンバーとシンクロしたアニメーションが映し出されステージを盛り上げる。心地よいシンセとキック、ベース音とまるで楽器のような伸びのある高音のヴォーカルが合わさり浮遊感あるクラブサウンドに会場は完全にダンスフロアと化していく。まだ結成2年ほどのバンドとは思えない円熟のパフォーマンスと曲間で述べる感謝の言葉が印象的だった。今後の彼らの活動には目が離せない。
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '16】2016年7月22日(金)、23日(土)、24日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
関連リンク
DAY 2 l 2016.07.23 SATURDAY
Homecomings / avengers in sci-fi / TOM ODELL / VANT / ROVO / 在日ファンク / TRAVIS / LOOK PARK / WILCO / BECK / FRF 20th SPECIAL G&G Miller Orchestra / SQUAREPUSHER10:20~ @ RED MARQUEE
Text: FM802 DJ塚本翔大 / Photo: Ayako Akune
7月23日午前10時20分。京都のバンドHomecomingsを観るために、朝一番から<レッド・マーキー>に大勢のフジロッカーが集まった。早速、「Don't Worry Boys」の軽快なリフが聴こえてくると、観客は弾むように身体を揺らし始めた。女3人・男1人という異色の4人組がつくる音は、キラキラしていながらもどこか泥臭いロックのようで、心がキュッとなるポイントを突いてくる。後半、「HURTS」が演奏された時、大勢が両手を上げて彼女達の音を浴びていた。
普段のように畳野彩加(vo, g)と福富優樹(g)による同級生感丸出し(笑)のMCはなく、曲の合間に畳野が一言喋るのみ。5000人規模の<レッド・マーキー>に楽曲だけで勝負をしに来たのだ。もちろんHomecomingsの完全勝利で幕を閉じた。
11:50~ @ RED MARQUEE
2日目の<レッド・マーキー>、トップバッターHomecomingsのシンプルなセットと対象的に、ステージに着々と組まれる数々のエフェクター、07年のルーキー出演からなんと9年を経てavengers in sci-fiが登場。今年4月にリリースした最新アルバム『Dune』より挨拶代わりに「Departure」で幕をあけた。今年もレッドには多くのバンドがエレクトロや同期を用いた楽曲で出演していたが、アベンズはすでに数年前からその領域に手をかけていた。「ルーキーステージ以来、9年ぶりなんです。よくも覚えてくれていたなと、ありがとう。」と随所に感謝の言葉を交えながら、ベックのリフを混ぜたりと楽しそうにプレイしていたのが印象的だ。「夏っぽい曲を」と、懐かしい「Sonic Fireworks」のイントロが流れると会場は大歓声に包まれ、9年ぶりのアベンズのフジのステージは「Vapor Trail」で幕を閉じた。
13:10~ @ WHITE STAGE
日本ではほぼ無名だが、初来日ながら<ホワイト・ステージ>に抜擢されたことを受け、早耳リスナーが多数集結。1曲目の「The Answer」のけだるいギターラインから一気に盛り上げ、グランジーな「Karma Seeker」や疾走感溢れる「Parking Lot」などの耳馴染みのいい、90sのUS&UKインディー・ロックのいいとこどりなナンバーを立て続けにプレイし、観客を沸かせる。アイドルさながらな端正なルックスで女子の視線を集めていたフロントマンのマッティーのテレキャスとギタリスト、ヘンリーのジャズマスターの絡み方もベタだけど最高。「DO YOU KNOW ME?」のラストで天高く投げたギターをマッティーがナイスキャッチして、ライブは終了。「今日は俺たちがこれまで演奏したライブで一番最高だ!」と、バンド自身も初来日ステージの手ごたえを感じたよう。とにかくフル・アルバムの完成が楽しみでならない。
14:00~ @ FIELD OF HEAVEN
「フジロック20周年おめでとうございます。ROVOも結成20周年です」という挨拶から、満員の<フィールド・オブ・ヘブン>はROVOの「BATIS」からライブがスタート。シンセとヴァイオリンが音像を作りあげ、ギター、ベースがツインドラムのリズムに合わさり、真っ昼間の暑い日差しを忘れ、宇宙空間に連れて行ってくれる。この日のステージは、緩急をつけながら徐々に盛り上げていく、20年という時間を共に歩んで来たからこそ、フジロックを熟知したステージングだった。1曲ごとにオーディエンスからは歓声が起こり、徐々に会場全体が渦になり、ステージに巻き込まれて行く。ラストは「SINO DUB」の壮絶なプレイで最高潮に達し、ヘブン全体が多幸感に包まれた。改めてROVOはヘブンに最高に合うなぁというのを、手を挙げたお客様を見ながら実感した一時間だった。
15:30~ @ GREEN STAGE
観るものすべてを笑顔にしてくれる、そんな不思議なパワーを持つバンド―トラヴィス。
この日はフロントマンであるフランの誕生日ということもあり、ファンの熱量も半端ない。「HAPPY BIRTHDAY FRAN」と書かれたサイン、スコットランドの旗や花など持った熱心なファンの想いに応えるごとく、中盤の「Where You Stand」ではフランがバースデー・ハットを被り、肩車されながら観客エリアへ突入、ややぎこちなくクラウド・サーフィンする一幕も。終盤は、フランによる貴重なアコギ・ソロでの「Flowers In The Window」に始まり、ユーモラスな振り付けとともに<グリーン・ステージ>が一つとなった「Magnificent Time」、そして「Why Does It Always Rain On Me?」の大シングアロングで畳み掛ける。この上ない幸福感に包まれた、バンド結成20周年、そしてフジロック20周年にふさわしいセレブレーションとなった。
17:20~ @ GREEN STAGE
限られた時間の中、アメリカの“グッド・ミュージック”を惜しみなく届けてくれたウィルコ。
前半は、昨年リリースの『スター・ウォーズ』からのナンバーで盛り上げ、ここフジでいち早く披露された最新作『Schmilco』収録の新曲「Locator」は、まさかのダブル・ベース。昨年の突如配信リリースから1年足らずでの新作発表といい、最近やたら攻めまくりだし、その尽きることのない創作意欲には脱帽させられる。そんな良好なバンドの状況はライブにも表れていて、轟音シャワーとともにお決まりの“アレ”がある「Via Chicago」など“キチンと遊ぶ”が徹底されている。佳境に入り、「Heavy Metal Drummer」〜「I'm the Man Who Loves You」と名曲を立て続けに披露、フィナーレを飾ったのはネルス(今年還暦)の白熱のギタープレイに大喝采が沸き起こった「Impossible Germany」。決して派手ではないが、気骨の精神、一つ一つの楽曲のクオリティの高さと才能豊かな各メンバーの鉄壁のミュージシャンシップが、夕暮れの苗場にもたらした昂揚感は格別なものだった。
19:30~ @ GREEN STAGE
『モーニング・フェイズ』、『モダン・ギルト』と近年はややメロウな作品をリリースしていたこともあり、どんなステージになるのか楽しみだったが、エンターテインメント性の高い、ハイエネルギーなステージでヘッドライナーの貫禄をみせつけたベック。
のっけから「Devil's Haircut」や「Loser」など立て続けにヒット曲を投下し、幾何学模様のサイケなプロジェクションなどフェス仕様のセットで<グリーン・ステージ>を巨大なダンスフロアへと変えていき、中盤「Lost Cause」や「Everybody's Got To Learn Sometime」(涙)とスロウなナンバーでクールダウンすると、「Sexx Laws」や「E-Pro」でシングアロングを煽り、アンコールでピンクのドット柄シャツ&白スーツに着替えて登場すると、観客のヴォルテージも最高潮に。「Think I’m In Love」ではドナ・サマーをさりげなく、「Where It's At」の間奏ではボウイ、プリンスやクラフトワークのカヴァーを盛り込むあたりも、やはりライブの盛り上げ方を熟知したベテランならではの遊び心。おじちゃんになって、ダンスに若干キレがなくなっている、なんて声も聞かれるけど、バナナシェイカーを振る姿さえも様になってました。ライブの内容に合わせて、ジェイソン・フォークナー、ロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.、ジョーイ・ワロンカーらの所縁ある往年のプレーヤーたちをバンドに起用していたのも大納得。唯一残念だったのは、新曲「WOW」が披露されなかったこと。今秋の新作リリースとともに、近い来日での披露を期待したい。
22:10~ @ WHITE STAGE
上下4面のスクリーンが設置されたステージに、自らもスクリーンになるべくフェンシング選手の様な全身真っ白のボディスーツを身にまとったスクエアプッシャーこと、トム・ジェンキンスが現れると、超満員の客席から歓声が上がり、1曲目「Stor Eiglass」で期待通りの四角い轟音からライブが始まった。シンセの美メロにのせた、『えげつない音圧』と猛烈な速さで放たれるキック音が暴力的に聴覚を襲い、その音に完璧にリンクした映像に加え、自らもスクリーンとなり映像を投影し、瞬きすら許されず、異次元空間に連れて行かれる様な感覚に視覚を奪われ、あちこちから奇声があがり、終止観客を圧倒し続けた。アンコールではマスクを脱ぎベースを持ち、「Hello Meow」 「Tetra Sync」を演奏し、チルっぽい雰囲気の中、観客へペコリと頭を下げ、圧巻のパフォーマンスが終了した。
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '16】2016年7月22日(金)、23日(土)、24日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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DAY 3 l 2016.07.24 SUNDAY
fox capture plan / dCprG / DEAFHEAVEN / TROYE SIVAN / SOIL&”PIMP”SESSIONS / LEON BRIDGES / ROBERT GLASPER EXPERIMENT / JACK GARRATT / BABYMETAL / YEARS & YEARS / KAMASI WASHINGTON / RED HOT CHILI PEPPERS / BATTLES / 電気グルーヴ11:00~ @ FIELD OF HEAVEN
Photo: Kayo Sekiguchi
フジロック3日目の<フィールド・オブ・ヘブン>は晴天!そんな天気に誘われて、沢山のオーディエンスが集まってくる。それぞれ違う個性を持つバンドで活動する3人が集まり、ジャズピアノトリオのfox capture planの登場だ。意外にもフジロック初出演という彼ら、「フジロック20周年おめでとうございます!」と1曲目「beyond the beyond」からライブが始まると繊細かつ大胆な演奏が大自然の中に鳴り響き、朝のヘブンにピッタリの彼らの爽やかさな曲に皆一様に自然と身体を揺らしていた。「衝動の粒子」「アタック・オン・フォックス」「疾走する閃光」などの緩急をつけたセットリストに歓声が上がり、終盤fox仕様にアレンジされたアンダーワールドの「ボーン・スリッピー」のカヴァーでヘブン中の観客が湧かせ、そのまま怒濤のラストの「RISING」まで突っ走り、全ての観客を踊らせ、ヘブンの熱は最高潮に達して演奏を締めくくった。fox capture planは9月にビルボードライブ大阪にて盟友でもある京都のインストバンドjizueとのコラボレーションステージに出演する。
14:00~ @ RED MARQUEE
黄色い声援が飛び交う中、白シャツ&ドット柄の黒パンツ、そしてトレードマークのネイルとともに颯爽と登場するとバウンシーなベース音と哀愁漂うピアノの音色とともに「Bite」でライブがスタート。この手のポップ・アーティストに多い、トラックショーを予想していたら、どの曲もライブならではのアレンジが効いていて生音重視の本格派志向なのにまず驚かさせられる。そして、華奢なフレームからは想像できない激しいダンスで観客を煽りつつも、ブレない芯のしっかりとしたヴォーカルで表現豊かに楽曲を歌いあげていく。「Heaven」の冒頭では、カミングアウトする前に抱えていた不安について赤裸々に語り、会場を一気にインティメイトな空気に。その抜群のルックスもさることながら、俳優、YouTuberとして培われてきた、カリスマに満ちた中性的なオーラには観るものすべてを惹きこむ力がある。色々な意味で期待を大きく裏切ってくれた新鮮なライブだった。
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17:50~ @ RED MARQUEE
新人とは思えない圧巻のステージで<レッド・マーキー>に新たな伝説を作ってくれたジャック・ガラット。
ギター、シンセ、ドラム、キーボード、パッドなどを1人で操るものの決して雑にならず、情感にあふれたソウルフルなヴォーカルともに、文句のつけようのない完成度の高さを始終保っていたし、グラストなどを一人でこなしてきていることもあり、演奏中の立ち振る舞いからは貫禄さえも感じられる。最新UKミュージック・シーンを凝縮したと言っても過言ではないポテンシャルは観客にもダイレクトに伝わっていて、感極まったファンからの「ジャック~!」コールや大声援は、本人も思わず笑ってしまうほどの熱量。クレイグ・デイヴィッドの「7 Days」とジャスティン・ティンバーレイクの「Señorita」の斜め上をいく、マッシュアップも絶妙だった。極めつけは、宙に投げたドラムスティックのキャッチに失敗し、シンバルにあたってしまった際にそこから即興でフレーズ弾き始める柔軟性とチャーミングさが伺えた一幕。単独での再来日熱烈希望!
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18:10~ @ WHITE STAGE
これ以上ないくらいの最高のフジロックデビューを飾ったステージだった。
出演決定するだけでこれほど話題になるアーティストも久しぶりだったのではないだろうか?巻き起こした賛否両論の行き着く先は当日の<ホワイト・ステージ>のオーディエンスの入りっぷりが証明していた。熱狂的なファンと、「移動中に横目で見るか」といった様子のフジロッカーまでぎっしりだ。ステージがスタートしてからは、BABYMETAL3人と、神バンドによるパフォーマンス、凶悪かつキュートなサウンド、ファンが先導して作り出す巨大なサークルピットに初見のフジロッカーは圧倒されっぱなしだ。筆者はスケジュールの都合上、ステージ最前から後方に移動しながらステージを観た為、ファン濃度が薄まっていく雰囲気を感じたが、熱気は薄まることがなかった。
そして、最も多く聞こえてくる声が「歌うめぇ…」だった。ワールドツアーで鍛え上げられたSU-METALのハイトーンボーカルは苗場全体に響くように際立っていた。1曲目「BABYMETAL DEATH」からラストの「Road of Resistance」まで決して長くはない持ち時間だったが、一気に駆け抜けた彼女たちは確実にフジロッカーたちを虜にしていた。
20:00~ @ FIELD OF HEAVEN
最終日、<フィールド・オブ・ヘブン>のトリを飾るのは、カマシ・ワシントン。ステージには総勢8名が登場し、「ハロー!フジロック!!」と2ドラムが叩き出しトランペットとカマシのサックスがブロウすると、全身にビリビリと響く。バックのウッドベースと2ドラムの上を無尽にブロウするトランペットのアドリブを嬉しそうに見守るカマシは神々しくも感じた。縦横無尽のアドリブ、スペシャルゲストの父リッキーのスピリチュアルに美しく響き渡るフルート、パトリスのウィスパーボイス、重厚なマイルスのベース、トニーと、ロナルドの二人のドラムス、マライアン・ポーターのファンキーに、時にソウルフルに、そしてPファンクなグルーヴを撒き散らすキーボード、そこにカマシの極太の音な渾身ブロウが加わり、異次元のグルーヴがうまれる。しかし、観客にきっちりと寄り添った、ジャズがよくわからない人にでも楽しめるそんな圧巻のパフォーマンスだった。こんなライブが観れるのもフジロックの楽しみの一つだ。カマシ・ワシントンは12月に来日しビルボードライブに東阪出演する。見逃した人はこの機会に彼らのライブ力を生で感じて欲しい。
21:00~ @ GREEN STAGE
フジロック20周年最終日のヘッドライナーはやはりレッチリで間違いない!最高だった!でも今年のフジロックで一番のステージだった?と聞かれれてしまうと、首を横に振ってしまうだろう。正直ベースで申し上げますと…ちょっと期待をし過ぎていたかもしれない。けど、それに応えてくれるものだと思っていた。
実際にフリーとジョシュのインプロから繋がるイントロに鳥肌が立つ瞬間は何度もあったし、彼らが<グリーン・ステージ>に立って「ギヴ・イット・アウェイ」をプレイしただけで感動的だった。では、ハイテンションのままフィニッシュまで辿り着けなかったのは何故か?メンバーもファンもそれを望んでいたはずなのに…。やるべき名曲、やってほしい名曲が多すぎた。新作アルバムが名作になるちょっと前だった。期待値メーターを振り切ったファンで埋め尽くされた<グリーン・ステージ>のフィールドを前に90分ではまったくもって、足りない。足りない。物足りない。さぁ、これからだ!という時に幕を下ろされたようだった。
フジロック初出演から20年の間に彼らが生み出したメロディーたちは日本でもぐんぐん成長し、当時とは比べ物にならないくらいの価値を持っている。もう10年周期じゃなくて、次は5年後くらいで!25周年で!2時間はやってくれ!その時こそ数ある名曲たちを自在に操り、凄まじい光景を魅せてくれるはずだ。
もしかして、越後湯沢駅に貼り出されていた「日焼け止め塗った?」のポスターにメンバーが怒ってたのかな?
22:20~ @ WHITE STAGE
遠くに聴こえるレッチリのステージには見向きもせず、メンバー本人によるサウンドチェックを食い入るように見つめる熱心なファンたち。メンバーが一人づつステージに登場し、まるでパズルのように1から緻密に紡がれるループと強靭なドラムによるグルーヴがグイグイと観るものを惹き込んでいった「Dot Com」から、下手なダンス・アクトより観客を躍らせ、狂喜へ導いた「Atlas」、そしてラストの「The Yabba」まで、(いい意味で)一瞬たりとも気の抜けない、スリリングなライブだった。今回のステージを特に印象づけたのは、「IPT2」、「HI/LO」、「Tras 2」など初期の楽曲が、さらに繊密さと厚みを増し、最新作からの楽曲とシームレスに展開され、血肉化されていたこと。タイヨンダイ脱退から3ピースになって迷走中…、なんてささやかれた時期もあったが、それが完全に過去のものとなったのは一目瞭然だった。これぞバトルス、今こそがバトルスの絶頂期と胸を張って言える濃厚なステージで、バンドの真髄を見せつけてくれた。
23:20~ @ GREEN STAGE
Photo: Masanori Naruse
レッチリが終わった後も全く人がはけなかったんじゃと思うほど、<グリーン・ステージ>は観客で埋め尽くされていた。フジ常連の電気グルーヴがクロージング・アクトに登場するからだ。ピエール瀧と石野卓球が登場し「コンニチハ、電気グルーヴです」とアナウンスが入ると大歓声が起き、「Hello Mr. Monkey Magic Orchestra」でライヴがスタートした。いつもながら偉そうな(失礼!)瀧が時折「20周年おめでとうございます!」とMCを挟んだり、モニターにもフジに関する仕掛けが随所にちりばめてあるあたり、電気のフジへの愛が感じられグリーンは祝賀ムードに包まれる。中盤「あすなろsunshine」、「Flashback Disco」などアゲめな選曲にて、終盤の 「N.O.」「富士山」に繋げる。グリーン中が大合唱する「フッジッサーン!」からの「フッジッローック!」コールもいつやってもウルッと来てしまう。一旦ステージが終わり、アンコールに戻ってきた卓球は「フジロックには特別な思いがあるので、出させてもらって嬉しいです。明日死ねまーす」とグッとくるMC後、「Shangri-La」で再び大合唱し、ラストの「虹」のカッコいいミックスにてグリーン最後のライヴが幕を閉じた。最後、卓球がピョコンと瀧におんぶしてもらって「また来年~」てはけていったのがこの日の電気を象徴していた様に思えて微笑ましかった。こうしてフジロックの全ステージは幕が下りた。
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '16】2016年7月22日(金)、23日(土)、24日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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360度写真で振り返るフジロック
BIFFY CLYRO / LÅPSLEY / JAKE BUGG / COURTNEY BARNETT / THE INTERNET / SIGUR RÓS / DISCLOSURE / TRAVIS / LOOK PARK / FRF 20th SPECIAL G&G Miller Orchestra / BOREDOMS / DEAFHEAVEN / RED HOT CHILI PEPPERSPost from RICOH THETA. #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '16】2016年7月22日(金)、23日(土)、24日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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インスタグラムで振り返るフジロック
今回のフジロックでは、出演アーティストはもちろん、来場した著名人のプライベートショット、インスタグラマーが撮影した開催前の会場の模様(#emptyFujiRock)や出演アーティストのポートレイトなど、様々なコンテンツが投稿されました。Billboard JAPANでも公式アカウントにて、現地の模様、360度ライブフォト、インスタグラマーによるアーティスト取材の裏側などをシェアしました。ちなみに、今年のフジロックの期間に投稿されたハッシュタグのトップ10は、1位が#fujirock、2位が#フジロック、3位が#fujirock2016となっており、唯一アーティスト名でトップ10入りしたのは9位の#redhotchilipeppersのみとのこと。一番“いいね!”が多かった写真でも、松田翔太、マギーに続き、3位にランクインしており、その人気&注目度の高さが伺える結果になりました。
公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '16】2016年7月22日(金)、23日(土)、24日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
開場9:00 開演11:00 終演予定23:00
チケット:1日券19,000円、2日券36,000円、3日券43,000円
INFO: http://www.fujirockfestival.com/
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