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イヴリン・シャンペン・キング 来日記念特集

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 1970年代後半は、全世界がディスコ・サウンドに包まれていた時代だった。1977年公開の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』が大ヒットし、EW&Fやシック、そしてシェリル・リンやドナ・サマーなどが続々とディスコ・ヒットを飛ばしていった。そんな渦中に颯爽と登場したのが、シャンペーンのキャッチフレーズを持つイヴリン・“シャンペン”・キングだ。彼女がダンスフロアに放った「シェイム」や「ラヴ・カム・ダウン」といったヒット・ナンバーは、ディスコ世代はもちろんのこと、後のガラージやハウスのリスナーにまで圧倒的な人気を誇っている。ここでは、4月に来日が決まったディスコ・クイーンの軌跡を辿ってみたい。

 イヴリン・キングは、1960年にニューヨークのブロンクスで生まれた。父親はハープトーンズやオリオールズといったグループの一員としてハーレムの名門劇場アポロ・シアターに出演するほどの実力者であり、母親も音楽業界で働いていた。また、叔父にあたるエイヴォン・ロングは、プロードウェイの俳優兼シンガーで、ガーシュインの名作『ポーギーとベス』のリバイバル上演などで主役を務めている。こういった環境で育ったイヴリンは、早くから歌の才能を発揮していた。

 彼女にチャンスが巡ってきたのは、家族でフィラデルフィアに引越しし、母親とともにフィリー・ソウルの総本山であるフィラデルフィア・インターナショナル・レコードのシグマ・サウンドスタジオで清掃の仕事をした時のことだ。たまたま洗面所で歌っている15歳のイヴリンを、T.ライフことテオドア・ライフによって発見されることになる。当時、エボニーズやイントゥルーダーズといったグループに関わっていたライフは、イヴリンを自身のプロダクションであるギャラクシーに招いて育成し、RCAレコードに売り込みをかけた。



 1977年に、イヴリンは満を持してファースト・アルバム『Smooth Talk / スムース・トーク』でデビュー。テオドア・ライフが全面的にサポートした本作は、ディスコ全盛期ということもあり、フィリー系のミュージシャンで固めた躍動感に満ちたサウンドと、ティーンエイジャーとは思えないソウルフルな歌声により、デビュー作には聴こえないほどのクオリティを誇っている。その証拠に、いきなりビルボードのアルバム・チャートで14位まで上昇し、R&Bチャートでは8位を記録。また、シングル・カットされた「Shame / シェイム」も大ヒットし、こちらもビルボードのHot100で9位という結果を出した。当然、ディスコでは定番となり、いまだに根強くダンスフロアで支持されているはご存知の通りだ。

 1979年にはセカンド・アルバム『Music Box / ミュージック・ボックス』をリリース。インスタント・ファンクやルーサー・ヴァンドロスなども参加し、前作同様にファンキーなディスコ・サウンドで包み込んだパワフルな歌声で、ビルボードのアルバム・チャートで35位のスマッシュ・ヒットとなった。翌1980年には3作目の『Call On Me / コール・オン・ミー』をリリース。セールスは伸び悩んだが、シングル・カットされた「Let's Get Funky Tonight / レッツ・ゲット・ファンキー・トゥナイト」はダンス・チャートで12位まで上昇し、フロアでの人気の強さを再確認させられた。



 1981年になると、イヴリンはテオドア・ライフを始め周りのスタッフを一新。アルバム『I'm In Love / アイム・イン・ラヴ』を制作するにあたり、メインのソングライター及びプロデューサとして、当時はB.T.エキスプレスのメンバーだったカシーフを起用する。思惑は見事にはまりディスコ時代で固まったイメージを払拭する洗練されたサウンドを作り上げた。また、表題の曲の「I'm In Love / アイム・イン・ラヴ」はビルボードのR&Bチャート及びダンス・チャートでいずれも1位を獲得。Hot100でも40位まで上昇したことでも重要だ。続いて、1982年に発表した5枚目のアルバム『Get Loose / ゲット・ルース』はさらに大ヒット。アルバム・チャートで27位、R&Bチャートでは首位を獲得しただけでなく、「Love Come Down / ラヴ・カム・ダウン」もシングル・ヒット。今ではイヴリンの代名詞ともいえるこの曲も、R&Bチャートとダンス・チャートで首位となり、Hot100でも27位という記録を残した。



 大ヒットの余韻が冷めない1983年には、6作目『Face To Face / フェイス・トゥ・フェイス』を発表。プロデュースに、シルヴァーズのメンバーでありシャラマーなどを手がけたレオン・シルヴァーズを起用。さらに1984年にリリースした7作目『So Romantic / ソー・ロマンティック』では、ザ・システムなど複数のプロデューサーを招き、バラエティ豊かなコンテンポラリー・サウンドを追求していった。1985年にはテオドア・ライフとの久々の顔合わせで『A Long Time Coming (A Change Is Gonna Come) / ロング・タイム・カミング』を発表するが、本作を最後にRCAからEMIに移籍。『Flirt』(1988年)、『The Girl Next Door』(1989年)といった力作を残している。しかし、この頃から寡作になり、90年代は『I'll Keep A Light On』(1995年)を残すのみ。その後は、2007年に12年ぶりのオリジナル・アルバム『Open Book』を発表してファンを驚かせた。

 リリースだけで考えると、イヴリンは引退したかのように感じられるが、実はその逆で精力的に活動している。ツアーも積極的に行っているだけあって、パワフルでソウルフルなヴォーカルも健在。その変わらぬ声を、4月の来日公演で久々に確認できるのだ。同年代のシンガーたちが続々と引退していく中、イブリン・“シャンペン”・キングにしか歌えない往年のディスコ・チューンが生で聴けると思えば、古くからのファンも後追いのリスナーも必見だろう。ビルボードライブのステージでどんなパフォーマンスが観られるのか。まさにシャンペンの泡のように輝く歌声を、ぜひ楽しみにしていただきたい。



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当時のDiscoで聴かなかった日がないほどだった

イヴリン ”シャンペン” キングは、若干15歳でフィリー・サウンドで名高いシグマ・スタジオに病気の姉の代役でバイトに行き、掃除中にサム・クックの曲を歌っていたところをスカウトされるという強運の持ち主。フィリー・ソウル・スタイルのファーストアルバム『Smooth Talk』はインスタント・ファンクに脇を固められ、「Shame」がR&Bチャートで7位、総合チャートでも9位に入る大ヒットを記録している。
彼女の1学年下の私的には、やはり”シャンペン”を外し、カシーフとがっちり組んでニューヨーク・サウンドに突き進んだ1981年リリース『I'm In Love』の表題曲「I'm In Love」や、翌年リリースした『Get Loose』からの「Love Come Down」が思い出深い。R&Bチャート1位に輝いたこの2曲は、当時のDiscoで聴かなかった日がないほどだった。また、著者が主催するイベント【remember Queue】では、1985年の「Your Personal Touch」も人気が高い。
今回のライブではパワフルに踊る彼女のパフォーマンスも楽しみでならない。

--野口かつみ(のぐちかつみ)

WHAT'S UP?
東京都港区六本木3-8-12 イーストビル1F
http://www.soulbar-whatsup.com/

80年代の語るに欠かせないダンスシンガー

80年代の語るに欠かせないダンスシンガーで「I'm in love」「Love Come Down」をはじめとするアーバン・コンテンポラリーのヒットは有名だが、私たちの世代は何と言っても77年のデビューから間もない「Shame」が印象的だった。インスタント・ファンクの都会的なフィリー・サウンドにのせた歌声はとても17歳の少女が唄っているとは思えないが、ジャケットを見るとはじけそうな“シャンペン”のニックネームがつくほどに初々しさが感じられてならない。この曲にあわせ、当時流行っていたフリーチャチャというステップ・ダンスでディスコのフロアが埋め尽くされたのをよく覚えている。

--マイケル鶴岡(まいけるつるおか)

SOUL NUTS
東京都世田谷区池尻3-28-6-2A
http://www2u.biglobe.ne.jp/~hirakei/

LIVEでは踊りたくなること間違いなし!!

70年代後半〜80年代のディスコシーンを盛り上げたイヴリン“シャンペン”キング。「Shame」や「Love Come Down」など、代表されるHIT曲からは、都会的でダンサンブルな印象を強く受けますよね!しかし、実はミドル〜スロウなナンバーをとってもソウルフルに歌い上げる正統派のシンガーでもあります。
もちろん、LIVEでは踊りたくなること間違いなし!!なのですが、ミドル&スロウナンバーでは、彼女の美しい歌声に耳を預けてみたら.....益々素敵な夜になるかもしれないですねっ。

--山口郁輔(やまぐちいくほ)

BAR soul on
神奈川県横浜市西区南幸2-6-11 籐のある部屋ビル4F
https://www.facebook.com/bar.soulon/

イヴリン・シャンペーン・キング「ロング・タイム・カミング」

ロング・タイム・カミング

2015/10/14 RELEASE
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