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楽園おんがく Vol.31: caino インタビュー
旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住ライター 栗本 斉による連載企画。今回は、沖縄のロック・シーンで今最も注目され、ブレイク間近との噂も高いcainoのインタビューをお届け!
現在、沖縄のロック・シーンでもっとも注目されているバンドのひとつが、cainoではないだろうか。エモーショナルなギターロック・サウンドに乗せたハイトーン・ヴォイスを聴けば、誰もが気になるに違いない。
2000年に結成されたcainoは、メンバーを変えながら地道に活動してきた。ヴォーカル&ギターの高良豊を中心に、現在のメンバーはドラムスの兼島紳と、ベースの田盛安一という3人。2014年に自主制作で初のアルバム『caino』を発表。そして、2015年の12月には初めての全国流通盤となるミニ・アルバム『mahoroba』をリリースしたばかり。沖縄で共演した水曜日のカンパネラが絶賛し、その縁で東京のライヴ・デビューも果たした。
UKロック、エモ、ポスト・ロックといったエッセンスを巧みに取り入れながら、ポップであることを常に意識したcainoの楽曲群は、緻密に作り込まれているにもかかわらず、キャッチーで耳に残る。『mahoroba』がタワーレコードの推薦するタワレコメンにも選ばれるなど、ブレイク間近との噂も高い彼らの秘密に迫るべく、直撃インタビューを敢行した。
cainoが今みたいにちゃんと評価されるようになったのは、田盛さんが入った2010年からですね
−−みなさん、30代半ばなんですよね。
田盛安一:僕が年長で1980年生まれです。
高良豊:僕は1981年生まれです。
兼島紳:こう見えても僕がいちばん年下で、1983年生まれです。
−−世代的には同じですが、共通の音楽体験ってどのあたりですか。
高良豊:全員がビジュアル系上がり。
兼島紳:LUNA SEAはなんでも弾けるぞ、っていう(笑)
高良豊:スタジオに入って音出しするときに、まず「TRUE BLUE」がかかるんですよ(笑)
田盛安一:誰かがイントロ弾いたら、すぐに合わせられます(笑)
高良豊:DNAに刻まれていますね。
−−3人が出会ったきっかけは。
兼島紳:もともとは全員別のバンドで活動していたんです。12,3年前ですかね、浦添市にGROOVEという小さなライヴハウスがあって、そこで対バンする仲間で。打ち上げで一緒になったりして、仲良くなりました。
高良豊:caino自体は2000年結成なので、すでにあったんですよ。最初は、僕の他に、ギター、ベース、ドラムの4人組でした。それで、ドラムとギターが脱退して、僕とベースの二人になったんですけど、その時に加入したのが紳くん(兼島)です。そして、ベースも「俺、ソムリエやりたい」って言って辞めてから(笑)、サポートしてもらったのが田盛さん。その後、正式にメンバーになってもらいました。
−−じゃあ、今のメンバーが固まったのは最近ということですか。
兼島紳:2010年ですね。僕は2006年に入ったので、今年で加入10周年です。
−−2000年の結成当時はどんな音楽性だったんですか。
高良豊:ナンバーガールに影響を受けて、オルタナティヴ・ロックをやろうと思ったんですよ。でも、オルタナってジャンルじゃないじゃないですか。なんでもありだし。その時に思ったのが、ポップというものも、ジャンルじゃないし、既成概念もないから、自分たちはポップ・ロックと名乗ろうと思って。だから、どんな音楽をやっても、自分たちはポップ・ロックだと思っています。でも、根幹にはナンバーガールがありますね。
兼島紳:僕が当時客としてcainoを観ていた頃も、ナンバーガールやカウパーズの匂いがぷんぷんするバンドでしたね。
−−沖縄にそういうオルタナのシーンはあったんですか。
高良豊:小さいですけどありましたね。今も綿々と続いています。なかなか表層に出てこないんですけど、沖縄のオルタナやポスト・ロックって実は評価が高いんですよ。紳くんがいたunripeっていうバンドも、沖縄で初めてポスト・ロックをやったグループなんです。
兼島紳:沖縄に初めてtoeを呼んで一緒にライヴをやりました。
−−田盛さんはどんな活動をしていたんですか。
田盛安一:僕は当時、ダンボールダンボダンサーズというバンドをやっていました。その後、FUZZY Quartet Rowというバンドに参加したんです。このバンドは、MONGOL800と同じ事務所に所属して、精力的に活動していました。でも、そこも辞めて、今のcainoの3人ともうひとりのギターと4人で、Kier and DeSertというバンドをやっていたんです。
−−なんだか混乱してきましたね(笑)。それは、cainoで一緒にやる前に、すでに3人は別のバンドで活動していたということですね。
兼島紳:そのバンドはヴォーカルが少なめで、インストがメインですね。もうひとりのギターが主役で。
高良豊:Kier and DeSertは、残響レコードっぽいっていわれていましたね。実際、People In The Boxとかmudy on the 昨晩とも、桜坂セントラルなどで対バンしました。で、そのバンドを僕がクビになったんです(笑)。それをきっかけにcainoを頑張ろうと思いました。
−−それはいつ頃ですか。
兼島紳:Kier and DeSertが始まったのは2007年で、豊(高良)が入ったのが、2008年頃かな。
田盛安一:あの頃はメンバーのかぶりがすごかったんですよ。僕もいろんなバンドをぐるぐると回っていて(笑)
−−ファミリーツリーを作りたいですね(笑)
兼島紳:「お前らどのバンドにいるのかわかんない!」って、よくいわれていましたね(笑)
高良豊:cainoが今みたいにちゃんと評価されるようになったのは、田盛さんが入った2010年からですね。その頃に、僕はエフェクターなどの機材にハマったんですよ。それで音楽性の幅が爆発的に広がりました。それまでは、チューナーとチューブスクリマ―を挿してアンプに繋ぐだけで、音がクリーンであればなんでもよかったんです。でも表現の幅がそこだけではないと気づいた瞬間に、空間系や音響系のバンドが身近になりました。紳くんはもともとポスト・ロックをやっていて手数の多いドラマーだったし、田盛さんもほぼプロに近い状態の腕のあるベーシストだったから、彼らが合わさった上で自分がそこに乗っかるという今のスタイルががっちりハマりました。それが、今の評価につながっているんだなと思います。
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今聴くと「この音楽、俺のじゃない」とか思う曲もありますね(笑) - Next >
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Interviewer: 栗本 斉
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