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エドゥ・ロボ来日記念特集~豊潤なブラジルのシーンで、 ひときわ光り輝くエドゥ・ロボの魅力とは?

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 複雑なメロディやリズムに圧倒される「ウパ・ネギーニョ」や、グルーヴィーなリズムと寄り沿ったスキャットがクールな「ザンジバル」。ブラジル音楽を聴き進めていけば、きっとこんなユニークな楽曲に出会うはずだ。ブラジル音楽のなかでも、極めて個性的なこれらのナンバーを生み出したのが、鬼才エドゥ・ロボ。豊潤なブラジルのシーンで、ひときわ光り輝く彼の魅力は他に代えがたい。ボサノヴァやサンバといったひとつのジャンルに押し込められない彼の感性は、オリンピック・イヤーで注目を浴びる今こそ再評価すべきだろう。この春には、セルジオ・メンデスとともに初来日して以来、45年ぶりの日本公演が決定した。ここではライヴの予習を兼ねて、エドゥ・ロボの魅力に迫ってみよう。

 エドゥ・ロボは、1943年にリオデジャネイロで生まれている。父親は、多数のサンバの名曲を残したことで知られる作曲家のフェルナンド・ロボ。その才能を引き継ぎ、早くから音楽に目覚めていたという。最初に手にしたのはアコーディオンだが、程なくしてギターを弾き始める。彼が多感な時期の1950年代末から60年代初頭のリオといえば、ボサノヴァ旋風が吹き荒れていた頃。若いエドゥも、ジョアン・ジルベルトやセルジオ・メンデスなどに大きな影響を受け、ボサノヴァを歌うようになった。

 そして、1962年にはEP盤でデビューし、1965年にはナラ・レオン及びタンバ・トリオとともに参加したライヴ・アルバム『5 Na Bossa』がリリースされて話題を呼ぶ。同じく1965年には、名門のエレンコ・レーベルから記念すべき第一作目のアルバム『A Musica De Edu Lobo Por Edu Lobo』を発表。タンバ・トリオを従えたジャズ・ボッサ・サウンドで、「Reza / 祈り」や「Arrastão / アハスタォン (地引き網)」といった名曲が収められていた。1967年には、ブラジル・ポピュラー・ミュージック・ソング・フェスティバルで歌った「Ponteio / ポンテイオ」が一位を獲得。また、エリス・レジーナが彼の曲を多数取り上げたことにより、一躍有名なソングライターとなる。



 その後も、精力的にレコーディングやライヴを行っていく。「No Cordão da Saideira」や「Candeias」を含む『Edu』(1967年)や、代表曲の「Upa Neguinho / ウパ・ネギーニョ」のようにブラジル北東部のリズムを大胆に取り入れた『Edu Canta Zumbi』(1968年)などが代表的な初期作品だ。コラボレーションも多く、シルヴィア・テリスやタンバ・トリオらと組んだ『Reencontro』(1965年)、マリア・ベターニアとのデュオ作品『Edu Lobo E Maria Bethânia / エドゥ・ロボ&マリア・ベターニア』(1967年)など、力作が揃っている。

 セルジオ・メンデスを敬愛していたエドゥは、先に米国で成功を収めていたセルジオに薦められ、1969年に渡米。ついにワールド・デビューを果たすことになる。それが、1970年にA&Mから発表されたアルバム『Sérgio Mendes Presents Lobo / セルジオ・メンデス・プレゼンツ・ロボ』だ。「Zanzibar / ザンジバル」や「Casa Forte / カーザ・フォルテ」といった彼の代名詞的な名曲がいくつも収められた本作で、エドゥ・ロボという稀有な才能を世界が知ることになった。わずか2年の滞在期間であったが、彼が米国のミュージシャンに与えた影響は少なくない。事実、ハービー・マン、トゥーツ・シールマンス、ドロシー・アシュビーなど、当時の多くのジャズ・ミュージシャンたちが彼の楽曲を取り上げている。



 帰国後も彼の活躍はとどまることを知らなかった。ソロ活動はもちろんだが、ミルトン・ナシメントやアントニオ・カルロス・ジョビンなどと、積極的にコラボレーションを行っていく。また、独特の雰囲気を持つ楽曲は重宝され、多くのシンガーに歌われることになった。有名どころでは、エリス・レジーナによる「ウパ・ネギーニョ」や、セルジオ・メンデス&ブラジル66の「ザンジバル」などが挙げられるだろう。他にも、彼の作品を取り上げたミュージシャンは、ジョイス、ワンダ・サー、バーデン・パウエル、クアルテート・エン・シー、シコ・ブアルキ、ジジ・ポッシ、フローラ・プリムなどなど、数えきれないほど存在する、あのアース・ウィンド&ファイアーが、「ザンジバル」をカヴァーしているのも有名な話だ。

 エドゥ・ロボの音楽は、ポピュラリティを持つと同時に、音楽的に高度で難解な部分も持ち合わせている。ボサノヴァやノルデスチ(ブラジル北東部)の土着的なリズムをベースにしながらも、不協和音を多用したコード進行やアレンジは、もはや現代音楽といってもいい感覚だ。作品によっては重苦しい雰囲気も強く、決して万人受けするタイプではないのかもしれない。ただ、軍事政権下のブラジルの陰鬱な空気感を反映したこともあり、熱烈なエドゥ・ロボ信者を生み出したことも確かだ。とにかく異色の存在であることは間違いない。



 80年代なかばを過ぎると、エドゥの制作サイクルもゆるやかになり、随分寡作となってしまう。シコ・ブアルキと組んだ演劇の音楽や、MPBの盟友たちとジョイントしたライヴ・アルバムなどはリリースしていたが、自身のオリジナル・アルバムは数少ない。とはいえ、1995年のシルキーな傑作『Meia Noite』などでの現役感は申し分ないし、2014年には70歳の誕生日コンサートの模様を収録したライヴ盤『70 Anos』も発表し、健在ぶりをアピールしてくれた。

 この春に行われる奇跡の来日公演は、先日した通り、セルジオ・メンデスのバンド・メンバーの一員として来日した1971年以来45年ぶり。しかも、セウ・ジョルジとの共演などでも知られる息子のベナ・ロボも参加。ブラジル音楽界の至宝が、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。大いに期待したい。

エドゥ・ロボ「カンチーガ・ヂ・ロンジ」

カンチーガ・ヂ・ロンジ

2015/06/10 RELEASE
UICY-76456 ¥ 1,100(税込)

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Disc01
  1. 01.要塞
  2. 02.イタマラカのフレーヴォ~食べて寝て
  3. 03.マリアーナ、マリアーナ
  4. 04.ズン・ズン
  5. 05.蒼い水
  6. 06.遠くの歌
  7. 07.サンタレンの市場
  8. 08.ザンジバル
  9. 09.マルタとロマン
  10. 10.正月のランショ
  11. 11.新しい都市

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